オペレーション・ブルーアルカディア♯3-⑨
Added 2020-12-31 16:22:20 +0000 UTC9:閉幕への序曲 茜 「はぎゃああぁぁあぁぁぁぁ~~っっははははははははははははははははははははははははは、いびゃあぁっっははははははははははははははははははははははははは、ひぎぃっ! いぎぃぃっひぃぃっっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!!」 舞華の視線の延長線上には茜の身体を埋め尽くさんとするほどのくすぐりハンドが群がり彼女を死地へと誘うための責めを開始した様子が見て取れる。 茜 「ぎひゃあああぁぁっははははははははははははははははは、だひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、いひぃいひぃぃっつひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、くははははははははははははははははははははははははははははは、や、やばっっはははははははははははははっはひひひひひひひひひひ、やばひぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 一瞬見ただけでも彼女に群がるくすぐりハンドの量は尋常ではない事が理解できる。裸にして寝かせていたはずなのにマシンの手やらコードやらに埋め尽くされていて彼女の素肌はほんの少ししか遠目には見えない。 先程まであの責め苦を自分が受けていたかと思うと身震いすら起こしそうになる。瑞樹と茜に責められた時でさえ拘束されている身体が恨めしく思える程悶えさせられたというのに……その何百倍はあろうかと思えるくすぐり手に体中をまさぐられればどんなに苦しい思いをするか……舞華はそれを味わったから理解できる。今……茜は死ぬほど苦しい思いをしているだろうと簡単に想像がつく。そりゃあ……死に近づけるためにくすぐっているのだから死ぬほど苦しいのは当然と言われれば当然なのだが…… 皐月 「はひっっ♥ いにゃっっはっはっはっはっはっはっはっはっは♥ 時々触れるケーブルが……んッ♥ こそばくて……。これ……結構……イイかも……♪ んはっ♥」 全身をくまなくくすぐり回され、余裕のない悶絶を繰り返す茜とは対照的に……頬を真っ赤に染めて甘い息を零しながら一緒に笑い悶えている皐月。舞華の視界の端には彼女のその姿もチラリと映ったが、彼女が何を行っているのか理解は出来ずその部分だけは頭の中で首をかしげる事となった。 舞華 「皐月ってば……今……笑いながら悦んでなかったかしら? 全く……こっちは大ピンチだっていうのに呑気なんだかマイペースなんだか……」 自分の足裏を茜の足裏に近づけて一緒にくすぐられている風を体感しながら自分だけの快感を見出してしまった皐月は、餌に群がる魚の如く足裏に集中するくすぐりハンド達を想像しながら茜の受けるくすぐったさを共有する。しかし、茜のように足を拘束されていない皐月は自分の意志で足を引っ込める事も出来る為完全に茜の苦しみを理解することは出来ない。少しムズムズしたら引っ込めて……刺激に物足りなさを感じたらまた足を出して……という風に自分の快感を最優先にした“戯れ”を死の近づく茜を見ながら嗜んでいる。 処刑が実行されていて命を脅かされている者を見ながら……自分は安全な場所で戯れて遊ぶという愉悦。皐月の性感帯はそのような“異質なシチュエーション”にも敏感に反応し彼女へ甘い愉悦の快感を送り込んでいく。 舞華 「皐月に変なスイッチが入っちゃった以上……コッチは私自身がどうにかしないといけないって事になるわね……」 そんな不可思議な情景を見続けている余裕は舞華にはなく、目の前で構えを取ってにじり寄ってくる瑞樹に視線を向けなおしどうにか彼女の隙を突けないか……と思案を重ねる。 舞華よりも随分と離れた位置のテーブル上に置かれている腕時計型電撃銃……。どんなに大股で歩いたとしても10歩分以上は離れた位置にあるが故、すぐにその銃を取るという事は出来ない。 下手に走ろうものならすぐに瑞樹に詰められ、背後か横から致命的な一撃を貰う事になるだろう。例えそうでないにしても、結局今の脚の状態ではまともに走れるとは思えない。左の脚は今だにガクガクと震えて力が上手く入らないし……みぞおちに貰った一撃があまりにも強烈で目の前は朦朧とし焦点も上手く定まらない。今すぐにでも病院に担ぎ込まれてもなんらおかしくない状況に置かれている舞華に10歩の距離はとてつもなく遠く険しい道のりに見えてならない。 しかし、あの銃を取らなくては万に一つとして勝利を納める事など出来ない。 逆に言えば、あの銃を取らない限り……待っているのは敗北の二文字のみ…… 舞華 『脚はもう使い物にならない……だから走って辿り着くのは無理。腕だって左腕の感覚は無いし……上手く動くも怪しい……こんな状態であのテーブルまで辿り着けるか?』 希望が見えたかと思えた瞬間、その希望意縋るにはそれ相応のリスクが立ち塞がる。舞華の中ではすでに答えは出ていた。 あの離れた場所までどのようにして辿り着くか……その方法は一つしかないと……。 腕を前に構え戦闘態勢を取りなおす舞華。それを見た瑞樹は一段と姿勢を低く構え警戒した面持ちで舞華の構えを睨む。 ジリジリ……ジリジリとテーブルを背にして摺り足で少しずつ電撃銃の方へと舞華はにじり寄っていく……。なるべく彼女を刺激しないよう……慎重に……ゆっくりと……。 このまま瑞樹が大人しく待っていてくれればどんなに楽だろうか……舞華も頭の中ではそう期待を持ってはいたのだが…… ――シュッ!! 舞華の期待は一歩前に出た瑞樹の行動に簡単にかき消される。 地面を蹴った第1歩目から僅か数歩ほどで舞華の懐に入り込んできた瑞樹はそのまま構えていた右手を前に突き出し素早い殴打を繰り出す。 その動きたるや弓より射られた一閃の矢の如く素早く、常人の目には何が行われていたか判断など出来ない。 ――メキッ! バキッっ!!! そんな素早い動きから繰り出される勢いの乗った殴打が強烈でないはずがない。舞華も急所であるみぞおちを守るためにギリギリ間に合わせた左腕でその殴打を受け止めるが、そのあまりに強い拳の勢いに脚は地面を離れ簡単に彼女の身体を吹き飛ばしてしまう。 音から察するに……腕の骨が粉砕されたことは言うまでもない。 吹き飛び地面を痛がるように転げまわる舞華を見てもなお……瑞樹の冷淡な攻撃の構えは鞘に収まらない。しっかりとターゲットである彼女を見据え、自分の安全も同時に確保しながら再び摺り足で前進をし始める。 吹き飛んだと言ってもたかだかほんの数メートル……それほど間は開いてなどいない……。 それ故舞華との距離などすぐに埋まる。それを察してか、舞華も最後の力を振り絞って脚を地につけ立ち上がる。 立ち上がったはいいものの……左腕はもうだらりと垂らせておくのがやっとだし、脚にも力が入らず身体を支える事さえ困難な状況……これを立っていると表現するにはあまりに無残な立ち姿だと評価せざるを得ない。 吹き飛ばされた折に床で擦ってしまった頬が赤切れてしまってヒリヒリと痛い。折れた腕がそれ以上に熱く痛んで思わず叫んでしまいたくなる。しかしその痛みがギリギリ舞華の意識を保ってくれていた。油断すれば意識が飛んでしまいそうな怪我を負ってしまっているが、痛みが気付け薬のように作用し舞華の意識を留まらせてくれる。 もはや立っていることが奇跡であるこの状況を……瑞樹は褒めてなどくれやしない。あくまで冷静に……あくまで冷酷に判断を本能に委ねまた同じ構えを取って舞華を睨みつける。 舞華 「あと一回……私の身体……もってくれるか? あと一回防げれば……」 ゼェゼェと荒い呼吸を繰り返しながらうわ言の様にそう繰り返している舞華に、瑞樹の脚はいよいよ最後の攻撃を行わんと地面を蹴り上げる。 ――シュッ! 先程と全く変わらない前傾姿勢からの猛突進。それに対して腕での防御を諦めたかのように腹部を無防備にする舞華……瑞樹の拳は勿論、急所であるみぞおちめがけて勢いよく振り抜かれた。 ――バキッ!!! 矢の如く素早い殴打を腹部に受けた舞華はそのまま崩れるように身体を床に落とす……かに思えたが…… 実際は彼女の拳を綺麗に防御していた! まだ動かすことが出来る右手でガード……ではなく、なんと片脚を曲げて膝の少し下の部位で彼女の拳を受け止めたのだ。 片脚立ちでそのような防御をすれば当然身体の支えは無いに等しいため…… 舞華の身体はまるで飛行機から放り出されたかのように宙を舞い……先程よりも高い浮き上がりでその身を吹き飛ばされた。 ――ガタンッ! ガランガラン…… 運のいい事に吹き飛ばされた身体はステージ上にあった机やら椅子やらの上に落ち、落下の衝撃を少しだけ吸収してもらえた。とはいえ……あのような剛腕を脚で受け止めた舞華の左脚は……骨は勿論脚の筋にも重大なダメージがもたらされ、立つ事も出来なくなるほどに深刻な負傷を負う事となってしまった。 立つことが出来なくなれば……もう舞華に勝ち目はない。彼女の得意の蹴り技も……地面を踏ん張って繰り出す強烈な殴打も繰り出せない……まな板の上の鯉そのものになってしまった。 舞華 「やっぱり……急所であるみぞおちを狙ってきたわね……まさに……教科書通りの殺人マシン……って……やつ……だわ……」 身体が落下した衝撃で舞い上がった埃がシンシンと降り注ぐ中……舞華はゲホゲホと咳を繰り返して床に上半身だけをゆっくりと起きあがらせる。 起き上らせると言っても……茜の居る拘束ベッドの脚に身体をもたれかからせながらやっと起こした上半身だったが……彼女の顔は笑っていた。 瑞樹はまだ舞華の意識が落ちていないのを確認すると、眉ひとつ動かさずに再び攻撃の構えを取る。 舞華 「もしも……。もしも……あんたが……教科書通りの行動をしなかったら……私はもう……打つ手はなかったわ……」 攻撃や防御に転じず床にだらりと腕を垂れさせ口上ばかり垂れている舞華に……今度こそトドメを刺そうと瑞樹は再び地面を蹴り上げる。 舞華 「あんたの最後の攻撃……なんで脚で受け止めたか……分かる? いや……なんで脚で受け止めなきゃ“ならなかったのか”って言うべきかしら?」 地面を蹴った次の瞬間にはもう舞華の目の前に瑞樹の顔が接近していた。瑞樹は拳を僅かに引いて勢いに乗せた殴打の構えを取る。 舞華 「こんな風に吹き飛ばしてもらうっていう役目もあったけど……それよりも……何よりも……」 引かれた腕に力が入っていくのがスローモーションのように舞華の目に映る。 今まさに拳が振り抜かれんと、したと同時に……舞華の右手が不意に瑞樹の胸元へ上げられる。 舞華 「肝心な時に“利き手”が使えなくなったら……撃てないからよ! これが!」 上げられた手にはあの時計型の電撃銃がすでに構えられており、舞華は瑞樹の拳が振り抜かれる直前でその時計の発射スイッチを押すことが出来た。後は針がちゃんと射出される事を祈るだけ…… 残弾は本当に残っていたのか? 残っていたにしても針がキチンと装填されすぐに発射できる態勢にしてあったのか? それを確認する時間は舞華にはなかった。 だから、後は祈る事しかできない。この機を逃せば……彼女の殴打にて完全敗北の道しか残されなくなるのだから……。 振り抜かれる瑞樹の拳……今度はみぞおちではなく顔面を狙って放たれている。 これを食らえば舞華の顔面は悲惨な事になるだろう……その未来が走馬灯のように頭に過る。 拳は迫ってくる。舞華の顔面目掛けて……一直線に…… そして、瑞樹の拳が舞華の鼻先数センチの所まで迫ったその瞬間! ――バチバチバチバチバチっ!!! 火花が舞い散る様な乾いた破裂音が小刻みに鳴り響き、瑞樹の拳が舞華の鼻頭の寸前で止まり彼女は身体全身をビクビクと痙攣させながらそのまま横に倒れていった。 ――バタン! 拳を突き出した格好のまま白目を剥いて横倒れになった瑞樹は、しばらく身体を痙攣させてはいるが意識は完全に飛ばされた様子でそれ以上身体を動かして攻撃態勢を取るなどという行動をとる事は無かった。 舞華 「はぁ……はぁ……はぁ……。この時計……狙いをつけるのは難しくて私は使うの苦手だったけど…………ここまで接近してくれれば……誰だって百発百中よね……」 瑞樹が本当に気を失っているのかをまだ動かすことのできる右足の先でツンツンと突いて確認をする舞華……固まったまま動かなくなった瑞樹の様子を見てここでようやく安堵の息をひとつつく。 舞華 「痛っっててててて!! くぅ~~死ぬほど痛いじゃないのよっ! どうしてくれんのよコレっ! もう一人で立つ事も出来ないじゃないのよ!!」 瑞樹の状態確認が終わると緊張が解けてしまい、アドレナリンによって麻痺していた痛みが急激に発現し始めた舞華は言う事を聞かなくなった脚や腕を床に投げ出し意識を失った瑞樹に文句をぶつける。 舞華 「はぁ……はぁ……。しっかし……私がこんなに近くまでぶっ飛ばされたっていうのに……皐月のヤツ……まだお楽しみに耽っちゃってるじゃないのよぉ~~。まったく……これじゃあ必死に戦った私の方が馬鹿みたいじゃない……」 拘束ベッドの脚にしがみつきながら、ヨロヨロと立ち上がって皐月の顔をジロリと睨む舞華……。その視線に気づいた皐月は意識を現実に戻すかのようにハッとなって股間に寄せていた手を慌てて下げる。 皐月 「あ、アハハ……ま、舞華さん~~勝っちゃったんですねぇ? さっすがぁ~~♪」 舞華 「さっすがぁ~じゃないわよ、このスカタン! あんた……私が必死に戦っている間ナニやってたのよ!」 皐月 「え、えぇ~~? それは勿論~~尋問ですよぉ~? 尋問~~♥」 舞華 「股間を弄りながらやる尋問があるかっ! また変な性癖に目覚めて楽しんでたんでしょうがっ! 皐月ぃ~!」 皐月 「ヤ……ヤダナァ~ソンナ事アルワケ……ナイジャナイデスカァ~~」 舞華 「あんた……股間……濡れてるわよ?」 皐月 「ひゃん! み、見ないでくださいぃィ!! エッチ!」 舞華 「ったく……どっちが“エッチ”なのよ……」 皐月 「あ、そうだ舞華さん! この後どうします?」 舞華 「ん? この後?」 皐月 「えぇ……ほら……彼女……茜さん。どうしよっかなぁ~って思って……」 舞華 「あぁ……こいつ? 別に……死ぬまで笑わせといて良いんじゃない? 瑞樹を片付けた今もう用は無いし……」 皐月 「でもでも! ほら、瑞樹さんが目を覚ましたら……ちゃんと洗脳を解かなきゃいけないでしょ?」 舞華 「……まぁ……瑞樹を連れて帰るって事なら……そうなるかもだけど……」 皐月 「瑞樹さんは加害者ではありますが被害者でもあります……この人たちに操られさえしなければきっと良い人だと思うんです……」 舞華 「そうね……ちょっと鬱陶しい部分は少なからずあるけど……根は真面目そうではあったわね……」 皐月 「うまくいけばうちのチームに入れる……なんてことも可能だと思いませんか?」 舞華 「仲間にするって事? まぁ……確かに戦闘能力は高いと思うけど……」 皐月 「まぁ、そうするにしてもしないにしても……やっぱり彼女をそのままにしておくのは危険だと思いませんか?」 舞華 「洗脳は……解かないで放置するよりは解いておいた方が勿論良いとは思うけど……その様子じゃ聞き出せてなんていないんでしょ? 洗脳の解き方とか……」 皐月 「それはちょっと良い事を想いつきまして~」 舞華 「良い事ぉ~? 何よそれ……」 皐月 「ムフフ~~♪ 一石二鳥の最高の案を思いついたんです♪」 舞華 「また良からぬことを企んでるわね? 大体……あんたの良い事って……良かった試しが————」 戦いの終幕と共に緩んだ空気が二人を包み込んでいた丁度その時、その弛緩した空間を一気に緊張させてしまう爆発音と大きな揺れが二人の足元から発せられた。 ――ズズン!! ゴゴン、ゴゴゴゴゴ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!! 音と揺れはすぐに収まりを見せるが、それと同時にステージ上部に備えられたスピーカーからけたたましい警報と緊急アナウンスが流れ始める。 舞華 「ちょっっ! これもあんたの仕掛けた何かなの? 冗談じゃ済まないくらい凄い揺れだったけど……」 皐月 「ち、違います! 私はこんな仕掛け……やってません!」 舞華 「じゃ、じゃあ何が起きてるのよ? この警報は何?」 皐月 「分かりません……分かりませんけど……ヤバイ状況になったんじゃないですか? 船も……なんか若干斜めに傾いてる気もしますし……」 舞華 「傾いてる? って……それって……」 皐月 「分かりませんけど……もしかしたら船底の爆薬が爆発してしまったのかも……」 舞華 「船底の爆薬?? 何よそれ?」 皐月 「彼女達の計画では最終的にこの船は沈める予定で組んでありました……もしその爆破が早まっていたとしたら……」 舞華 「沈むっ!? この船が??」 皐月 「えぇ……そうなればかなりヤバいです! 甲板に近い私達はともかく……船底付近にいると思われる千沙さんや岬さんは……」 舞華 「くっっ! もしそうなら……どうするの? 私は……この通り走れないわよ!」 皐月 「えぇ……分かってます。私がおぶって……舞華さんを船まで戻すしかありません……」 舞華 「見捨てるの? リーダーと……岬を……」 皐月 「舞華さん……私……実はまだ話していませんでしたが……コマンダー……いえ、千沙さんから譲られたモノが今はありまして……」 舞華 「譲られたモノ? 何よそれ……」 皐月 「千沙さんが船に潜入する際……コマンダーという権限……スニーカーズのリーダーという権限を私に一時的に譲ってもらいました……」 舞華 「コマンダーの権限? それを千沙さんが皐月に??」 皐月 「あくまでも一時的にです……。でも、それが効力を発揮している今は……私がコマンダーの代理です」 舞華 「コマンダーの権利があるって事は……今の状況……あんたが決められるのよね? チームの中で誰を生かして……誰を犠牲にするかっていう部分も……」 皐月 「作戦の成功の為には少なくとも状況を報告するための1名以上の人員を確実に帰還させなければならない……その為ならば……チームの犠牲もやむなし……。と、いうのが前提としてコマンダーに指示されます……」 舞華 「こうなった以上……確実に助かるのは私と……皐月……。船底にいるであろう岬と千沙さんは……」 皐月 「切り捨てなければなりません……コマンダーとしての判断をするのであれば……」 舞華 「冗談じゃないわ! まだ確認もしていないのにコードレッドを発動する気? 船が沈んでいるのが本当だとすれば絶対に助からないわよ! あの二人……」 皐月 「いえ、切り捨てると言ったのはあくまでコマンダーとしての基本口上であって……私の意見でも千沙さんの意見でもありません」 舞華 「千沙さんの意見でもないって……どういう事?」 皐月 「千沙さんは船を離れる前に私に言いました……“コードレッドは発令しない”と。みんなで帰還して任務を完遂すると……」 舞華 「千沙さん……」 皐月 「それは私も同意見です。だから……最善を尽くします! 二人を……逃がすために……」 舞華 「だ、だったら私もっ!!」 皐月 「舞華さんはダメです! ここに残れば確実に足手まといになります!」 舞華 「うく……うぅ……」 皐月 「かといって……私も舞華さんを抱えて海の中を泳ぐ自身もありません……」 舞華 「じゃ、じゃあどうするのよ! このままじゃ……私達……岬たちを助けるどころではなく船と心中する事になるわ!」 皐月 「それについては……実はこの船に丁度いい道具が残っているかもしれませんので、ちょっと聞き出してみようと思います……」 舞華 「は、はぁ? 丁度いい道具??」 皐月 「準備を怠らない彼女達であれば必ず1台は残してあるとは思いますが……それが何処にあるのか分かりません。だから彼女に聞かなくては……」 舞華 「か、彼女って……まさか……」 皐月はそこまで言葉を零すと舞華の言葉に返事はせず、拘束ベッド上で酸欠に喘ぐ茜の真っ青な顔を横目に見ながら彼女の耳元に自分の口を近づける。 そして意識を朦朧とさせながら笑い苦しむ彼女に低い声で脅すような言葉を囁きかける。 皐月 「もう限界でしょう? さぞ苦しいでしょうね? 笑いながら死ぬのは……」 茜は笑い苦しみながらも首を横に振る。必死に首を横に振って死ぬのは嫌だと主張する。 皐月 「貴女だって……こんな死に方……望んでなんかないでしょ? 出来れば生きていたい……そう思っているでしょう?」 今度は首を縦に振る。笑いが途切れない口で返事が出来ない代わりに首を振って返事を返す。 皐月 「だったら……私と共に脱出するのを協力しなさい。協力してくれれば……脱出の後……刑務所じゃなくてもっと自由な場所に開放してあげますから……」 刑務所じゃなくてもっと自由な場所……その言葉を理解しようと試みる茜だが酸欠の脳内では皐月の含んだ言葉の真意には辿り着けない……それよりも生への渇望が勝る。 皐月 「もし……言う事を聞かないっていうんでしたら……このまま鼻と口を摘まんでトドメを刺しちゃいますけど……それでも良いですか?」 茜は必死に顔を横に振って従う旨を皐月に返す。もはやどういう状態でもいいから生きていたい……こんな無様な格好で……無様な状態で……無様な手段によって命を落としたくはない。生かしてもらえるというのであればそれに縋りたい……例えどんな劣悪な条件を突きつけられても…… 皐月 「本当に裏切りませんか? 裏切ったら……その時は何よりも優先して貴女の命を奪ってやりますからね……良いですね?」 茜にはもはや顔を縦に振る以外に道は無い。皐月の冷酷さは骨身に染みて理解させられているため反抗する気すら起こせない。彼女は言ったら必ずヤる……どんな状況でも、本能の赴くままに命さえも取りに来るだろう……そんな冷酷さを茜は皐月の中に見出していた。 皐月 「分かりました……では解放後すぐに案内してもらいますよ?」 茜は逆らえない……。皐月のあの目を見ればもう何も逆らえなくなる……。 皐月 「アレを操作していた……コントロール端末の所まで……」 この短い時間の中で皐月は彼女を芯の底まで根を張る様に恐怖を植え付けた。 その恐怖は……瑞樹にかけられた催眠と同じように、彼女を意のままに従わせることになる…… 皐月は最初から茜を解放するつもりではいた。無理やりにでも連れ出し瑞樹の催眠を解く方法を聞き出すつもりでいた……。 刑務所よりも自由な場所…… そこへ連れていき……彼女を軟禁するつもりでいた……。そして催眠を解く方法を聞く傍らで自分に芽生えた欲も同時に満たそうと企んだ……。 その刑務所よりは自由な場所とは…… 彼女の広大な家の……地下室に他ならない。 今は倉庫にしか使われていないその地下室で……茜は毎日皐月の欲を満たすために奉公するという刑罰を新たに受ける事となる…… 果たしてそれは刑務所に入るよりも辛いことになるのかどうなのか…… 今の茜には微塵も考えは及ばない。 ただ、今のこの瀕死の状況から助け出されたくて……必死に顔を縦に振る……。 皐月の真面目な視線の中に眠る淫欲に満ちた期待の眼差しを存分に浴びながら……。