接客が苦手な私は閉店後を楽しみにしているのです
Added 2019-03-08 11:44:29 +0000 UTC1:先輩と私 「咲良さん? さ~く~ら~さん? 聞いてる? 咲良さんってばぁ!」 私の通う大学の近くに私がアルバイトをしている百均ショップ“エブリスタ”はある。 学校の講義が終わるとほぼ毎日その百均ショップの夕方のシフトに入れられ閉店後まで働かされ、これまたこのショップの近くに借りてあるアパートに帰宅して1日が終わる……そんな毎日が私の日課になりつつある。 貧乏学生である私は、親の仕送りとは別にこういうアルバイトで遊興費を稼がなくてはならないのだけど……その遊ぶために得たお金を使う時間が今の私には無い。 最近ではアルバイトに入る比率高くなりすぎて、女子大生らしい遊びに興じる事など出来ていないのだ。 「お~い、咲良ぁ? さ・く・ら!」 とは言いつつも、対人恐怖症じゃあるまいかと疑われるくらいにコミュ障な私を、気軽に遊びに誘ってくれる友達などおらず……ショッピングも大好きな映画鑑賞も大抵一人で寂しく行く事になる。 そんな孤独な女子大生ライフを送っている私に、この学校近くで就業しているアルバイトが幸か不幸か私の孤独な時間を埋めてくれている。 週六日、ほぼ休まず出勤している私はもはや主任並に仕事が出来ていて、ショップにある全ての商品も暗記している程知識も豊富になっている……筈なのだけれど……。 「こら! 咲良っ! ボーっとするな!!」 「ひにゃっっ!!? は、ハ、は、ハ、はイぃぃぃっっ!!」 そんな理想を夢見ている私に……現実は厳しい。 「レーージッ!! レジが混雑してるの見えてるだろ? さっさと応援に行きなさいっ!!」 生まれもっての鈍臭さが備わった私など、理想とするバリバリなアルバイト戦士になど成れるはずもなく。今日もお目付け役の先輩に叱られる日々を通常運行している。 「はひっ!? しぇ、しぇんぱい? いつの間に背後に??」 「お前が呼んでも全然反応しなかったからわざわざ出向いてやったの! 全く……呼ばれたら返事くらいしなさいよね!」 「あうぅぅぅ……すみましぇん……」 「ほら! 謝るのは後で良いから、さっさとレジ応援に行ってきな! お客さん待たせちゃダメでしょ?」 「は、はいぃ! 了解れすぅ~~」 私より一学年上の“美奈(みな)”先輩。 私なんかよりハキハキ物事を喋れて接客も得意……。頭も良いし面倒見も良い……まさに私の理想とする先輩像を彼女は持っている。 私の方はと言うと……まぁ、想像できるだろうけど……。 「い、い、い、イラッシャイ……マシェ……」 まるでロボットが接客しているかのようなぎこちない挨拶にぎこちない笑顔……。人見知り全開のレジ打ちを行ってしまう私は先輩を毎度呆れさせてしまっている。 「(ほら! またぎこちないゾ! もっと可愛く笑顔で接客しなさいよ!)」 私のテンパった接客を見て先輩も私の横に入り、私の脇腹を肘でつついて小声の教育を入れる。 そしてすぐさまパッと明るい笑顔に顔を切り替えてお客さんに接客をし直してくれる。 「お待たせしてしまって申し訳ございませんでした~♪ 2点で合計216円頂戴いたします♥ 前の方へどうぞ~~♥」 流れる様に流暢で明るく元気な接客……私のテンパった接客よりも明らかにお客さんの印象も良い。 それもそのハズ、この素晴らしい接客に加えて美奈先輩はとっても美人さんなのだ。 モデルでもやっていたかのような切れ長な眉に少し吊り上がった目。スッと美しいラインを描く鼻筋、笑顔が似合う口。ほとんど化粧要らずの張りのある肌……。同性ながら惚れてしまいそうになるくらいカッコいい美人お姉さんという、私には無いハイスペックをお持ちのお方だ。 高校時代にスポーツをやっていた名残りで髪は短く短髪なのだけど、そのお陰か私みたいにパッツン前髪が野暮ったく顔を覆う事はなく、元々明るい表情を更に明るく見せている。常に太陽のように明るくて言いたい事は何でも言うという明朗怪傑な性格であるため職場の中でも男女ともに人気が高く、私のお目付け役でなければ近寄りがたくて私は自然に距離を置いてしまっていた所だろう。 誰が見ても立派で外見も内面も完璧な先輩……。 だけど私は知っている。 彼女の本性を……。 「ありがとうございましたぁ~♥ またのご来店をお待ちしております!」 あの屈託のない笑顔の裏側で、今どんな事を考えているのか……簡単に想像できる。 「次でお待ちのお客様ぁ~こちらへどうぞ~~♥」 彼女の行き過ぎた異常な“教育”を受けている私なのだから、彼女の考えくらいすぐに読めてしまうのだ。 「お待たせいたしましたぁ~~♥ いらっしゃいませぇ~~♪」 まぁ、私も……その教育を“受けたい”が為にワザとミスしたり、出来ないフリをしたりするのだけどね……。