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ハルカナ
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悪戯カフェへ……ヨウコソ⑦

7:再開 「ほ~~ら、コチョコチョコチョ~~♥」  再開は樹希の足裏からだった。  手首と繋がれ、背中側に折り曲げられるような姿勢で拘束された無防備な足の裏に、羽根の先で絵を描くようになぞり回して樹希にこそばゆい感触を植え付けていく。 「キャハっ!? やだっ! くすぐったいぃ~~!! やめてよ聡美ぃ~!」  最初程ビクリと身体を大袈裟にビクつかせた樹希だったが、目隠しが取られているせいかくすぐったさに対する反応は少し余裕が見られ笑う顔もそこまで崩れてはいない。 「えぇ~? やめてって言ってる割にもっとヤって貰いたそうにしてるのはなんでかなぁ~?」  私は動かしている羽根を少し緩め樹希の反応をしばし眺める。 「そ、そんな事……思ってないもん! くすぐったいの……本当は苦手だし……嫌いだもん!」 「嘘おっしゃい! じゃあ、なんで足の裏をそんなに見せつけるように反り返すの? それじゃあ“くすぐってください”って言ってるようなものじゃない!」  刺激が少なくなると樹希は決まっておねだりを始める。言葉とは裏腹に足裏をわざと反らせたり、足指をクネクネと艶めかしく動かして私の責めたい欲を巧みにを誘ってくる。  見た目は清楚そのものだが、誘い方は淫魔の如く小悪魔的で私への高め方も上手い……。私はついついその誘いに乗って強い刺激を与えてしまう。 「はひゃっ!? んんっっふふふふふふふふふふふふ! 別に……そんなんじゃ……ないもん! くふっ! たまたまだもんんっっ!!」  素直じゃない樹希の態度……そんな彼女も可愛く感じてしまう。 「そう? じゃあ……今度はこっちを触ってあげよっかなぁ~? さっきレンタルしてあげた……この“筆”で……」  1本の値段が2000円もする習字などに使われる太い筆……。私は彼女を責め立てると宣言した直後に、財布が痛むのも構わずにその筆を購入した。  だって……見るからにこの筆がこそばゆそうだったから……。  カプセルに入った筆を自販機から取り、蓋を開けて取り出してみてもその毛並みがくすぐり用に特化しているのが見て取れる。  毛先1本1本が長いものも短いものもしっかりと根元から直立していて指で触っても中々折れたり曲がったりしてくれない。かといって硬すぎる訳もなく、試しに自分の腕をなぞってみれば程よく抵抗感を持ってしなりを見せ羽根の様に“引っ掻く”ような感触を味あわせる。  書道の授業以外に筆に触れる機会がなかった私にとって、人の皮膚にそれを這わす体験は無いに等しい……。でも、このような筆にもしも“あの箇所”をなぞられでもしたら……私は悲鳴を上げるどころの騒ぎでは済まないだろう。そう感じさせるに値する高級な筆だ……私はその筆を足裏ではなく彼女の突き出すような格好を強いられた腹部へと移動をさせていった。 「ちょっ!? 何処を触る気!? ねぇ! その筆……ちょっと怖いんだけど!!」  腹部の側面……。横に寝かされている樹希からすれば丁度天井方向に向けている左の横っ腹……。  俗にいう“ワキ腹”と呼ばれる箇所の上空に私はその筆を構えた。  空中で触る予行練習をするかのようにフワフワと上下に小さく振って見せると、私の腕の緊張の汗を僅かに吸い込んだ筆先がしっとりとした艶めかしさでフニフニと先端を揺らして見せる。それだけで樹希の表情が緊張の色を濃く顔に出し始める。  恐らく……この筆での責めを彼女はまだ体感したことがないのだろう。どんな刺激になるか想像できず不安と焦りが募っているように見える。 「さっき自分の腕に這わせてみたけど……この筆かなりヤバいわね。腕の刺激だけでもゾワゾワして気色悪かったもん……」  私は不安そうな顔を見せる樹希に更に不安を煽るような感想を伝える。それを聞いて樹希の顔はますます青ざめどうにか逃げようとモジモジ身体を動かし始めた。 「ほ~ら、動かないのっ! これから、この神経を逆なでするような痛痒い筆先であんたの脇腹をコショコショ~って撫で回してあげるから……あんたは黙ってその刺激に耐えて見せなさい! もしこの刺激に耐えられずに笑ったら……今度はあんたのワキの下を羽根と筆2本使って集中的にこそぐるからね? 分かった?」   モジモジ身体を動かしはするが、くすぐらせないために身体を仰向けにしたり体制を変えようとしたりは決してしない。そういう部分だけ見ても樹希の性癖が実は結構曲がっているんだろうなと私に想起させる。まぁ、そういう樹希をイジメたいと思ってしまう自分もたいがいな異常性癖者だと思うのだけど……。 「あの……怖いから……強くしすぎないでね? 最初はゆっくり……」  観念したのか身体のささやかな抵抗をやめた樹希は不安げな表情を崩さず私に小声で訴えかけてきた。  私だって最初から思いっきりしてやろうなんて考えてはいない。始めはゆっくり……触れるか触れないかの位置取りで少しだけ筆の先端を当てて…… ――チョン! 「うひっ!?」  反応を見たら……触れた箇所の数センチの範囲だけを色んな方向にゆっくりなぞって戻って……またなぞって戻ってを繰り返しながら刺激を広げていく。 ――サワ……サワっ♥ サワ、サワ……サワ♥ 「あっ!? はっ!? っひ!! うひっっ!? け、毛先が……こそばいっっ!! んはっ!!」  脇腹のくびれた溝を丁寧に掃除するように……柔らかくもしっかりした鋭い毛先が皮膚の神経をなぞり上げていく。その刺激たるや想像を絶するこそばゆさなのだろうが、樹希は必死に口を閉じ刺激を我慢しようと試みている。  私はその必死に我慢しようとしている彼女の顔を見て……無性に「無理やり笑わせてしまいたい」という鬼畜な欲求が生まれ始めてしまう。  彼女の事を“ドM”だと罵ったのは私だが、そんな彼女から見た私はきっと“ドSな変態”だと映っている事だろう。そう思われていると想像すると私は恥ずかしさよりも淫欲の方が高まってしまう。樹希にだったら……私の変態性を知ってもらうのは悪くない。むしろ逆に興奮してしまう……変態だとバレてしまった方が……プレイはより淫靡な行為に昇華されているように感じてしまう。 「口……開けてて大丈夫なの? 油断してたら笑っちゃうよ~?」  筆の刺激を十分に味わってもらったら、次はあちこち触って特に反応がよかった箇所を重点的にくすぐっていく。 「だ、だっへ……ホントにくすぐったくて……ジッと口を閉じとくなんて出来なひっッ!!?」  樹希は特にココ♥  へその少し横から脇腹の真横までのくびれたラインを触られるのが最も弱いらしく、そういう箇所を少し触ってあげるだけで身体を跳ねさせる勢いで反応を返してくれる。 「言っておくけど……樹希の弱点はもう見抜いちゃってるんだからねぇ~? ココを集中攻撃されたら……果たして耐えられるのかなぁ~?」  私は意地悪な言葉を並べつつ樹希の腹部……可愛いおへその真横に筆を置いて彼女の反応を伺う。 「ひっ! ちょ、待って! まさかそこからなぞる気っ!? や、やめて! そんなの耐えらんない!!」  突き出すように沿った腹部、その中心にお尻の穴の様にあいた可愛らしいへその穴……そこのすぐ真横からくびれた脇腹までのラインに狙いを定め、私は彼女の言葉に返事を返すことなく容赦なく筆をなぞり進めてあげた。 「びゃっひぃぃぃっっ!!? んびゃあぁああぁぁぁぁぁっっ!!?」  筆を少し動かしただけで樹希は金切り声のような絶叫を上げ、身体を陸に打ち上げられた魚の様にビチビチと跳ねさせ刺激から少しでも逃げようと試みる。しかし勿論、手足の拘束がその動きを最小限まで抑え込むため私の筆撫で攻撃から彼女は逃れることは出来ない。 「っひ! はひっ!! くすぐったい、くすぐったいぃぃっ!! ひぃぃぃ~~~っ!」  反応は抜群にいいがまだ彼女は笑わずに済んでいる様子……。 まぁ、最初の一撫でが思いのほか刺激が強すぎて驚いてしまったというのが今の状態だろうけど……じゃあ、刺激を覚えてしまった今……この往路を何往復も触られたらどうなるだろう? 刺激に対する驚くような新鮮感は薄れる代わりに……耐え難いむず痒さが彼女を襲うのじゃないだろうか? 私はそのように自問自答しへそ横から脇腹との往復をねちっこく繰り返し始めた。 「かっっひゃ!? はひゃっ! んひっっ……ひひっ!! んんっっ!!」  刺激の強さが想像できるのか……樹希は声を上げていた口を慌てて閉じ、目も閉じてジッと私の筆撫での刺激を耐え忍ぼうと息を殺す。しかし、その意志による我慢も3往復、4往復と繰り返されるうちに限界を見せ始め…… 「ぶっっっ、ぷっっふっ!! んぐっくく……くふっ!! んくくくくくく……くぷっ!! んんんんっっんんっ!!」 額の我慢汗とともに固く結んでいたはずの唇は小刻みに震えながら波立つ形を取り、いよいよ吹き出してしまう直前まで追い詰められるまでになった。 彼女の限界点が手に取る様に分かった私は、舌でペロリと唇を舐め熱のこもった呼気を吐きながらトドメとなる刺激を彼女に送り始める。 脇腹のくびれの一番こそばさを感じる箇所……体の真横に位置するそのくびれに筆を留まらせて、そこだけを搔き乱すようにコチョコチョと集中的に刺激する。すると樹希にの我慢はすぐに崩壊し…… 「ぷはっっ!? ぶひゃ~~っはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!! ぃぎゃあぁははははははははははははははははははははは、そこダメっ、そこダメぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、うはひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ、んぎへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」  それはそれは盛大な大爆笑を狂わんばかりに吐き出し始めた。 「あぁ~あ、笑っちゃったね? 笑ったらどうするか……さっき言ったわよね?」  吹き出した直後からもはや笑いが止められなくなってしまった樹希の乱れっぷりを優雅に見つめながら、私は追い立てるように脇腹のくびれから背骨付近のくびれまでを乱雑に掃除をするかのように掃き散らしくすぐりを継続していく。 「んはぁぁっっははははははははははははははははははははははははははははは、待って! 今の無しっっひひひひひひひひひひひひひひひひひ、今の無しぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」  一度笑い始めたらもう癖が付くように笑いが止められなくなるのがくすぐりの恐ろしいところで……突破口が一度でも開かれてしまうと先程まで大して効きもしなかった箇所でも過剰にこそばゆく感じるものだ。  それを理解している私は、責め欲も相まって樹希に意地悪な条件を突き付けてしまう。 「いいわよ~だったら今から10秒以内に笑いを止めて見せなさい。それが出来たら今のはノーカンにしてあげる♥」  笑えば笑う程に連鎖的に笑いが込み上げてきてしまう無限地獄に落とされた樹希に“笑いを我慢して見せろ”という無理難題を吹っ掛ける私……ここからの10秒も私にとってはお楽しみの時間なのだ。 「そんにゃっ! ムリっひひひひひひひひひひひひ、そんなの無理よぉっほほほほほほほほほほ、くひひひひひひひひひひひひひひひひ、だははははははははははははははははははははははははは!!」 「……10……9……」 「待っへ! おねがひっっ! 少しで良いから手を止めてっっへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」 「手を止めたらゲームにならないでしょ? ほら……8……7……」 「うひ~~ぃっっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、クヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、はへへへへへへへへへへへへへへ、んがっはははははははははははははははははははははは!!」 「どうしたのぉ? 情けないわねぇ~この程度の刺激も我慢できないの? ほら、もう半分切っちゃうよぉ……6……5……」 「かはっっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、いひぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、無理・無理、むり、ムリぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ギャ~ッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ、お腹痛いっっひひひひひひひひひひひひひひ!! 苦ひぃ~~っひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 「……4……3……ほ~ら頑張って? コチョコチョコチョ~~♥」 「はっ、ひっっ……んぐっっふ!! くふぅっっっっ!!」 「お、やれば出来るじゃない♪ それじゃあ、その我慢をあと10秒維持しなさいね? フフフ……」 「じゅ、10秒っっ!!? む、無理……そんなの無理よぉ!!」 「あっ、口開けたなぁ? 今だぁ♪ そ~れ、コチョコチョコチョコチョコチョコチョ~~♥」 「ぱぎゃっっはっ!? ひぎゃあぁぁっっははははははははははははははははははははは、ズルいっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、いきなり強くするのズルいっっひひひひひひひひひひ、びゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、んがっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」 「……2……1……ゼロ! はぁ~い残念でしたぁ~樹希の負け~~♪」 「へひっ、はひっっ、ンハッっハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ひぃひぃ、はひっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、苦ひぃ、苦ひぃからちょっと休ませて……お願ひっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! ンハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……」 「だぁ~め♥ このまま笑わせながらワキの方まで移動させて羽根と同時にくすぐってやるんだから♥」 「いひゃあぁぁっっははははははははっははははははははははははははははは、うひひひひひひひひひひひひひひ、へひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、もう笑うのキツイっっひひひひひひひひひひひひひひ、辛くなってきたからぁっははははははははははははははははははは、ひぃひぃっっ!!」  私は樹希の訴えを無視しつつ羽根を脇腹のくびれから身体の側面に沿ってなぞりつつ移動を開始させた。  くびれから肋骨の最下段をなぞって……肋骨の浮き出た皮膚を順番にコチョコチョとくすぐりながら登っていき……水着から溢れんばかりにはみ出している樹希の豊満な胸の横乳を通過して……目的の箇所へと辿り着く。  背中に回されるように後ろ手に拘束され、少しだけお目見えを余儀なくされている樹希の生腋の部位へ……。 「はひっ、あひっ! ま、待って、聡美っ! ヤるんなら……足の裏をヤって! ワキは……無理なの! お願いっ!!」  樹希の必死な懇願は私にはもう届かない。  だって……私は目を奪われてしまっていたのだから……  普段決して見る事の出来なかった、樹希のワキ……  万歳を強いられている訳ではないから完全にワキの全体が見れている訳ではないけど、背の側へ強引に回された肩の裏に見え隠れするしわの寄った柔らかそうなワキ肌……水着の隙間から少しだけ晒されている横乳と相まって、その部位のエロティシズムは極限まで高まっている。  早く触りたい……どんな反応を見せてくれるのか早く見てみたい…… 柔らかそうなワキ……触ってみたい。 出来れば……自分の手で直接触ってあげたい……  彼女のその部位を見た瞬間……私の筆を持つ手が止まってしまう。  今までのプレイや緊張でかいた汗がワキに形作られたしわに染み付き、その部分を強調するようにテカらせているのを見ると無性に自分の手で触りたくて仕方が無くなっていく。  きっと温かくて……柔らかくて……触り心地が気持ち良いんだろうなぁ~  そのようにぼんやり考えていると、私は自分の意思とは関係なく筆と羽根から手を離してしまう。  筆が地に落ち羽根も床に転がる……その音を私は気にも留めず、欲望が導くままに手をワキワキさせて彼女の上半身にそれを移動させていく。 「は、は、はぁ……はぁ……さ、聡美! な、何をする気? ダメよ! ここでは“それ”は禁止されてる! 絶対ダメ! ねぇ聞いてる? ねぇ!!」  私のコントロールを失った淫欲は都合の悪い言葉を勝手に耳からシャットアウトし欲望のままに手を近づけさせていく。  樹希が必死に何かを叫んで私に訴えかけようとしているのは見て分かるが……その必死さも私の淫欲を昂ぶらせてやまない。 「すぐにバレちゃうからダメだって! そういう事に特別厳しい店なんだからっ!! ねぇ! だめ!! 聡美ぃ!!」  もはや樹希のワキと胸にしか目がいかない……。樹希は私が触る事を……快く思ってくれるだろうか?  多分……悦んでくれると思う。いや、そう思いたい!  必ず気持ち良くしてみせる! あの魅力的なワキを撫でながら……マシュマロの様に柔らかい胸が形が変わってしまう位に揉みしだいて……気持ち良くさせてやるんだ! そして私も……樹希と一緒に……♥ 「だ、だ、だめ! だめだってば! だめぇぇぇ!!」  樹希の声が最大音量に達した瞬間、私の手も胸とワキ両方に触れ……そのまま指先で肌の感触を味わうように皮膚を愛撫し始める。 『あぁ……予想通り、柔らかくて……温かくて……気持ちが良い……』  胸の張り具合、ワキの柔らかすぎる皮膚感覚、樹希の体温……全てが私の心を満たしてくれる。触っているだけで桃源郷にでも放り出されたような解放感と快感を得てしまう。  気持ち良い……とても、とても……気持ちが良い……。 ――ガタンッ!  しかしその天国のような時間も次の瞬間に訪れた突然の暗闇に全て崩れ去ってしまう。 「っっ!? な、なに!? 部屋が……真っ暗にっ!?」  何が起きたのか理解できなかった私は慌てて樹希から手を離し、平衡感覚も狂ったままその場に立ち上がり、暗闇の中を右往左往しながら電気のスイッチがあった場所を探ろうとする。 しかし、スイッチに手が届く前に部屋の明かりはすぐに戻り、慌ててパニクる私とただただ怯えて寝そべっている樹希の姿を怪しく照らし出した。 ただの停電だったのか? と思いはしたが、再び照らされた電灯の色でそれは違うのだと悟らされる。 薄白色の綺麗な明かりが点っていたこの部屋は、今では何かを無言で警告するかのような血のように真っ赤な電球だけが点いたり消えたりを繰り返している。 それだけで嫌な予感は私の背筋を忙しなく駆け抜けているのだが、そんな私に追い打ちをかけるように先程までムードのある音楽を零していたスピーカーから大音量の警戒音が鳴り響き始める。 「な、なに? これは……どういう事??」  何が何やら分からない私は顔を左右に振って部屋の隅々まで視線を配っていく。  そして警戒音が鳴り始めて数秒もしないうちに部屋の扉が外側から開けられ、この店の店長を筆頭にぞろぞろと女性の職員が部屋へと雪崩れ込んでくる。 「えっ? あ、あの……こ、これは…………」  言葉を失った私に、厳しい目を向ける女性従業員たち。しかし店長はそんな中余裕ある笑みを浮かべたまま私の前に1歩足を踏み込んで一言だけ私に告げた。 「お客様? 先に申しましたよね? 当店のコンパニオンに……直接手を触れる行為は厳禁である……と……」  その言葉を聞いた瞬間、樹希の肌に触れた瞬間の映像が私の脳裏にフラッシュバックし、慌てて取り繕う言葉を並べ立てようとしてしまう。  しかし、私の言葉に店長は一切耳を貸さず、段取りを進めるために引き連れてきた3人の従業員に命令を下し……まるで囚人でも扱うかのように逃げられないよう腕を掴まれ周りを囲まれながら店の地下へと続く階段部屋へと入れられた。  店のファンシーな雰囲気とは正反対の……蝋燭による光源しかないおどろおどろしい雰囲気の地下階段。  壁は石組みで造られておりツタやコケがはびこり……蝋燭の薄い光に反射した壁は見ているだけで不安になる不気味さだ。  私は何度も、どういう事なの! 手を離して! と抗議の声を上げて叫ぶが、彼女たちはまるで聞く耳を持たない。その人間味の無い冷たさが……不気味さを加速させ私を骨の髄まで怯えさせた。  やがて長い地下階段を降りきると、赤くて丈夫そうな分厚い扉が一つ見えた。  先頭を歩いていた店長はその扉に似合い過ぎるほどゴツイ鍵を取り出して、物々しい音とともにその扉を内側に開いていく。  扉が開くと同時に中の電球が2つ……3つ……4つ……と順番に点いていき、部屋の中の様子を私に仄暗く見せつける。  部屋の中が明るくなりはじめ、徐々に何が置かれているのか分かるようになってくると……私は言い知れぬ恐怖と絶望感を同時に味わう事となった。  部屋の中には……おどろおどろしい拷問器具が置かれ……その石造りの地下室に所狭しと並べられていた。  その禍々しい拷問器具を見た私は、背筋に氷水が垂れるかのような鋭い寒気を感じてしまう。  この部屋を見せられたという事はすなわち……あの拷問器具を使って……私は拷問にかけられる……という事…… これから……この部屋で……私が………… 血の気が引いた真っ青な顔をした私はその場に立ちすくみそれ以上足を踏み入れることを拒んでしまう。 しかし、隣に付き添った女性従業員がそんな私を無理やり部屋へと引き入れ……そして扉を静かに閉めていった。


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