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ハルカナ
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悪戯カフェへ……ヨウコソ①

1:閉じた心  突然だけど……冬風 樹希(ふゆかぜ いつき)は私に対して態度がとても冷たい。  いちお、家が隣同士だから自然と幼馴染みたいなカテゴリーの関係になってはいるのだけど…… 「樹希ぃ~~。ねぇ、明日こそは良いでしょ? どっかパァっと遊びに行こうよぉ~~気晴らしにぃ~」 「……無理。その日忙しいから……」 「えぇ~~? またぁ~~? 折角のテスト明けの休みだよ? 久しぶりにカラオケとか行こうよぉ~~」 「私は忙しいって言ってるでしょ。そんなに行きたいのならクラスのお友達を誘ったらいいじゃない……」 「樹希と2人で行たいの! ねぇ……少しくらいいいじゃん♥ 行こっ? ね?」 「私は別に聡美(さとみ)と行きたいとは思ってないし……そんなに行きたいなら一人で行って来れば?」 「むぅ……またそんな冷たい事を言う。なんでそんなに親友の誘いを断るかなぁ?」 「ただ家が隣同士ってだけでしょ? 私に構わないで良いから別の親友さんと行ってきたらいいよ……」 「むぅぅ~~~!」  っと、こんなやり取りが日々繰り返されているのだ。    樹希は私にだけ冷たい訳ではないらしい。他のクラスメイトにもいつもこんな感じに振る舞っているのだと(友人談)。  そんなもんだから当然クラスにも馴染めず、昼食の時間や休み時間も一人でいる事がほとんどなのだそうだ。  昔の樹希はこんな風じゃなかった……少し人見知りはあったけど、基本的に私とは楽しそうに会話をしたりお互いの家で遊んだりもしていた。  じゃあいつからこんなツンツンな態度を取るようになったかというと……こんな風に周りとも私とも距離を置き出したのは高校に進学してからだと私は記憶している。  家から近い女子高を一緒に受験し、一緒に合格して一緒のクラスになれたまではよかった。でも、1年の夏休みが明けた頃には私に対してよそよそしくなり始め、2年に進級してクラスが別になると先程の会話のように私に対する態度が冷たく刺々しい感じに成り果てていった。  原因がなんなのかさっぱり見当もつかない私は、きっと反抗期か何かだろうと気にせず元に戻るのをゆっくり待ってはいたのだけど……高校3年にもなってその反抗期的な何かは収まらず……顔を合わせればさっきの様な相変わらず寒々とした会話を少し交わす事しか出来なくなっていた。 「あっ! 分かった!! 樹希ってば私に内緒でバイトしてるっしょ? だから遊べないんだよね?」 「……別に。私が休日に何をしていようと関係ないでしょ?」 「否定しないって事は図星だなぁ~? そんなに冷たい態度を取るんだったら、今度こっそり職場を覗いてやろっかなぁ~」 「っっ!? う、うるさいわねぇ! 関係ないって言ってるでしょ! 余計な詮索……しないでよ……」 「……樹希? 冗談だよぉ~~怒んないでよ~~~」 「とにかく! 私は聡美と遊んでいる暇なんてないの! 分かったら一人でカラオケでも何でも行ってきて! 分かった?」  「むぅぅ~~~~~!」  正直な話……絡まずに放っておけば良いんじゃないか? と思われるかもしれない。こんなに突き放されているのだから反抗期的な何かが収まるまで待つか……もしくはもうすでに彼女との関係は終わってしまった後なのかもと諦めた方が私にとっても樹希にとっても良いのかもしれない。こんな風に私が話しかけるのも樹希は迷惑に思っているのかもしれない……  でも――  樹希の事を放っておくことが……私には出来ない。  なぜなら……私は――  樹希の事が……好きだから。  友達同士の好き……ではない。性格や容姿が好み……という話でもない(多少はあるけど)。  私は冬風樹希の事が好きなのだ。彼女という一個人が……切ない程に好きでしょうがないのだ……  これは……そう。いわゆる恋愛感情ってやつである。  異性を好きになって恋をしてしまう……アレと同じだ。  でも私はれっきとした女。樹希と同性である事は言うまでもない。  同性なのに……抱いてしまったのは恋心だった。いつの頃からだったか……私は彼女に恋をしてしまっていた。    何故? と聞かれると、私も「なんでだろう……」と返さなくてはならない。  だって彼女は……私の乙女心をキュンキュンくすぐるような可愛さを沢山持っているのだから。今更どこに惹かれたかなど答えようがない。しいて言えば全部……か?  まぁそう言って納得してくれる人なんていないと思うから、取り敢えず今思いつくところだけザックリと言えば……  まずは容姿……。人とかかわるのが面倒くさいという思いを表しているかのようなジト目を今ではよく私に向けているけど、ちゃんと開けばクリッとして子供のように大きくて可愛らしい目であるという事を私は知っている。そして小さくて控え目な口元……スッと筋の通った綺麗な形の鼻……細身な頬のライン……こんな性格でなければ寄りつく男子なんて数あまたいるだろうと心配になるほどの美人顔の持ち主が樹希なのだ。  それに加えて腰まで届く青みがかったストレートの長い髪である。茶髪で緩いウェーブパーマをかけた肩までしか長さの無い私の髪からしてみれば光に艶を反射させる樹希の髪は憧れの対象でもある。髪を同じ様に伸ばせばいいじゃん……と言われるかもしれないが、地毛に癖がついててパーマ寄りの髪質であるため伸ばしても樹希の様な綺麗なストレートヘアにはなれない。だから憧れているというのもあるが……結局美人顔に合う綺麗な髪という部分に羨ましさと憧れを抱いているのは否定できないのだ。目にかかるくらいのランダムに切り揃えた前髪の間からあの綺麗な瞳が上目遣いで見えたならば、同性でもドキッとする事この上ない……ハズだ。    そんな恵まれた容姿を備えた樹希だけど、内面の方も実は美人さんである。  今でこそツンツンした冷たい態度を取っているけれど、それ以前の印象は今とは真逆である。  引っ込み思案なトコロは今も変わらないけれど、何をやるにも真面目で……正義感も責任感も人一番強くて……それ故頑固だけど、私の事をいつも気にかけてくれていて……優しくて……頼り甲斐があって……ズルい事はしない真っ直ぐな性格してて……っと、上げ出したらキリがないからこの辺にしておくけれど、とにかく昔の彼女は容姿に負けない程の汚れの無い美人な性格をしていたんだ……。    他にも樹希の好きな所を上げようと思えばいくらでも出て来る。胸の形が私好みだとか、細い脚が魅力的だとか、時々見せる笑顔が可愛くて仕方がないとか、天使のような性格だけど嫉妬深くてちょっと面倒臭い所があるだとか……自分の思い通りにならないとすぐに拗ねてしまうとか……良い所も悪い所も沢山出そうと思えば出せるけど……でも私はそういうのを全部ひっくるめて樹希が好きなのだ。  冬風樹希という人間を愛してしまっているのだ。  だから、今みたいに冷たくされるのは……とても辛い。  昔のように……一緒にワイワイ言いながら遊んだり、なんとなく一緒にぼんやりしていたり……お互いの言葉をぶつけあってちょっとした喧嘩とかしてみたり……そういう風な関係に……戻りたい。  そしてあわよくば、私の気持ちを真面目に伝えてみたりしちゃって……樹希ともう1段上のステップを踏んでみたいと思っていたりも……する。  でも、今の状態ではそれも叶わない。  彼女の心の扉はなぜか閉じたままになってしまっている。  切ないけど……こんな風にどうにか話しかけて、めげずにその扉をノックし続ける事しか……私には出来ないのだ。  いつか……昔の様な……いや、それ以上の関係に……なりたいと願っているから。  冷たくされても……迷惑だと思われていても……彼女の心の扉を開いてしまいたい。  せめて……私のこの想いを伝えられるように――


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