ショーダウン(リメイク)⑬
Added 2021-10-29 12:43:38 +0000 UTC13:始まり 「鳥の羽根が何でくすぐりの道具に向いているか……理由とか分かったりする?」 鈴音は手に持った真っ白な羽根をスポットライトの光にかざしながらウットリとそれを眺め、焦りの汗を垂らす綾香に向けて質問を零す。 「し、知る訳ないでしょ……そんな事……」 根元から綺麗に整った羽根の先まで汚れ一つない純白そのものの羽根は、鈴音が指に少し力を加えるとクルリクルリと裏表に回転し、その動きに合わせて尖る様に山型に揃った毛の先端が空中で何かを撫でるかのようにチョコチョコと動く様子を綾香に見せつける。 その毛先の動きがあまりにこそばゆそうだと感じてしまった綾香は、鈴音の言葉など無視するように目を瞑りその羽根の動きを見ないよう抵抗した。 「まぁそうよね? こんな事を専門に扱ったりしない限りは……普通は知らないわよね?」 鈴音はそのように続けつつ綾香の背後に置かれたままになっていた台座の方へと歩を進め、話を続けながらその台座を一段ずつゆっくりと登り始める。 「羽根の先端でコショコショ触られればくすぐったい……って、大抵の人は想像するでしょうけど、実は羽根の本当のこそばゆさはただ撫でるだけじゃ発揮されないの……」 台座の頂上まで足を揃えて登り切った鈴音はその台座の上でも少しだけ爪先立ちして身を乗り出し、綾香の耳に自分の口が届くよう高さを足す。そして彼女の耳元に吐息を吹きかけながら言葉の続きを彼女にしか聞こえないような細い声で囁いて伝えた。 「羽根っていうのはね……毛の根元にあるこの“芯”の部分を肌に当てて撫でてあげる事でこそばゆさは何倍にも膨れ上がってしまうのよぉ?」 突然耳の奥に入れられた生暖かい吐息と小さく細い声があまりに気色悪く感じてしまった綾香は、思わず小さな悲鳴を零しながら顔を振って嫌がる仕草を取る。 しかし鈴音はそんな嫌がる綾香にもっと嫌がって貰おうと彼女の顔を手で押さえつけ無理やり耳を自分の口の方へ突き出させた。 「羽根の柔らかい刺激と、芯の固い刺激が同時に敏感な肌を引っ掻いてきたら……どんなくすぐったさが襲うか……想像できるでしょ?」 顔を押さえつけられている綾香は間近で囁いてくる鈴音に拒否反応を示して顔を振ろうと力むが、小柄な体躯からは想像できない程力強い鈴音の抑え込みに一切抵抗できず、気色の悪い囁きを聞き続けることを余儀なくされる。 鈴音は彼女が嫌がる事を分かっていながら敢えて生息を耳の中に入れながら言葉を続ける。 「柔らかい羽根先で触られるだけだったら最初こそくすぐったく感じるでしょうけど……でもその刺激にはすぐに慣れてしまうわ。でもね……羽根の芯の部分も利用して引っ掻かく刺激には慣れ辛いの♥ あまりにはっきりしたくすぐったさを与えられちゃうから……刺激に慣れる前に笑わされて、ず~っと悶え続ける羽目になる……」 耳の奥に鈴音の吐息が入れられるたびに身体がゾクリゾクリと寒気を走らせてしまう。 彼女の細い声も……普通に喋られるより鼓膜を意地悪く刺激し、響く声にこそばゆさすら感じてしまう。 言葉からも吐息からも耳奥をくすぐられるこの鈴音の囁き責めに、綾香は必死に口を固く結んで出てしまいそうになる声を堪えた。 まだくすぐられてもいないのに……耳に息を掛けられただけで笑いそうになっているなんて絶対に認めたくはない。だから綾香は必死に奥歯を噛みしめこの不快な囁きが終わってくれるのをジッと耐え忍んだ。 「それが羽根の本当の使い方よ♪ どう? 少しは理解出来た?」 ねっとりと囁きを入れる底意地の悪い言葉責めを終えた鈴音は、その言葉を気にようやく顔から手を放し綾香の唯一自由に動かせる事の出来ていた頭の自由を返す事とした。 二カッと子供の様な笑顔を向ける鈴音に、綾香は唾でも吐き掛けん勢いの睨み目を彼女に向けて怒りを露わにする。 「フフ……ダメじゃない……そんな反抗的な目で私のコト見たら~」 鈴音は爪先立ちを解除し元の姿勢に身体を戻すと、今度は羽根を持っている手を背後から綾香の右腋の方へ伸ばし始めた。 「私ねぇ? そんな目をする女の子を見たら……ついつい笑わせたくなっちゃう趣味があるの♥」 左の腋側から睨みを入れていた綾香は鈴音が右の腋に羽根を近づけさせていいる事など気付きもしていない。鈴音は左の腋から顔を覗かせながらニヤリと笑みを浮かべ、不意を打つように綾香の右腋の窪みに羽根の先端を着地させる。…… 「ひっ!? なっっ!? な、何っ!?」 羽根が触れた瞬間、腋の敏感な神経腋の窪みに異物が当てられたことを瞬時に綾香に知らせ彼女を戸惑わせようとするが、その刺激はすぐに次の刺激に塗り替えられる事となる。 ――ジョリジョリジョリ! ズズズズズズ…… 羽根先が圧力に負け寝てしまう程に突き立てられ、芯の部分を肌が感知できるくらいまで押し付けられた羽根は、そのまま芯の部分で腋を引っ掻くように上下に往復を始める。 「ぎゃっっひぃぃぃっっっ!?」 芯の先端が引っ掻く刺激があまりに痛痒く感じた綾香は思わず悲鳴を上げて身体を震わせてしまうが、2度3度と引っ掻きが繰り返されるとその僅かに痛みを感じていた筈の痒みは“こそばゆい”という感覚に上書きされる事となった。 ジョリジョリと音を立てて強くしっかり引っ掻いていくその刺激は……指で触られた時の感触とは明らかに違った刺激を生み、それが明らかに“くすぐったい”と知覚し始めた綾香は悲鳴のために開けてしまった口から今度は意図していない“笑い”を吐き出し始める。 「アギャアァァァッッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! うははっ! ちょ、ちょ、ちょっとぉぉほほほほほほほほほほほほほほ、何これっへへへへ、くすぐったいっっひひひひひひひひひひひひひひひひ、イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、くははははははははは……」 先程の様な無様な姿はなるべく見せないよう耐えよう……と心に自ら決め事をしていた筈の綾香だったのだが、その決め事は開始してものの数秒で崩される事となってしまう。 「だぁ~~っっはははははははははははははははははははは、や、やめっっ!! その羽根くすぐったいぃぃっっひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! 何なのよその羽根ぇぇへへへへへへへへへへへへへへ!!」 「あら……この羽根はその辺に売ってる何の変哲もない羽根よ? 確か……百均とかの玩具コーナーに置いてあったやつじゃなかったけ?」 「ひはっっははははははははははは、そ、そんなの嘘よぉぉ! ただの羽根がこんなにくすぐったく感じる訳っっへへへへへへへへへへへへへへへ、だっっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」 「もしかして……特別な羽根でくすぐられてるからくすぐったく感じてるんじゃないかって思ってる? だとしたら見当違いよ♥」 「そ、そんな筈にゃいっっっひひひひひひひひひひひひ!! だってこんなにくすぐったいなんて……」 「だからさっき言ったじゃない♥ 羽根はね……引っ掻く事を意識して動かせば何倍もくすぐったくなるの♪ 毛の“こしょばい感触”と芯のはねっ返りの強い引っ掻きが合わさるから余計にくすぐったいでしょ?」 「だひゃ~ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、こしょばいっっひひひひ、確かにこしょばいからやめてっへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」 「やめるわけないじゃない♥ こんなのまだまだ序の口よ? これから……もっと、も~~っと、こしょばい刺激を与えてあげるから……楽しみにしてなさい?」 「いぎっっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、あっ! あはぁっっ!? いひゃあぁぁぁっっはははははははははははははははははははは!! ひぃひぃ……」 「そろそろ右は飽きてきたかな? だったら……今度はコッチを……」 「ま、ま、待って!! 待って!! 左を触る気? や、やめて!! そっちはホントにやめて!!」 「だぁ~め♥ あんたってば……実は……左の腋……弱いでしょ?」 「っへ!? ひっ!? そ、そんな事は……ない……わよ……」 「嘘おっしゃい♥ 隠そうとしても私にはちゃ~んと分かるのよ?」 「ち、違っ! 右も左も……同じ部位なんだから違いなんて――」 「違いはあるわ」 「ッっ!?」 「人の癖が千差万別なのと同じように……くすぐったく感じる触り方や部位も人によって全く異なるの」 「そ、そんな事……ある筈が……」 「さっきの余興であんたの“弱い箇所”をしっかり調べさせてもらったわ……」 「よ、弱い……箇所?」 「例えば……腋の部位ならあんたは左腋が弱い」 「っ!!?」 「更に言えば……腋の窪みの膨らんだトコを爪を立てて引っ掻かれたらなお弱い!」 「んなっっ!?」 「だから……この羽根でくすぐられれば耐えられないと思うわ~~♪ だって……引っ掻く刺激で責めるんだから……」 「ま、待ちなさいよっ! 別に腋じゃなくても……良いでしょ? ほら……脇腹とか……足の裏とかもあるんだから……」 「勿論そういうところもヤってあげるわよ? でも……まずは私の分析が当たっているかどうかの答え合わせをしなくちゃ♥」 「わ、わ、分かった! 認める! た、確かに……良く分かんないけど……左の腋は……右よりも刺激を感じやすい気がする! 多分それが弱いって事だろうから……あんたの分析は正しいと思っていいわ! だ、だから……ね?」 「だから……なに?」 「だ、だ、だから……左は……勘弁して? ね?」 「…………………………」 「…………うぅ…………」 「……………………(ニコ♪)」 「……あっ……は……」 「………………ヤダ♥」 「っッっっ!!?」 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ! 「ぴぎゃっっ!!? んぎひゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっははははははははははははははははははははははははははははははははは、や、や、やめてって言ったのにっっひひひひひひひひいひひひひひひひひひひひひひ、やめてって言ったのにぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! うはあぁっははははははははははははははははははは、ダハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」 「そんな言葉で私があんたの事見逃すとでも思ってんの? 馬鹿じゃない?」 「がはぁっっははははははははははははははははは、やめっっ、くすぐったっっはははははははははははははははははははは、ホントにくすぐったひぃぃっっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、ひぃひぃっっ!!」 「弱いと分かってるならそこをとことん責め抜く! それがくすぐり責めっていう仕置きの本質よ! 子供の遊びじゃないんだからそこの所を履き違えないでもらいたいわね!」 「ギャハァァ~~ッッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ほ、ほ、ホントにくすぐったいっっ! ホントにくすぐったいってばぁぁ!! だははははははははははははははははははは、いひぃっっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、うへへへへへへへへへへへへ……」 「ほら、ココでしょ? 左の腋の膨らみの頂上付近! ココが弱いでしょ? こんな風に羽根先で引っ掻かれたら堪らなくくすぐったいでしょ?」 「だぁっはははははははははははははははははははははは、それヤバっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、うへひひひひひひひひひひひひひひひ、かっはははははははははははははははははは、くすぐったいっっひひひひ、くすぐったいっっっ!!」 「フフフ♥ さっきまであ~んなに怖い顔で睨んでたのに、今じゃこんなに情けなく笑っちゃって……私の事が憎くて睨んでいたんじゃなかったの? あの睨みは虚勢でも張っていただけだったのかしら?」 「かはっ、ははははははははははははは、ひっっひっひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぐっっくぅぅぅ!! こ、こ、このっっ!!」 「ん? なぁに? 何か言いた気ね? 少し弱めてあげよっか?」 「くっ、くっっふっ!! はぁはぁ……ちょ、調子に乗るなぁぁっっ! ぅくっ!? くふひっっ……んむっっふっ!!」 「アハ♥ 怒った怒った♪ でも……その顔も1秒と持たないわね?」 「くふっっくっっ!! あんたなんかのくすぐりにぃぃっ! 負けてたまるかぁあっっ!! くはっっひひひひひひひひひひ、あがははははははははははははははははははははは!!」 「さっきはあんなに情けない声で“左はやめて~”なんて言ってたのに……よくもそんなこと言えるわね?」 「くふっっふっっんんんっっ!! う、う、うる……さいっっひっっ!? はぁはぁ……こんな子供の遊びにぃっひひっ!! 私は負ける訳にはいかないっっのっ!!」 「ふ~ん? まだそんな事言っちゃうんだ? 懲りないお姉さんだねぇ~♪」 鈴音はそのように零すと左腋を責めていた羽根を一旦手元へ引きくすぐりを中断する。そして鼻歌交じりに台座から飛び降りて地面に着地すると、その足で道具の置いてあるテーブルへと歩み寄って手に持った羽根と同じ羽根をもう一本手に取って左右の手それぞれにそれを持たせた。 「はぁはぁはぁ……はぁはぁ……」 羽根のこそばゆさに思わぬ笑いを絞られた綾香は、彼女が羽根を追加で手に持ったことを気にする余裕なく必死に失った酸素を取り戻そうと呼吸を繰り返す。鈴音はそんな綾香の顔をニヤリと覗き込みながら先ほど智恵理の座り姿勢を真似るように彼女の足元に胡坐をかいてドカッと座って見せた。 「羽根って……ワキを引っ掻いても十分にこそばく感じるけど……実はコッチの方がもっとこそばく感じるのよねぇ~♪」 そのように独り言を零しながら綾香の左右の足に羽根を持った手をそれぞれ向かわせ、羽根先が足裏の土踏まずの部位に触る様に位置を調節しくすぐる準備を整える。それを見た綾香はまだ羽根が動き出してもいないのに足裏に耐え難いむず痒さを感じ始めてしまう。 「ま、ま、待ちなさい……よ! ぅくふっ! そ、それで……足の裏まで……触る気?」 綾香は土踏まずの中央に突き立てられた羽根先の柔らかい感触を敏感に感じ取り、その後にどのような刺激が加えられるか想像を掻き立てられ既にこそばさを感じてしまっている。 腋を犯したあの羽根の刺激が今無防備に晒されている足裏に与えられたらどんなにくすぐったく感じてしまうか……想像できない筈がない。 きっと耐えられない。きっと笑ってしまう……。笑いを堪え切る自信がない。 ワキをくすぐられた刺激を思い返せば思い返すほどにそのような弱気な言葉が綾香の思考を蝕んでいく。 笑いたくないけど……笑わされてしまう……。絶対に笑ってしまう……。あの刺激は耐えられない……。全然耐えられない……! 綾香の弱気な思考はそのまま笑いへの抵抗力を弱め……勝手に彼女の口角筋を緩め口を笑いの形に作り変えてしまう。 震えている唇からは「くっくっくっ」と小刻みな笑いが零れ始め、目尻も自然に垂れ下がって行ってしまう。 まだ羽根は動いていないのに…… まだくすぐりは始まってもいないのに…… 想像だけで笑いが込み上げてきてしまう。 綾香のそんな今にも笑い出しそうになってしまっている顔を下から覗き込んでニヤニヤと笑みを浮かべている鈴音は、彼女を本格的に笑わせるべく両方の足裏に構えていた羽根先をゆっくり動かし始めた。 「がひっ!? あぎゃはっっ!!?」 力強く羽根先を押し当てて芯の部分まで肌に触れさせながら動かしたその一撫では、足裏の中心にハッキリと縦になぞった刺激を鮮明に綾香に覚えさせる。 そしてその最初の一撫でを皮切りにその羽根はまるで足裏全体の汚れを掃き掻いていくかのように右に左にと動き回ってくすぐり始める。 「いぎゃはっっ、はぎゃああぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁあぁあぁぁぁはははははははははははははははははははははははは、うぎひゃはははははははははははははははははははははははははは、えははははははははははははははははははははははははは!!」 足裏を駆けまわる様に端から端までをくまなく引っ掻き回していく羽根の刺激に、綾香は顔を天に向けて口を大きく開き悲鳴と共に激しい笑いを吐き出し始める。 「ギャ~~ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ、や、やめっっ!! やだっっはははははははははははははっはははははははははははは、やだってばぁぁっはははははははははははははははははははははははは!! うあははははははははははははははははははははははははははははは!!」 そのこそばゆさたるや腋の非ではない。羽根のカサカサした毛先の刺激と痛痒い感触を与える芯のしっかりした刺激が敏感な足裏の皮膚に凶悪なこそばゆさを植え付けていく。まるで足裏の神経を直接羽毛で触らせているかのような剥き出しのこそばゆさが襲い、綾香はカカトを何度も柱にぶつけて「やめてくれ」と鈴音に訴えかける。 しかし鈴音は羽根でのくすぐりを止めようとはしない。 それどころか、綾香が必死に足指をバタつくかせて苦しんでいる様子を眺めながら恍惚な表情を浮かべくすぐりを続ける。 「あはっっははははははははははははははははははは、や、や、やばっっははははははははははははははははははははは、あじの裏やばっっはははははははははははははは、いひひひひひひひひひひひひひひひひ、はひ、はひ、はひぃぃひひひっいひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 胡坐をかいて無心に綾香の足裏を羽根でくすぐる鈴音の様子を傍から見れば中々に残酷な仕打ちを行っているように見える。 逃げられない足を必死にバタつかせどうにか抵抗しようとする綾香に対し、決して逃げられないよう拘束された彼女の足裏を一切の遠慮なしに羽根でくすぐり回して彼女を笑い苦しませている鈴音……。その様子は確かに拷問や処刑のそれに近いものを感じる。 綾香の苦しみ様を見ていればそのように感じるものも多くいるのだろうが……しかし彼らは決して彼女を助けようとはしない。 なぜなら……綾香は“笑いながら”苦しんでいるのだから…… 「ギャァハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ひぎひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、くるひっっ! ホント苦ひぃっっっひひひひひひひひひひひひひひ!! かはっっはははははははははははははははははははははははは!!」 拷問や処刑の類であれば見るに耐えない痛々しい情景を思い浮かべるものだが、彼女に施されているそれは苦しみ方こそ尋常ではないが結局は“くすぐり”という児戯にしか映らない。 くすぐられて笑っているだけ……周囲のものはそういう見方しかできない。だから苦しんでいても助けたいという情があまり湧かない。彼女は楽しそうに笑っているのだから…… 例えるなら、誰かが鼻血を出したとしても誰一人として大騒ぎする者が居ないのと同じで……綾香に課せられているくすぐりという行為は見ている者からすると些細なお仕置き程度にしか映っていない。誰も綾香の本当の苦しみを理解しようとはしない。 笑わされ続ける事がこんなにも苦しい事だとは……受けている本人である綾香にしか理解は出来ない。水の中に顔を沈められているくらいに苦しいと綾香は思っていても、周囲の人達は「楽しそうに笑っていい気なものだ……」と侮蔑の言葉すら発する程その苦しみは伝わってはいない。 それが綾香に一番の苦痛をもたらせる。 自分がどんなに必死に苦しみを訴えかけても誰にも分かって貰えない……分かって貰えないだけならまだしも“まだ足りない”などと思う人間も居る始末……。 そんな理不尽な境遇に置かれた綾香は悔しさのあまり怒りさえ込み上げてくる。 なんで分かってくれないのっ! と叫び散らしたくなる衝動に駆られてしまう…… しかし、彼女は笑わなくてはならない。 鈴音のくすぐりに……逆らえないのだから…… 「ほらほらぁ~どう? こんな風に裸足の足裏を羽根でこしょぐられたら堪んないでしょ? くすぐったくて仕方がないでしょ?」 「ガハッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、だははははははははははははははははははははは、いへひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、くすぐったひぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、くすぐったいわよっっほほほほほほほほほほ、くははははははははははははははははははは!!」 「特に足の神経は“柔らかい刺激”と“尖った硬いモノでの引っ掻く刺激”に弱いから、それを両方兼ね備えた“鳥の羽根”でのくすぐりが最も効果的なの♥ 古の昔から足裏をくすぐる描写は羽根が使われてる場面が多いでしょう? それはそういう理由だからなのよ?」 「はぎっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、そんな事どうでもいいからっっははははははははははははははははは、どうでもいいからやめてッっへへへへへへへへへへへへへへ!!」 「どうでもいいワケないでしょ? あんたにはみっちり教え込んであげるんだから……♥ くすぐりという行為が……どれほど理にかなった拷問になるかを……♥」 「ひぎっひひひひひひひひひひひひ、し、知りたくなんてないっっ!! 知りたくなんてないからぁはははははははははははははは、はひゃぁっっははははははははははははははははははは」 「知りたくなくても……無理やりでも刻み付けてあげる♥ これからたっぷり時間をかけて……ね♥」 「イギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、うへひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、やめでぇぇぇ…………」 鈴音による足裏イジメは綾香の意識が朦朧となるまで続けられた。 酸欠によって頭の中が真っ白になるまで笑わされ……笑う力も出せなくなる程に疲弊させられ……意識が手放される直前まで追い込まれ……ようやく“羽根での刺激”を止めて貰えた。 言葉を吐く気力も……睨みを入れる余裕も奪われた綾香はただただ頭を項垂らせ呼吸だけを無心に繰り返し行っていく。 正直……くすぐりという行為を舐めていた。 智恵理との仕置きの場面で“辛さの限界”的な部分を垣間見れたと思った。 だから、これ以上の苦しみはないだろうと高をくくって鈴音のくすぐりを受けたのだが…… 彼女の本番のくすぐりは次元が違った。 彼女はくすぐりで苦しめる方法を熟知している。 何処をどんな風にくすぐれば人は笑ってしまうのか……そういうものを知り尽くしているようだ…… 実際……余興の時以外で彼女のくすぐりに笑いを堪えられた試しがない。余興の時も……その罰の時も彼女が“手を抜いていた”と言う事が今なら良く分かる。 鈴音のくすぐりは……恐ろしい。 彼女に触られたら……どんな部位でもくすぐったく感じてしまいそうだ…… 彼女は恐ろしい……。 彼女の手は……、指は……、くすぐりは……、恐ろしい…………。 俯きながらそのように恐怖の感情を浮かべている綾香に、鈴音は再び鼻歌を零しながら道具の置かれたテーブルに使い終わった羽根を置く。 そして今度はその羽根の隣に置いてあった“付け爪”を手に取ってそれを自分の手に装着し始める。 指先が切り取られたようなレザーのグローブの先に樹脂で作られたであろう乳白色の細長い爪が金具で繋がれていて、そのグローブに手を入れると自動的にその樹脂製の爪が鈴音の小さな指の先にそれぞれ付く形となる。鈴音はその爪が外れない様に爪専用の小さなベルトを指に巻き付け1本1本爪を自分の指に固定していく。 そしてそれらを付け終わったら試しにと言わんばかりに指をコチョコチョ動かして見せ、爪が連動して空中をくすぐる様子を綾香に見せつけた。 それでこれから何をするのか……散々責められてきた綾香に分からない筈がない。 綾香はその動きを見て再び顔を青ざめさせる。 そう……まだ鈴音の“責め”は終わってなどいないのだ…… むしろこれからが熾烈を極める事となる…… その事を悟った綾香は青ざめた顔を小刻みに震わせ始める。 自分は一体……この子供の様な女に……あと何回……笑わされなくてはならないのか? 終わりはいつ訪れるのか? 綾香は巨大な穴へ身を落とされているような錯覚を覚える。 不安と絶望が彼女の平衡感覚を奪い……まるで宙に浮いているかのような感覚を彼女に与えている。 鈴音はそんな綾香の怯えた顔を眺めながら再び胡坐をかいて足元に座り込んだ。 そして、綾香の嫌がる足先を見届けながらその爪のついた手をソッと足裏へと忍ばせていくのだった。