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ショーダウン(リメイク)㉔

24:仕置きの終わりとスーツの男  あれから何度意識を失ったのか……もはや覚えていない。  何度意識を失い……何度無理やり起こされたのか……  そして何度、あの地獄の様な苦しみを与えられたのか……  喉が嗄れ、涙や汗は出尽くし、身体の感覚はもはや神経が擦り切れてしまったのではないかと思える程に刺激の伝達がマヒしてしまっていた。  何度目かの意識喪失の末、麗華たちが彼女を起こさなくなったのはカジノが閉店を迎える数十分前というギリギリの時間……。  つまりはその時間が来るまで綾香は笑わされっぱなしで気絶と覚醒を繰り返していた事となる。  当然、その姿を見て集まっていた客達も次第に綾香の凄惨な姿を直視することが出来なくなり、それぞれが“何か恐ろしいものを見てしまった”といった表情を浮かべてカジノホールを後にしていった。  結局……最後の最後までこの仕置きショーを見守ったのは、あの麗華の為に資金を工面したスーツ姿の男とカジノのスタッフだけであり、他の客達は誰一人としてこのショーの最後を見届ける者は居なかった。  最後の気絶を確認した麗華はそこでようやく綾香の拘束を解く事を智恵理と鈴音に命じ、観客が誰も居なくなったホールに向けて仕置きの終了を告げるアナウンスをマイクに通して行った。  スタッフとその男しかいないホールでそのようなアナウンスをする意味などない様に思えるが、麗華にとってこの仕置きはただのショーではなく“行わなければならない業務”であったため、それがキチンと遂行された事とそれが今終わりを迎えたという事への区切りを付けなければならなかった。  くすぐる為に延々と動かし続けていた指はマイクを持っていても勝手に痙攣し上手く力が入らない。  しかし麗華は笑みを零すことなく淡々とその業務が終わったという報告をマイクに入れ続け、スタッフたちに協力してもらった旨のお礼と騒がしたお詫びをそれに加えて伝えていった。 「なぁ……これで……終わったのか?」  麗華のマイクアナウンスが終わる頃合いを見計らって、あのスーツ姿の男がステージへと上がり込み麗華に向けて声を掛ける。 「終わったか……とは? どういう意味です?」  麗華はマイクをテーブルへと置き、綾香の汗や涎で濡れた手をテーブルの上に置いてあった手拭きにて拭き上げそのように言葉を返した。 「いや……実は俺も……他の客同様に、途中で席を外したいって思ってたけどさ……あんたがどうしても“最後まで居て欲しい”っていうから残ったんだ……この仕置きがコレで終わったんなら……俺はもう帰らせてもらおうと思っててさ……」  麗華は片方ずつ丁寧に手を手拭きで拭い去ると、それを小さなゴミ箱へと入れフゥ……と息を吐く。 「仕置きが終わったのか? と言う事でしたら……仕置き自体は終わりました。今しがた……」 「そ、そうか! じゃあ俺も帰っていいって事だな?」 「ですが! この件が“全て片付いたのか”と言われれば……実はNOです。まだ私にはやる事が残ってます」 「まだ終わっていない? って……アレか? 依頼主に報告とか……そういうヤツか?」 「それもありますが、私はとある方と約束をしておりまして……それをこれから果たさなくてはなりませんの」 「約束? 果たすって……何をだ? それに関しては……俺は……関係ないよな?」 「いいえ、その約束を果たす為に……貴方には残って頂いたのです」 「はっ!? お、俺に?? な、なんだよっ! 俺は何も……悪い事なんてしてねぇぞ?」 「フフ……ご安心ください。もう仕置き云々は終わったのですから……。貴方には何も危害を加えたりはしませんわ♥」 「あ、あぁ……そうか? ハハ……それなら……安心だ……」 「なんです? 何か後ろめたい事でもお有りでしたか?」 「へ? い、いや……ほら……あんた、もう知ってんだろ? 俺の肩書きとか色々な事とか……」 「えぇ……存じておりますわ。結城社長♥」 「今でこそホテルの経営権を4つも持ってる社長何て言われてるけどよぉ……昔はそりゃあがむしゃらにやってきたもんなんだよ……」 「えぇ……それも伺っておりますわ……」 「がむしゃらだったが故に……業界的には違法スレスレの……グレーな事もよくやってきたもんだからさ……」 「なるほど……それで、もしかしたら仕置きされるんじゃないかって思ったとかですか?」 「ハハ……違うんだよな? そういう事じゃないんだろ?」 「えぇ。ご安心を♥ そういう部分には私も明るくはありませんから……知っていても裁いたりなんてしませんわ♥ 専門外っていうヤツですわね……」 「そ、そうだよな? い、いやぁ~~~ほら、あんたって……なんでも調べ尽くして仕掛けるタイプだろ? だから俺の事も調べ上げていたとか勘ぐっちまってさ……。しかし違うんなら良かった! な、なぁ! 今のは聞かなかった事にしててくれよ? 警察とかに動かれたら面倒くさいからさ」 「誰にも言いませんわよ♥ 私の胸の内だけに秘めておきます。でも、貴方の事を調べ上げたというのはその想像通りでしてよ?」 「良かった……って、へ?」  フッと息を吐くように力を抜いた麗華は自身の真っ赤なドレスのサイドポケットから小さなメモ帳を取り出しそれを開きながら話を続けた。 「失礼は覚悟で申しますが……。この一件は実は、貴方がこのカジノで綾香さんに“負けさせられる”というのが条件で作戦を展開するようシナリオを組んでおりましたの」  メモ帳のページを捲りながらそのように言い放った麗華の言葉にスーツの男は目を丸くして驚く表情を見せながら言葉を返す。 「お、俺が……負けさせられる?? 何だよそれっ! それはどういう意味だ?」  目当てのページを見つけた麗華はそのページに目を移しながらもページの上から目だけを覗かせて驚く男の顔に向けてそのページ書いてあった情報を一部抜粋して語り始める。 「貴方は製薬会社の結城コーポレーション社長……そして複数のホテルを経営する実業家の顔も持つお方……そんな貴方が、このホテルを視察に来ることは分かっておりました……」 「視察にって……お前……知ってたのか? 俺がこのホテルの……」 「えぇ……勿論です。ですから貴方の会社に匿名のタレコミを入れさせていただきましたの♥ “このホテルのディーラーがいかさまを犯している疑いがある”と……」 「アレは……お前のタレコミだったのかッ!? あのアドレスは俺個人のアドレスだったんだぞ?」 「アドレスをどうやって知ったかは企業秘密なので言えませんが……でも、そのメッセージを見て貴方はキチンと視察に来てくださいましたでしょう? その噂の様なメッセージが本当なのかどうかを……」 「あ、あぁ……まぁ……何かの悪戯だろうと思って軽くしか見て回らなかったが……このホテルには前々から悪いうわさが立っていたから……これを機にと思って……」 「それでも私が知る限り貴方は4度もこのカジノを訪れてくださっていましたわ♥」 「う、うぐっ! そ、そこまで知っていて……」 「他3回はカジノを見て回るだけだったり気紛れに軽い勝負をして帰るだけにされていたようですけど……今日は違ってましたわよね? 今日は……実際に綾香さんと対戦をしてくださった……」 「いや待て! あのメッセージがあんたのだとするんだったら、2通目のメッセージもあんたのなんだろ? あんなの送られたら……そりゃあ勝負しちまうに決まってる!」 「2通目……そう。そのメッセージを送る事で今日の作戦が決行出来ましたの♥ 確か……こんな風に送ったんでしたっけ? 今日の○○時に○○の卓についているディーラーがいかさまを行う予定だ……と……」 「あぁ! その○○の卓がブラックジャックで、そこについているディーラーの名前は椿綾香と言うって……そこまで明確に書いてあったんだ! そこまで書かれてたら……半信半疑でも勝負して確かめたいって思うさ! お陰でしこたま負けさせられたがな!」 「ま、まぁまぁ……。ほら……負けた分と迷惑料はしっかり払わせて頂きましたでしょう? その件は許して下さいまし……」 「そうだけどよぉ! そこまで俺の事を調べ上げて更にはあんな誘いのメッセージなんか出して俺を誘き出したのは……やっぱり金が目的だったって事なんだろ? あんたんトコの会社が、調査費以外の費用を出してくれないとかなんとか言ってたもんな?」 「そ、それは……まぁ……一つの理由としては間違ってませんが……」 「やっぱり金が目的だったのか! それじゃあ俺は何だ? お前の金ヅルとして目を付けられただけの男だって言うのかよっ!」  結城の激昂に麗華は申し訳なさそうな表情をしつつ首を横に振る。 「確かに……。お金の面での協力は……して頂きたいと思っておりました。しかし! 私が貴方に目をつけたのはそれだけの為ではありません!」 「なんだ? まだ俺の事利用しようって腹か? 俺はなぁ……あの悪趣味なショーを見て辟易してんだ! 何なんだよアレ! 仕置きと言うより……イジメじゃねえかよ!」 「う~ん……そう言われると何も返せなくなってしまうのが辛い所ですが……」 「アレはお前たちがストレス発散したかっただけのショーだろ? そうでなければあそこまでしつこくやる意味はなかった筈だ! 違うか?」 「い、いいえ! アレはあそこまでやって始めて意味のある仕置きだったんです!」 「客が呆れて帰ってたのにか? それが仕置きなのか?」 「それが仕置きです! そこまでしないと……困る事になりますから……」 「困る? あぁ……依頼主がか? 依頼主が……そこまで徹底してやれって言ったから……あんたは仕方なしにやったと?」 「ち、違いますっ!! 依頼主は関係ありません!」 「だったら誰がアレで喜ぶんだよ? あんたたち以外に喜ぶ者なんて……」  スーツの男……結城がそこまで詰めると麗華は開いていたメモ帳をパタンと閉じ、気のない息を一つ吐いて視線を斜め下へと向け覇気のない声で言葉を続けた。 「喜ぶ者など……一人も居ませんわ……」  その呟きに勢い立って言葉をぶつけていた結城の言葉が僅かに止まる。 「……っ? なに?」  結城が麗華の言葉の意味に考えが及ばずその言葉に素直な疑問符を浮かべる様子を見せると、麗華は斜め下に顔を向けながらもその言葉の意味を少しずつ口から出し始めた。 「アレを見て……喜ぶ者など……客の中に一人もいない……。それは当然ですの……。私がそのように……仕向けましたので……」 「……はぁ? 何を言っているんだ? じゃあ……あの仕置きショーは誰の為に……」 「アレは誰かを喜ばせる為にしたわけでも……観客の皆さんの為に行った仕置きでもありません……やらなくてはならなかったから……やっただけなんです」 「なんだよそれ……意味が分かんねえ……。結局……やらないといけないっていう契約だったからやったんだろ? だからやったんだよな?」 「いいえ。仕事の契約にはそのようには明記されてはいませんでした……。ただ……仕事を与える条件として“とある事”を満たしてくれればそれでいい……とだけ……」 「とある事を……満たす?」 「契約の内容は守秘義務があって言えませんが……私は、それを“満たす”為にあの仕置きを行わざるを得ないと考えました……」 「あの仕置きは……何かしらの条件の為にやった……って事なのか?」 「えぇ。アレは別に……契約の中でやれと言われた内容ではございませんの。たまたまその条件が加えられたからやらざるを得なかった……というのが正しい言い方になりますわ」 「……あんたらは……じゃあ、嫌々やったってのか? あの仕置きを……」 「えっ!? それは……その…………」 「なんだよ、その満更でもないっていう顔はっ! 結局お前らも楽しんでたんだろ? 不正に手を染めた女をいたぶる事をよぉ……」 「い、言い方がよろしくありませんでしてよっ!」 「いや……そういう顔してたし……」 「(コホン!)確かに……百歩譲って……仕置きをする事に関しては満更ではないというのは認めますけど、でも……ここまで徹底的にしたのにはキチンとした理由が有りますの!」 「百歩も譲ってくれんのかよ……。案外、楽しみだったっていうウエイトの方がが大きそうだな……」 「あぁいう風にしないと“二人”も困る人間が出て来るから、仕方なく徹底的にやった……というのが先程の答えですの! 楽しくてやっていたのは、ほ~んの少しだけですわ!」 「困るヤツが二人? なんだよそれ? 誰と誰だよ?」 「それも守秘義務があって言えませんが……少なくとも一人は依頼主その人だという事はお伝えしてあげます……」 「依頼主が? う~ん、なんか釈然としねえぇが……まぁその事はもういいや……。それよりも……さっき口走っていた俺に目を付けた理由ってのは結局何なんだ? やっぱり金の事か?」 「いいえ……お金の事よりも何よりも、貴方がこれから行おうとしている事……それに興味が湧いたので調べさせていただいたのですわ……」 「俺がこれからやろうとしてる事ぉ? 何の事だそれは……」  麗華は先程閉じたメモ帳を再び開いて複数枚のページを指で捲っていった。そして先程開いたページの次のページに書いてあった自分のメモを見て捲りを止めその内容を読み語り始めた。 「貴方は……来年の4月までに、ホテルと同規模の敷地面積を有する“総合的なアミューズメント施設”を設立する事を目指していて……その為に手持ちのホテルの統廃合を現在行っているのですよね?」 「ッっ!? な、な、何でそんなことまで知っているんだッっ!? お前っ! ホントはどこかのスパイとかじゃないだろうな?」 「す、スパイ!? 違いますわよっ! この情報は貴方のあの悪趣味なホームページの自己紹介の部分に書いてありましたわ! 普通に公開されている情報でしたわよ! コレ!」 「あ、あ、あぁ……そうだったか? ハハ……」 「スパイとは失礼いたしますわね? このような良識ある貴婦人を掴まえて……」 「いや……良識ある貴婦人は、あんなえげつない仕置き、しないから……。後、俺のホームページの事を悪趣味とか言ったな? 後で覚えとけよ……」  結城の辛辣な反論に再び場をの雰囲気をリセットしようと麗華が空咳をコホンとして間を空ける。そしてメモ帳に目を落としながらも彼女の真意を少しづつ話し始める。 「あの情報を見て……このいかさま騒ぎの一件は貴方に収めて頂くのが肝要だと思いましたの……」 「この一件を収める? それって……この仕置きショー全体の事を言っているのか?」 「えぇ……その通りです」 「ま、待て! 何で俺にそんな役回りを?」 「総合的なアミューズ施設というのは……要は娯楽施設を多数設置するという計画なのでしょう?」 「あ、あぁ……まぁ……計画っていっても、やろうとしてる事はただ……ホテルのフロアを全部アミューズメントに特化した施設に変えちまったら楽しい施設になるよな? ってだけだぜ? 秘書が説明文の所を小難しく書き変えたから大層な計画に見えちまっているだろうがな……」 「あの説明にはカジノだけではなく、オペラや映画、コンサート会場やダンスクラブに至るまで様々な娯楽が網羅されていると書かれておりましたが……」 「あぁ……そうだが? 今では廃れたディスコやストリップショーなんかも作ってみようなんて意見も出ててな……多岐にわたってテナントを入れ込む予定さ……」 「その為に……ホテルを買い漁って経営されているのですわね?」 「あぁ……買い漁ってってのは語弊があるが……一部のホテルはカジノも併設されているからその運用方法とかを勉強する為に株主になってたりはするな……」 「そのような夢がお有りでしたのでしたら……当然“アレ”も併設して頂けますわよね?」 「……はぁ? アレ?? なんだ? アレって……」 「私はそれをお願いしたくて……貴方に残って頂いたのです……」 「お、おい! だからアレってなんだよ? 何の事言ってんだ?」 「この仕置きショーを見て頂いた貴方なら……きっと納得して頂けると思うのですが……如何でしょう?」 「仕置きを見た俺が何だって? 何が言いたいんだ! お前は俺に何を求めてんだよ?」 「フフフ……♥ 併設して頂けるのでしたら……きっと楽しい“ショー”になると約束して差し上げますわ♥ ですから是非……検討して頂きたいと思っておりますの♥」 「しょ、ショー?? ショーって……まさか……お、お前! 自分達の仕置きを……」 「フフフ♥ 良い返事を期待いたしますわぁ♥ 結城コーポレーションの……社・長・さん♥」

Comments

くすぐりに羞恥の感情も加わって頭の中がぐちゃぐちゃになっていくの良いですよね🎵シリーズ化はまだ考えてませんが反響次第ではやるかもですね✨

ハルカナ

ショーダウンはスニーカーズと並んで好きな作品だからシリーズ化されたら嬉しいですね。 リメイク最高でした。こういう晒しながらの拘束くすぐりやっぱり良いですね。

ガリタル


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