オペレーション・ブルーアルカディア♯3-②
Added 2020-12-31 15:27:47 +0000 UTC2:囚われの柳津美波 ――ブルーアルカディア号 船底区画 同23時45分。 背もたれの異様に長い金属製の椅子…… その背もたれは座った者の頭よりも遥か上まで伸びていて、頭上より少し上の部分には座った者の“腕”を拘束するための2つの穴が開いていた。 先程まではその椅子にスニーカーズのリーダーである金剛千沙が座らされ、悪の元凶である柳津美波によって過酷な拷問を受けさせられていたのだが……内部工作担当の真中岬の手によりその立場は逆転し、今ではその椅子を開発した当人がその椅子に座らされ拘束されてしまっている。 千沙 「単刀直入に聞くが……あのデータは何処に隠してある?」 布切れ一片ほども被されていない純粋なる裸体を惜しげもなく見せながら拘束されている美波に、千沙は色目を使うことなく鋭い眼光を向け最初の質問を口より出す。 美波 「データって……何の事かしらぁ? ちゃんと説明してもらわなきゃ分かりかねるわね……」 手は天井へ向けて垂直に万歳の格好で拘束、足は地面に足底をつけることも許されず無駄に高さを持った椅子の脚の中腹付近に設置された足首用の枷に拘束され足の指に至るまでを完全拘束されてしまい、椅子から降りることも何かに抵抗するという行為も封じられてしまった美波は顔を横に背けふてくされるような顔をしながら千沙の質問に返事を返す。 千沙 「……今回の“拷問器具研究発表会”で発表した拷問器具の詳細なデータと、その器具を作るために行った数々の違法な人体実験のデータ、それに今回招待した各国の要人たちの名簿……それら全てのデータの事だ」 横を向いて不機嫌そうな顔を浮かべていた美波は千沙の言葉に敏感に反応し千沙の方へ視線を傾けるが、すぐにその目と口元はいやらしく笑み作り彼女を嘲笑するように言葉を繋げた。 美波 「あぁ、そういえば今回の貴女達のミッションって……私の研究データの奪取だったわよね? 私の捕縛はオプション任務だったっけ? 私の身がオマケだなんて……傷付くわぁ~~」 千沙 「任務の計画や裏側も把握済みって事か? やはりまだ警察内部にお前の伏兵が居残っているってわけだな……」 美波 「クフフ♥ 警察だけに忍ばせていると本当に思ってる? 私の部下は色んなトコに潜り込んでいるわよ……国会、大使館、裁判所……それ以外にも幅広く……ね♪」 千沙 「なるほど……あのDBB解体騒ぎの直後、警察から異例の人事異動や天下りが同時に広範囲に行われていたが……それもお前が糸を引いていたってわけか?」 美波 「あの時警察署内に潜入させていた私の部下は茜さんも含め40人以上……。それらを散らせて配置させるのにはかなり苦労したわぁ~」 千沙 「大規模な人事異動や他の上位職種への転職を行える人物なんて限られている……一介の管理職でそういう事は行えないからな……。つまりはお前の部下にもかなり“上の位”の人物が居るって事になるな……下手したら……警察のトップである彼女も……」 美波 「フフ……さぁ、どうかしら?」 千沙 「勿論そういうリストも隠してあるんだろ? どれだけの人物がどこに配属されているかの詳細なデータが……あのPCの中に……」 美波 「……そうね、残っているかもしれないわね? 消してなければ……」 千沙 「だったら、まずはそのPCのパスワードを教えてもらおうか。岬のハッキングの腕では時間がかかってしまいそうだしな……」 美波を尋問する千沙の後ろでは先程からデスクトップ型のPCに向き合っている真中岬の姿があった。顔をしかめ「あーでもない」「こーでもない」と独り言をつぶやきながらIDとパスワードの入力画面と戦う彼女だが……ハッキングが専門技術を持つ皐月とは違い、それが専門ではない彼女にとってその入り口の壁は途方に高くどう対処すればいいか分からず焦りを禁じ得ない。 美波 「やぁ~な こった……って言ったらどうする? 私の事……拷問しちゃう?」 千沙 「あぁ、最初からそのつもりだ。そのためにその椅子に拘束したんだからな……」 美波 「アハ♪ この椅子……どうだった? とっても辛かったでしょ?」 千沙 「なんだ……制作者であるお前は体験したことが無かったのか? このふざけた拷問椅子を……」 美波 「するわけないじゃない♥ 私はヤる方が専門だしぃ~」 千沙 「それじゃあ丁度いいな。お前も一度味わってみて後悔するがいいさ……。こんなもの造らなければよかったってな……」 美波 「フン! 後悔するわけないじゃない。もうすでにこのマシンの増産体制は整っているんですもの……あとは買い手を増やしていくだけ……」 千沙 「その買い手だが……さっきお披露目会は中止になったようで、乗船した客たちはみんなこの船から脱出したみたいだぞ?」 美波 「脱出? 何を言っているの?」 千沙 「まぁお前は丁度気絶していた時だったから聞いていなかっただろうが、この船は座礁したんだとさ……それで緊急避難を放送で促していたぞ?」 美波 「こんな海のど真ん中で座礁なんてするはずがないでしょ! それに座礁していたんだったら船底であるココが真っ先に……」 そこまで言いかけると、美波は何かに気付いたかのようにハッとなって苦い顔をする。 千沙 「あぁ……あの放送の声は紛れもなく皐月の声だった……。だから、皐月が何らかの工作をもって乗客を騙し下船させたんだろうな……」 美波 「そんな事……上にいる茜さんが許すはずが……」 千沙 「つまりは、上は上で片が付いたって事だろう。皐月がそういう工作をするってことは、そういう事だろうからな……」 美波 「奏皐月は……計画通りにドローンの拷問を受けさせて拘束し続ける計画だったはず……」 千沙 「まぁ、お前達が考えるほどうちの皐月は無能ではなかったという事さ……。乗船時のカードトラブルで皐月のハッキング能力を測っていたようだが……そいうのもあいつにはお見通しだったのさ。わざとミスをしてお粗末な様を演技していたしな……」 美波 「くっ……そんなとこまで見抜いていたのね? 確かに……それは侮っていたわ……」 千沙 「さぁ、もう助けは望めないが……観念してIDとパスコードを教えるか? 教えるって言うならこいつの操作も優しくなるかもしれんぞ?」 美波 「教えても責めるつもりなのね?」 千沙 「当然だろ? お前にやられた仕打ちは倍くらいにして返さない時が済まんしな……」 美波 「じゃあ、教えてあ~げない♥」 千沙 「いいのか? 今教えないと……延々と責め抜いて徹底的に吐かせるぞ?」 美波 「どうぞ? やってごらんなさいよ。でも……その徹底的に責める時間自体があまりないようだけど良いの?」 千沙 「どういう意味だ? 時間などたっぷりあるだろう? 本当に座礁したわけではないのだから……」 美波 「今岬ちゃんが奮闘してるそのPC……万が一の為にさっきタイマーをONにしておいたの♥」 千沙 「何??」 美波 「私か茜さんに不慮の事故が起きた場合の保険……こういう事に想定した時限式の保険を掛けさせてもらっていたわ」 千沙 「保険とは……何のことだ?」 美波 「岬ちゃん? PCの画面の右下に時間がカウントダウンしているでしょ? それ……今、何分になってる?」 美波に促され岬は慌ててモニターの右端に視線を落とす。 岬 「23分……30秒……」 彼女がそう告げると美波はクスクスと笑いを口から零し、笑みを浮かべながらそのタイマーの意味を説明し始めた。 美波 「そのタイマーは私のIDとパスワードを入力してログインしない限りずっとカウントダウンをし続けるわ……。私は1時間のタイマーをつけて岬ちゃんの様子を見に行ったから……気絶させられてここまで運ばれた時間はおよそ30分ってところね?」 千沙 「カウントが0になると……どうなる?」 美波 「さぁ、どうなるんだろうね? クフフフ……」 千沙 「それも喋らせる必要が……あるという事か……」 美波 「喋るわけないじゃない。どんな事をされようとも……ね」 千沙 「いいさ、それならすぐにでも喋りたくなるように……このマシンを最初からフル稼働させてやる」 美波 「いいわよ。制作者である私をどれだけ追い込めるかしら? 今から楽しみね……」 千沙 「フン! そのしたり顔……5分後には死にかけの顔に変えてやるからな……」 美波 「クフフ……どうぞ、ご自由に……」 千沙はテーブルの上に置いてあったタブレット型のリモコンを手に取り、そのタッチパネルに指をのせ操作を始める。 すると椅子の座面裏に設置された黒いマシンボックスからゴウンゴウンと機械的な唸りが上がり、その拘束椅子のシステムがオンの状態になったことを美波に告げる。 強気に振舞った彼女だったが、この物々しい機械音をこんなにも間近で聞かされることは初めてであり、逃げられないよう拘束された身体がその音を聞いて勝手に緊張してしまっていることに自分でも気づいてしまう。 尻を置いている座面の下……板を挟んだすぐ下で何かが蠢いているような振動と音が伝わってくる。 黒い金属製のボックスの中を……蛇やミミズのような細くて長い何かが蠢いているような音……。 それは紛れもなく機械仕掛けのマジックハンドであることは自分が良く分かっている。 アームが中で絡まぬよう自ら動いて束ねられたケーブルを動き回っている様子がいとも簡単に想像できる……そういう風に作ったのだから、中の動きすらも頭の中で想像が出来てしまう。 やがてそのアームたちの準備が完全に整ったという事を示すように蠢く音は静かになり始める。 千沙の手元のタブレットには準備完了の緑色の文字が浮かび、攻め手のコースを選択するよう指示が現れる。 千沙は画面を下にスワイプし続け、やがて最下の項目までたどり着いて画面移動を終わらせる。 その画面にはおどろおどろしい文字で“処刑モード”と書かれたボタンが映し出されていた。 千沙はそのボタンを躊躇なく指でタップし、実行の指示を機械に向けて送信した……。 座面裏のマシンボックスは先ほどの駆動音よりも激しい機械音を響かせて動き出し、そしてボックスの中に収納されていた全てのアームをボックスに空いた穴から次々に排出し始めた。 見た目にもおぞましい動きを個別に取りながら、水の中を泳ぐウミヘビの如く宙をさまよっているその無数のアーム達……。その総数は……100を超えている……。 その圧倒的な数を視界に収めた美波は、改めて寒気とともに身体をブルリと震わせた。 これからこの機械たちに体中を嬲られるのだと想像しながら……初めて緊張の汗を額に浮かべた。 口元はわずかに震え、先程の余裕めいた表情は不安と恐怖に影を帯びていく。 そして、蠢きながらも自分が責める場所をセンサーで分析しそれを終えたアーム達は、それぞれの責め場所へと移動を開始していく。 一寸の狂いなく……全てのアームが全ての定位置へと着いた時、美波の身体側面は……多量のアームの手によって包囲された。 ワキから脇腹にかけてのライン……太腿、内太腿、首筋、二の腕、膝の裏……足首からカカト、土踏まずは勿論足の指先まで……全てのくすぐったさを感じる部位に余すことなくアームが配置されていく。 美波 「………………くっ……」 体中を機械の手に包囲された美波は……目と口をギュッと強く閉じて襲い来るであろう刺激に対して少しでも抵抗してやろうと試みる。 しかし、そんな抵抗が実を結ぶことは一切なく……彼女は無様な笑い顔を千沙に見せてしまう事となる。 自分自身の欲の為に作った……このマシンに責められて……