The.UnderCover~潜入捜査官:神崎琉姫~11
Added 2019-06-26 15:06:16 +0000 UTC11:嬲り 別に“くすぐり”という行為に何かしらの特別な感情を抱いた事は今までの人生の中で1度もない。子供の頃にコミュニケーションの一部的にじゃれ合って行った事はあれど、それをいつ行ったかなどはいちいち覚えてさえいない。そういうのが普通だと思う。別にくすぐりが人生に何か大きな変化を与えた……などと考えた事なんて有るはずもない。 ……でも今は違う。 袖の無い露出度の高い衣装を着せられ……万歳の格好に拘束され……靴も脱がされ……足も動けなく拘束され、そんな接触に無防備で刺激に対して無抵抗を強いられた今の格好で好き勝手に身体中をくすぐられて……特別な感情を抱かない筈がない。 「いぎゃあぁぁぁぁ~~~っっっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、へぎぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、びゃハぁぁぁははははははははははハハハひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぃははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」 ちゃんと酸素を取り込んでまともな呼吸を行いたいという欲求は湧くのだけれど、笑わされている現状ではそれもままならない。酸素を吸おうと大きく口を開けばその口からは肺の奥から圧迫してきた笑いが酸素と共に吐き出され、吸えたとしても僅かしか取り込めない。その僅かな酸素も次の笑いの時に必要以上に吐き出されてしまって肺はいつでも酸欠状態に陥ってしまう。 酸素が足りないと血液中に含まれる酸素の量も減り、思考するのに十分な酸素を届けられなくなる。それが故、頭は真っ白になりまともな思考は出来なくなってしまう。出来る事はと言えば本能的な行動のみ……。 刺激に対する反応、反射的な手足のバタつき、身体の過剰反応、痙攣し続ける横隔膜が引き起こす絶え間ない笑いと必死に呼吸しようとする肺の異常な活動……。 ただくすぐられているだけのハズなのに……。ただ少しだけ触られているだけのハズなのに……。ただ笑っているだけのハズなのに……。 拘束されて行われるコレはどうしてこんなにも苦しみを生むのか? どうしてこんなに疲弊させられてしまうのか? 理解は出来ないし笑ってしまうメカニズムもよく分からない。 でも、敏感な肌をコショコショと刺激され続けるだけで笑ってしまうのは理解できてしまう。触られるだけで身体が拒否反応してしまうくらい敏感な箇所を好き勝手にまさぐられ、延々とむず痒い刺激を与えられ続ける行為……これを続けられると無条件で笑いが込み上げてきてしまう。今の自分のように……。 「あ~~っっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!! ヒギャアァァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! ぐるじぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひ!! や、や、やめへぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、んぎぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、くはははははははははははははははははははははははは!!」 傍目に琉姫は“くすぐられている”というより“嬲られている”という表現がしっくりとくる。 1人、2人に楽しくコチョコチョされているなどという生易しい場面ではない。 集団からリンチを受けている……そう言われればこの状況の悲惨さが少しは伝わる事だろう。 「いぎぃっぃひひひひひひひひひひひひひひひひ、ゲホッ!! はひ、はひぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ゲホゲホッ!! くはぁ、はぁ、んはは! んははははははははは、いひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! えぎひぃぃぃはははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」 部下の一人……優しい目をした髪の長いお姉さん肌な雰囲気を持つ彼女は、琉姫の背後に回り先程の楓と同じように腋の伸び切った窪みをコチョコチョと掻き毟ってくすぐり続け、逆に意地悪な目をした短髪の女性は正面に回り、琉姫と同じようにステージ上で膝立の格好になって顔を眺めながら脇の下である胸横を親指と人差し指だけで揉みほぐしながらくすぐる。 更に上半身にはもう2人攻め手が居て、子供っぽい目とピンク色の髪特徴的な女性と髪が腰まで届くほど長い大和撫子な女性も琉姫の身体の横に中腰に座って手を伸ばしている。 片手で脇腹の薄肉を摘まんでグニグニと揉み込んでくすぐったり、上着の中に手を突っ込んで背中の敏感な神経をフェザータッチでくすぐったり……首の後ろを撫で上げたり……琉姫が敏感に反応する箇所をその都度探しながら様々な手でこそばしていく。 そして残りの2人は春奈と入れ替わる様に足裏に陣を取り、片足をそれぞれ1人ずつ担当しながら両手で集中的に足の裏をイジメ抜いている。 左の足にはメガネを掛けたポニーテールの女性が陣取り、足の指先から指の付け根までを指先でゆっくりじっとりねっとりとこそばし続け、右足には青いツインテールの髪をしたいかにもツンツンしてそうな女性が不機嫌そうに陣取り、土踏まずの中心を爪の先でガリガリと荒く引っ掻いてくすぐっている。 6人それぞれのくすぐりはどれを取っても琉姫を笑わせるに十分な刺激を与えている。先程までの2人の責めが児戯であったかのように……まるで先鋒戦であったかのように比べ物にならない刺激を与えられ無理やり笑わされていく。 休みなく身体中から送られてくる“くすぐったい!”という刺激に延々と笑わされる事がどんなに苦しい事なのか……どんな例えを用意しようと伝える事は難しいだろう。 敢えて分かりやすく例えるなら、水中に顔を付けさせられて無理やり溺れさせられる……そんな苦しみが延々と続く感覚。そこに笑った際に肺や胸筋、横隔膜がズキズキ痛む辛さもプラスされる地獄のような苦しみ。 そう、まさに地獄なのである。 一言で言い表すならば“地獄”という言葉が相応しい。 「あはぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、いへひゃぁぁぁははははははははははははははははははははははははははははは、ぐるじぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひ!! んきひゃあっぁぁぁあぁぁははははははははははははははははははははははははは、ゲホゲホ!!」 「はぁ~い、ストップ♥ 少し休ませてあげなさい♥」 そんな地獄にも救いの一声が差し込まれることが有る。 「あひぃ、はひぃ、はひぃ、はひぃぃぃ!! はひ、はひ、はひ、はひぃぃぃ……」 咳き込みが激しくなりすぎて本当に窒息しかけるとこの声が地獄のくすぐり責めを止めてくれる。 「はい、もういいわ……続けて♥」 その僅かな小休止が琉姫を窒息させないためだと分かっていても、彼女はその言葉に希望を見てしまう。 もしかしたら長く休ませてくれるかも……とか、もしかしたらやめてくれるんじゃないか? とか……。 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ。こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!! 「んぶひゃっっっっ!!? いぎゃああぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、えびひゃぁあぁははははははははははははははははははははははははは、ギャハァアァァァァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」 しかし、そんな希望は笑いと共に吹き飛んでしまう。どちらかというと休憩を入れられるだけ辛さが増していっているとさえ思ってはいるのだが、延々と笑わされる地獄の中でフッと訪れる笑わなくていい瞬間があると思うだけでやはり期待してしまう。もしかしたら終わってくれるかもしれない……という希望を……。 「ねぇ、春奈ちゃん?」 「何です? 先輩……」 「彼女ってば……ホント臆病な子よね?」 「臆病……ッスか?」 「えぇ……だって、こんなにくすぐりが気持ち良くなるお薬があると言うのに……使われるのが怖くて拒否しちゃうのよ?」 「なんで……拒否しちゃうんでしょうかね?」 「そりゃ……これが違法薬物って思っているから……でしょうね♥」 「違法は……ヤバイッスよね~~? それを取り締ってる課から来たんスから……」 「でも、違法は違法でも、精製過程が禁止されているだけで……薬効についての違法性はないと自負してますわ♥」 「そうだったんすか?」 「だって……幻覚が見えるわけでも、幻聴が聞こえるわけでも……目が冴えるわけでも、元気になる訳でもないんですのよ? ただ……くすぐりが気持ち良くなるだけ……笑いたい衝動が抑えられなくなるだけ……。突き詰めれば媚薬と同じ極めて健全な効果だとは思わなくて?」 「う~~ん、でもこの薬……癖になって中々やめられないっスよ? そういうのなんて言いましたっけ? ほら……依存性が有るとか無いとか?」 「う~~ん、それを言われると麻薬と言われても否定できなくなるわね。まぁ……商売の特性上繰り返し使わせるのが大前提だから……麻薬を混ぜてその依存性を高めたのは……事実ですわ♪」 「でも、媚薬が殆どを占めているスよね? その薬……」 「そう、過去に流行った合法の媚薬を調合して神経過敏と神経痒麻痺を引き起こす成分だけを伸ばした特殊な製法で作りだしたクスリですの♥ そこに依存性のある麻薬をちょびっとだけ混ぜてたりもしているんだけどね……」 「麻薬が入っているんじゃ……違法確定じゃないっスかぁ~~」 「フフフ♥ でも依存性が現われるのは“くすぐられたい”っていう世にも奇妙な反応だけなのよ? そんなの……違法薬物として認定されるのかしら?」 「まぁ……違法でしょうね。使ってる薬物が特殊過ぎですもん……」 「でもね、今日から違法じゃなくなる予定よ?」 「えっ? 何でです??」 「だって……その為に琉姫ちゃんをおびき出したんですもの♥」 「あぁ……そういう計画だったんスか……」 「彼女は絶対に最後にはコレを欲しがるハズ。そしてそれを実体験して貰えば分かるはずよ? この薬が合法だって……」 「合法だと言わせるんスね? 薬漬けにして……」 「ううん、私はあくまで頼まれたら薬を求められただけ注射してあげるだけ♥ 後は彼女がどうするか次第ですわ……」 「少しでも使ったら結果は見えてますけど……まぁ、そういう事なら早く“使いたくなる様”に仕向けたいっスね……」 「ウフフ♥ 慌てなくても時間はたっぷりあるわ。ゆっくり植え付けていってあげましょう? くすぐりの恐怖も……快楽も……ね……」 身体のラインが埋もれてしまうくらいの指に這い回られている琉姫に、笑いを休ませてもらえる隙は存在しない。 いくら涙を流そうと大汗をかこうと……唾と涎で口元が汚れようとも……琉姫の口は笑いを吐き出し続ける。琉姫の顔は苦しそうに笑ってしまう。身体は拒否するように嫌がっているのに、ゲラゲラと……情けない笑いが止めどなく口から溢れ出してくる。 やがて琉姫は自分でも分からなくなってしまう。 今自分は……なぜ笑っているのか? 何故苦しみながらも……笑ってしまっているのか? くすぐったいだけだからなのか? それとも、この状況が可笑しくて堪らなくなってきているからなのか? もはや分からない。どうして笑ってしまっているのか、自分でも分からない……。 その自問した答えは永遠に出る事はないだろう……。 何故ならば…… 今の今まで、自分の意思で……笑えていないのだから。