成り上がる為に成り下がる
Added 2023-11-03 15:00:00 +0000 UTCアイドルも群雄割拠の時代。
個性を出さないと生き残れないと言うやつがいるが、個性なんてそうそう見つかるものではない。
しかしそんなことを言っていると今度は、同じ人間は存在しないから全ての人に個性があるなんてほざくやつが現れる。
細胞レベルまで細かく見ればそうなのかも知れないが、アイドルとして生き残るためには何の関係もないのだから、ただの偽善者による戯言に過ぎない。
ここで言う個性とは、アイドル同士で比べたときの個性なのだ。
同じアイドルを目指すもの同士が集まって比べるのだから似たような者が集まるのは必然であり、そこで個性を出すのは難しいのである。
そうは言っても、個性を活かしてトップアイドルと呼ばれるに至る者がいるのは歴史が証明しているし、それを目指すために努力をする必要があるのは疑いようも無い事実なのだ。
私、東雲 莉音(しののめ りおん)もトップアイドルになるべく日々 “努力” を積み重ねてきた。
有象無象のアイドルから、唯一無二のトップアイドルに "成り上がる為に" 個性のない私は "成り下がる" しか無かった。
ーーーーー
「会場のみんなー♪♪ 今日は来てくれてありがとーーーっ♪♪♪♪」
出番を終えて楽屋へ戻ると、控え室でマネージャーが出迎える。
「リオンさん、お疲れさまです!! 今日のステージ、大盛況でしたね!! 人の入りも順調に増えていますし、このまま頑張りしょうね!!」
この元気なマネージャーの言っていることは決してお世辞では無い。
確かにアイドルのメンタルケアは大切で、一つ間違えただけでも大変なことになる。
若い女の子が多いこの業界では、メンタルの異常がそれ以上の体調不良を引き起こすこともある。
病めばアイドル活動を続けられないし、いくら星の数ほどのアイドルがいて、代えには困らないとしても、ここまで育てたアイドルを潰すのは誰しもが避けたいはずだ。
しかし、その次の段階に入ると本当に大切なのはむしろ、きちんと現状を把握することだ。
ただ歌って踊れば人気が出て、トップアイドルになれれば誰も苦労はしない。
歌って踊った後が一番重要であり、いま何が必要かを考えるのだ。
だから、うまく二人三脚の出来ているアイドルとマネージャーの間にはお世辞は無いのだ。
「…ありがとう」
それはわかっているけど、素直に受け取れない私がそこには居た。
マネージャーとの関係は極めて良好だし、マネージャーの言った通り今日のステージは大成功だった。
私が喜べない理由は別のところにある。
…コンコンコンッ、ガチャ。
「失礼するよ」
そう言って、莉音たちの返事も待たずに控室に入ってきたのは権田 権三郎(ごんだ ごんざぶろう)。
この男は、芸能界ひいてはアイドル業界において絶大な力を持っている。
そんな権田と入れ替わるようにして、マネージャーは部屋を出た。
「いや〜 今日のステージは良かった……君の枠を用意する為に手を回した甲斐があったよ」
「その件に関しては……感謝しています」
「いやいや、リオン君の努力によるところも大きいのだしもっと誇るといい。困った時はお互い様だし、我々は Win - Win な関係なのだからね」
そうは言われるものの、態度を崩すことなく返事を返す莉音。
「…ありがとうございます……それで次のお仕事は……」
仕事の予定などはアイドル本人ではなくマネージャーが調整するのが一般的だと思うが、ここにマネージャーの姿はない。
しかし、プロデュースとマネジメントの観点から言うならば、セルフプロデュースをしている莉音にとって、これはプロデューサーとしての一面であり、トップアイドルに成り上がる為の努力なのだ。
「リオン君はよほどの努力家だし、そう言われると思って新しい話は持って来ているよ」
権田が一つの鍵を莉音に投げ渡す。
「〇〇ホテル 1012号室に本日の18時、その衣装を下に着たまま向かえ」
予定通り、それだけを伝えに来たと思われる権田は『わかりました』と莉音が返事を返すより先に部屋を出て行った。
「あの〜、お話は終わりましたか?」
外に出ていたマネージャーが戻ってきて声をかける。
「ええ、次も出番を貰えそうよ……」
「リオンさんはほんと凄いですねっ!!」
莉音のプロデュースには干渉しないことが条件づけられたこのマネージャーは、具体的に莉音がどうやって出番を得ているかは知らない。
そのため、アイドルとセルフプロデュースの両方をこなす莉音を凄いと思っているのだ。
…それに、これに限らずとも人間関係においては、お互いのことを全て知らない方がいいことも多分にあるはずなのだから……
「向かうところが出来たから、“今日も” ここで結構よ」
「そうですか、お言葉に甘えて失礼しますね」
マネージャーは実際にステージに立つわけではないが、アイドルと同等かそれ以上に大変なこともある。
そのため、許されるなら一刻も早く帰りたいと思うのは必然で、仕事を終えプライベートになれば莉音がステージ衣装のまま上着を羽織っていても気にしないのであった。
マネージャーを帰した莉音は、素早く荷物をまとめると指定された場所へと向かうのだった。
ーーーーー
「お待たせしました」
ホテルに着き、1012号室の扉を開いた莉音は、すでに部屋の中で待っていたの人物に声をかけた。
「そこまで待ったわけでは無い。それにいま人気のアイドルに会えるのだから、この待っている時間も決して悪いものではなかったよ」
そう返したのは、50手前くらいの小太りな男性……およそアイドルと付き合っているとは考えられないが、夜の…それもホテルという密室で会っているのだった。
それから莉音とその男性は、挨拶と捉えられるか怪しいほどのやり取りを済ませてると、早速本題に入る。
その男性が名前を含む正体を明かすことはなかった。
「リオンちゃん、早くその服の下を見せてくれないかな? 待つのが悪くないとは言っても、目の前にしてから焦らされるのはおじさんちょっと……」
「私も長居はリスクがありますので手短に」
莉音は恥ずかしがる様子もなく羽織っているものを脱ぐと、数時間前まで大衆の前に晒していたステージ衣装を一人の男性の前に晒す。
「それが今回のステージ衣装か。可愛くてリオンちゃんに似合ってるね」
「ありがとうございます」
この言葉から、この男性が今日のステージを見ていないことが分かる。
さらに言えば、この男性が誰かは分からずとも、ファンで無いことだけは分かった。
「リオンちゃんちょっと固くない? もっとアイドルらしい感じを期待していたんだけど……ファンサービスも出来ないのなら、おじさん帰るけど??」
「(…ファンなんかじゃ無いくせに……)ご、ごめんなさ〜い♪ リオンのこと嫌いにならないで欲しいなっ♪♪」
一瞬で態度を変えられるのはさすがアイドルと言ったところか。
ステージ衣装に身を包みファンサービスをする姿は、本物のそれに違い無かった。
「おじさまはこの衣装がいいんですよね? そしたら今日はこのまま失礼しますね」
莉音は男性の座っているソファに近寄り、男の太ももに手を置きながら隣に身を寄せる。
ソファに座ると、莉音は “慣れた” 手つきで太ももからお腹の方へを手を滑らす。
「おじさまのその服は要らないですよね?」
シャツのボタンを下の方から順に外し、胸を通って首元まで来るとそのまま抱き付くようにシャツごと手を後ろに回す。
肩から下ろすようにシャツを脱がせると、腰まできた手を今度は背骨をなぞるようにして上へ動かす。
耳元では囁くように莉音の声が聞こえてくる。
「どうですか、リオンの手は? 小さくて、綺麗で男の人の手とは違う。軽く握っただけで潰れてしまいそうな繊細な手……お金を払ってでも握手を求めるリオンの手で体中を撫でられる気分はいかがですか??」
「ああ、最高だよ。まさに天にも昇る気分だ」
「嬉しいっ♪ そんな嬉しいことを言ってくれるおじさまには更なるサービス……れろっ、んっ♪♪」
ファンサービスを超えたリップサービスとでも言えばいいのだろうか、莉音は舌を使って耳を舐め始めた。
「じゅるっ♪ じゅるっ♪ れろれろっ♪ はむっ♪ ……どうれすかぁ?」
耳たぶを咥えたり耳介を舐め回したりと、外に出ている箇所をほぐし終えると続いて耳の奥に舌を入れる。
「じゅぞっ♪ ぞぞぞっ♪ じゅるる♪ ……反対側もぉ… ふぅぅぅ〜♪ ふふふっ♪ 舐められると思ってたでしょ? 息吹きかけられて耳ぴくってしてたのかわいいっ♪ ……それじゃあ… ちゅぱっ♪ んちゅっ♪ ずぞぞっ♪ ぢゅぱっ♪」
両耳を唾液でベトベトにし、テカテカと反射するまで舐め上げる。
その間、莉音の手は別のところを弄っていた。
「…こっちも硬くなってきましたね♪ ……コリコリっ、コリコリっ……♪♪」
男の乳首をつまみながら、わざとらしくコリコリと囁く。
耳を舐めらたり乳首をつままれたり、囁かれたり息を吹きかけられたり、それによって男の耳は赤く色づき、乳首は豆のように膨らんでいた。
「…リオンちゃん、気持ちいいよ……それにリオンちゃんとの距離が近いから、動くたびにリオンちゃんのいい匂いがするし、その中に微かに感じられる刺激臭もまたいいね」
「やだぁ、おじさまったら刺激臭だなんてぇ……ステージが終わってから衣装もそのままに来たんだから意地悪なこと言わないでくださいよぉ……私のいい匂いだけ感じ取って欲しいなぁ♪」
「いやいや、どんな料理にも適量のスパイスは必要でしょ? リオンちゃんみたいな素晴らしい素材には汗の匂いも良いスパイスだよ…… “清純派” アイドルからするニオイとしては夢を壊しそうだけどね」
この状況を見て、誰が清純派アイドルだと言うのだろうか。
もし言うとしたら、みな口を揃えて汚れ切ったアイドルと言うに違いない。
それでも、清純派アイドルとして表舞台に立つには、裏でその身を汚すしか無かった。
そう、トップアイドルに成り上がる為には、枕アイドルに成り下がるしか無かったのだ。
「おじさまは何のお仕事をリオンにプレゼントしてくれるのぉ?」
「そうだね…〇〇局のお昼に出番はどうかな?」
「ほんとっ♪ おじさまテレビ関係の人だったんだぁ♪♪ そしたらリオン、もうちょっとだけサービスしちゃう♪♪」
枕アイドルに成り下がったとは言え、本番をするまでに身を落としてはいない莉音。
あくまで、“個人的に” 会って食事や接待、それから今回のような軽いスキンシップを伴う “ファンサービス” までしか行っていない。
“個人的に” という時点で黒い気はするし、軽いとは思えないスキンシップはもはやファンサービスの域を超えているが、それでも莉音の中では一線を引いていた。
そんな莉音が、今日はもうちょっとだけサービスすると言うのだ。
現金すぎるとも思えるが、そもそもそれを目的としているのは互いに承知の上のことである。
「特別に……」
そう言って、男性の顔に両手を当てると莉音は自らの顔を近づけて軽く口づけをする。
「ちゅっ♪♪」
しかし、それだけには留まらず……。
「ん、んんっ♪ ん〜〜〜っ♪ ぷはぁ♪ ……もう一回、次は舌を入れますね♪ ……ええぇぇ♪」
舌を突き出しながら顔を近づけ、そのまま押し入れる。
「れろっ♪ えろっ♪ んぷっ♪ じゅる♪ ……」
唇と歯茎の間に舌を入れて綺麗にする。
「ぐちゅ♪ じゅるじゅるっ♪ ……」
さらに、男の口の中で舌を動かし、舌を絡ませる。
「口を開けてぇ♪ ……れぇぇぇろっ♪♪」
最後に口に溜まった唾液を男の口内に垂らすと、手で口を拭った。
サービスを終えた莉音が男に飲み込むことを促すと、男はそれを飲み干した。
「…ファーストキスの味はレモンとはよく言うが、リオンちゃんのは熟したオレンジのように……ねっとりと濃厚なキスでとても美味だったよ」
「それじゃあ……」
「ああ、ちゃんと色はつけとく。今日は楽しませてもらった、またお願いするよ。それと権田くんにもよろしく」
そう言って男性はホテルを後にした。
こうして、この日の努力も無事に実を結んだのだった。
ーーーーー
先日の男性との密会は努力の一端でしか無く、莉音はこれまでにも数々の血の滲むような努力をしてきた。
例えばであるが、血が滲むと言えば……。
「これ、ほんとに痕残らないんですかぁ?」
「平気平気」
そう言われて初めて縄で縛られた時は、しっかりと麻縄の痕と血の滲んだ痣が出来た。
痕はすぐに消えたが痣はしばらく残り、『転んじゃって』とついた嘘が全国放送されたこともある。
ーーーーー
また別の日には……。
「これほんとにただの握手会ですかぁ?」
「そうそう、この穴から出てきたモノを握ればいいだけだから」
そう言われて懺悔室のような小部屋で待っていると、目の前のテニスボール程度の穴から出てきたのは手……ではなく、ち〇こだった。
予想はしていたけれど、それを握っては離し、握っては離しを繰り返すこと数時間。
大きいモノから小さいモノまで、白いモノから黒いモノまで、様々な大きさ・色・かたちのち〇こを一生分はこの日のうちに見て、握った。
数日間は、手からあの何とも言えないぶにっとした気持ちの悪い感覚が続いた。
ーーーーー
これまた別の日には……。
「今日は他の子も居るんですか?」
「コレを被れば、お互いに誰だかわからないから今度の仕事に支障は出ないよ」
そう言われて莉音に差し出されたのは、濃い青色のラバーマスク。
対する相手には濃い赤色のラバーマスクが渡されていた。
おそらく相手の女性も、莉音と同じようなアイドルなのだろう。
ラバーマスクは互いにこの行為を知られないための配慮でもあり、盛り上げる要素でもあった。
なぜなら、目元にはピンホールが開けられておりかろうじて視界の確保はされているが、髪型などの特徴を失ったのっぺらぼうの無機質な顔は、アイドルとしてのかわいい顔をラバーの中に閉じ込めるため、アイドルにとって必要とされる個性を完全に失わせるからである。
それを側から見ている者たちは、そのアイドルらしからぬ無様で惨めな姿を楽しんでいるようだった。
莉音ともう一人は七番勝負と称して様々なことに挑戦させられ、4対3でギリギリ勝利した莉音はバラエティ番組の出演権を獲得した。
この日以降、とあるアイドルとのコラボ出演が増えたのは偶然なのか…それとも……。
ーーーーー
しかし、莉音の努力は日に日にその過激さを増すこととなる。
その機会の珍しい者は多くの人が求めるが、機会が増えれば希少性は失われる。
さらには同じことを繰り返していれば、当然飽きも来る。
少ない手数で成り上がらなければ、いつかはその身を落ちるところまで落とさなければならないのだ。
徐々に回ってくる出番は減り、月に一回でもテレビに出らればいい方で、普段は小さなライブでゲストとしてステージに出るような日々を送っていた莉音。
「権田さん、次の話は……」
「リオン君、わかってるとは思うが君は高いんだ。強制はしないが、その敷居を下げてくれないと話はないと思って欲しい」
「……わかりました。…話をいただけるなら、“何でも” ……」
莉音は、自分で引いていた一線を超えた。
それからというもの、その身は汚れに汚れた。
世間からは再ブレークと言われるほど出番は増えたが、裏での莉音の努力は誰も知らない。
しかし、汚れたことで色気の出てきた莉音に向けられるファンの視線は変化した。
それもあって、再ブレーク以降の莉音は以前の清純派アイドルの路線を捨てて、セクシー路線に舵を切った。
「再ブレークを記念して、元清純派アイドル リオン 初のセミヌード写真集が発売されます♪ みなさん買ってくださいねー♪♪」
これが、“かつて” トップアイドルに "成り上がる為に成り下がった" 東雲 莉音の現在の姿である。