オペレーション・ブルーアルカディア♯3-⑥
Added 2020-12-31 15:53:49 +0000 UTC6:這い寄る深淵 美波 「ぶはっっっ!! んがっっひはぁっはははははははははははははははははははははははは、ぎひぃぃっっ!! んひぃぃっひひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、んびゃっっははははははははははははははははははははははははははははははは、イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、ぎははははははははははははははははははははははははは!!」 船底の一室にしては小綺麗な白い壁に囲まれた美波の拷問研究室……その壁が彼女の弾けんばかりの痛烈な悶笑声を乱反射させ、彼女を見守る2人の耳奥にその声を突き刺していく。 美波 「ぎゃはっっははっっははははっっぐはっっあはははははははははははは、っひひひひひひひひひひひひひひひひ、いへひぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! かひっ、はひっ、あひひっっひひひ、うひひひひひひひひひ、ぎひひひひひひひひひひ、ンガッッッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」 処刑モードのすぐ下の項目に隠されていた秘密の機能……時短モード。そのモードの“開始”ボタンをクリックした瞬間、それまで体裁を保とうと口元に力を込めて悔しそうに笑って見せていた美波も一瞬にして破顔し悲鳴交じりの笑いを吐き出し始めた。 美波 「がっっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、うへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ま、ま、待ってぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ、これヤバいっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ホントにやばいっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、い、いぎがっっははははははははははははは、いぎがでぎないぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ンギャアァッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」 美波の身体には先程の数の倍……いや、三倍、四倍近くにまで増えたマジックハンドが群がり彼女の美しい裸体を埋め尽くしている。 極端に長く作られた椅子の背もたれには腕を拘束するための穴が二つ空いていてその穴に美波の腕は通されている。その穴から腕が抜けないよう穴の出口には金具の輪がはめられており、抜こうとすれば穴より大きいその金具が邪魔をして決して抜くことは叶わない仕様にされている。肘の関節より上は比較的自由に動かすことは可能だが、頭より少し高い位置に空いた穴に腕が通されている為手は万歳の格好を強いられ今一番守りたい思っているであろう“腋”の部位だけは完全に無防備を余儀なくされている。上腕は自由なのに肝心の“腋”の部位が隠せないというこの拘束はこの椅子に座らされた者に多大なもどかしさを生んで精神的に苦しめる。 手や上腕は自由なのである。普通の拷問なら手首などに枷が巻かれ完全な拘束を被者に強い、不自由さの絶望と不安を植え付けるのが定石であるところだが……この拘束は上腕が自由であるため責められていても拘束をされているという意識が薄まってしまう。しかし、くすぐり責めにおいて必須となる“腋”の部位は完全に無防備なまま…… 手は自由なのに肝心な箇所が不自由にされているという感覚は被者に対して過度のストレスを植え付ける。 抵抗など絶対に出来ない筈なのに、なまじ動けてしまう分思わず腋を庇おうと手を下ろしたくなってしまう。しかし庇うことは出来ない……穴から腕は抜けないし、手を強引に前に回そうにも背もたれが邪魔で手は背もたれを叩いてしまうだけとなる。その“一番守りたい場所を守れそうで守れない”というもどかしさが被者の精神をジワジワと削り取っていく。無駄に手をバタつかせることも疲労に繋がり、完全拘束されるよりも余計に体力を消耗してしまう…… 美波はそこまでを計算に入れてこの椅子を開発した。 不完全な拘束をすることによって被者の体力をより良く削れるだろうと考え、敢えて手と上腕を拘束しないでワキをを晒させる拘束を出来るよう施した。 結果として被者は十人中十人とも同じ行動を繰り返した…… 腕が抜ける訳がないのに必死に腕を抜こうと試みたり、手が前に回せない苛立ちをぶつけるかのように背もたれの裏を拳で叩き続けたり……無駄に体力を消耗すると分かっていながらそのような行為を繰り返してしまう。まさに美波の目論見通りの結果が得られたのだ。 美波 「はぎゃっはっっははははははははは、いぎぃひひひひひひひひひひひひ、うひはっへへへへへへへへへへへへへ、にぎっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、ぐひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! ゲホッゴホッッ!! ゲホッ……ほほほほ、いひひひひひひひひひひひひひ、はひはっはははははははははははははははははは、ゲホゲホゲホっ!! っははははははははははははははははは、ぃひぃ! はひぃぃっっ!!」 この椅子の開発を行ったから美波だけは無駄な体力を浪費せず大人しくくすぐられている……というご都合主義な事態はこの椅子に限り起こりえない。最初は彼女も意識的に手を動かさずくすぐりの衝動を耐えようと試みていたのだが、その決心も数秒と持たずに崩され……今では自分が実験材料にしてきた信者達と何も変わらない勢いで背もたれを叩き、体中を犯し尽くしている“あの刺激”に抵抗しようと必死に無駄な体力を消耗している。 美波 「はぎゃあぁぁっっははははははははははははははははははははははは、うはっははははははははははははははははははははははは、も、も、もうらめっっへへへへへへへへへへへへ、い、いぎがぁぁはははははははは、いぎが吸えないっっひひひひひひひひひひひひひひ、笑いが止めらんないっっひひひひひひひひ!! ゲホゲホゲホっ! オエッ! ごほごほっっ!! くほっほほほほほほほほ、ぃぎっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、死んじゃうっっふふふふふふふふふふふふ、ホントに死んじゃうっっふふふふふふふふふふふふ、ひぎゃあぁぁあぁっっははははははははははははははははははははははははは、うははははははははははははははははははははは!!」 いくら背もたれを叩いてもワキに群がっている機械が手を止めてくれる事は無い。 先程までは数十本の子供のような小さな手がくすぐったい箇所を探して右往左往しながら責めを行っていたが、今ではワキの部位を埋め尽くさんとする量のマジックハンドが群がり決められたか所をランダムなタイミングで刺激し美波に耐えがたい擽感を与え笑い悶えさせている。 先程まで攻めていた手が人間の赤ちゃんの手より少し小さい物であったのだが、この時短モードが始まるや否やその手はボックスの中へ戻っていき、代わりにその手よりも更に小さいマジックハンドが大量にボックスの中から這い出してきた。 もはや腕の代わりとして機能している樹脂製のチューブと同じくらいの細さの手が何百……下手したら何千もボックスの中から出てきておりそれぞれ決められた箇所に配置され、命令が下ればすぐさまその決められた箇所を刺激できるよう肌に密着してその時を待っている。 まだ右往左往しながらくすぐる箇所を変えていって貰った方がくすぐったさに備えが多少なりとも出来たであろうが……数千もの極小マジックハンド達は決められた箇所から一切動かない、くすぐる時だけ指をチョイチョイっと動かして決められた箇所を刺激するだけ…… その、移動をしない手のくすぐりは、受け手からしてみれば最悪であると言わざるを得ない。くすぐったい箇所を埋め尽くすように配置された手が次に何処を刺激されるのか分からないのだから刺激に備えたくても備えることが出来ない。動く手は勿論ランダムであるため指が動くと思いがけない刺激を毎回新鮮に味わされ、いつまでたっても刺激に慣れることが出来ない。 それに輪を掛けるようにくすぐり方も一切の慈悲は無い。 被者を笑わす為だったら例え傷がつこうが痛みを伴おうが平気でその刺激を実行してくる。 例えば美波の場合で言うなら、彼女はとにかくワキを触られるのがとても弱い……特にワキの窪みを爪を立てた指で引っ掻かれると我慢などする暇も与えられず無様に笑ってしまう。本来……こういう拷問をヤる側であるはずの彼女がそのような弱点を敵にわざわざ教えるような事はしないし、そんな弱みがあると知られないよう意地でも隠し通さなければならない情報であるのだが、被者を笑わす事だけに特化したこの機械にはそのような“隠し事”は通用しない。数分程度くすぐって反応の大小を比較されれば何処をどのように刺激すると最も効率的に笑うかを分析されてしまう。 分析されたうえで、更に責め方のプログラムも毎時毎分更新され弱点の刺激をどういうタイミングでどのように行うか等の最適解を算出しマジックハンドに反映されていく。この責めが処刑モードの時短モードは一切の無駄が無い。普通のモードなら呼吸のタイミングを調節しながら責め抜いていく機能が働いて苦しさを最大限に保てるようくすぐりを行うが、処刑モードにはそのような生命維持の微調整が一切行われない。死を目指す責めなのだからそのような配慮が必要がないのは言うまでもないことだが、死を早めようとする時短モードは更にたちが悪い責めを執り行う。 処刑モードでさえ少しずつ酸素の吸える量を調節して徐々に死に向かって笑いの量を高めていく責めを行うというのに、この時短モードはそのような調節すらも放棄してしまう。 とにかく被者を笑わせて肺の中の酸素を全て吐き出させ、なおかつ吐き出した酸素を補うための呼吸運動を阻害するために更なる笑いを強要する。肺の中の酸素を吐き出させるためだったらどのようなくすぐり方も辞さず、常に被者が酸欠を繰り返すよう体中のあらゆる箇所をあらゆる技法を用いてくすぐり笑わせ責めにする。 くすぐりアームがワンランク小さくなった理由は、被者の“笑いのツボ”をより繊細に……より細かく強弱をつけて責め立てる為……。 アームが体を埋め尽くさんばかりに大量に配置された理由は、刺激された箇所によって目まぐるしく変わる“くすぐりに弱くなった箇所”を効率的に責める為……そしていつ動くか分からない予測不能なランダム性を被者に与える為……。 このくすぐり椅子は、まさに人を笑わせる事だけに特化した拷問器具であり処刑道具である。 そんな恐ろしい器具に……まさか開発者である美波自身が掛けられるなど、当の本人が想像出来るはずもなかった。 他人の生命がどのように朽ち果てようとも別に気にも留めなかったし、このような児戯ともとれる行為で命を脅かされる被者の気持ちなど考えて作ったわけではない。だから完成したと言っても過言ではない。人の命を軽く見ていたからこそこのような残酷な機械を趣味の延長線上で作り上げたと言っても否定は出来ない。 笑いながら死んでいく人間とはどのような最期を迎えるのか? 美波はそれを知りたくてこのマシンを開発した。実際篠一歩手前まで責め抜いたことは何度もあったが、人の手では無意識に手加減が入ってしまい最後まで持っていくことなど出来なかった……だから機械でそれを再現しようとした。くすぐりによって死を迎える人間をどうしても見てみたかったから……。 美波 「グッヒャッッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、うがっははははははははははははははははははははははははは、きへ、へひっ、えひっっひひひひひひひひひひひ、だぁっっははははははははははははははははははははははははははははは、ぐるじぃぃひひひひひひひひひひひひひひ、いぎっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 しかし、その笑いながら死んでいく人間を客観的に見るという願望はついに叶わなかった。自分がその第1号となろうとしているのだから…… 死にゆく顔を見る事は叶わない……。その代わり、このマシンがどれだけ鬼畜な責めをするかを最後に身をもって知る事だけが出来る。 美波 「いっっぎゃっっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、ヒぎャはははははははははははははははははははははっイハハハハハハハぅはははははははははははははははは!! 腋だめっっへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ンヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ激しすぎるっっふふふふふふふふふふふふふふふふふふ、いへひぃぃっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 美波の弱点が“腋”だと判断を下したマシンは、極小のくすぐりアームを片方の腋だけで100以上配置させ……裸であるはずなのにその部分だけ袖が付けられたかのように白い手が埋め尽くし、傍目には彼女の腋の肌の色が確認できない程ビッシリと小さな手が集まり怪しく蠢いている。 腋の窪み部分を強く引っ掻かれる刺激に弱いという分析結果が出たからといっても機械はそれだけを行うという単調な責めは行わない。 二の腕の付け根であり腋の入り口に差し掛かるワキと腕のギリギリ境目の柔らかな肌の部位を、触れるか触れないかの距離感で微弱にソワソワとこそぐったり、背中側に近い腋の縁周りを揉んだり触ったり撫でたりなぞったりと微妙な刺激を加えて腋へのくすぐり耐性を落としにかかったり、胸の丘陵に差し掛かる円周を焦らす様に撫で上げむず痒さと快感衝動の狭間の刺激を送り込んでみたり、腋の部位より下の肋骨が浮き出始めるくらいの箇所を指の先でコリコリコリっと強めに刺激して強い擽痒感を与えて身体が飛び跳ねるくらいの反応を引き出したり……。ありとあらゆる刺激を“腋を含めた腋の近隣”に施してくすぐりの刺激に十分弱らせた事を確認して、最弱点である腋の窪みにトドメの刺激を送り込むのである。 ただでさえ弱い腋の部位を、笑わせながら更に焦らす様に弱くさせて……もはや触られるだけでも大笑いしてしまう程弱く成り果てた腋の窪みの丘陵を、20本ほど集まった極小のマジックハンド達が何の慈悲も見せず一斉に爪を立ててガリガリと引っ掻いて刺激してくるのだ……。弱い箇所を更に弱くさせられ、突然狂ったようにその部位だけを200本の指が寄ってたかって引っ掻き回していく刺激はもはや筆舌に尽くしがたい。その瞬間だけは美波も笑い声とは別に言葉にならない悲鳴を腹の底から吐き出し口を大きく開けたまま痙攣するように笑いを吐き出してしまう。 この苦しさは、味わったものにしか分からない。この声にならない悲鳴を出した瞬間の、肺が空っぽになる窒息感は彼女の思考回路すらもブツリと途切れさせる。目の前は真っ白になり……自分が笑っているのか叫んでいるのかすらも分からなくなる。 横隔膜を無理やり圧迫して強制的に収縮させ笑いを生ませているかのような強制感……腹が左にも右にも捩れ無理して背中側を向いてしまっているかのような突っ張る様な腹横の痛み……肺が痙攣しているかのように小刻みに呼気を吐きどうにか酸素を取り入れようと筋肉を収縮させようとするが、すぐに押し寄せてくる笑いにその機能は阻害され強烈な窒息感を肺の中にも感じてしまう。 美波の中にはその時はっきりとした“死”の未来が脳裏に浮かぶ。 このまま同じことを続けられれば間違いなく“死”を迎える事になると自覚できる……それほど苦しい。 美波 「がはっっっ…………かひっ!? あぎぎっっひひ、ぐひっ……ひひっっ! んぎっっひは! くかはっっ!!!!」 息が吸えないと笑いが笑いにならない。 肺に酸素が残っていない状態であるにもかかわらずまだ酸素を吐こうと肺の筋肉と横隔膜が痙攣を起こす。 しかし酸素がないのだから吐き出すものは無い……笑い声でさせも吐き出せない。 美波 「くはっ! ぷはっふっっ!! んくぅぅふぅぅっ……はひはひっ! んはっ、んはははははははははははははははははははははははは、くはぁぁっっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」 腋の窪みへの責めが一旦引くと、やっと一息だけ酸素を吸える。笑いに疲弊した腹部と胸の筋力をどうにか稼働し肺に無理やり酸素を吸わせてどうにか窒息を免れる……しかし、マシンは必死に命を繋ぎとめようと試みる美波の努力をすぐに無に帰すよう別の箇所を責め立て彼女に新しい笑いをもたらし、折角吸った僅かな酸素も吐き出すよう要求を突き付けてくる。 美波 「がはっっははははははははははははははははははははははははは、ぐぎゃあぁははははははははははははははははははははははははははは、やべでっっへへへへへへへへへぐるじぃぃっっ!! ホントにぐるじぃぃぃひひひひひひひひひひひっひひひひひひひひひひひひひひい、ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、んははははははははははははははははははははははははははは、えぎっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ……」 ワキと同時並行で責め立てている箇所は勿論複数ある。首筋もそうだし脇腹もそう……腰、尻、内太腿は勿論、膝裏や膝……脛に至るまでありとあらゆる箇所にくすぐりハンドは這い回っている。 そんな中でも美波の弱点その2である足裏にはワキにも負けず劣らず大量のくすぐりハンドが集められており、外見にはこちらも白い靴を履かされているかのような見た目になる程白い極小の手に埋め尽くされている。 美波 「がはっっ!!? はぎっひっっ!! あ、あじ、やめろっっほほほほほほほほ、今……あじの裏はやめぉぉぉぉぉぉ!! んがっっははははははははははははははははははははは、ぎはっっへへへへへへへへへへへへへ、うぎひひひひひひひひひひひひひひひひ、いっひひひひひひひひひひひひひひひひ、おほっへへへへへへへへへへへへへへへへへ、くへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、いぎひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 美波においては足の裏は突発的な刺激には弱いが、継続的にくすぐられればやがて“慣れ”を覚え最終的にくすぐったさをあまり感じなくなる……。それは彼女の足が敏感であるが故……敏感過ぎるが故、くすぐりという行為が続けば続くほど人間の防衛本能が過剰に働き、適応が素早くなされてしまいくすぐりの刺激を麻痺させてしまう。敏感であるが故……目の届かない場所であるが故そのような反応が生まれてしまうのだが、そういう体質であることを機械は素早く察知し対応してくる。 少なからず存在するそのような体質の持ち主への対処法もこの機械は心得ている。 まず、ワキの弱点の時同様……土踏まずや足指の付け根など刺激に特に弱い箇所には触れない。 それ以外……例えばカカトや足指の先……足裏の左右側面やくるぶし……そういった触られればくすぐったいまではいかないけど“むず痒く”は感じてしまう箇所を、優しく……優しく……丁寧に……念入りに触って足裏全体をむず痒くさせて焦らし、いよいよ「こそばゆいかも!」と感じるまでに焦らし尽くした瞬間を見計らって足裏の弱点を一気に責め抜いていく。 足指に掛かったワイヤーが足指を引っ張り……足裏を反り返させている利を生かし、皮膚が緊張するほど伸びきった土踏まずの敏感な皮膚を、30近い手が一斉に群がり……300本にも達した指先達がそれぞれの部位に適したくすぐり方で指を動かして無防備な彼女の土踏まずを責める。 土踏まずの中心に構えていた手が爪の先で痒い所を掻くようにガリガリと強く引っ掻いたかと思えば、引っ掻きが終わった瞬間その手の周りに待機していた手達が交代するかのようにその手に代わって土踏まずの周囲をモジョモジョとこそばして違う刺激を送り込んでいく。それが終わるとまた土踏まずの中央に陣取っていた手が今度は爪の先で敏感な皮膚を撫で回すかのように優しく触れ、それが終われば土踏まずの周囲の手が一斉に皮膚表皮を上下にゆっくりなぞってこそばゆい焦らし責めを行う。これらのルーティーンも決まった法則性を持たず、土踏まずの中心を強く刺激するタイミングはまちまちで……そういったランダム性が美波の“刺激に慣れよう”とする心を無に帰していく。 焦らしと責めの応酬が何度も続くと……やがて足の裏は、土踏まずの刺激だけでなく足の側面やカカトや足指の間でさえも耐えがたい笑いを生み出すようになってしまう。いついかなる刺激が目の届かない足裏に送られるか分からないランダム性……そして、機を見て繰り出される土踏まずへの強烈なくすぐり責め……。このような無慈悲な責めに耐えられる足裏を人間は持ち合わせてはいない。刺激に慣れない……刺激の予測がつかないくすぐりに晒されて笑わない人間など居やしない。 美波の悔しそうな笑い顔がそれを端的に示していた。 人を笑わせて苦しめるのが役目だったはずの自分が……このような無様な笑いを撒き散らして悶え苦しんでいるという事実が我慢ならなかった。 我慢ならないが……どうする事も出来ない。もはや頭の中で組んでいた“脱出のプラン”さえ真っ白に塗り替えられ何も考えられない。 ただ無作為に笑わされれていく。苦しいと分かっていても笑いは止められない。笑えば苦しくなると理解しているのに笑う事がやめられない。楽しくもないのに……嬉しくもないのに……。 美波 「ぎゃあぁぁっはははははははははははははははははは、ひっ、はひっっひひ……ぐひひひひひひひひひぃひひひひひひひひひひひひひひひへひひひひひひひひひひひひひひひ、ゲホ、ゲホ、ゴホ! ゴはっっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、ギャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ……」 目の前が酸欠で真っ白に染まっていく。意識が遠のいている証拠だ。 もう少し酸欠になれば人間の生まれながらの生命維持装置が働いて“気絶”することが出来るかもしれない! そう思ったのも束の間、その想いを察知したのかのように頭の周囲に構えていた2本のマジックハンドが美波のこめかみに向かって密着し一斉に致死に至らないほどの電撃を彼女に加える。 その電撃によって緩やかに意識を手放そうとしていた脳は強烈な痺れと共に覚醒を余儀なくされる。 指先から放たれるその電撃は意識が朦朧としていた被者を覚醒させ、気絶という逃げ場に逃げ込もうとした被者を無理やり現実へと引き戻し再び笑い地獄の続きへと誘っていく。 さらに言えばその電撃のせいで、脳は“電気刺激”に過剰に反応するようになり、刺激として送り込まれてくる感覚刺激さえも過敏に感じるようになってしまう。つまりは……電撃を受ける度に過敏になってしまうのだ。くすぐりの刺激に…… 美波 「はぎゃ~っはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、ゲヒ、ゲホ! くはっっっはっっっっっかはっっっ!! んがっっっはっっひひひひひひひひひ、ぐひひひひひひひひひひひひ、ぃひひひひひひひひひぃぃぃっっひひひひひひひひひひひひひ、や……め……げっっえへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! くへっっきひっっ!!」 ただでさえ死ぬほど苦しいくすぐりの刺激なのに……脳まで刺激に過敏になってしまってはもはや打つ手は何もない。笑いはやがて苦しそうな呻き声に変わり始め、目は焦点を得ないまま虚空を見るようになる。 もはや美波の生命維持に一刻の猶予も存在しない。水の中に顔を沈められてなお笑わされているかのような強烈な窒息責めに美波の顔色も薄暗く陰っていく。 もはやこれ以上は本当に命にかかわるのは明らかなのに……。それでもこのマシンの責めを止めようとしてくれない千沙の非情な目を見た瞬間、美波はついに心が折れてしまう。 彼女の覚悟は建前でなく本物であり、自分が折れない限りは本当に“死ぬまで”このマシンを稼働し続ける……そのような意思を感じ取り急に背筋に寒気を感じてしまった。 このままでは本当に“殺されてしまう”と……。 そう感じた瞬間、彼女の折れた心は命乞いの言葉を発し始めた。 千沙の覚悟に負けたという敗北宣言を……その口から発してしまった。 美波 「わ、わ、わ、わがっだ! 言う!! 本当に言うからっっははははははははははは、止めてっっへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! 千沙ぢゃんの意志が強いのはわがっだがらぁぁははははははははははは、おでがいぃぃひひひひひひひひひ、もうとめでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」 千沙 「なんだ? 降参か? 本当に降参なのか?」 美波 「わ、わ、わだじの負げでいぃぃひひひひひひひひひ、ゲホゲホゲホっ! 負げでいぃがらぁぁははははははははははははははははははは、ゆるじでっっへへへへへへへへへへ、おでがい、助げでぇぇへへへへへへへへへへへへへ!! 死にだぐないぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 涙を流しながら……唾や涎が吐き出されるのも気にも留めず……苦しそうな咳き込みを繰り返しながら、美波は必死に懇願した。もはや笑い過ぎてガラガラになった声で必死に…… 千沙 「別にこのままお前が息絶えるのを見ていても私は一向にかまわんのだが?」 美波 「おでがいぃぃひひひひひひひひひひひゲホゲホ! 死にだぐないぃのぉぉ!! 刑務所でもどこでも入るがらぁぁははははははははははははは、ゆるじでっっへへへへへへへへ!! おねがひぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! はひ、あひっっはひぃぃ!! ゲホゲホ!!」 千沙 「IDとパスワード……それとこのマシンを取引した要人たちのリスト……それらを渡すと誓うか?」 美波 「は、はひっ! 誓いましゅぅふふふふふふふふふふふふふ、何でも言う通りにしまずがらぁぁっっはははははははははははははははははははははは!!」 千沙 「……分かった。良いだろう。ただし……安全が確保されるまで拘束は解かないぞ? 全てのデータが本物だと分かって始めてお前の拘束を解いてやるからな……」 美波 「な、な、何でもいいからはやぐどめでぇぇへへへへへへへへ!! も、も、も、もう! 息がっっはははははははははははははははははははは、喋ると息が続かなくなっちゃうぅぅふふふふふふふふふふふふふふふ!! ケホケホッ……ゲホゲホゲホ!!」 酸欠により紫色に染めた顔で笑い狂う美波に、確かにこれ以上は本当に限界だろうと悟った千沙は彼女の要求通りマシンの一時的な停止を実行してあげた。 千沙の指示を受け取ったマシン達は、今まで命を奪うために活動していたというのが嘘であったかのようにその動きを一斉に止め……瀕死の渦中にあった美波の笑いを慈悲深く収めていく運びとなった。 美波 「かっっはっっっ……はっっ…………はひ、かひ、はひっ! あひ、はひ……はひ……」 くすぐりが止まっても乱された肺の呼吸機能はすぐには回復せず、美波は目を見開きながら必死に酸素を吸い込もうと口を大きく開けて肩を上下させる。 目からは涙を垂らそうとも、口の端からは涎が滴り落ちようとも……死の淵に立たされていた美波は必死に生にしがみつこうと必死に荒い呼吸を繰り返す。 千沙 「止めてやるのはこの一回限りだ。もし一つでも嘘をついたなら、後は死ぬまで笑い狂ってもらうつもりだから……そのつもりで言葉を紡げよ?」 リモコンを片手に冷ややかな視線を送る千沙の目にその覚悟を見た美波は、咳き込みながらも無言で頭を縦に振る。 千沙 「それじゃあ……まずはこのカウントダウンを止めてもらおうか。IDとパスワードをゆっくりと教えろ……一言一句間違えんようにな……」 美波 「は、は、はぁ……はぁ……はぁ……。わ、分かった……分かったわ……言う……すぐに……言うから……」 十分に酸素を頭に行き渡らせた美波は、深い呼吸を繰り返しながらも千沙の要求を呑むかのように言葉を零し始める。 千沙 「まずはIDだ……」 しかし、死の淵からギリギリ生還した美波は脳に酸素が行き渡ると同時に再び今の状況から“自分だけが逃げ出せる”算段を巡らし始めそれを実行するための言葉を吐き始める。 美波 「あ、IDは……私の名前……MINAMIで良いわ……大文字でミナミよ……」 千沙 「……パスワードは? パスワードは……なんだ?」 頭の回る悪党に知恵を巡らせる隙を与えてはいけない……千沙もそれを理解している筈だった。しかし、自分も苦しめられたからこそこのマシンがいかに無慈悲で凶悪な物か分かっていたため、瀕死になっている美波に僅かな同情が生まれたのは間違いなかった。 ここまで苦しめたのだから……命乞いするほど死に対して恐怖を抱いたのだから……まさか“嘘のコード”を教える事などないだろうと……高をくくってしまった。 本来ならば責め続けながら尋問するべきだった……。言わないと止めないと銘を打って尋問をしておくべきだったのだ。 しかし、千沙に生まれた僅かな同情心が彼女に知恵を巡らせる隙を与えてしまった。 決して隙を与えてはならない相手だというのに…… 美波 「パス……ワードは……コチョコチョよ♥」 千沙 「……? なに?」 美波 「大文字でK・O・C・H・O……K・O・C・H・O……私の大好きなコチョコチョがパスコードよ♥」 千沙 「……ふん! お前らしいふざけたパスコードだな……」 美波 「クフフ……そう。私はコチョコチョが、だぁ~い好きだから……。分かるでしょ? その気持ち……」 千沙 「岬! すぐにそれを入力しろ!」 岬 「お、お、おう! 早速今やったんだが……」 千沙 「そうか……カウンターは止まったか?」 岬 「と、止まった……というか……」 千沙 「なんだ? 止まったんじゃないのか?」 岬 「い、いや……一言一句間違いなく入力したんだけどよぉ……カウンターが……一気に0秒まで早送りしちまって……」 千沙 「っっ!!?」 美波 「クフフ……♥ 残念でした……ドッカァ~ンよ♥」 ――ズズズン! ゴゴゴゴゴゴゴ……ズズズン!! 美波の言葉と同時に船底が重い音を響かせて巨大地震に見舞われたかのように大きく揺れる。 千沙 「み、美波っっ!! お前、嘘を伝えたなっっ!!」 千沙の荒げた声も船底から次々に鳴り響く地鳴りのような爆発音に掻き消され美波には響かない。 美波 「さぁ、どうする? もう船は数分もしないうちに沈むわ♥ この船底から脱出できる潜水艇がある場所を知っているのは私だけよ? 今すぐにこの拘束を解きなさい! さもないと……本当に全滅よ?」 千沙 「っっ!! お、お前というやつはっっ!!」 爆発音と大地震のような揺れが続く中、船内の警告灯は光を発しスピーカーからは緊急事態を告げる避難アナウンスが繰り返される。 千沙や岬のすぐ下の通路には海水が勢いよく入り込む音を立てており、もはや一刻の猶予も彼女達には残されていない事を安易に想像させる。 まさか自分の命を懸けてまで船の爆破を行うなど考えてもいなかった……。 この絶望的な状況下でまだ“交渉しうる材料”を作りえるとは思いもよらなかった……。 爆破が起きてしまった以上この船は確実に海底に沈む……。このまま船の地図もなしに船底付近から甲板まで迷わず脱出するなど恐らく不可能だろう……。つまりは美波の要求を呑むしかない。彼女なら脱出の為に潜水艇の一隻や二隻は用意していてもおかしくはない。用意周到な彼女の事だから……きっと……。 千沙 「…………………………」 岬 「……おい、コマンダー! どうするんだ? この船……本当に沈んじまうぞ!!」 千沙 「…………………………」 しかし、このまま彼女の言う通りに開放して良いものだろうか? それこそが罠なのではないだろうか? 他に手は無いか? 何か脱出できる手立ては…… 千沙 「……岬……」 岬 「お、おう?」 千沙 「さっき……皐月に連絡を取ろうとして取れなかったよな?」 岬 「あぁ! 恐らく電磁波か何かで通信を妨害しているんだと思う……。それのせいで通信が妨害されて……」 千沙 「その妨害……止められるか?」 岬 「は、はぁ?? 止められるかって……そ、それは無茶だろう! その妨害機器が何処にあるのかも分かんねーんだから!」 千沙 「妨害機器の場所が分かれば可能なんだな?」 岬 「あ、あぁ……ココの道具を借りて少し弄れば壊せるだろうけど……」 千沙 「なら……その妨害機器……何処にあるのか今一度ヤツに聞くしかないな……」 岬 「お、おい……コマンダー?」 千沙 「美波……どうせお前の事だ……解放したところで潜水艇に我々を乗せる気はないのだろう?」 美波 「あら……そんな事は無いわよ? 丁度3人乗りだし……快適に海の底から脱出できると思うけど……」 千沙 「いや、もうお前の戯言に振り回されるのはうんざりだ……だから、我々はお前の脱出路には同行しない!」 美波 「んなっ!? し、心中する気っ!? 私と一緒に……」 千沙 「いや、それも御免だ。我々は我々の仲間の言葉だけを信じて脱出を行う……」 美波 「……そんなことできると思ってるの? 船底が爆破された今上の階は緊急時の隔壁を閉じて海水の侵入を防ごうと通路を閉じている筈よ! もう上には登れない! この船底から脱出するには潜水艇しか道はないのよ!」 千沙 「確かに私や岬は作戦にかかわる部分しか知識は無い……しかし、皐月は違う。あいつはこの船の全容を把握している!」 美波 「皐月ちゃんが……全容を??」 千沙 「あいつには船にまつわる全ての知識を頭に詰め込むよう指示を出しておいた。船の詳細なスペックから各デッキの抜け道……船の操舵のやり方から船の防衛機能へのハッキング方法まで何もかもな……」 美波 「……………………」 千沙 「頭の中に地図の入っている皐月に無線さえ繋がればこの船が沈む前に脱出だって可能だ。降りている隔壁も船をハッキングすれば簡単に操れる」 美波 「うくっっ……」 千沙 「お前は船を爆破したことで我々を追い詰めたと考えただろうが……逆だ。この拘束を解かない限りお前は間違いなく死ぬ!」 美波 「くっっ! いいから外しなさいっ!! こうしてる間にも海水は船底に入り込んできてるのよ! 船底に近いこのフロアはもうすぐ水で満たされる!! そうなったら脱出なんて言ってられないわ!!」 千沙 「これが最後の交渉だ。死にたくなければ……言え!」 美波 「…………な、何をよ?」 千沙 「通信を妨害している機器を置いてある場所だ」 美波 「っ!?」 千沙 「今度はもう嘘は通じんぞ! この拘束は我々が皐月と通信が行えない限り外すつもりはない!」 美波 「ちょっ! そんなことやってる時間は無いって言ってるでしょ!! 水が入ってくるのよっ!! すぐにっ!!」 千沙 「だったら……」 美波 「……っ!!」 千沙 「だったら、包み隠さず素直に言え! 今すぐに!!」 美波 「……うぅっっ!!?」 3人のいる研究デッキへ海水が浸水するまで……猶予は僅か数分。 美波との交渉に応じない事を決めた千沙は彼女との最後の交渉に乗り出す。 一方……この出来事の数分遡ったメインデッキでは、舞華と瑞樹が今にも拳を交じらせんとするように対峙しお互い睨み合っていた。