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笑うPT研究クラブ活動日誌#3:⑨

9:難攻不落の風紀委員長 「私の事を拘束するという事は……降参はしないと捉えても構わないわね?」  部室に入るなり私と綾ちゃんは指示通り玲美さんの腕をとって部室の中央へ付き添うように誘導する。  部屋の中央にはテーブルの上に乗った1台のテレビモニターと、そのモニターと向かい合わせになるように十字架の形をした金属製のオブジェが立てられており、床にはそのオブジェが倒れたり揺れたりしないよう太いボルトのような物で頑丈に固定されているのが見える。  十字架の足元には人が座るためのものであろう可愛らしいピンク色のクッションが備え付けられており、部長は玲美さんへその座布団の上に足を伸ばして座るよう指示を出した。 「フン! こんな重そうな拘束台を勝手に部屋に設置して……学校にちゃんと許可とってやってるんでしょうね? もし申請がなくてコレを持ち込んだんだったら、それだけでも即刻廃部処理にしてやるんだから!」  クッションに腰を落とし、言われるまでもなく十字架の柱に背を預け脚を投げ出すように伸ばして見せた玲美さんは、自分の頭よりも更に上に位置する十字の両端を見上げて脅すような口調で語調を強めた。 「勿論許可はとっていますとも……愛崎先生に聞いていただければ分かると思いますが……」 「愛崎先生? なるほど……あんた達ってば、先生まで毒牙にかけているんだったわね? あの先生なら気が弱そうだしさぞかし操りやすいんでしょうね?」 「ハハ……操るなんて人聞きの悪い……。我々は“お願い”をしに行っただけですよ? 愛崎先生は快く許可してくださいましたがね……」 「嘘つきなさい! 貴女達が教員たちの弱みを握ってクラブの言いなりにさせているという情報……私が知らないとでも思っているの?」 「弱み? はて……何のことやら……」 「くっっ!!」  実際、小夜子先輩のリサーチ力はかなりのもので……生徒に限らず先生や学園長のプライベートに至るまで大小さまざまな先生を彼女は有しているらしい。 そういう情報を使って先生たちに“お願い(という名の脅し)”をしに行くのはいつもの事で……私達が職員室へと出向くだけでピリッとした緊張が先生たちの間で走るらしい。 今回の事も、恐らく許可を無理やりおろさせたのだろう。部長が悪い顔をして笑っているし……まぁ、間違いない。 「あ、あの……玲美さん? 申し訳ないんですけど……靴と靴下を脱がせても……よろしいですか?」  私が恐る恐るそのように伺いを立てると、玲美さんはこれでもかというくらいに目を吊り上げて怒りの表情を私に向け……。 「私に触るな! 何をするかくらい分かってるんだから、自分で脱ぐわよ!」  と強い口調で私に怒鳴り、伸ばしていた脚を折り曲げて自ら靴を雑に脱ぎ不機嫌そうに部室の隅へと放り投げた。 「おやおや……いけませんなぁ……風紀委員長ともあろうお方がこんな風に靴を投げ捨てるなんて……」  部長はゆっくりと投げ捨てられた2足の革靴を拾い上げ、パンパンと埃を払うような仕草を見せるとその靴を座っている玲美さんの横に並べるように綺麗に置いてあげた。 「フン! 私は先生たちとは違うわ! 貴女達にどんな秘密を握られていようと決して屈しはしない! どんな責め苦にだって耐えきって見せると約束してあげるわ!!」  かなり語気を強めながら部長を睨みつける玲美さんは、その言葉を裏付けるかのように自身の黒いハイソックスを自分の手でおろして脱いでみせ、再び抵抗することなく脚を伸ばして座りなおした。 「ほう……流石は風紀委員長殿だ。肝が据わっておられる……」  ハイソックスを脱いだ玲美さんの素足は色白で細くて引き締まっていて……私はついついその生足に目を奪われてしまっていた。  すると綾ちゃんが私の脇腹を小突きながら……『明日香ちゃん! ほら、言われた通り拘束! するよ!』っと、木製の横に長い1枚板を私に手渡して次の行動を促してくれた。 「あくまで降参はしないという事だったら……その後この部がどうなるかそこの明日香さんから聞いているわよね?」  その渡された板には2つの穴が開いており、その穴に何を通すのかを語らずとも悟れてしまうほどあからさまな造りをした枷である事を玲美さんに見せつける。 私はその1枚板をパカっと映画のカチンコのように開いて見せ、板の下部分を玲美さんの足首部分に合わせて位置を調節し、彼女の足首をそれぞれ板の穴部分へと誘導して決められたポジションに足を置かせ上の板を戻す様に降ろして彼女の足を拘束した。 閉じた板はすぐさま備え付けの金具で上下がセパレートしない様に固定し、その状態で床にもあらかじめ備え付けられた万力のような固定具に板をはめ込みレバーを巻き取ってその板を万力で挟み込み床に固定した。 板の穴は彼女の小さくて華奢な足先が通るほど大きくはなく、どんなに足を狭めて抜けさせようとしてもその穴から抜け出すことは出来なくなっている。 だから彼女の素足は今まさに私の手で自由を奪われたのだ。これから何をされようと、この固定された板が外れない限りは……もしくは板を上下にセパレートしない限りは逃げられない。 彼女の意志で足を動かすという行動は著しく制限され、出来る事と言えば足の指をジタバタと動かして踊って見せる事くらいのものである。 「えぇ……ちゃんと聞き及んでおりますよ。でもそれは我々が負けを認めた時の話でしょう? ご安心を……我々は負けたりしませんので……」  足首を固定するように拘束しただけでは実は足の拘束はまだ完了していない。  “徹底的”にくすぐりへの抵抗を無くすためにさらに次の拘束が施される。  それが“足指の拘束”。  私に代わり綾ちゃんがその拘束を担当するのだが、彼女は針のように細いワイヤーを複数本所持しており、それらを板の表側の金具に慣れた手つきで結んでいく。  そして結び終わったワイヤーを足裏側へと上から板の上部を跨ぐように回し玲美さんの細くて美しい足の指くるりと巻き付け輪っかにしたワイヤーの根元をキュッと小さなクリップで固定し足指をまるで西部劇の投げ縄の様に巻き付けて捕まえた。そして改めて表側の金具をクルクルと回転させると、ワイヤーが巻き取られるような形となり……足指に巻きついたワイヤーの輪を引き上げていく。  こうする事により、足の裏は足指を引っ張られる格好となり土踏まずの窪みさえも平たくなるかのように引っ張られ、いよいよ完全に動きを封じられる格好にさせられる。自由を奪われたどころか……足裏を強調するように磔にされているからいざ触られる段になればその刺激から一切逃れることも抵抗する事もできない。私であれば拘束された段階で刺激を想像して発狂するかのようにジタバタと暴れ散らかしそうなものだが……玲美さんは至って冷静で、余裕のある笑みさえ浮かべている。本当に自信が有るのだろう……くすぐりは効かないと豪語していたのだし……。 「聞いていたのだったら……私がくすぐりに強いというのも聞かされているんでしょ? 彼女から……」  私達が拘束するのを不快に感じているのを隠しもしない睨み顔でキッと私を睨んでそのように発する彼女に、部長はそっと目をつぶってゆっくり首を縦に振って見せた。 「勿論……聞き及んでおりますよ。正直、驚きを禁じえませんでしたがね……」  まるで足裏の標本でも作っているかのように5本の指それぞれの関節部分にワイヤーの輪っかを掛け、板に足の甲が密着するよう少し強めに引っ張りながら固定していく綾ちゃん。右足の拘束が終わるとすぐさま同じように左足の指にも輪を掛けていき彼女の足裏をこれでもかと言わんばかりに無防備な格好へ仕立てていった。 「だったら、こんな拘束も拷問まがいのお遊びも必要ないでしょう? 無駄なのだから……」  足の拘束をされている最中は素足を触られているにもかかわらず玲美さんの顔はピクリとも反応を見せず、確かに触られることに強いのだと態度で証明をして見せている。  部長はその様子を鋭い目で観察しつつ彼女の言葉に返事を返した。 「いえいえ、確かに人によってはそういう刺激が効きにくい人も居る事には居ますが……全く効かない人間というのは聞いたことが有りません。これでもうちの理子はそういう効きにくい相手でもしっかりと笑わせられるよう訓練を積ませていますので委員長にも必ず効果があると自負しておりますよ」 「へぇ……随分と自信が有るのね? 私を笑わせるですって? それは楽しみだわぁ~♪ とっても……」 「委員長こそ拘束されているというのに自信満々ですね? 何やら秘策でもお有りなのですかな?」 「さぁ、なんの事かしらぁ? ところでこんな無駄話をしていていいの? 土曜の完全下校時刻は平日と違って18時と短いのよ。それまでに私を屈服させられなければ、翌週から貴女達は地獄を見ることになるけど……」 「……そうですね。本当はもう少し“時間”を掛けてから本番に入る予定でしたが……確かに我々には完全下校時刻という限界が存在します……。そろそろご挨拶程度の責めくらいは行っておかないといけませんね……」  足の拘束を終えた私と綾ちゃんは、そのままの流れで玲美さんの上半身の拘束も終わらせるべくそれぞれ彼女の手を取って十字架の横棒に合わせて手を上げさせていく。  玲美さんは拘束されることを嫌がるそぶりも見せ腕の力を抜いて手を上げ易くすらしてくれている。  私と綾ちゃんはその協力的な玲美さんの腕を斜め上に上げさせ手を広げた万歳の格好に仕立て上げる。そして、十字架の横端に備え付けられた手首用の枷ベルトに手を通して腕の拘束も終え、玲美さんの手足の自由を完全に奪い去る拘束を完了させた。 「これで満足かしら? ほら……貴女達が大好きな足の裏とかワキの下とか無防備になってあげたわよ♪ 自由に責めてみたらいいじゃない? どう足搔いても無駄だって……すぐに分かると思うから……」  部長は腕時計で時間を確認すると、フゥと息を一つつきながら理子先輩へ頭を頷かせて合図を送る。すると理子先輩は小さく「了解」と言葉を零して脚の高い丸テーブルの上に置いてあった“道具”を手に取り玲美さんの足の方へとゆっくり歩いて行った。 「流石は風紀委員長さんね……足の爪に至るまで綺麗に手入れされているじゃない……」  足指すらも磔にされた足裏をネットリとした視線で眺めつつ、理子先輩は彼女の足元へと辿り着き……そしてその場にドスンと胡坐をかいて粗野に座り込んだ。 「先日はあんな汚い字の果たし状をどうも有り難う。内容を読み取るのに随分と時間をかけてしまったわ……あの字の汚さも貴女の作戦の一部だったんでしょう? だって高校生にもなってあんな幼稚な文字の書き方を好んでするわけないものね?」  字の汚さを指摘され理子先輩の顔が明らかにムッと険しい表情に変わる。  普段から字の汚さを指摘されるのを嫌っている理子先輩は、活動日誌などの字を書く系の仕事を全部私達に丸投げするほどに書くのが苦手なのだ。そんな事情を察しているのかしていないのか……玲美さんはこれから自分を責めるであろう理子先輩をわざとらしく煽って不機嫌にさせていく。そしてそれに応えるように理子先輩の表情はみるみる険しくなっていく。 「あんた……玲美さんだっけ? 私の事をそんなに煽って大丈夫なわけ? そんなこと言われたら……どんなに泣き喚いてもこの手が止まんなくなるかもしれないわよ?」  理子先輩の右手には普通の物の倍ぐらいはある大きなフォークが握られてある。持ち手の部分は鉄でできている風に見えるそのフォークだけど、先端部分はアレを行うために改造されたであろう別の素材で出来ていた。  ウィンナーを突き刺したり、パスタを巻き取ったりする用途で使われるフォークの先端は小型のナイフのような半円を伸ばしたような形の鳥羽根がくっ付いていて……それが決して食事の席で使われるものではないモノであることを無言で訴えかけている。  4つ股に分かれたフォークの先端はそれぞれに同じような白い羽根が取り付けられていて、その羽根もちょっとやそっとの風にもそよごうともしないしっかりとした固さのある羽根であることが遠目にも理解できる。  あの羽根フォークでどういう責めをこれから行うのか……想像したくなくても想像できてしまう。  きっと等間隔に4つ分かれしたあの羽根達を、曲げることもくっつける事も出来なくなった指と指の間に忍ばせて……彼女の無防備な足指の股部分をコショコショするつもりだ。そう想像するだけで私の下腹部が勝手にムズムズと落ち着かない痒みに襲われ始めた。もし自分がやられたら……と、想像するだけで……受けてもいない刺激を感じてしまい思わず悲鳴を上げてしまいそうになってしまう。 「発育の悪い“お子様体型”の貴女に言われても……全然怖くはないわ。やりたいんだったらさっさとヤれば良いじゃない」  見た目にも寒気を催すその4つ股の羽根フォークを見ても玲美さんは何も変わらず涼しい顔をして理子先輩を更に煽っていく。正直……理子先輩のテクニックや非情さを理解している私からすれば、彼女を煽るという行為は愚策でしかないと思える。彼女を無駄に怒らせたからといって受け手に利点など一つもないのだ……まぁ、しいて利点を挙げるとするならば自己満足くらいは出来るか……。  理子先輩は感情的に動きやすいから、煽れば煽るほど子供の様に怒って……見ていて面白いというのは確かにある。 「ふぅ~ん、なるほど……強気で性格が悪いって聞いてはいたけど……まさかこれ程とはね」 「性格が悪いのはお互い様でしょ? それよりも早くヤってくれない? 退屈だし貴女と話をしてても時間の無駄だわ……」 「っく!? 私と話すのが時間の無駄ですって? 言ってくれるじゃない! いいわ……そこまで言うんだったら――」  お子様バーサス余裕あるお嬢様といった様相の煽り合い合戦は拘束されてもなお強気に上から目線の玲美さんにひとまず軍配が上がってしまう。未発育代表である理子先輩は玲美さんの煽りにジト目気味の目を更に細め、眉を吊り上げ顔なんてリンゴの様にを真っ赤染めてワナワナと腕を振るわせながら手に持った2本の羽根フォークの片方を左手にも持たせそれを彼女の無抵抗な素足へと運び責めの為の構えを取った。  等間隔に4つ分かれた羽根の腹が丁度足指と足指の間に入り込むよう差し込み、指の股部分に羽根が触れたのを確認した瞬間理子先輩は有無を言わさずその羽根フォークをゆっくり足裏方向へ引くように動かして指の股をくすぐり始めた。 「どう? このPT研特製の羽根フォークのお味は……。指の股を細かい毛先でカサコソされるのはこそばくて堪らないでしょ?」  羽根が触れた瞬間一瞬ピクリと眉を動かして反応を見せた玲美さんの表情を見て理子先輩は口角を上げてあのいやらしい笑みを浮かべる。いつも私を責めながら浮かべる優越感に浸ったあのいやらしい笑み……正直、物語の悪役が浮かべそうなその笑みを彼女は隠すこともなく表情に起こす。そのしたり顔をやられると……私でなくても必ずこう強がってしまう。 「ふ、フン! 触られた感触に驚いただけよ! こんなもの……触られている場面を見てさえいなければどうという事はないわ!」  見ているだけでゾクッと寒気を生みかねないこそばゆそうな羽根の形……それを足指の股の間に差し込まれコショコショとくすぐられているのだ……反応するなと言われても反応してしまう事はおろか私なら即笑い狂ってしまう所だろう。  でも玲美さんは最初こそ羽根のおぞましさに顔をひきつらせたように見えたが、その羽根を見ないよう目を瞑るとその後は一切刺激に反応する姿を見せなくなった。   「くっ!! あんた! やせ我慢はしなくていいからさっさと笑いなさいよ!! ほら! 足指の股を同時にこそぐってるのよ? 笑いが込み上げて仕方がないはずよ! 早く笑え! ほらっ!!」  玲美さんは目を瞑ったまま口元をニヤリと歪ませる。その笑みを浮かべた顔は決して理子先輩のくすぐりに対する反応では決してない。自ら余裕をもって歪ませている笑みだ。   「あら……まだ私の足に何かしているの? フフ……私ってば不感症だから触られている感覚すら感じないわ♥」 「っく!? 不感症? 嘘つけ!! 羽根が触っている感覚ぐらいは感じるでしょうが!! 素足にひん剥いてくすぐってるのよ? ちゃんと反応を返しなさいよっ!!」 「無駄よ、無~駄♪ 言ったでしょ? 私にくすぐりは効かないって……。どんな事をされてもクスリとも笑ってなんかあげないわ。まぁ可哀そうだから嘲笑くらいならしてあげてもよくってよ?」 「ふざけるなっ! くすぐりの効かない人間なんて居るもんか! どうせ足の指が効かないだけでしょ? だったら……最初から本命を責めてやるわ!! コッチは指股の比じゃないわよ。今度こそ無様に笑い狂いなさいっ!!」  理子先輩の口調は汚くなる一方だが表情には戸惑いと焦りの色が濃く映し出されている。きっと初めてなのだろう……自分の得意としている責めが一切効いていない風に見えるのだから……。  でも、見ているだけで寒気を催すようなあの責めに……玲美さんはどうやって耐えているんだろう? いくらそういう刺激に強いと言っても素足に直接触られている以上悲鳴の一つでも上げてもよさそうだ……少なくとも彼女の様に顔色一つ変えないで話をする余裕があるのは異常だ。私だったら笑うどころか悲鳴を上げていてもおかしくないというのに……。 「ほら! 足の裏でココが弱くない奴なんて絶対にいない筈よ! この限界まで引っ張りあげて窪みさえ真っ平になった土踏まずっ!! ココをこの羽根の先端達をほんのちょっとだけ触れさせてゆっくり上下に引っ掻いてあげるっ! 堪らないわよ~? 足裏を羽根の先端でゆっくり引っ掻かれる感触は……。いくらくすぐりに強いっていうあんたでも、ココを責められれば死ぬほど笑い狂うことになるわ! 覚悟なさいっ!!」  理子先輩は足指の股を触らせていた羽根をそのまま足裏側へと動かしていき、なぞるように母指球と小指球の膨らみの上へと移動させるとこれから攻め込むぞと言わんばかりに土踏まずの窪みを眼下に収めながら丘の上へと待機した。  先程まで強気な態度を取っていた玲美さんも、理子先輩の責め言葉によって想像を掻き立てられたのか浮かべていた笑みが若干こわばり、口元もキュッと奥歯を噛んでいる風に固く閉じられた。  正直、羽根が今の場所までなぞっていったという工程だけでも笑ってしまっても然るべきだと私は思うのだけど……やはり彼女は我慢強いのか声の一つも零さなかった……。  でも表情を曇らせたという事はこれから責める箇所は流石に効いてしまうのだろう……。だって足裏の中でも土踏まずの箇所は誰だってくすぐったく感じるに決まっている。身体のどんな敏感な神経を刺激してもこの場所の狂おしい程のこそばゆさには勝てない気がする。指で触られるだけでも反射的に笑いが込み上げてきて我慢なんて出来ないのが当たり前なのに……理子先輩の持っているあの羽根はその何倍もヤバイ刺激を送り込むに違いない! ナイフの刃のように曲線を描いた形に整った細かい羽根の毛先……その毛は摩られた時の乾いた音を聞くだけでも反発力やしなやかさが強いのが分かる。そんな毛先でなぞられると想像するだけで……もう気が狂いそうになる。可笑しくもないのに想像だけでも笑いが込み上げてきてしまう。  哀れな玲美さんの足の裏……。  彼女の足は逃げられない。あの絶望的にこそばゆいであろうフォーク型の羽根に、刺激に最も弱い土踏まずを引っ掻かれようとしているのに一切逃げられない。足首の枷と足指の枷によって限界まで反らされた完全無防備な土踏まずに4つの等間隔に生えた羽根が今まさに触ろうとしているのに……玲美さんは逃げられない。どんなに絶望的なこそばゆさに晒されることになっても……そのこそばゆさに死ぬほど笑わされる事になっても……玲美さんはもう逃げられない。 「さぁ、こちらの準備は整ったけど……強気な風紀委員長さんの方は覚悟は出来たかしら? 触られる前からもう想像だけでこそばくて仕方がないでしょ? これからその想像以上の刺激を貴女に与えてあげるわ♥ せいぜい必死に口でも閉じて少しでも笑うのを我慢する事ね……まぁ、無理だろうけど……」  理子先輩の左右の羽根フォークが玲美さんの土踏まずの直前で動き出すのを今か今かと待っている。その焦らすような待機時間に玲美さんの足は小刻みに震え何度も息をのむようにゴクリと唾を飲み込んでいる様子が伺えた。 「あ、足裏だろうが土踏まずだろうが……さっさとヤればいいじゃない! 私は絶対に笑わないわ! 絶対に……」  心なしか声も怯えるように震えて聞こえたが、玲美さんはすぐに口先を尖らせてプイっと横を向きまた目を閉じた。  目を閉じてしまえば視覚を遮断した分触覚の方がより鋭敏になってこういう刺激には俄然不利になるとは思うのだけど……玲美さんはさっきも目を閉じていた……まるでくすぐられる瞬間を見ないようにしているかのように……。 「じゃあ遠慮なくいかせてもらうわよ? まずは挨拶程度に……上下に大きく3往復くらいしてあげるわ♥」  理子先輩がそういうと、左右の土踏まずを狙っていた羽根フォークたちは「待ってました」と言わんばかりに羽根先を足裏の皮膚に擦り付けながらズズズっとゆっくりかかとへ向かって下降を始める。  そして土踏まずの窪みに羽根が触れた瞬間! 「……………………」  てっきり玲美さんの我慢が崩壊してけたたましい笑いを上げると想像していたけど……。彼女は吹き出すことはおろか……目を瞑ったまま顔色一つ変えずに無の状態を維持し続けている。  普通なら、大げさに身体をビクつかせたり、声の一つでも上げる場面であるとは思うのだけど……それすら無いというのは一体どういう事なのか?? 「っっく!? な、なによ! なんで声一つ上げもしないのよ! くそっ! いいわ、じゃあ手加減なんてせずに土踏まずのもっともこそばゆい箇所だけを責め立てて意地でも笑わせてやるんだからっ!!」  理子先輩のくすぐりには無反応だけど言葉責めは効くらしく、彼女のセリフにいちいち口元をピクつかせて余裕のない反応を見せていた。 「ほ~ら、土踏まずの窪みの横に外れた沿足部と窪みの中心を同時責めよ~♥ 窪みの中心もこそばいけど……その少し外側の土踏まず端の部分もこそばいでしょ? 特にこんな羽根の先でこんな風にこしょばされたらさすがのあんたでも笑いたくなるでしょ?」  まるでフォークの先端を突き立てるかのように羽根の先端を土踏まずの各所に押し当て、先端だけを小さく躍らせるようにコチョコチョと小さな円を描くように羽根フォークを操る理子先輩。 土踏まずの端から端までをそれぞれの羽根がコソコソと擦って責め立てる様子を見ているだけで私はお腹の底から想像笑いが込み上げてきてしまうが……玲美さんはそれでも声を上げない。 相変わらず理子先輩の言葉には反応を見せるけど、足裏の方は本当にくすぐったさを感じていないのか……刺激に対してそれ相応の反応を返すそぶりを全く見せない。 「ちょっ!? なんで無反応なのよ! ココをこんな風に触られたら普通は笑うはずよ? あんた、足の神経おかしいんじゃないの?」  自信のあった責めに対して変わらずの無反応である玲美さんに、理子先輩の方が顔色を青くし焦るように羽根の動きを乱雑に動かし始めた。  普段ならじっくり獲物をいたぶるようないやらしい攻め延々と繰り返す印象を与える理子先輩だが……くすぐりの効かない相手を目の前にしてさすがの彼女も焦りが生まれた様子。いつもよりもくすぐり方が雑になっているようにさせ見える。 「だから言ったでしょ? 私にくすぐりは効かないの♥ 今だって何をされているかさえ分からないくらいよ?」 「う、嘘よ! そんな人間いるはずがないっ!! ほら、かかとの方はどう? こっちの方が弱いってことはない? ほらっっ!!」 理子先輩の焦りは責め方に如実に表れてくる。全くの無反応を決め込んでいる玲美さんを少しでも反応させようと晒された足裏の全てを羽根先で雑に引っ掻き回し、僅かな反応を見せようものならそこを集中的にこそぐり回そうとする。でもその僅かに反応した箇所は理子先輩をあざ笑うかのようにその後の玲美さんの反応を薄くさせていく。まるでわざと反応を見せてそこへ誘導した罠であるかのように。 「よし、理子。もういいぞ。初手は残念ながらうちの負けだ……いったん手を引いてくれ……」  素人の私でさえ理子先輩が焦っている姿が丸わかりだったのだから部長もそれに気づいていない筈がない。だから“玲美さんへの責め手”が無駄であると判断した部長はすぐさま理子先輩に手を引くよう指示を下す。 「……で、でも部長! まだ弱点も何も分からないままですよ? このまま辞めてしまうなんて……」  理子先輩は渋々羽根を足裏から撤退させていくが、自分の役割でもあったはずの“弱点探し”が空振りに終わったことが大層悔しかったようで子供らしく頬を膨らませて涙目で部長に反論の言葉を零している。 「いや、多分……今はどれだけ頑張っても委員長殿を笑わすことはおろか反応を伺うことも困難だろう……確かに彼女の言う“くすぐりは効かない”という話は真実のようだ……」 「フフ♥ やっと諦めてくれたかしら? だから言ったでしょ? 最初から貴女達に勝ち目なんてなかったの♥ さぁ大人しく私たちの軍門に下りなさい? 今ならまだトイレ掃除と登校挨拶くらいで許してやってもよくってよ?」  責め手が引いたと分かった玲美さんは閉じていた目を開き余裕たっぷりの表情を浮かべて私たちに敗北を認めるよう促し始めた。  確かにアレだけ理子先輩がくすぐっていたにもかかわらず彼女は涼しい顔をして耐え忍んでいた。いや、正確には耐え忍んでいたというよりも全く刺激を感じてさえいない風に私には見えた。くすぐったい刺激に免疫でもあるというのか? それとも足の神経が生まれもって機能していないとでも言うのか? 分からない……見ているだけで寒気さえ催させるあの羽根フォークのくすぐりを声一つ零さず耐えきるなんて私には絶対に出来ないから……彼女の感覚が分からない。なんだか化け物じみて見えてきた。彼女は人間以外の何かじゃないかと本気で感じるようになってきてしまった……たかがくすぐりという幼稚な行為だけど、その行為に自信を持っていた理子先輩はなおさらそう感じているはずだ。 「くすぐりの効かない相手に今はくすぐりで応戦しても無駄だろう……だからプランBで彼女を責め立てよう」  部長の言葉から出た“プランB”という作戦……もちろん私は何も聞かされていない。  多分、私の持ち帰った“くすぐりが効かない”という情報を信じてくれて急遽立てた作戦なのだろうけど……くすぐり以外で彼女をどう攻略しようというのか……私の16ビット以下の頭脳では到底計り知れない。 「あら……まだ何か用意してあるの? 無駄だと言っているのにご苦労さんね……」  部長は玲美さんの言葉を無視するようにそっぽを向き、机の上に置いてあったリモコンらしきものを手に取ってそれを玲美さんの目の前に設置されていたテレビモニターへ向けてかざした。  テレビのモニターはすぐに起動し、ぼやついた映像を少しずつ鮮明に映し出し始める。 「っ!? これは……別の部屋? それに……映っているのは……奈々!?」  そのモニターに映し出された映像は、ある部屋を斜め上の画角から撮影した風な映像で……その中央には頑丈そうな椅子にしっかりと拘束された風紀委員の和泉奈々さんの後ろ姿が映し出されていた。  そして……映像の上端に「LIVE」という生放送である旨を伝える文字が映し出されると、そのカメラの下からニョキっと笑顔全開の小夜子先輩の顔がドアップで生えてきた。 『みんなぁ~? 見えてる~? コッチは準備OKよぉ~~♥』  ドアップになった小夜子先輩はニコリともう一度笑ってカメラから少し距離を置き、奈々さんの椅子の背もたれまで移動するとそこでもう一度笑顔を浮かべなおしてこちら側に手を振って見せた。 「あぁ、小夜子。ばっちり映ってるぞ……」  奈々さんの座っている椅子の背もたれを掴んで、背を向けて座っていた奈々さんを横に向かせようと必死に椅子を90度回転させようとしている小夜子先輩に部長は映像がしっかり繋がっていることを彼女に告げた。 『映像研のぉ、人にぃ、手伝ってぇ、もらったからぁ……接続は簡単だったけどぉぉぉ!』  よいしょよいしょと椅子を少しずつ動かし、やっとのことで椅子を横向きに向けなおしてカメラに納めさせた小夜子先輩はそれだけで息が上がってしまい背もたれに体重を預けて言葉の続きを出すのも忘れ息を整える仕草をした。 『はぁはぁ、最初から横向きに座らせておけばよかった♥』  横向きになったことで背を向けていた時よりもより多くの情報を私たちの視覚にもたらし、奈々さんがどのような格好で拘束されていたのかを如実にモニター前の玲美さんに見せつけた。  手はひじ掛けに合わせて置かされ手首の部分で革枷によって拘束され、胸のすぐ下にもベルトが巻かれ背もたれに背を押し付けるように固定されている。目にはアイマスクを装着され視界を奪われていて、口にはボールギャグを噛まされ……恐らく文句の一つでも言っているだろうけどその声はくぐもった唸り声にしかならず、ボールに空いた複数の穴からは声を上げようとするたびに唾液が垂れ彼女の制服の上着もスカートを自分で濡らしていた。 「まさか……人質までとる外道だとは思ってもみなかったわ……」  モニターに映っている部屋は“特撮映像研究部”という部の部屋だという事はすぐに分かった。部の活動を象徴するかのような小道具や着ぐるみがそこかしこにあり、怪獣映画にありがちなミニチュアのわざと壊された模型が背後に乱立していて分かりやすい。 「フフ……特撮映像研究部にはちゃんと許可を貰って撮影させて貰ってますよ。なんなら許諾証を見せましょうか?」 「フン! どうせ脅して書かせた書類でしょ? いいわよ見せなくても……。それよりも奈々に何かいかがわしい事をしたんじゃないでしょうね? 事と次第によっては貴女達の退学処分だって取り付けられるのよ!」 「大丈夫ですよ。今からうちの部の活動をするだけですから……委員長も見たでしょう? 縛られた部下の方の足がどうなっていたのか……」  奈々さんは最初カメラに背を向けて座らされていた。だから、椅子の脚の後方に縛られた彼女の“足”は最初の段階でどのように拘束されていたのか簡単に思い出すことが出来る。 「あなた達……私に効かないからって……まさか奈々の方にも同じことを?」  膝を空中で正座させているかのように折り曲げさせ、椅子の後方の脚に備え付けられた枷ベルトで足首を拘束し彼女の足を拘束している……。もちろんアレをやり易くする為に両足とも靴も靴下も脱がせた裸足の格好を強いて拘束してるため……足裏は玲美さん同様“無防備”に晒されている状態だ。 「私の情に訴えかけようって腹ね? 奈々の苦しむ顔を見せて私を屈服させようと……」 「そうですね……半分正解ですが、半分は別の目的があります……」 「別の目的ですって?」 「まぁ、それはいずれ分かる事でしょう。それよりもほら……ライブ中継が始まりますよ? 今度はちゃんと見てください? 目なんて……閉じずにね…………フフフ」 「っ!? …………くぅ……」  部長の最後の言葉に玲美さんは何かに気付いたらしく苦虫を噛んだような目で部長を睨み返した。  部長は彼女の秘密を何か知っている様子だ……。この無敵の風紀委員長のどんな秘密を握っているのか……私には想像もつかないけど……そうこうしている間に映像の中の小夜子先輩は着々と準備を整えていた。    理子先輩が使ったのと全く同じ……先端が4つ股に分かれた……羽根製のフォーク……それを1本ずつそれぞれの手に持ち……嬉しそうに奈々さんの背後に回っていやらしい目を彼女の足元に向けていた。  まるで……そこに美味しそうな獲物がぶら下がっているかのような目で……。


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