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ハロウィンss進捗(2) 街中の様子

翌日、ユウカと先生は各地の学園を回って様子を確認することにした。 異変が発生してからずっと事態の把握や沈静化にあたっていたため、外の空気を吸うのは久しぶりな気がする。 空は変わらず秋晴れのままだが、2人にはそれを楽しむ余裕はなかった。 「ミレニアムの方はどう?」 「ヴェリタスも調査してるようですけど、手がかりは掴めていないみたいです」 現状への対応をしつつ異変の原因についても調べてはいるのだが、未だに判然としていない。 出現したエネルギー自体も消失しておらず、また何かが起きてもおかしくない状態とのことだった。 ただ現時点では、生徒たちの肉体が男のものに変わった……それ以外の異変はないことも確認されている。 ゆえに、どこも表面的には落ち着きを取り戻していた。 「お疲れ様です、先生」 トリニティの管轄エリアに入ったところで声を掛けてきたのは、羽川ハスミ。 主に治安維持や警護を担当しており、実質的な指揮役としても活動している生徒だ。 「ハスミ、今もパトロールかな?」 「ええ、こういった事態こそ正義実現委員会が動くべきですから」 落ち着いたトーンの、普段より低くなった声で応じるハスミ。 凛とした立ち姿は普段の面影を感じさせるし、身長はおそらく179 cmのまま変わっていない。 だが、その変化はユウカ以上にはっきりと現れていた。 「少し服はきついですが、動くのに支障はありません」 一言でいえば、横にデカい。 肩幅は左右に広がり、二の腕も黒セーラーの袖ごしにパツパツになっている。 スカートの深いスリットから覗く太腿は以前から太いのだが、丸々とした肉感というよりも運動した筋肉ゆえの硬質さがうかがえる。 骨格からしてがっしりと太く、その上に筋肉が乗った肢体。 制服ごしにも見える筋肉の凹凸と厚みは、男だとしても目を見張るものがあった。 「ガタイがいい」とはこういうものかと思い知らされる。 身長だけでなく横幅と厚みもくわわって、立っているだけなのに圧を感じるほどだ。 「もちろん無理強いはしておりません。部員の子たちにも、動ける者のみパトロールに向かうよう指示しました」 ギチッ、ミシシッ…… そして、特筆するべきはその胸。 元々かなり大きなサイズをしていたのだが、その膨らみがなくなってもなお制服が窮屈そうに悲鳴をあげていた。 昨日まで乳カーテンを形成していた上着は、逆三角形を描く上半身に引き伸ばされつつ胸板と密着している。 そして黒い制服ごしにもわかるほどの凹凸が、くっきりと陰影として浮き上がっていた。 女性らしい膨らみではなく、いくらか固さを感じさせる左右の隆起。 大胸筋……いわゆる雄っぱいと言われるものだろう。 体格に見合った筋肉量とぶ厚さ。 全体的には引き締まりつつも、うっすらと皮下脂肪も乗っているため、変わっていない顔も含め印象はハスミらしさを失っていない。 戦闘に慣れている正義実現委員会、その副委員長として培われた肉体といえた。 「すみません、その、あまり見ないでいただけると……」 圧倒され、じっとハスミの身体を見つめていた先生とユウカだったが、言われて慌てて目を逸らす。 「ごめん、変わった身体なんて見られたくないよね」 「いえ、異変そのものは割り切っております。ただ……」 恥ずかしそうに先生から目線を逸らしつつ、躊躇いながらも言葉を続ける。 「その……体重が増してしまって」 ハスミが気にしている点に納得する。 これだけガタイもよくなれば、体重も相当あるはずだ。 それこそ、大人の男性である先生より重くてもおかしくない。 「異変が解決するまでは運動量を増やそうかと思っているのですが、食事量も少し増えてしまい……」 深夜にパフェ3杯いけた彼女が、さらに食事量を増やす……ちょっと想像がつかない。 たぶんこれからも体重は増えるだろうな、という予感はあったが、先生もユウカも言葉をぐっと飲み込んだ。 「謝肉祭の準備は続けてるんだね」 見回りとしての目的を果たすため、話題を変える先生。 辺りでは、生徒たちが準備のための資材などを運びながら忙しなく動き回っていた。 ぱっと見た印象では、普段とあまり変わっていない。 もちろん近づいて見るとセーラー服が妙にきつそうだったり、恥ずかしそうにしていたり、下半身をごまかすように手やカバンをやって隠しながら歩いている子も多いのだが。 「ええ、中止しても解決しませんし、事態が改善する可能性も踏まえれば、最後までやりきった方がいいだろう、というのがティーパーティーの決定です」 今回の異変は、生徒たちの男体化である。 だが、逆に言えばそれ以外に明確な異変は認められていない。 みんなの肉体が健康であることは、医療系の生徒たちからも確認が取れている。 「もし、解決策が見つかって戻れたとき……準備ができていなければ始められませんから」 謝肉祭とハロウィンが一度に催されるトリニティでは、これは特に大きなイベントだ。 原因不明の異変ではあるが、やれる以上はやるべきだろう。 むやみに懸念ばかりして、貴重な青春の1コマを失うわけにはいかない。 「先生も、お時間ができたらいらしてくださいね」 「うん、ぜひ寄らせてもらうよ」 やはり楽しみなのは変わらないのだろう。ハスミも心なしか嬉しそうだし、お祭りの前の熱気は復活しつつある。 今まで通りの日常を過ごそうとしているのだから、先生としてはそれを応援するだけだ。 「あ、そうだ」 先生は思い出したように動かしかけたハスミを見つめる。 おそらく異常に巻き込まれ、体重の増加を憂慮しているハスミのことが気になったのだろう。 「身体は大変かもしれないけど……今のハスミも、変わらず綺麗だと思うよ」 「っ……!?」 予想外の一言だったのだろう、目を見開いて固まるハスミ。 そして、そのまま顔が真っ赤になっていく。 「き、急用を思い出しましたので、私はこれで失礼します!」 普段通りの対応をしただけのつもりだった先生は、足早に去っていくハスミの背中をただ見送っていた。 (意外とみんな平然としてるのね) ユウカは先生の後ろをついて歩きながら、他学園の生徒たちの様子を眺めていた。 実際、自分の身体も変わってはいるものの、そこまで日常生活に支障は出ていない。 少し制服が突っ張るとか、下着まわりの感覚が変だとか、お手洗いでの困惑などはあったが、それ以外は基本的にいつも通りに過ごせている。 (まぁ、先生が悪く思ってないなら、私はそれで……) 男になったからといって、先生の態度は変わらない。 それは、すぐ近くにいたユウカ自身が肌で感じていることだ。 さきほどのハスミとのやり取りも、それが行動に現れていたといえるだろう。 どの生徒たちにも優しく、ときには口説いてるような言動をするのはいつも通りだし、半ばあきれるところではある。 でも、今はそれ以上に普段通りの対応が嬉しくもあった。 先生へと抱いている好意は、身体が変わっても変わらず、むしろ増していると言えるだろう。 『キヴォトスを突如として襲った異変、その正体は一体何なのか!』 街の映像モニターでは、昨日からずっと異変について取り上げている。 クロノス報道部が各地で取材やリポートを行っていた。 『この時間は私、川流シノンがお送りします!』 日焼けした小麦色の肌に、テンションの高い声。 ポニーテールにまとめた金髪を元気に揺らしながら実況している。 晄輪大祭をはじめ、様々なイベントにも顔を出している生徒だ。 『私も異変の影響を受けておりますが、アイドルレポーターの命である顔はさほど変わっておりませんので、そこはご安心ください!』 快活な笑みで語っているシノン。 キヴォトスの生徒たちは、容姿の整った者が多い。 シノンもまた、アイドルを自称するに相応しい美少女と呼べるだろう。 それでいて……今の彼女の首から下は、男のそれとなっている。 『皆様もご存じでしょうが、昨日、私たち生徒は一瞬にして男の肉体と化したわけです。』 クロノスの制服なのだろう、白と水色で構成された制服。 中でもシノンの上着はすさまじく丈が短かいもので、巨乳だった彼女の褐色の南半球がしっかりと見えてしまうレベル。 そして、たわわな膨らみがなくなった今は、胸板の下半分が顔を覗かせていた。 筋肉質で引き締まった肢体のようで、褐色肌が大胸筋の陰影をより際立たせている。 もちろん腹部は丸出しで、6つに割れた腹筋がしっかりと浮き上がっていた。 キヴォトスには元から露出の多い制服を着ていた生徒も多いのだが、身体が変わっても服そのものは変わらない。 ゆえに自然と、男の肉体を見せつけるような格好になってしまう。 『もちろん、この私も男の身体になっております』 南半球が丸出しの上半身のインパクトに意識が向きがちだが、下半身も相当なもの。 足先までぴっちりと密着した制服と同じ色のスパッツは、その輪郭をくっきりと浮かび上がらせている。 割れた腹筋や体格に見合った、少しゴツゴツとした印象のある両脚。 筋肉質で太さもあり、精悍な男子学生と言われれば納得するだろう。 ただ、最も目を引くのはそこではなく── 『流石に全身すべてをお見せすることはできませんが、自分が男として生まれていたらこうなってたのかも……などと微妙な心境にもなりますね』 シノンのリポートを流しつつ、だんだんカメラが下に動いていく。 画面の中央に映されたのは、がっしりした太腿の付け根、その股間。 以前は鼠径部に沿ってピッチリと張り付き、綺麗な三角形の空間ができていたはずだ。 しかし、今その空間は埋まっていた。 『中にはハロウィンとの関連を疑う声もあるようで……ちょっと、どこ映してるんですか!』 シノンが気づいて声を上げるが、カメラは下半身をしっかりと映していた。 本来あったはずの空間を埋める、もっこりとした膨らみ。 スパッツの中央を縦にまっすぐ走っていたはずの縫い目も、内側からこんもりと押し上げられて歪んでいる。 よく見ると、竿の形までくっきりと── 「っ……!?」 唐突に、下半身から熱いような、もどかしいような感覚が込み上げる。 くわえて、下着とスカートに押さえつけられているような不快感。 ただ立っていただけなのに、急激に押し寄せてくる未知の感覚に、スカートに手をあて前のめりになるユウカ。 「何か気になった?」 「い、いえ、なんでも……」 前にいた先生には見えていなかったようだ。 誤魔化すように姿勢を戻し、服の埃を払う仕草をする。 ユウカは妙に敏感になったような気がする下半身を誤魔化しつつ、昨日からの異変の対応と当番を終えた。


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