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ハルカナ
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悪戯カフェへ……ヨウコソ⑤

5:個室にて 「へぇ……鳥の羽根に、習字の筆……孫の手と……これは……アレかぁ……電気マッサージャーとかいうヤツだね……」  会員カードを作ってもらい希望の飲み物を注文した後、私は窓のないカラオケボックスの様な部屋の一室へと案内された。スーツ姿の覆面を被った怪しい係りの人が私をエスコートし終えると「少々お待ちくださいませ」と言い部屋から退出していったのを良い事に、私は店長さんが説明していた“悪戯”を行うために必要な道具とやらの自販機をしげしげと眺めていた。 「鳥の羽根が一番安くて3千円かぁ……こういうのも初回半額サービスの適応になったりしないのかなぁ……」  正直な話……樹希と対面してどう接すればいいかとか何も考えず勢いで入ってしまったもので、こういう道具をレンタルするべきかどうかも良く分からない。興味深げに自販機の商品を見て回っているけれど、実際は樹希に対してなんて声を掛けたらいいか分からず、頭の中は色々な不安ではち切れそうになってしまっていた。 「こういうのって……普通のお客さんだったらどんな風に使うんだろう? やっぱりあれかなぁ……エッチな所をイジメたりしちゃうのかなぁ……」  頭の中は交通渋滞がしているかのように色んな不安が渦巻いていて、自分が発している独り言にも意識は乗っていない……  ただ、頭に浮かんだ言葉を返事など一切してはくれない自販機に向かって垂れ流しているだけだ。 「樹希……いつも……こんな所でエッチな事されてたり……してるのかなぁ? 胸とか……お尻とか……大事なトコとか……見ず知らずの人に……触らせて……いるのかなぁ……」  自販機に陳列されている商品をマジマジと見ていると、ふと樹希の笑顔が頭を過った。私だけに見せてくれていた……屈託のないあの笑顔を……  今は見る事は叶わなくなったけれど……もう一度あの可愛い笑顔を見てみたい。  無邪気に笑いあえていたあの頃に……戻ってしまいたい。 「………………………………」  あの純粋で真面目だった樹希が、こんな所で不特定多数の人に悪戯と称した恥辱をいつも受けさせられていると想像すると、悔しいような……悲しいような……切ないような……そんな複雑な感情が脳内に巣食い始め、いつしか私は自販機の前で遠くを見るような目をして無言になっていった。覆面の店員さんが出ていって5分と経っていないが、その沈黙のせいでたったの5分が私には永遠に時間が止まってしまったんじゃなかろうかというくらいに長く感じた。 ――ガチャッ!  「失礼いたします」  そんな感覚がマヒしてしまっていた私の時間を再び元に戻したのは、先程この部屋から退出していった覆面の店員と…… 『……っっ!? い、樹希っっ!?』  ビキニタイプの水着の上下しか着せられていない、学校の水泳の授業よりも肌を露出してしまっている樹希の姿だった。 「では、これより60分間ですので、ごゆっくりお楽しみくださいませ……」  店長が言っていた通り、手は背中側に回され両手首に革製の枷が付けられ、脚も膝から背中側へ折り畳む様に曲げられ足首にも同じ革製の枷が取り付けられている。  足を曲げたままの状態に維持する為なのだろうが、足首の枷と後ろに拘束されている手の枷は近い距離に寄せられ短い紐のようなもので枷同士が離れないように結んである。  説明で聞かされていた通り……自分で歩く事も立つ事さえも叶わない格好でこの部屋へ連れてこられたのだ。  ガラガラとうるさい音を立てて押されてきた台車に、まるで商品を倉庫に片付けるかのように運ばれてきた哀れな格好の樹希。  店員は私の注文したアイスティを丸くて背の高い小さな机の上に置くと、その不自由な格好を強いられた樹希をゆっくりと台車から冷たい大理石の床に横になるように寝かせ、業務上の必要な言葉だけを残して早々と部屋から出ていってしまった。 「…………………………」  私はその樹希の姿を見て身体が固まってしまい、手の指すら動かせなくなっていた。  昨日まであの刺々しい顔で私の事を冷たく突き放していた彼女が、今では捕獲された食用獣のような恰好で自由を奪われて自分の目の前で横たわっている。現実なのだが現実感が湧かず、ただただ呆然と立ち竦んでしまっていた。  そうこうしていると、重い空気を察知したのか樹希の方が先に口を開いてくれた。 「あの……初めましてで……良いですか? 私はサトミです。今日は私を指名してくださってありがとうございます♥ 私は見ての通り身動き一つとれませんので……後はご主人様のお気の召すままに悪戯してください♥」  サトミ……というか樹希はオプションのアイマスクをかけられている。だから、彼女の言うご主人様が私だという事に気づいていない。  だから一般のお客さんだと思っていつも最初に口から出しているであろうセリフを言っているのだろうけど……  私の知る樹希がこのようなセリフをその口から自ら出すなんて……言われていてもなお未だに信じられない。何かの間違いであって欲しとさえ思ってしまう。 「フフ♥ 今日のご主人様は……無口な方なんですね? 目が見えませんから……いつ悪戯されるか分からなくて……凄くドキドキしちゃいます♥」  固まって動けず……口から零す言葉も見つからずアワアワと立ち尽くしていると、再び樹希の口から彼女に似つかわしくないセリフが飛び出してくる。  私はそんな事を言って身体を芋虫のようにクネクネと動かし始める樹希に、これは本当は別の誰かなんじゃないだろうか? と思い始める。いや、そう思いたいと願い始めている。 「あぁ……なんだか、何もされていないと逆に身体中がムズムズしてきてちゃいますね♥ 今、敏感な場所を悪戯されたら……私、変な声とか出してしまうかもしれません……」  口元からハァハァと熱い吐息を吐きながら、モジモジと不自由な身体を動かして……女の私が聞いてもドキッとしてしまうくらい色っぽい口調で巧みに誘い始める樹希。  思わず私は殆ど裸状態の彼女の姿を、色を帯びた目で見てしまう。  小さいサイズの水着であるため贅沢に横にはみ出してしまっている彼女の胸……悩まし気にくねっている腰……健康的な太腿……普段見る事は殆ど出来ない素足……小さなほくろが特徴的な色っぽいうなじ……  普段とのセリフのギャップは大いにあるが、私が好きになった樹希の瑞々しい身体が目の前の床に転がっている。  何度となく“触れてみたい”と夢見ていた肢体が手の届く場所に転がっているのだ…… 「はぁはぁ……♥ 私、目隠しされたの初めてで……今、すっごくドキドキしちゃってるんですよ。どこを触られるのかなぁ? とか……どんな道具で私の事イジメてくれるのかなぁ? とか……見えないから凄く不安なんですけど……でもその反面、凄~~く期待もしちゃったりして……」  甘く囁くように悪戯を誘導する樹希の言葉は、私の脳内で自制していた“致したい欲”を大いに刺激してくる。当初の目的とか自分がしなくてはならない事など、頭の隅に追いやってしまう程彼女の言葉は私を誘惑してやまない。  まるで催眠術を掛けられている様に……徐々に思考中枢がその活動を緩めていってしまう。  触っても抵抗できない無防備な樹希の身体がそこにあると意識しただけで私の心臓は何倍にも早く鼓動を速めてしまう。 ――触ってみたい…… 悪戯……してみたい……  そんな邪な欲望が沸々と胸の奥底から湧いてきてしまう。 「私……ですね……実はとっても敏感なんです……刺激に……対して♥」  樹希の口から舌が少しだけ顔を出し、乾いた唇を拭う様にペロリと自分の口を舐める仕草をした。  私はその仕草を見るや否や生唾をゴクリと飲み干し改めて彼女の身体を見渡した。 「触られたらどんな声を出しちゃうだろう……。いやらしい吐息が出ちゃうかもしれませんねぇ♥ 聞かれたら……恥ずかしいなぁ。本気で喘いでしまいそうですもん……」  華奢で柔らかい曲線を描く肩から二の腕……湾曲した背筋……しっかりくびれた腰回り……張りの良い尻肉……水着の裾から伸びたムチッとした内太腿……  柔らかそうな横乳……浮き出た肋骨の筋……後ろ手に回されている為少しだけチラ見えしている腋……枷に締めつけられ血管が強調される様に浮かび上がっている手首……枷の後がついている足首……裸足で晒されている足の裏……  もう何処を眺めても触りたい欲求を収めることは出来ない。  露出している彼女の肌を触ってしまいたい! 悪戯をしてみたい! 樹希に声を上げさせてしまいたい!!  頭の中がその言葉で埋め尽くされた時……私はもはや考えるよりも早く自販機にお金を入れていた。  選んだのはお金の都合上一番安いものを選ばざるを得なかったが、3千円の鳥の羽根……それを何も考えずに購入してしまった。  ボタンを押すと自販機から駆動音が響き、箱に収められた鳥の羽根が良い音を立てて取り出し口に転がってきた。  私はそれを興奮の息を零しながら取り出し、梱包していた箱やらビニールやらを雑に取っ払って羽根を取り出した。 「うふ♥ とうとう私の口車に乗せられて道具を購入しちゃいましたね? お買い上げありがとうございまぁ~す♥」  樹希は口元にニヤリと笑みを浮かべ、勢いで道具を購入してしまった私を煽る様な言葉を投げてきた。 「何を買ってくれたのかなぁ? 筆かな? マッサージ機かなぁ? フフフ……楽しみだなぁ♥」  身体をクネクネと動かし、誘うように“楽しみだ”と告げる樹希……。私はそんな彼女の背中付近を真下に捉え、ゆっくりとその箇所に近づく様に腰を下ろして姿勢を低くさせていった。 「高いお買い物してくれたから……お礼に私の弱点とか……教えちゃおうかなぁ?」  私の目の前には樹希の後ろ手に組まれた手と、曲げられた足の爪先と、脇腹が広がっていた。  しかし、購入した羽根を使ってどんな悪戯をしてあげればいいのか……まだ何も掴めてはいなかったけど、とにかく胸の周囲を撫でてやれ……と思いたち、羽根をその方向に移動させていった。 「私……ね? こう見えて……足の裏を触られるのが……とっても苦手なんです♥」  胸を触ろうとしていた私の手が、樹希の言葉に反応してピクンと止まる。彼女は今足の裏を触られるのが苦手だと言った……その情報を聞いた瞬間、私の脳裏に彼女を責める最適な方法がもたらされた。 「柔らかいモノとかで敏感な土踏まずとかをコショコショされたら……私……酷い顔で笑い狂っちゃいます♥ だから……絶対に触らないでくださいね? 絶対ですよ? ね?」  触られたくない箇所をわざわざ伝えてきたあたり、本当はそこを触ってもらいたいと思っているのだろうな……と想像がつく。現に足の爪先をグッパ、グッパと動かしてアピールしているのだから間違いない。  しかし……樹希の口から“コショコショ”という言葉が出て来るとは思わなかった。普段そんな子供のような言葉を使うキャラではないから、一層新鮮で……普段とのギャップに妙なエロティシズムを感じてしまう。  私はそんな事をボンヤリ考えながらも、誘いに乗る形で羽根を樹希の足裏へと方向転換し近づけさせていった。  樹希の足の裏……  普段ほとんど見る事が出来ない特殊な部位……  私は羽根がそこへ到着する前に、じっくり見てやろうと顔を近づけてその特殊な部位を舐めるように見始めた。  クネクネと誘うように動いている艶めかしい足指……責められる事を見越してかは分からないが、指の爪にはピンク色のペディキュアが塗られていた。  足指の動きに合わせて僅かに筋肉の動きがみられる足指の付け根……  プクッと丸みを帯びた母指球……  母指球から滑り台のように湾曲して窪みを作っている土踏まず……  その湾曲した窪みからまた丘を形成する様に膨らみを見せているカカト……  同年代の女子の足裏をこんなにもマジマジと見た事はなかったが、ペディキュアを塗っている効果もある為かその部分だけ見ると異常な程性的な興奮を覚えてしまう。  同い年なのに……大人の色気をその足裏の陰影に感じてしまう。  私は再び生唾をゴクリと飲み干し、その妖艶な魅力を放つ樹希の足裏にソッと羽根の先端を触れさせた。  サワッ…… 「うひゃあああっぁっぁぁ!?」  土踏まずの中付近に羽根先をチョンと当てただけなのに樹希の身体はビクンと震え、彼女に似つかわしくない素っ頓狂な悲鳴が上がる。 「も、もう! ダメだって言ったじゃないですかぁ♥ 足の裏は弱いんですから……別の所を触ってください? ね?」  そんな事を言いながらも樹希は足指を外側に反らして足裏の皮膚をピンと緊張させる様に張らせ、私の羽根が動き易いようにとお膳立てを整え始めた。窪んでいた土踏まずが指を反らす事によってピンと反りかえる様に張り、刺激を与えてくださいと言わんばかりに待っている。  私はその要望に応えるべく少しずつ羽根を上下に滑らせてあげた。  ツツツ……ツツツ……ツツツツツ…… 「あひゃっっ!? ぷはははははははははは!! だ、だ、だめですってばぁ♥ アハハハハハハハハハハハハハハハ!!」  樹希はその刺激にくすぐったさを感じた様子で頭を横に振りながら笑い悶え始めた。「だめ!」「やめて!」と嫌がる様な言葉を笑いの合間に挟んではいるが、本当に嫌がっている訳ではない様子……  足の裏はしっかりと反らした格好をキープしており、もっと責めてと無言で私におねだりをしている。  コチョコチョ……コチョコチョ……コチョコチョコチョコチョ……  私はそのおねだりに応えるように羽根先をカカトや足指の付け根まで素早く動かしてあげ、樹希がくすぐったさを強く感じる様にと敏感そうな箇所をコチョコチョと意地悪くくすぐってあげた。 「うひぃぃぃぃぃぃいいいい!? いきなりそんな強くくしゅぐらないれぇぇぇへへへへへへへへへへへ!! うひゃあああぁぁぁあははははははははははははははははははははははは!! ひぃ、ひぃ!!」  私が羽根を素早く躍らせれば、樹希はそれに応える様にだらしない笑いを吐き出してくれる。  身体は大袈裟なほどビクついて、くすぐりから逃げられないもどかしさを手枷をガシャガシャと鳴らす事で私に伝えてくれる。  私が、あの樹希をくすぐって笑わせている。  抵抗が出来ないように拘束された彼女の無防備な裸足の足の裏をキャンバスに見立て……柔らかなこの鳥の羽根をペンのように動かし、くすぐったさを感じる神経を無理やり刺激して笑わせている。  笑う事に縁遠くなっていた彼女を……私が無理やり笑わせている。    笑いたくないと彼女は思っているかもしれないが、私がこの鳥の羽根で彼女の敏感な土踏まずをコチョコチョと悪戯してあげるだけで無条件に笑ってしまう。どんなに笑いたくなくても……くすぐったい刺激に負けてゲラゲラ笑ってしまう。  今……私が樹希の事を支配しているんだ。  笑わせ続けるのも……少し休ませてあげるのも私の自由。  彼女は私に逆らえない。  私が羽根をコチョコチョ動かせば、彼女は機械にスイッチが入ったかのように笑う。  どんなに苦しくても……どんなに辛くても……拘束された彼女は私の強制笑わせ責めから逃げる事は出来ないのだから…… 「はぁ、はぁ……ご主人様ったら……。私……足の裏ダメだって言ってるのにコチョコチョするなんて……酷いですぅ~~」  羽根を足裏から少し離してあげると、樹希は犬の様に舌を出してハァハァと息を乱しながらはしたなく私に甘い声を零す。  一見、抗議しているような言葉を選んで言葉を紡いでいるように思えるが、彼女の足指はもっと刺激をくださいとおねだりするようにクネクネと動いて私を誘っている。  誘うような足指の動き……わざとらしく反らしたり丸めたりする足底部……いやらしくくねらせる艶めかしい腰つき……湿りを帯びる呼気を零し続ける薄紅色の唇……  それら、私の自制心を削ぎ落していく彼女の挑発に僅かも抗えない。  気付けばまた羽根を動かしたくて仕方なくなる。羽根で触って彼女の反応をもっと見たいと欲が膨らんでしまう。 ――コチョコチョ…… 「ぴひっっ!? んはっっはははははははははは! ちょ、またですか!? また足の裏を……っほ! はひぃ~っっ!!?」  反った土踏まずの中心を羽根の先を遊ばせるようにチョロチョロとくすぐったり……  羽根のしなやかさを利用してカカトから足指の付け根までを羽根全体を使ってなぞらせるようにサワ~と撫で上げたり……  私がされれば絶対耐えきれない……と思う、触り方で羽根を操って樹希の足を責めていく。  そんな私の意地悪な責めに樹希は笑いを零すことで応えてくれる。 その反応がまた……私の加虐心を奮え立たせてやまない。 「ぷっっははははははははははははははははははははは、やだぁ~ご主人様ぁっっははははははははははははははははははははは、足の裏……こそばいっっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ! ダメですってばぁ~~!」  羽根の刺激を嫌がる様に足先を左右にバタつかせて笑い悶える樹希だけど、捕らえられた食用獣の様に手と足を繋げられ海老反る格好で拘束された彼女には私の攻撃から逃げられる手段がない。 私はそんな逃げられない彼女に罰を与えるように羽根を動かして彼女を笑わせ続ける。 「ウハハハハハハハハハハハハ! いひひひひひひひひひひ、ご、ご主人っっひひひひひひひひひひ、ご主人ひゃまぁ! 苦ひっ……苦ひいれすぅぅ~~!! だひゃあぁ~~ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、笑うの苦ひぃぃ~~っっ!!」  いつも私に冷たく接してるくせに、こんないかがわしいカフェに来る客にはあんなに甘い声を出して! 客がお金を払って道具を買うようにあんな誘惑を口から出して! 清楚可憐だったあんたは何処に行ったのよ? 真面目で可憐な印象を与えていた学校でのあんたは何処に行ってしまったのよ! そもそも私の名前を源氏名にするってどういう事? 私に何も相談してくれなかったわよね? この店の事だって何も教えてくれなかったわよね? ねっ? 私は心の中でそのように問い詰めながら怒りを発散するように足裏への刺激を強めていく。 土踏まずの皮膚を引っ掻くように羽根先の芯の部分で強くなぞったり、足指の間にねじ込むように羽根を挟み込んで指の股をゴシゴシと素早く押し引きしたり、カカトの周りや足の側面をいやらしくなぞり回したり……樹希が嫌がる刺激を優先的にチョイスしながら彼女の笑いが途切れぬよう責め立てていく。 「ぶはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、ゆ、指の間はヤバいっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、そこはダメですぅぅっふっフッフッフ、ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、っはっはははははははははははははははははははははは!!」 これは罰なんだ。 私に対して何の相談もなしにこういう事をしていた彼女への罰! 私がどれだけ寂しい思いをしてあんたと接していたか分かる? 私がどれだけあんたの事を想っていたか―― 怒りのままに羽根を動かしていた私だけど、そこまで思いが至るとピタリと手が止まる。 そう……感情のままに責め立ててはいたけど……まだ肝心なことが分かっていない。 そもそも樹希がなんでこんないかがわしい店でこんな事をしているのか…… 自分の意志でやっているのか……それとも、何かしらの脅迫を受けてやらされているのか…… ついつい想いが暴走して……こんな鬱憤を晴らすような行為に走ってしまっていたけど……私のこの店に入った目的は彼女の真意を確認する事だったはずだ。 なぜこの店で働いているのか……なぜ私に秘密にしていたのか……そして、なぜ私の名前を源氏名に使ったのか……。 聞かなければならない。彼女自身に…… でもそれは学校や家の前で聞ける内容ではない。きっと私が問い詰めてもいつもの様にはぐらかすに決まっている…… 店の中に入るのを見たと言っても……あんたの写真が店の前にあったと言っても……私の話など無視していつも通り払い除けるだけだろう…… だから、現行犯である“今”聞くしかない! こんな状態で言い逃れなど絶対に出来やしないのだから…… 「ご主人様ぁ~なんで止めちゃうんですか~? 私ってばまだまだ満足してませんよ~? ほら……脇腹とかワキの下とかも弱いんですからぁ~~触ってくださいますよ……ね? ね?」 誰かに強いられているのであれば……こんな“もっともっと”みたいな催促なんて行わないはずだ……。 だとすれば……考えたくはないけど、このおねだりもこの仕事も……樹希の意志で行っていたりするのか……? 「まだまだ時間はありますよぉ~? ご主人様ぁ~サトミの事ぉ~~もっといっぱいコチョコチョ……してよぉ~♥」 私は一つ息をついてゴクリと唾を呑み込んだ。  そして持っていた羽根をテーブルの上に置いて、羽根を握っていた手を今度は樹希のアイマスクへと伸ばしていく。 ゆっくりとアイマスクを耳から外してあげると、樹希の可愛らしい顔が露わになった。 部屋の電飾がダイレクトに目に入り、急に眩しさを覚えた樹希は私を見る前に自分から目を閉じた。 そして目が明るさに馴染み始めた頃合いを見計らってもう一度目をゆっくり開くと……彼女の瞳には複雑な表情を浮かべている私の顔が映った。 その顔を見た途端、幽霊でも見たかのように反射的に身体をビクつかせて……樹希は私に声を上げる。 「な、な、なんで……聡美が……ここにっ!?」  ――と。


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