笑うPT研究クラブ活動日誌#3:②
Added 2020-06-03 08:13:45 +0000 UTC2:捕えられた古峯井明日香 完全下校時刻になる直前まで耳が痛くなる程理子先輩の罵詈雑言を聞かされた私は、部長の「時間だから戸締りするぞ」という言葉に救われ、どうにか当日付の折檻拷問は免れた……。 でも、理子先輩は帰り際に「明日、殺すから……」と、怖い置き言葉を残して部室を後にしたため、私は明日は病欠しようと心に決めながら部室の後片付けを綾ちゃんと一緒に始めた。 後片付けと言っても、綾ちゃんの汗と……何やらねっちょりした液体がこびり付いた拘束椅子を拭くだけなのだが……私は濡れタオルを持つ手を何度も止めて明日の休みの言い訳を頭の中でいくつも巡らせ、どれが一番言い易いかとかをあれこれ考えていた。 そんな最中、不意に綾ちゃんが私にとんでもない一言を放ってくる。 「明日香ちゃん♥ あしたは私も明日香ちゃんの事イジメちゃってもいい?」 あまりにもとんでもなさ過ぎて頭に巡っていた100余りの言い訳も一瞬で吹き飛び、脳内で反射的に生まれた感嘆詞をそのまま口に出してしまう。 「んへっっ!!? な、な、な、何言っちゃってるの! 綾ひゃんっっっ!?」 大人し目なベイビーフェイスからは想像できない“イジメちゃってもいい?”という直接的な言葉! 私は思わず勢い余って“綾ちゃん”と言う所を噛んでしまって“ひゃん”と舌足らずに口から出してしまう。 そんな慌てた様子を見た綾ちゃんはクスクスと小さく笑って可愛い笑顔を私に見せた。 その笑顔は天使のように可愛く……小夜子先輩のお気に入りになるのも何となく頷けてしまう。 「だって……今日の私のお楽しみの時間が明日香ちゃんのせいで減っちゃったんだもん♥ 責任は取って貰わないと……ね?」 お楽しみの時間が減った……と彼女は言った……。 お楽しみとは……あの、理子先輩のくすぐり責めの事だろうか? 確かに最後の方は私への暴言やら苛烈した叱責やらで綾ちゃんへの責めは止まっていた……。それを彼女は“お楽しみ”と思っていたとでも言うのだろうか? だとするならば、あの本気で嫌がって……本気で止めてと叫んでいた言葉は……理子先輩にもっと責めさせるための煽り言葉だったのだろう。 ドMとは……本当に恐ろしい……。 「い、い、い、いやいやいや!! だったらほら……私の方から頼んであげるから! 綾ちゃんをくすぐって貰えるように理子先輩とか小夜子先輩とかにっっ!!」 「えぇ~? それは無理だと思うよ? だって……理子先輩、顔を真っ赤にして怒っていたし♥ 明日は明日香ちゃんの事で頭いっぱいだと思う♥」 「うげぇぇ! そ、そ、そんなに怒ってたの? 背中越しだったから顔が見えなかったんだけど……」 「うん♥ もう……顔が般若のお面みたいになって、おでこに血管が浮き出てたよ? 口元もピクピクしてたし……」 「本気だぁぁ……先輩……本気で怒ってるぅぅぅ……うぅぅ……」 「いいなぁ~~♥ 私もそういう風に煽ったらもっと苦しめるのかなぁ? 今度試してみよっと♥」 「うぅ……どうでも良いけど……綾ちゃんてさ……」 「はい?」 「結構……性格悪いよね? 腹黒いというか……なんというか……」 「あっ! ひっどぉぉい!! 違うもん! 綾は欲望に忠実なだけだもん!」 「なんで煽る必要があるのよ~~。理子先輩のくすぐり……苦しいでしょうに……」 「だから良いんだよぉ♥ あの死んじゃうかもって思えるくらい酸欠に苦しめられている瞬間が後々思い返すとキュンとなっちゃうの♥」 「ドMって……なんかお得よね? そんな風に考えられるんだから……」 「綾はたまたまそこに気持ち良さを見出しただけだよ♥ 明日香ちゃんもMになったらいいじゃん♥ そしたら拷問されても後で気持ち良くなれるよ……」 「気持ち良くなれるのは後なんでしょ? 拷問されてる時は苦しくて辛いじゃん……」 「それも良いんだよ~~。後の快感の為に今耐えているんだって思えると、死ぬほど辛い事も気持ち良くなってくる♥」 「はぁ……。やっぱり羨ましいわ……その性格……」 「やだ♥ 性癖ってよんでよぉ♥」 「ほんと……たわけた娘だねぇ……。綾ちゃんは……」 「ウヘヘ♥」 そんな他愛ないやり取りを数分程行い……部室の掃除まで終えた私達は、部室の鍵をしっかりと閉めそのカギを持って鍵の保管場所である生徒会室を訪れた。 完全下校時刻20時30分になる前に部室の鍵を生徒会室の奥ばった所にある棚に入れて返却する……うちの学校ではそういうルールになっている。 「失礼しまぁ~す」 電気の付いていない薄暗い生徒会室の扉を少し開け、私は顔だけを覗かせ中の様子を伺う。 廊下も電気が付いておらず薄暗い上に、誰もいない生徒会室も暗くて不気味ときた……。怖いものが苦手な私にとってこの微妙に暗い無人の部室程恐ろしいものは無い。 こんな事なら綾ちゃんにカッコつけて「先に返っていいよ」なんて強がりを言わず一緒についてきてもらえばよかった……。そんな後悔を抱きながら生徒会室の電気を手探りで探す。 ――カチッ! ボタン式のスイッチに手が当たりようやく明かりをつける事の出来た私はホッと息を吐き、いざ鍵を返さんと意気込んで扉を完全に開き切る。そして生徒会室に一歩足を踏み入れた瞬間、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。 「うひゃぁぁぁぁっっっ!!?」 心臓が飛び出るかと思う程ビックリした! 誰もいないと思っていた生徒会室の片隅にまだ残っていたのだ! 人がっ! 「何です? 変な声を上げて……」 部屋の隅にある机に存在感を消すかのようにPCを打ち込みながら溜息交じりの声を零すメガネを掛けた女性……。 彼女には見覚えがあった。そう……たしか副会長だ。 生徒会長を説得しに行ったあの日……隣で黙々とキーボードを叩いて我関せずと言った態度で仕事をしていた彼女……。彼女が詩織さんの片腕であり優秀な助手なのだと綾ちゃんも言っていた。 「はぁ、はぁ……か、鍵を返しに来ただけですよぉ~~」 「あぁ……完全下校時刻になっていましたか……気付きませんでした……」 「な、何でこんな真っ暗にしてたんです? 私を驚かす為ですか??」 「はい? 何を言っているのか分かりませんが……」 「……??」 「電気……消されていたのですね? 気付きませんでした……」 どれだけ仕事に集中してれば電気が消された事も気づかない程のめり込めるのかっ!? 自分の感覚では計り知れない集中力を持った彼女に、若干怖さを感じた私はなぜか足音を立てないようにソロリと部屋へと入り、部室の鍵を静かに棚に治めて帰ろうとした。 「ところで……」 部屋から出ようとした私に副会長がボソリと聞こえるか聞こえないかの言葉を呟く。 私はその言葉を聞き取ろうと迂闊にも会長室の出口の前で立ち止まり彼女の方を向いてしまった。 「風紀委員長の水科 玲美(みずしな れみ)さんが、貴女に聞きたいことが有る……と仰られていましたが……」 「んへ? なんです? 私に?」 「そうそう……かくいう私も、貴女ではありませんけど貴女の所属する部員さんには用事があるのでした……」 「えっ??? よ、用事??」 「少し……お付き合い願います。今から……」 「っっ!? 今から?? 今からって――」 その言葉を零した瞬間、私の視界がグニャリと歪み始めた。 息を吸うために口を開けた瞬間、背後から何か布のような物を口に当てられその布に染み込んでいたであろう薬剤を思いっきり吸ってしまったのだ。吸い込んだ瞬間ピリッと痺れるような感覚が一瞬身体を駆け巡りその後急激な眠気が私を襲う。 身体の感覚は麻痺し痺れたように動かなくなり……頭の中は真っ白に……目の前は真っ黒に染まっていく。 「あへ? からりゃに……ちかりゃが……はいりゃな……い……」 私はそのまま、いつの間にか背後に居た小柄な生徒に身体を預けクタリと全身から力が抜けていく感覚を味わう。 遠くなっていく意識の最後に見た映像は……控え目に口元をニヤつかせる副会長と…… 倒れ込んだ私の顔を覗き込む……もう一人の小柄な生徒の顔だった。 理子先輩に似ているその小柄な生徒は、理子先輩そっくりないやらしい笑いを私に見せている。 まるで……これからの行為を……楽しみにするかのように……。