人間卒業旅行 〜 雪 〜
Added 2024-04-05 15:00:00 +0000 UTC〜 はじめに 〜
※ ほとんどの作品がそれだけ読んでも楽しめるようにと書いておりますが、この作品に関しては前の話を読まれることを強くオススメします。
※ また、以下のあらすじには前話『人間卒業旅行 〜 月 〜 (https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21782965)』のネタバレが含まれますのでご注意ください。
〜 前回までのあらすじ 〜
卒業旅行として、格安クルーズ旅行を申し込んだ 冬雪(ふゆき)、秋月(あづき)、春花(はるか)の3人。
しかし、格安なのには “理由” があった。
卒業旅行当日、船内で行われたオープニングセレモニーでお酒を飲み、体調を崩した秋月。
部屋で休もうとした際に、“偶然” にも遭遇した添乗員の嵐夏(らんか)によって救護室へと案内される。
冬雪・春花の2人と離れた秋月は “ひとり” で孤独かつ、“安静に” 過ごしたはずの彼女だったが、帰って来てから何やら様子がおかしい。
以前より “高いテンション感” と “変化した口調” の秋月。
彼女の身に一体、何が起きたのか。
果たして、格安である理由との関連性はあるのか。
〜 “雪”・⚫︎・花 〜
嵐「(…次はあの子ね。)」
嵐夏が目星を付けたのは、“冬雪” であった。
嵐「(冬雪ちゃんは “勘付いちゃった” みたいだし、早めに処理をしないと…それに対して、春花ちゃんは……後回しでいいかなっ♪♪)」
ーーーーー
秋月が “たくさん体力を使って” お腹が空いたと言うので、私たちは食事に来ていた。
花「いい食べっぷりだね!」
雪「病み上がりなんだから、ゆっくり食べなさいよ?」
月「平気だって、もう万全だよっ♪」
花「体調を崩した後は、“回復に” 体力使うからね! いっぱい食べなきゃね!!」
月「そうそう、“使った体力を” 回復しなくちゃね♪」
そんな会話の最中に、秋月が別の話題を持ち出した。
月「そう言えばさっき嵐夏さんに聞いたんだけど、この後ダンスパーティーが開かれるんだって♪ …どう? みんなで行こうよ♪♪」
雪「秋月ってそういうの興味あったっけ?」
月「せっかくの機会だし、踊らないにしても見るくらいはしないと勿体無いじゃん?」
花「私は賛成だよ!」
雪「………(……あの内気な秋月が、こうも乗り気なのはどうして? いつもだったら “私たちと一緒ならどこでも” と、自分から提案なんてしないのに…)」
月「冬雪は?」
雪「えっ!?」
月「いきなり黙り込んで、どうかした???」
雪「いや、何でもないよ。少し考え事をしてただけで……そ、そうだね。秋月の言う通りかも知れない。見るだけ見に行こうか」
花「冬雪が考えごとー? らしくないね!」
雪「春香には言われたくない」
花「それはどういうことかな???」
月「まぁまぁ、ふたりとも落ち着きなよ。早く食べないとパーティーに遅れちゃうよ♪」
秋月に急かされるようにして食事を済ませた私たちは、ダンスパーティーが行われるという中央ホールへと向かう。
その途中 “やはり秋月の様子がおかしい” と少し気になった私が春花に相談するも、“卒業旅行の気に当てられてテンションが上がっているだけでしょ!” と言われ、話は終わってしまった。
そうこうしている間に辿り着いた中央ホールの光景は、映画やアニメなどでしか見たことの無い、まさに王侯貴族が綺麗なドレスやスーツなどを身に纏い、音楽に合わせて優雅に踊るといったような、学生の私たちには縁遠い世界であった。
花「うわぁ! すごいねっ!!」
月「へぇ、こんなに♪♪(この人たち全員がおじさんと “同類” ってわけか。そして私たちは…)」
雪「随分と本格的だな〜(……秋月に強く誘われて、せっかくだしと来てみたはいいけど…学生の私たちには “場違いね” )」
冬雪がそう思ったのは、踊っている人たちの “ほとんど” が大人だったからだった。
……と言うのも、私たちを含めて学生はこの場に合うようなドレスを持ち合わせてなどいないのである。
しかし “ほとんど” であって、中には身の丈に合っていない様相でドレスを着て、大人たちに混じりダンスをする学生の姿も見受けられた。
嵐「あら、皆さんも来られていたのですね♪」
月「嵐夏さんっ♪♪」
花「嵐夏さんだ!」
雪「……どうも…」
嵐「冬雪さん、どうかなさったのですか?」
雪「別に、ただ……いえ、何でも…それより私たち、この場に合って無いなぁ……何て…あはは」
花「たしかに着飾った感じじゃなくて、私服のTシャツだしね!」
月「コノカッコウジャ、サンカデキナイナー」
嵐「そう言うことでしたら、貸し出し用のドレスがありますよ♪」
月「………」
花「ほんとですかっ!」
嵐「ほら、そこでドレスを着て楽しそうに踊ってる学生さんが居るでしょ? クルーズ旅行を楽しんでもらうために、こちらで用意しているんです♪」
雪「(つまり自分のでは無いと。身の丈に合ってないと感じたのは)そう言うことだったのか」
嵐「皆さんもどうですか? 用意しているとは言え、さすがに数に限りもありますので早い者勝ちですよ♪ 今ならパーティーも始まったばかりで、ドレスの貸し出しを知らない学生さんも多いですから余ってると思いますよ♪♪」
月「着よ♪ 着よ♪♪」
花「いいね!」
雪「ふたりがそんなに乗り気なら…」
秋月が体調を崩した時もそうだったけど、困った際にタイミング良く嵐夏さんが現れる。
添乗員としては優秀と言うか、きちんと仕事をしていると言える。
けれども、秋月と嵐夏さんの “示し合わせたような” 会話の流れ。
何だか “嫌な感じ” もしたが、ふたりに押し負ける形で私はドレスを借りてしまった。
花「冬雪かわいいっ!」
月「とても似合ってる♪♪」
嵐「おっしゃる通り、お似合いですよ♪♪」
ドレスに着替え、フィッティングルームから出て来た私を出迎えたのは嵐夏さんと、“先ほどと同じTシャツ姿” のふたりだった。
雪「何でふたりとも そのままの格好なの!?」
嵐「こちらから勧めた手前、大変に心苦しいのですが……春花さんに合うサイズは全て貸し出し中だったようで…」
花「残念だよ〜」
雪「秋月は?」
月「ご飯の食べ過ぎでお腹が苦しいくて」
花「がっつりだったもんね!」
雪「……それならそうと、わかった時点で教えてよ。着替え直して来るわ」
月「冬雪ならそう言うと思って」
花「ドレスを着れる機会もそんなにあるわけじゃ無いし、サイズがあるなら着た方が良いって〜」
月「それに私もお腹が落ち着いたら、ね♪」
花「私も、合うサイズのドレスが返却されたら教えてくれるみたいだから、ね!」
嵐「あまり期待されると、またダメだった時が怖いですが……ええ、他のスタッフにも皆さんのことは “よしなに” と伝えてありますので…」
一端の私たちがここまでして貰えるのは、スタッフの中でもセレモニーで挨拶をするなど、おそらく高い地位にいる嵐夏さんのお陰なのだと感じた。
それから、奇しくも私ひとりだけがドレスに着替えた状況で、ダンスの行われている中央ホールに戻る。
雪「………(さて、ドレスを着て少しは場に馴染めたはいいが、今度は別の問題が……私、一緒に踊る相手が居ないじゃん! ……てか、そもそもダンスなんて出来ないし!!)」
ダンスと一口に言っても、ブレイクダンスのようにひとりで披露するようなものではない。
ここで言うダンスとは男女で手を取り合い、時には相手に体を委ねるのだ。
彼氏彼女や、男女のグループで参加しているならまだしも私たちは女3人のグループだし、ドレスを着れているのは私しか居ない。
結局、しばらくの間ダンスパーティーを見学し続けていた私たち。
そんな私の前に現れた1人の男性。
?「美しいお嬢さん。私と踊ってはいただけないでしょうか?」
英国紳士のようなスラットしたイケメンのその男性に、私はキュンとしてしまった。
雪「えっ、私ですか!?」
月「ドレスなのは冬雪だけ、他に誰が居るって言うの?」
花「やったじゃん!」
雪「…でも……」
“ふたりを置いて私だけ楽しむのは” という思いと、“イケメンに声をかけられて嬉しい” という思いが交錯し揺れる私。
嵐「あ、居た居た♪」
雪「そんなに慌ててどうしたんですか〜?」
花「もしかしてドレスがっ!?」
嵐「そのもしかしてよ♪ ドレスの用意ができたから、急いで春花さんに伝えなくちゃと思ってね♪♪」
花「ほんとですかっ! 早いですねっ!!」
嵐「色々と間に合うように、お姉さん頑張ったんだから♪♪」
花「やったー! ありがとうございますっ!!」
月「春花が着替えるならちょうどいい。そろそろお腹の方も落ち着いてきたし、私も一緒に……そうだ、冬雪は先に踊ってなよ。待たせるのは失礼でしょ?」
雪「(一足先なだけで、秋月も春香もドレスを着て来ると言うのならまぁいいか)…そう言うことなら……お願いします」
私は男性の方へと向き直り誘いを受け入れ、ふたりは嵐夏さんに連れられて人混みの奥へと消えて行った。
ーーーーー
♫〜♫〜♫〜
残された私は、男性の手に引かれてダンスの輪に入って行く。
♫〜♫〜♫〜
初めてのダンスだったが、体を預けてエスコートしてもらいながら踊った。
♫〜♫〜♫〜
その間たわいの無い会話を楽しみ、イケメンな男性と親睦を深める私。
♫〜♫〜♫〜
しかし慣れない動きということもあり、1・2曲ほど踊ったところで疲れてしまった。
♫〜♫〜♫〜
見知らぬ私に声をかけたのと同じで、また別の女性を探せば良いのに、この男性は私に付き合って休んでくれた。
♫〜♫〜♫〜
雪「………(かっこいいだけじゃなくて、優しい人……にしても、秋月も春花も遅いなぁ…)」
?「何曲も付き合わせてしまってごめんね」
雪「あ、いえ。私の体力が無いだけで……むしろ私に付き合って休憩させてしまって申し訳ないと言うか…」
?「全然、君みたいに可愛い子と踊れて幸せ者だよ。そうだ、動いたら喉乾いたでしょ? これどうぞ」
雪「ありがとうございます!」
男性は、ホールスタッフが立って持っていたグラスを手に取ると私に差し出した。
私はありがたくそれをいただき、それからのことはあまり具体的には覚えていない。
実際には忘れてしまいたいと言うか、事細かに状況を把握できたほど冷静ではなかったと言うか。
いずれにしても、最悪であったことに変わりはないのだ。
少しして、突然の尿意に襲われた私はお手洗いに行こうと立ち上がった。
けれども何故だか足元がおぼつかなくなって、よろけて転けた拍子に借りたドレスを破いてしまったのである。
どうしようとパニックになったが為す術も無く、結局その場で小便も漏らしてしまった結果、破けた上にドレスは汚れてもしまった。
こんな状況であっても “幸いにも” と言うべきか、会場の皆はダンスパーティーに集中しており、私の珍事に気付いた人は少なかった。
逆に言えば、周りに居合わせた数名と対応に当たったスタッフだけが、私のことを知っている。
秋月にも春香にも、一言も告げずに中央ホールを後にした私がスタッフに連れられてたどり着いたのは小さな部屋だった。
ドレスに関しての話はされると思っていたが、てっきり先に着替えさせて貰えるとか、体を流せるところに連れて行って貰えるとかを想像していたため、机と椅子がポツンと置かれた小部屋に案内されたことに驚いた。
そしてスタッフに促されるようにして、汚れたドレスのままグチョリと椅子に座った私の目の前、そう、机の上には、“弁償に関する契約書” と書かれた一枚の紙が置かれている。
その瞬間、“私は嵌められたのだ” と……いや、“私たちは最初から嵌められていたのだ” と気づいたのだった。
雪「……ここから出してください…と言っても、叶わないのでしょうね(まぁ、この部屋から出れたとしても海に浮かんだ船の上。逃げるなんて不可能なわけだけど、春花に伝えないと)」
スタッフは無言のまま答えない。
雪「………(少しでも無駄話をしている姿も見ていないし、決まったこと以外は発言権のないような、まるで “人形” ね)」
私は仕方なく、机に置かれた紙に目を通す。
雪「えーっと、ドレスの弁償にかかる費用…いち、じゅう、ひゃく……はぁ? 1000万???」
さらに続いて、“返却まで、その身で補償する” と一文が添えられている。
雪「こんな一方的な内容で “合意の上の契約” だって言うの?」
そう、これは明細でも何でも無く契約書だ。
他にも色々と細かく書かれているが、重要な点は冬雪の言った通りである。
◼︎ドレスの弁償代として、1000万を支払う
◼︎支払うまでの間、自身をその補償とし、意思決定権を委ねる
◼︎契約の自由に基づき、双方が合意の上での契約である
雪「………(1000万なんて大金、学生が払えるはずもない。それにもし誰かに借りられる当てがあったとして、この契約を結ぶ前でないと意味がない。契約を結んだが最後、意思決定権を奪われるのなら “支払うまでの間” とは合ってないようなものじゃない……だと言うのに契約をしないと出してもらえそうに無い……これは私の人生もう詰んでいるとしか…)」
契約を結ぶ他ない状況で、途方に暮れる冬雪だが、まだ諦めてはいなかった。
雪「………(なんてね。意思決定権がなんだって? そんなの形だけで、私の口を塞ぎでもしなければ何とだって言えるし、手足が自由なら走って逃げることだって出来るかも知れない。今はここから出ることが一番。外に出れば助けを求めることだって、何かしらの方法を見つけるチャンスだって無限にあるんだから!)」
冬雪はそう画策し、契約書にサインをする。
それ確認したスタッフが、“チョーカーのような物” を取り出して渡してきた。
またも無言で、それを差し出すスタッフの圧力に、私はしぶしぶ “首へと” 取り付けた。
雪「んっ///」
全身に電撃が走り、私の体が震えた。
そして震えたのと同時に、軽く快楽を感じた。
雪「………(今の感じは何?)」
スタッフ「それは…」
先ほどまで無言を貫いていたスタッフが話し出す。
スタッフ「あなたが付けたそれは、“契約を執行するための道具” であり、“逃走防止の目的” も兼ねています」
わざわざ身に付けさせるくらいだから、ほんの少しの細工は想定の内である。
雪「GPSくらいの物だと踏んでいたけど、契約を執行するための道具?」
スタッフ「ええ。どうして “私たちスタッフが” 常に忠実で、少しもサボらずに24時間365日、まるで奴隷のように働いているのかを問えば、頭の切れるあなたなら分かるでしょうか?」
社畜という言葉が生ぬるく聞こえてしまうほどに、自らを奴隷と表現するスタッフ。
仕事の “楽しさ” や “やりがい” などの甘い餌で釣られているのでは無く、“何かしらに強制されている” と言いたげな言葉選びに隠された真実。
そしてその “何かしら” が、冬雪が “首に付けたチョーカーのような物” であると暗に示していた。
そもそも無言で手渡された “それ” を、どうして首に付けたのか。
“チョーカーのような物” と思ったからだろうか。
ミサンガだったり、腕輪の可能性は?
アームバンドやガーターベルトの可能性は?
他にも紐状、もしくは輪っか状で身につける物と言った視覚情報だけに頼るならば、該当するアクセサリー類は無数に存在するはずだ。
しかし、そのいずれの選択肢をも除外して “チョーカー” としたのは、“スタッフの首にも同じ物が巻かれていたから” であろう。
つまり、スタッフの言動を “縛り、制御・強制している” 何かしらの正体も “それ” であると完全に結びついたのだ。
チョーカーと言う可愛らしい見た目や名称とは打って変わって、正しく奴隷を繋ぎ止める首輪なのだと、冬雪は理解した。
雪「……そ、そんな…で、でも、こんな物一つでどうして…」
冬雪の疑問はこうである。
チョーカーの見た目をした物を身に付けただけで、人の言動全てをコントロールすること何て出来るのか。
スタッフ「それを付けた時、全身に電気が流れる感覚があったでしょう?」
雪「………(……確かにあった…)」
スタッフ「それの内側には、無数の小さな針が生えていてね。ご丁寧に返しも付いているから、無理やり外そうとは思わないことね。首が血だらけになるだけで済めばいいけど、最悪は……まぁそれも出来ないようにはなっているのだけど…と言うのも、その針が神経に作用して筋肉の動きを制御するってわけ。簡単な仕組みの説明としてはこのくらいだけど…もう少し聞く?」
雪「(これらを話すことに制限はされてないのか? いや、私の前ではもう制限をする必要がないとでも言うのか…しかし知って損することもないはず、情報は武器になるんだから)……聞きます…」
ここで終わるとしても、学生の冬雪には早い経験だった。
この世には知らないでいいことが往々にしてあるのだ。
知ってしまったことで、その情報を持つだけで絶望を呼ぶことだってある。
スタッフ「うん、わかった。針には常に微弱の電気が流れているんだけど、それが神経と繋がった瞬間に一気に身体中に流れたの。つまりね。ビクッと体を震わしたあの時からあなたの体はもう、あなたの物では無くなったのよ。だから残念だけど、諦めなさい……私たちと同じで…あなたの、人間としての一生はここで終わり……卒業おめでとう…」
冬雪の、“この部屋さえ出れば何とかなる” という思惑は跡形もなく潰えた。
雪「あ、ああ…」
絶望に打ち拉がれ、口から漏れるのは言葉にもならない、悲痛な叫びよりもさらに悲しさを感じる “あ” という音。
可能ならば、涙を流したい状況であろうに、冬雪の表情はニッコリと笑っていた。
雪「……あ、ああ…あ、あは、あはは、あははっ」
次第に表情とマッチした笑い声を上げる冬雪。
冬雪の精神が壊れて狂ったのではなく、そうするように操作されたが故の笑い。
スタッフ「……私たちも辛いわ…けれどそう言うわけだから、これからよろしくね。123,587番目のスタッフさん♪」
ーーーーー
月「そっちはどう? 見つかった???」
花「全然だよ…あーもう、冬雪ったらどこに行ったのよー」
ドレスを着るのに手間取ってしまい、中央ホールに戻るのが遅くなってしまった秋月と春花。
私たちのことなんか忘れて楽しんでいるのだと、ダンスパーティーが終わるまでは特に気にしなかった2人だったが、終了しても姿を見せないどころか部屋にも戻った様子がない。
心配になった “春花” が冬雪を探そうと言い始めたのだが、かれこれ一時間以上探しても見つけられないでいた。
花「人も捌けて少なくなったからすぐ見つかると思ったのに……」
月「たしかにパーティーも終わって、寝るって人も多いだろうからね」
花「こうしてても仕方ないし、別の場所を探しましょ?」
月「そうだね。そしたら手分けして……すれ違いとか、その間に戻ってるかも知れないし…30分ほどしたら部屋で集合ね♪」
花「わかったよ! じゃあ私は向こうを探してくる!!」
月「私は…何か知ってるかもだし、嵐夏さんに聞いて来るよ♪」
春香は5分ほどして、階段の下に立つ、尋ね人そっくりの人物を見つける。
花「あっ! あの後ろ姿は!!」
その人物に駆け寄って声を掛ける春花。
花「冬雪! やっと見つけたわよ!!」
123587「…どうなさいましたか?(あ、春花!?)」
花「どうなさいましたも何も…あれっ???」
同一人物でないなら一卵性の双子。
それか3人いると言うドッペルゲンガー。
それほどまでに同じ顔・同じ体型・同じ声。
しかし、知ってる冬雪とは異なるスタッフの格好。
123587「冬雪さん? 存じ上げないですね、私はただのスタッフですよ(違う、私は冬雪だよ)」
花「あ、ごめんなさい。すごく似てはいるけど…そうだよね、スタッフさんの制服を着てるし……どうして勘違いしちゃったのかな? あはは…」
123587「そのお友達、早く見つかるといいですね(お願い気づいて)」
花「ありがとうございます!」
とてもよく似た友人を探していることを伝えるも情報は得られず、否定され、違和感だけを残して春香はその場を後にする。
その様子を、階段の上から秋月と嵐夏が見ているのだった。