笑うPT研究クラブ活動日誌#3:⑩
Added 2020-09-02 10:47:47 +0000 UTC10:人質 「ふざけるなっっ!! これを解きやがれっスよ!! このっっ!! 卑怯者っっ!!」 口枷を外された奈々さんの第一声は私が想像出来うる喚き散らしだった。 「眠らせて縛るとかあり得ないっっ!! こんな卑怯な真似をしてタダで済むと思っているんスか!!」 私の事も眠らせて縛ったくせに……どの口がそんな言葉を吐いているのか……などと心の中で反論しながらもジト目になりながら映像の様子を見ている私だが、映像の中の小夜子先輩は彼女の言葉に耳など貸さない。口枷を外した後はそのまま彼女の足元におしとやかに正座の格好で座り、わざとらしく両手に持った羽根フォークをカメラに振って見せ“これからコレで責めますよ”という合図を無言で映像を見ている私達に告げた。 そして小夜子先輩はその羽根フォークを奈々さんの無防備な足裏に近づけて…… 「はぁ~い、奈々さ~ん♥ たっくさん笑ってくださいねぇ~~♥」 と告げると、奈々さんのかかとの上に羽根の先端達がスッと着地するように優しく降ろし最初の刺激を彼女に送る。 「ぅひっっ!!?」 左右のかかとの上に柔らくて細い何かが等間隔に触れ……奈々さんはビクリと姿勢を正すような反応を返した。 その羽根が皮膚の厚いかかとに少し腰掛けるように置かれただけの刺激であるだけなのに玲美さんとは違って過剰過ぎるほどの反応を返す奈々さんの姿に私は、その羽根はやっぱり想像通りのこそばゆさを生むものなんだと改めて納得した。 「か、かかとが……急にムズムズしてきたっス! なんっスか? コレ……何が当たっているんスか??」 自分の足に何が当てられているのか必死に身体を捻って見ようとする奈々さんだけど、目にはアイマスクを装着されたままであるため小夜子先輩の持つ羽根フォークを見ることは叶わない。見えないのは分かっているけどそれでもこの得体のしれない感触を不安に思っているのか落ち着こうとはせず見えもしない足元を必死に見ようと藻掻きまくっている。 その姿は……中々に滑稽だ。 「そぉ~れ♥ こちょこちょこちょこちょこちょ~~~♥♥」 足指をジタバタさせながらどうにか抵抗の意志を見せようと努力している奈々さんをよそに、小夜子先輩は子供をあやすような幼い口調を零しながらかかとに待機していた羽根を一斉に彼女の土踏まずの部位までなぞり下ろして言葉として発した擬音そのままの動きを羽根達にさせてくすぐり始めた。 「ぷぎゃっっ!!? いぎゃああぁぁぁーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!! にゃ、にゃにっ!? この滅茶苦茶こそばい刺激はにゃんにゃのぉぉぉ!! や、やめっっへへへへへへへへへへへへへへへへ、イヒャアァァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、うひぃぃぃっっっ!!?」 土踏まずの端から端までを等間隔に触れている羽根が小夜子先輩の絶妙な羽根捌きに呼応して、羽根先をチョロチョロと蠢かせながら足裏の皮膚へ耐えがたい擽痒感を与えていく。 玲美さんであればこの刺激にも無反応だっただろうが、奈々さんはこういう刺激には弱かったらしく……羽根が動き始めた瞬間から思春期の女子にあるまじく口を大きく開け子供の様にゲラゲラと笑いを吐き出し始めた。 「ブヒャッッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ、んはははははははははははははははははははははは、うひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、エヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、や、やめでぇぇっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへ、あじがこひゃばいぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、それで撫でるのやめでぇぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! うへひぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 奈々さんの悲痛な叫びと悲鳴に匹敵するほどの大きな笑い声がカメラを通して私たちの目にも耳にも伝えられた。玲美さんの反応を最初に見ている私からすれば、こそばゆそうな想像はしていたも「実はもしかしたら大したことないかも」などと道具自体に不信の目を向けかけようとさえしていた。しかし、奈々さんの発狂するかのような暴れっぷりを見てその考えは再度改められる事となる。いや……改めるどころか自分の想像以上の物なのだろうと勝手に恐れ慄きさえしてしまう。それほどに奈々さんの反応は痛烈を極めていたのだ。 「ギャアァァーーーッッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、やめでっっへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ホントやめでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! わ、笑いが止めらんないっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、こそばすぎて笑いがぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!! く、くるひっっっ! 笑いすぎてくるひっっ!! あひぃぃぃっ!? はひはひっっはひぃぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!!」 椅子をばたつかせようとしたり、背もたれに背をぶつけて辛さを主張しようとしてみたり、小夜子先輩の非情なくすぐりから逃げようと足を藻掻こうとして見せたり……様々な拒絶反応を身体が示そうとするが、上半身は胸下のベルトのせいで浮かす事も出来ず、椅子自体の重みもかなりのものらしく体を揺すっても椅子を動かす事も出来ず……当然足首を拘束されて足裏を後ろに向けて晒されているわけだから小夜子先輩のくすぐり攻撃から逃げることも出来ない。だから奈々さんがどんなに笑いたくないと思っていたとしてもその刺激が止まらない限りは自分の意志で笑いを止める手段は存在しない。 拘束され素足に剥かれた彼女は小夜子先輩の成すがままなのだ……。 「ほらほらぁ~~♥ 土踏まずの上で羽根達がダンスを踊っているわよぉ~? とっても楽しいでしょぉ~? 笑いが堪えられないくらい楽しくて仕方がないでしょう? ねぇ?」 笑い苦しんでいる奈々さんに一切慈悲など掛ける様子もなく、小夜子先輩はサディスティックに羽根フォークを動かして彼女を強制的に笑わせ続ける。顔はニヤケ、頬は真っ赤に紅潮し、呼吸も荒く興奮しているのがモニター越しにも伝わってくる。 私は改めてあの羽根フォークの恐ろしさとそれを扱う小夜子先輩の姿に戦慄を覚えた。あんな風に拘束されて同じことをやられたらなどと想像すると……恐ろしくて思わず目を瞑りたくなってしまう。 「た、楽しいわげないでしょうがぁぁっっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!! 苦ひぃからさっさとやめでっっ!! い、息がぁっっははははははははははは、息ができないぃぃっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ダヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」 くすぐりの効かない玲美さんだけど例え映像越しの拷問であれ仲間の人が責められている姿を見るのは辛いらしく、顔を青ざめさせながらその様子に嫌々ながら視線を向けていた。 「どうです? 貴女の部下の彼女は御覧の通り呼吸もままならないくらいに笑わされていますが……自分の事ではないといっても胸が詰まる思いにはなるでしょう?」 口元を引きつらせながら目を背けようとする玲美さんにそっと近づいて耳元で部長がそのように呟くと、背けようとした顔に優しく両手を添えモニターをちゃんと見るようにと顔の向きを無理やり画面へと向けさせる。 その行為が不快だったのか玲美さんはすぐに顔を振って部長の手を遠避け、改めて強気なまなざしを向けなおして部長に喧嘩腰の言葉をぶつけ始める。 「ふざけないで! 奈々は関係ないでしょ!! 私が効かないからって部下を人質にとるなんて人として最低よ!! こんなの部の活動がどうこうよりも、貴女の人間性が疑われるわ! これが終わったら廃部の報告よりも先に警察に出頭させてやるんだから覚悟なさい!!」 警察という言葉が玲美さんの口から飛び出し私は思わず「えっ!?」と大きな声を上げてしまう 部長は不安に慄いた私の顔を一瞬だけ確認しニッと口元に笑みを浮かべるとすぐに玲美さんの方を向きなおし、相変わらず余裕のある口調でとんでもない言葉を投げ返した。 「同意など……今取れなくても後から取れれば問題ないだろ?」 相手の同意は行為の前に取るのが常識ではあるが……部長の常識は全くの真逆だった。 「あくまで私達を屈服させて……同意まで強制的に取るとでも言いたいの? 馬鹿ね……奈々はともかく私を屈服させることなんて出来ないでしょうが。私が奈々の代わりに証言するわよ? 彼女は同意などしていなかったって……」 「大丈夫ですよ。貴女もそういう事が言えない様に必ず屈服させて見せますので……」 「ふ、ふざけないで! 私に貴女達の拷問は一切効かないっていうのに一体どうやって屈服させようって言うの? 奈々を責める映像をどんなに見せつけたって無駄よ! 私は貴女達には絶対に屈しないっ!!」 「あぁ……彼女は別に貴女を屈服させるための材料とかではありませんよ? ただの尺稼ぎのようなものです。もう少し時間がかかりそうなので……」 「尺稼ぎ? 時間がかかる? 一体何のことを言っているの?」 「風紀委員長殿の無敵時間が切れるのを待っている……と言えば分かりますかな?」 「っッ!? 無敵時間が……切れる? な、なるほど……ちゃんとリサーチ済みってわけなのね? 私の無敵の秘密を……」 「えぇ。貴女は我々に責められると警戒したから飲んできたんでしょう? 化学部の三森紗英さん頼んで作ってもらったあの薬を……」 「ふ、ふふ……バレてたんじゃしょうがないわね……。だったら正直に言うわ……私のこのくすぐりが効かないっていう体質は確かに嘘よ。貴女の言った通り……紗英さんに特別に調合してもらった不感症剤を飲ませてもらっているの」 「ふ、不感症剤?? 何ですかそれ? 部長……玲美さんが飲んだそれって……」 「あぁ……。彼女は一部の神経の感覚を遮断する薬を三森紗英に調合してもらっていたのさ……だからくすぐっても何も感じていなかった……」 「ウフフ♥ そこまで調べたんだったら効果の持続時間もちゃんと調べてあるんでしょ? あの薬がどれだけ長く持続するのかも」 「……持続……時間? ぶ、部長? 持続時間って?」 「不感症剤は通常約8時間持続する……だったっけ?」 「は、8時間っっ!? そ、そんなに長く効果がっっ!?」 「土曜の完全下校時刻は午後18時よ。今は13時と少し経ったくらいでしょ? 残念ながら、この薬の効果はまだまだ持続するわね♥」 「あと5時間じゃ……絶対に効果が解けないじゃないですかっ!! ど、どうするんです部長っ!!」 「おいおい、そんな大声を出さなくて分かっているよ明日香~。大丈夫……全く問題はない。計画通り事は運んでいるよ……」 「その計画を私は何も聞かされていないんですけどぉぉ!! どういう事ですか! 問題ないってどういう意味なんですか? 教えてください!!」 「ハハ……落ち着けって。それよりもほら……お前を無理やり拉致して眠らせたあいつを折角お仕置きしてやっているんだ……そっちを見て楽しめよ……な?」 「な? じゃ、ないです! どういう事なのか説明してくださいっ!! 早くっ!!」 「なんだよ……折角お前のために仕返ししてやってるっていうのに……」 「……仕返し? うちの部下を捕まえてワザワザ拷問にかけているのは……明日香さんの為とでもいうの?」 「えぇ。そうですが? 貴女達も同じようにヤったんでしょ? うちの明日香を捕まえて……」 「フン! なるほど……やっぱり筒抜けなのね……。その様子だと明日香さん本人に聞いたみたいね? あれほど口止めしておいたのに……」 「い、いえ……それは……その……」 「まぁいいわ……どうせこっちの側にはつかないだろうって踏んではいたし……。それよりも、さっき“尺を稼ぐためにこの映像を見せた”とか言っていたわよね?」 「えぇ……言いましたよ?」 「っで? その時間は稼げたのかしら? 私の無敵時間が解けると妄信しているその時間は……」 「……そうですね、もうそろそろ効果が表れる頃ですかな?」 「…………効果?」 「えぇ……そう、効果ですよ。貴女の無敵時間が終わりを迎えて……新たな効果が発現するんです♪」 「新たな……効果? なに? 何のこと? 何を言って言っているの?」 「委員長。このモニター……なぜ用意したか……勿論分かりますよね?」 「……? と、当然じゃない……。奈々への仕置きを……私に見せるため……でしょ?」 「いえいえ、これは明日香に向けて見せているだけなので……真意は実は別のところにあるんですよ……」 「真意が……別のところに?」 「このモニターのハードディスクにはライブ中継を映す事以外に活動の記録なんかを“保存しておく”機能もあるんです……」 「保存しておく……機能?」 「委員長にはこちらの記録を見て頂きたくて……わざわざこのモニターを用意した次第なんですよ♪」 「記録って……何?」 「映像を記録したのは3日前の水曜日……」 「水曜日? 3日前??」 「どうしても彼女の協力は不可欠だったので……我々は彼女の情報を集め……彼女の弱みを握り……そして服従させるために責め苦を加えました……」 「彼女って? 誰よ?」 「用心深い貴女の事だから、こんなにも大胆に宣戦布告するという事は……何かしら秘策があるのだと我々も考えていましたので……」 「ま、まさか……彼女って……」 「我々が彼女を屈服させたのは水曜日……。そして理子に書かせた果たし状を渡したのは木曜日。果たし状を見た貴女はすぐに警戒の為に彼女に頼んだのでしょう? 我々を負かしうる秘策を……」 手に持ったリモコンの再生のボタンを部長は話の途中でゆっくりと押し込む……。するとモニターの映像は一瞬暗転しすぐさまハードディスクに保存された映像を画面に映し出し始める。 ぼやけた映像がはっきりとし始めると……そこに映し出された映像を見て玲美さんが「あっ!」と驚きの声を上げる。 「さ、紗英さん!?」 モニターに映し出された新たな映像には、奈々さんと同じように椅子に拘束された白衣姿の紗英さんの姿と……あの羽根フォークを手に持った理子先輩と小夜子さんと彼女の前に腕組みをして立つ部長の姿が映っていた。 「彼女……かなり笑うのが苦手なようで……終始口元を引きつらせて苦しそうに笑ってましたよ」 リモコンの早送りを押すと紗英さんの足裏を羽根フォークでくすぐる小夜子先輩の姿と服をまくって脇腹付近をくすぐっている理子先輩の姿が早回しで映像に流れ始めた。紗英さんを斜め前から撮影したその映像には無表情がデフォでありそうな彼女の無様な笑い顔をしっかりと撮影しており、時間が経つにつれ口元や目から涎や涙が溢れ出して苦しそうに笑う彼女の顔を延々と映し出していた。 「彼女の家は大手の病院と提携した薬局を開いているんですってね? 彼女自身もかなり薬学に精通しているらしくて……どういう薬がどういう効能を出すかなんて簡単に分かってしまうらしいですよ」 部長は調べ上げたであろう紗英さんの情報を話しつつ早送りをしていた映像を一旦止め、再生ボタンを押しなおした。映像はぐったりしている紗英さんに部長が語り掛けるシーンから再生された。 『三森さん? 貴女……分かってますか? これは犯罪なんですよ? いくら実家が薬局を開いているからって……その薬を勝手に学校に持ち込んで資格もないのに自分で調合するなんて行為は……』 『はぁ、はぁ、はぁ……ち、違う……薬は…調合していない……。親が調合した薬を……学校に……持ってきているだけ……』 『本当ですかぁ? 化学部の生徒さんに聞いたところ……貴女は持ち込んだ薬品を混ぜて使っているそうじゃありませんか。ほら……なんでしたっけ? 痒みを増幅させるあの薬とか……』 『ち、ち、違う! あれは……ちょっと量を足してみたりしただけで……』 『だとしてもそういう劇薬を……拘束した生徒に向けて使うのはまずいと思いますよ? そんな事をしていると化学部の顧問に知れたら……貴女の医大への推薦状も書いてもらえなくなる事になりますねぇ……』 『ま、ま、待って!! あれは……その……命令されたから……やっただけで……私は……』 『命令されていたとしても、薬を用意したのは貴女です! 言い逃れは……出来ないと思いますが?』 『わ、分かった! 言う通りにする!! 言う通りにするから……先生に言うのだけは……』 『ちゃんと出来ますか? “彼女”が薬を求めてきたら……さっき言った薬を親に調合してもらってきてくれますか?』 『ちゃ、ちゃんとやる! 玲美さんが……不感症剤を求めてきたら……持続効果の薄い……薬を渡す……』 『それだけじゃないでしょう? ほら……持続時間だけじゃなく……』 『わ、分かってる! 神経が“逆に敏感になる”副作用が現れるよう……頼んでおく……必ず……だから――』 紗英さんの悲痛な叫びの途中で映像は再び一時停止となる。 玲美さんは映像が止まる直前に彼女が零した言葉を聞き……目を見開いて顔を青ざめさせていた。 そして自分の拘束された足の方を注視して、恐る恐る制限された足の指に力を込めてみている。 指の1本1本は磔にされるよう拘束されているから大きくは動かせないが、指を動かしてみている感覚が先ほどまでの感覚と大きく違っていることに彼女は気付いたらしく、青ざめさせた顔はさらに深い影を帯びさせるよう暗くなっていきカチカチと歯を鳴らすように口元を震わせ始めた。 そしてその表情を見て勝ち誇るような笑みを浮かべながら理子先輩が再び所定の位置へとつく。 右手にはあの羽根フォーク……左手にも同じ物を握り、さもこれから行う本番の拷問を想起させるかのようにそれらを空中でわざとらしく揺らして見せつけながら……。