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茶衣流
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サキュモスハンター【18】【大規模大型種討伐作戦と刀】

サキュモスハンター【18】【大規模大型種討伐作戦と刀】【4559文字】 【第17話より】 https://abnormal-create.fanbox.cc/posts/8979430 「三人ともよく来てくれた。大まかな報告は聞いているが、もう一度三人の話を整合しながら確認してみたいと思う。その上で本作戦を実行するか、どうかを考えたい」  メグル、リマ、ユイナの三人はギルドの会議室に呼び出されていた。  部屋には三人の他、ギルド長に大手クランの隊長、副隊長クラスの面々が揃っていた。  長机に座るのは重鎮と呼ばれるような面々ばかりだ。  メグルはもちろん、小規模クランの隊長たちも立ったまま話を聞いていた。  それほどまでに、多くの人員がこの会議に出席している。   緊張感が部屋を満たしている。  それは、この緊急事態についての緊張と言うほかない。 「まずは、自分から報告させていただきます」  バニキュモスとの戦闘、ボスバニキュバスの乱入、そして、彼女との戦闘中に現れた災厄のサキュモス、イリス・ラマ・メイトリューロンについて。  彼女の催眠攻撃の効果、特性、範囲。  自分がいつの間にか、彼女の術中に落ちていたこと。  特に大事な部分は彼女の攻撃手段だった。  声、視覚、嗅覚、ほぼ五感のすべてに訴えてくる催眠能力。  どこからかかったのか曖昧であったため、その効果範囲までは曖昧だったが、そこからリマ、ユイナが補足を加える。  彼女たちの話によると、接近が可能だったことを考慮しても、そこまでものすごく効果範囲が広いと言うものではないと想定できること。  だが、催眠能力を回避できても、彼女の身体能力自体が、並みのサキュモスをはるかに凌駕している点。  加えて自由自在に肉体の大きさを変化できる特質。  普通のサキュモスではありえない部分について報告していた。   「また、イリスは第二淫獣と言いました。五大淫獣が一人とも。つまり、このクラスのサキュモスがあと4体、女王とイリスを含めれば、合計6体の強大な力を持つサキュモスがいることになります」 「しかし、退魔樹のある街には攻撃できまい。それは過去何十年も変わらないではないか。ならば、そう怯えずともよい」  重鎮といえるギルド役員が口を開いた。  ギルドとて一枚岩ではない。  現状の変化に対応できない保守的な老躯も複数人混じっている。  確かに激動の時でなければ、彼らの意見は正しい。  確かに退魔樹が倒されたなどということは無い。 「では、このまま指を加え、何もするなと!」  ユイナが割って入った。 「下手に刺激すれば、交易に従事しているハンターや商人に被害が出るかもしれん。そうなるのは避けねばならない」  交易隊は、主に島の海側のルートを伝って、各街を経由し、交易をおこなっている。  サキュモスは基本的に、海側の方へはあまり寄ってこない。  例外はもちろんあるが、そのおかげで、島の北から東北、東北から東南、東南から南へ順々に回れる交易路が確立している。  ここを何かのきっかけで攻撃されることを恐れているのだ。 「ですが!」 「そのとおりだ」  さらに食い下がろうとしたユイナの声遮る者がいた。  ギルドマスター、リベン・ハウゼンス・ロハン。  全ハンターの中で最強と言われるハンターの一人。  少なくとも、この街では最強であることは間違いない。 「このまま、何もしなければ、滅ぶのは我々だろう。即、他の街にも伝令だ。これよりアクレイアの街は、危機的厳重警戒態勢に移行する」 「は、はい!」 「その上で、大進行に備え、今のうちに叩けるだけ、敵を叩く。森の中に踏み込み、現在確認できているだけの大型種を討伐に行く」 「お言葉ですが、今、攻め入ればこちらの防御が薄くなるのでは」 「本日中に第一陣を送る。第二陣は明日だ。私含め、第三陣は両陣が帰還したのちに出発する。街には必ず、第一、第二の両陣営か、第三陣の部隊が残るように取り計らう」 「な、なるほど。それでしたら」 「残り本日を含め、例の夜まであと五日しかない。もちろん、その夜は全部隊が帰還している前提である」 「うむ……」  重鎮であろうギルドの役員もギルドマスターの言葉には逆らえない。  大進行に対する大規模討伐作戦の決行がここに決まった。 ***  本日中に第一陣を派遣ということで、すぐさま作戦会議が催されることとなり、メグルたちは退室した。  このあと各クランの長たち、ギルドマスター含んで作戦を練ることになる。  メグルたちは、実力的、並びに装備破損の現状を受け、第二陣に組み込まれることは退出前にギルドマスターから言われた。 「明日までに準備整えないと……刀あるかな」 「私の弓は辛うじて無傷で回収してもらえたからいいけど……リマの大剣は」 「ボロボロだったわ……あぁぁ……相棒が……修理できるかどうか」  そんなことを言い出したら、メグルの武具はすべて霧散してしまっていた。  武具の代金はギルドからの補助金が出るのでハンターに優しくそこまで高額ではないものの、それでも結構な費用が飛んでいく。  プレートのおかげで資金は下ろすことはできるが、蓄え自体そこまで多いわけではない。  今回の全損費用を吐き出すと、あと損失一回分ほどしか残らない……。   「あぁ……せめて気袋が残っていれば」  バニキュモス二体討伐の証明になり、報酬が支払われるはずだったが、残念ながらメグルの持ち物に関しては発見された時アイテムポーチしか残っていなかったらしい。  おそらく、ボスバニキュモスが持ち去ったのだろう。  それか、あのイリスというサキュモスか。 「まぁ、今回の討伐作戦で戦功をあげれば、その分がっつり稼げるって」 「ですよ。ねぇ、そんな気を落とさず」 「気袋だけに?」 「あ、ぁぁ、ぁぁ……」 「こら、リマ」  足取りが重くなる。  そんなやり取りをしていると、銀行に到着した。  三人ともそれぞれ受付窓口に向かう。  プレートによる証明を終え、資金を取り出す。  3000リマール。  残りが2000リマール。  住処の家賃、食費、アイテム代で、ひと月分の支出がおよそ1000リマールだ。  あと、実質ふた月分しか資金が持たない。 「リマたちも下ろしてきたか……」 「えぇ」 「ばっちり」  といって、ふたりとも10000リマール金貨を見せる。 「な、なぁ!」 「どうしたの?」 「いや、それ、一万リマール金貨!」 「そうだけど……」 「いや、補助金が出てもこれくらい必要でしょう」 「ぐぅ……」 「え、メグル、一体、いくら下ろしたの?」 「3000……」 「えっと……、うん、貸そうか?」  ぐっと伸びそうな手を引っ込め丁重にお断りをした。 ***  リマとユイナと分かれ、メグルは一人で町はずれにある武具屋に向かった。  同じ武器屋などに行っては破産してしまう。  よく知る間柄でも金の貸し借りはしない。それはメグルが自分に言い聞かせている不文律だ。 「こんちわー、おやじさぁんいるかぁ?」  街はずれ、特に、渓谷の崖に近く、且つ壁に近いところ。  街の入り口から入ってすぐに左折して、突き当りまで言ったところにその建物はある。  木製の掘立小屋のようなそこは、鍛冶場兼販売所となっている。  そして、奥の工房から出てきたのは筋骨隆々のほどの青年だった。  男にしては珍しく150センメイルを超えている。  ラグネ・バイフォン。  自分の友人の中で一番古い仲だ。 「おぅ、メグルか。ということは修理……じゃ、なさそうだな……」 「すまない、全損した」 「先日の厄災に巻き込まれたっていうのは、お前の事か」 「あれ、なんでわかった?」  厄災で三名に甚大な被害とはギルドで報告が上がっているはずだが、名前までは出ていなかったと思う。   「当たり前だ。分かるに決まっているだろう。ここ最近、そんな全損するほどの被害が出たのなんてあれくらいなものだ」 「?、その前にも、大型クランが半数ほどやれれてなかったけ?しかも、ちょうど俺が厄災と遭遇した日に」 「あれは3名じゃないだろう、3名ならお前と、他に指で数えるほどしかいない。ちなみに大型クランの方は、ひん剥かれて、全損するまでいってないらしい。まあ、中には全損したやつもいるみたいだが、そんな大型クランの連中は俺の店を利用なんかしない、あとは勘だ」 「まぁ、そこまで、情報があれば大体予想もつくか」 「で、強かったか?」  何がと聞き返すことはしない。 「あぁ、ヤバかった。まず、あれほどの存在にあったことがない。リマとユイナもやられた」 「メグルだけならまだしも、『重剣』と『弓滅』までもか」  『重剣』と『弓滅』。リマとユイナの二つ名だ。  メグルには二つ名はついてなかった。  それほどの戦果を残せているわけでもないのだからしょうがない。 「なら、生半可な装備では無理だな……」 「ちょ、そんな高額な武器なんか出してくるなよ、お~い」  そう一言、残して工房の奥に引っ込んでしまった。 「手持ちねえよ」  しばらく待っていると、奥から引っ張り出してきた逸品に目を見張ることになる。 「おい、これ」 「あぁ、淫気摩耗だけで済む、例のあれだ」  武器も防具も普通は淫気を注がれ続けると破損する。  修理可能なレベルまでなら再度職人の手で元に戻せるが、完全に霧散したものは戻らない。  だが、一部の特別な武器、防具には『淫気核』が組み込まれ、原形を完全に失うことは無い。もちろん、淫気を注がれれば、摩耗し、刀でいえば刃が形を崩していく。  それでも認識の上ではダメージを与え続けることができる。  淫気摩耗のみで済む武器。 「淫核刀・一皇(いっこう)」  夢幻種器の中で『核』の名を冠せられるのは淫気核を使用しているものに限られる。  刀を手に取り、鞘から抜いた。  『刃斬弐型太刀』と同じ長さの刀。だが、その刀身がまるで違う。  鮮血を滴らせたような鮮紅の赤。  ゾッとするほどの光沢を持ったその刀身は、一目でその鋭さを感じさせる。 「いや、これ……」  一目ぼれだ。  だが……。 「絶対買えないだろ」 「ああ、お前の全財産でもたらん」 「いくらだ」 「200万リマール」 「ッ‼」  手が震えた。  200万……1000リマールでひと月分の生活費だ。  家が何件建つ?この町では一等地の家でも100万リマールだ。安い家なら10万リマールで建てられる。  今の手持ちが……。 「返す」 「もってけ」 「はあ、意味がわかんねぇ」 「壊れはせんし。メンテナンス代はもらうが、何度も買い替えることを考えれば安い買い物だろう。まあ、お前の討伐代金の10%を返済に充ててくれればいい。このまま倉に入れたままでは刀も報われん。そして、それを買いに来るような酔狂な客もここにこねえよ」  知る人ぞ知る、といった店だ。  腕は一流。刀と剣、に関してはここ以上の店はないと思う。 「恩に着る」 「やる、わけではないからな。ツケはきっちり返せよ」 「あぁ、済まない」 「あとは防具だな。有り金全部出しな」  そういって、財布ごと全部差し出すと、その中身を確認し、工房の奥へまた潜っていた。  持ってきたのは軽装の皮鎧に、薄革を加工した丈の短いズボンだった。 「まぁ、色を付けてもこのあたりまでだな」  そう、彼は言ったが、正直採算度外視と思えるような品だった。  それでも、依然身につけていた装備よりは一段階見劣りする。  前の装備が良すぎたのだ。 「ありがたい。何から何まで感謝する」 「大規模な戦になるかもしれないんだろう。まあ、これくらい身に着けておかないと、すぐにひん剥かれるぞ」 「あぁ、本当にすまない」 「無事で戻ってこい」 「ああ、絶対」  拳を突き合わせて、工房を出る。  いつの間にか日が傾いていた。  すでに第一陣は出立済みだろう。 「明日、か」  怖さ半分、もどかしさ半分。  一振りの刀を握る手に力がこもった。 *** 【第19話へ】 次話【パイラウネ捕食蕾の奇襲を受け……】 https://abnormal-create.fanbox.cc/posts/8979441


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