例のインフルエンサーに憧れて
Added 2024-02-16 15:00:00 +0000 UTC「はぁーい♪ サラ・ローランよ♪♪ 今日もダーリンに使っていただくわぁ♡♡♡」
数秒前に投稿されたと言うのに、すでに数千・数万の “いいね” がつき、それと同じくらい “拡散” されていた。
これが美少女インフルエンサーである彼女、サラ・ローランの “影響力” である。
「今日の衣装はこれっ!」
そう言って現れたサラは年齢にそぐわない水着を着ていた。
紺色のワンピースタイプで、胸元には白色のワッペンが貼り付けられており、ご丁寧にひらがなで大きく “さら・ろーらん” と書かれている。
この国において主に、小・中学生が学校の授業に用いられる学用品のこの水着は……そう、“スクール水着” である。
「サイズがちっちゃくて胸の部分がきついし、食い込みも…ほらっ♪ こんな感じでやばいけど……あ、これ以上はここだとBANされちゃうから、続きが気になるエッチな人はプロフィールにあるURLから飛んでね〜♪♪ 全部見るにはちょっとだけお布施も必要だけど、私は本来ダーリンだけの物でこの姿だってダーリンの為に着てるだけ、そのおこぼれをみんなにお裾分けしてるんだからよろしくね〜♪♪」
直接的な表現を避けて “お布施” なんて言葉を使っているが、あからさまにお金を要求するサラ。
以前の彼女であればインフルエンサーとして “他人からの見られ方” や “他人への映り方” が何より大切で、“富” より “名声” をこよなく愛し、それこそが世界に影響を与える “力” であった。
しかしながら、今の彼女にとってはダーリンの為であればどんな格好だってするし、他の男にも媚びる。
媚びると言うにはあまりにもダーリンと呼ばれる男が主体で、そのほか雑踏のような扱いであるが、それでも月数百万はゆうに超えるほど集金していた。
…まぁ、その全てをダーリンに貢いでいるわけだが……。
ーーーーー
「はぁーい♪ サラ・ローランよ♪♪ ……ってこれを見ているなら本日2回目の挨拶かな?」
これはお布施をした者のみが閲覧できる続きの映像だ。
画面には先ほど同様にスク水姿のサラが映っており、その横にはダーリンの姿があった。
「やっとダーリンに使ってもらえると思うと……っ♡♡♡(じゅわぁ)お布施をしてくれたみんなはその様子を画面越しに眺めて自分で勝手にやっててね〜♪♪ …それではダーリンっ♡♡♡ 年甲斐もなく 用の水着なんか着て よろしくお願いしますっ♡♡♡」
両膝を地面につけた状態で、両手の先を前に揃えて頭を下げる。
日本語が達者すぎて忘れるが、サラは生まれも育ちもアメリカの純粋な外国人だ。
そんな彼女が数ヶ月前まで “遅れた国” と見下していた日本で、服従の意を示す姿勢である “土下座” をしている。
これ以上の侮辱は無いと思えるほどの最上級の屈辱であるが、サラはそれを命令ではなく自らの意思で取っていた。
「(どうしたのかな? このままじゃあ放送事故になっちゃうわよ???)」
いつもであればダーリンから何か指示が来るのだが、この日はしばらくしてもだんまりだった。
「……ダーリン?」
『足りない』
「え? …ごめんなさい。許可をいただくまで黙って土下座を続けるべきでしたよね?」
『そうじゃない』
「…もしかして今日の挨拶はお気に召しませんでしたか?」
『そうでもない』
「…では……」
『持つところがなくて使いづれーなーって』
「???」
『ハンドルだよハンドル。その格好にはハンドルが足りてない』
「!」
その言葉を聞いてサラは髪を結んだ。
「これでいかがでしょう?」
『ツインテールか……悪くない』
「痛っ、いえ気にせず使ってください」
次の瞬間にはサラの髪を両手でガシッと掴んで引き寄せていた。
『口を開けろ、噛むなよ』
「はいっ♡♡♡ うぶっ、お"っ"お"っ"お"っ"お"っ"お"っ"、お"ごぉ……♡♡♡」
インフルエンサーが…そもそも女の子が出してはいけないほど汚く酷い声を出している。
「お"っ"お"っ"お"っ"、お"ん"っ"お"ん"っ"お"ん"っ"、ん"ん"〜〜〜〜〜〜っ"♡♡♡ ……はぁ…はぁ…」
数回上の口を使われ、その後下の口も使われた。
この日は合計5、6回出されたが、その全てが避妊具に出された。
「(…本当は生で中にして欲しかったけど……ダーリンの考えは…)…よしっ、出来たっ♡♡♡ ピース、ピーース、Wピーーース♡♡♡ みんなにも見せてやれって? ダーリンは優しいなぁ〜 ほら、どうかな? コ〇ドーム髪留めって言うんだっけ? カラフルで可愛いよね〜♪♪ ツインテールなのも相まって子どもみたいでスク水にも合ってるし、これは流行間違いなしねっ♪♪ 彼女や奥さん…は居ないか、お店の子に着せてもいいし、女の子ならサプサイズで彼氏くんにしてあげてもいいかもねっ♪♪ それじゃあ、また見てね〜♪♪ ………えっダーリンまだ動画切ってない…ごぼぼぼ、ごぼぼぼぼ……ごくっごくっ、ぷはぁ〜〜っ♡♡♡ ごちそうさまでしたっ♡♡♡ …げぇぇぇぇぷ♡♡♡」
その日のトレンドは “大人用スクール水着・ツインテールは持ち手・コ〇ドーム髪留め・飲〇健康法・ゲップASMR” で埋まり、その関連商品がネット上の通販サイトから消えた。
ーーーーー
…グチュ、グチュ……プシュッ。
……グチュ、グチュグチュ……プシャーッ。
………グチュグチュ、グチュグチュ……
「いいなぁ。私もあんな風になりたいけど…地味でメガネのオタクな喪女には無理だよね……」
お布施をしてサラの動画を見ているのは何も “変態な男” だけではない。
以前からサラのカリスマ性に惹かれてフォローをしていた一部のフォロワーが “影響を受け” 、己の欲望に従って “変態な女” だと自覚し、盲目的な信者としてお布施をしている者もいた。
そしてこの少女、田辺 優香(たなべ ゆうか)もそのひとりであった。
「…ツインテールかぁ……ずっと委員長キャラみたいな黒髪ロングで、髪なんて縛ったことも無いしオシャレなんてしたこともないけど……それに委員長キャラって言っても、先頭に立ってビシバシ指示を出して仕切ったり、キラキラな学園生活を送っているような学級委員や風紀委員、生徒会などのヒロインになり得る物語の中心的なキャラじゃなくて、普段は教室の隅っこにいる影の存在なのに厄介ごとだけは押し付けられて委員長になっちゃっただけで、挙句嫌がらせなんかを受けるような典型的なモブ。無駄に育った胸やお尻だって男の子や先生から気持ち悪い目線を送られるくらいで、クラスの女の子たちはそれを理解もせずに『私の彼氏を誘惑するな』とか『私の好きな子に色目を使うな』とか言われもない中傷のされる始末…ってまたオタク特有の早口で独り言を呟いてる……何やってんだろ、私。こんなクソの役にも立たない胸やお尻じゃなくて、私にもサラさんみたいなカリスマ性が欲しかったなぁ……私にあるものと言えば “サラさんと同じ” 変態性くらいだし…同じ……そう言えばクソデカいだけのこの邪魔な脂肪もサラさんと同じ、年も一つか二つくらいでそんなに離れてないはずだし、そうだっ!」
不意にそんなことを思った優香は自慰を止め、徐に押し入れを漁り出す。
「あれ? この辺にあったはず(ガサゴソ、ガサゴソ。ガンッ!!!)いったぁ」
『優香ぁ? どうかしたのー?』
「(やばっママだ!?)なんでもないよー 探し物してるだけー」
『大丈夫ー? すごい音だったけど何か手伝おうかー?』
「本当に平気だからー 部屋散らばってるし入って来ないでー」
『そう? じゃあお母さん買い物に出かけるからお留守番よろしくねー』
「(さっきまでオナニーしてて裸だし、部屋も汗やなんやらで酷い臭いだから呼べないよ)はーい…はぁ、それにしても私ってなんでこんなに鈍臭いんだろ……少し探し物するだけで頭をぶつける始末…あ、あった!」
優香が探していて見つけた物、それは数年前まで実際に使っていた “スクール水着” である。
コスプレ用に出回っている質の悪い物ではなく正真正銘のスクール水着。
胸元にはすでに優香の苗字である『田辺』の文字が書かれていた。
「まだ着れるかなぁ…ちょうど裸だし着てみるか……足は通った、お尻がはみ出てる気もするけど見られるわけじゃないし取り敢えずはいいか。左手を通して右手も、肩まで上がれば後は……胸を押し込んで調節…やっぱり胸のあたりがキツイけど着れた、でいいよね?」
誰に聞くでもなく自分に問いた。
「…やっぱり何やってんだろ、私」
優香は鏡に映る自分の姿を見て我に返った。
「どうしたって私は私。少し格好を真似たところで、私がサラさんみたくなれるわけないじゃない…少し……ならもっと真似をすれば……どうせ他にすることもないし、このまま居ても少しでも期待してこんな惨めな状態で鏡に映る私を見ただけで悲しい気持ちになるのだから、いっそのこと可能な限りサラさんになってみるしか無いよね。そう言うことならまずは髪を結んで…それからそれから……」
映像にあったサラのように髪の毛を頭の両端で結んでツインテールにする。
小さい頃にお母さんにしてもらって以来やったことの無い髪型に苦戦するも、何とか形になったと鏡を見る。
「う〜ん、上手に結べたとは言えないなぁ。所々ボサボサになってるし…まぁ、見方によってはラスト近くのサラさんと同じかも……」
ダーリンに持ち手として扱われたサラのツインテールは、さらさらで綺麗なツヤを放つ髪の毛ではなくなっていたのである。
計らずしも使われた後の様子を表したことで、優香はあることを思い出す。
「…ビッチで下品でエッチだったなぁ……コ〇ドームの髪留め。でも喪女で男の子とのそんな機会なんてない私がコ〇ドームを持ってるはずもなく……!? 持ってるかもっ! 保健の授業で配られたやつを捨てるのも勿体無いしと思って、使うことなんてないけどたしか机の引き出しに…やっぱりあった!……とは言え、肝心の相手が居ないことだけは変わらない事実。だとすれば問題はコ〇ドームの中に入れる白濁の……あれでいっか、ちょうどママも出かけてるし今のうちに」
階段を降りてキッチンに向かった優香は冷蔵庫からカルピスの原液を取り出すと、希釈せずに部屋まで戻った。
「食べ物で遊んじゃダメって言われたけど私は本気。だからこれは遊びじゃない…なんてどうでもいいか。誰も見てないんだしママが帰ってくる前に終わらせないと」
慣れない手つきでコ〇ドームを伸ばして中にカルピスの原液を流し込む。
「本物のザ〇メンは見たことないけど、私には同じに見えるからヨシっ! これをツインテールの結び目にくくりつけてっと……うわぁ…♡♡♡」
鏡には、どこに出しても恥ずかしい無様な女が映っていた。
見間違えるほどに見違えた優香は、卑下していた自分を初めて悪くないと感じた。
「…これが私? 私でも少しはマシに…魅力的に……ならもっと、もっとサラさんのように」
この結果が “サラを真似たことで” もたらされたものならば、さらにサラと同じ姿を追い求めればと結論づけるもの不思議ではない。
しかしながら現状、格好で言えばこれ以上に近づくことは難しい。
けれども、“真似をする” とは何も姿かたちだけでは無い。
ことサラに関しては、それ以上に彼女を指すアイデンティティ的なものが存在する。
それは “インフルエンサー” であるサラ・ローランの存在だ。
これはサラがダーリンの物になって、今の姿になったとしても変わってはいない。
「…サラさんと言えばやっぱり “動画” だよね……」
さっそく優香はスマホを椅子に立てかけてカメラアプリを起動する。
さすがに配信まではと “躊躇して” 録画を始めた。
「こんにちは、優香です……違う、こんなのサラさんじゃない…は、はぁーい/// 優香でーす/// 現役J〇でーす/// 証拠は…ちょっと待ってください……じゃ、じゃーん。学生証でーす(この後はどうしよう。私にはサラさんみたいにダーリンさん居ないし…そうだ)……こんな地味で(違う、サラさんなら)…こんなムッチムチで男の人を喜ばせることだけに特化した体の変態な女ですが……ぜ、絶賛彼氏募集中でーす♪♪」
最初は緊張していた優香だが、徐々にほぐれていき口調や語尾の違和感が無くなっていた。
さらには枷も外れて、大胆な発言や行動を取るようにも変化していた。
「そうだ。募集してるのに、その連絡先がないと応募できないよね?」
つい先程までの優香なら『募集なんかしても、こんな私に応募なんて来るはずがない』と思うところを “連絡が来る前提で、自信を持って” 話を進めている。
「うーん、どこにしようかなぁ。はみ出たお尻でいっか♪♪ ええっとぉ…090-シコシコ-オナニィっと♪♪」
鏡を見ながらマジックで、お尻にスマホの番号を書いていく。
「さっきの学生証をこっちのお尻に貼って…どうぞご覧くださいっ♪♪」
まるで〇された後のようなボサボサのツインテールに、その行為の後を示すようなコ〇ドームを髪留めのように付け、部屋の中だと言うのにスクール水着姿でお尻を突き出す。
その左の臀部には “学校名・名前・住所・生年月日・顔写真” が、右の臀部には “電話番号” が記され、それを録画中のスマホのカメラに向けて “興奮している” 。
「すごい、私いま本当にサラさんみたい♡♡♡ サラさんと同じ♡♡♡ 最高の気分っ♡♡♡」
初めて自分のことを好きになれた瞬間だったから、それ以上を望むことも、それ以外を望むこともしない。
憧れの “サラと同じ” であることが、優香にとって “一番大切なこと” だった。
だから優香がこれからすることはきっと、さっき “躊躇した” こと。
「メールアドレスで登録。アカウント名は、“Yu-Ka” 。ファイルを選択して、アップロード待ち……10%(今なら全然止められる)…30%(意外とかかるんだなぁ)…55%(半分超えた)…75%(明日からどうしよう)…90%(そろそろ終わる)…92%(私の人生も終わる)…95%(学生証に住所も載ってたし、ママやパパに迷惑かけちゃうかも)…97%(まだ止められるけど)…98%(こんなに最高の気分なんだから)…99%(もう、どうにでもなれっ♡♡♡)…100%……アップロードが完了しました(終わったぁ♡♡♡)。……えっ!? 保存しますかって??? ……あぁなんだ。今のはただ動画の処理をしていただけで、保存しないと公開はされないんだ」
少し落胆気味の優香。
それでもこれで人生を終了せずに済む。
誰かに迷惑をかけることも、その身を滅ぼすことなく、この気分だけでも味わえたのだから良かったのだと。
このまま普通の生活に戻れば “いつかまた” 破滅する瞬間を体験できるとだって考えられる。
「…うん。今回はここまでにしよう」
そうして、優香がスマホから手を離そうとした時だった。
買い物に出ていて居ないはずのお母さんの優香を呼ぶ声がした。
『優香ぁ? まだ探し物してるのー? ご飯の時間よー』
「(!? お母さんいつの間に!?!?!? 集中してて帰ってきたの気づかなかった…ってか動画とってたのバレてないよね????? いや、バレてたらもっと騒いでるか??????? あーもうっわかんないっ!!!!!!!!!)」
状況が状況なだけに優香の頭はパニック状態であった。
しかしそれに、追い打ちをかけるような事態も起こる。
…ピロンっ!
…ピロンっ! ピロンっ!
ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ! ピロンっ!
「もうこんな時に何??? 通知が止まらない!?!?!?」
スマホに来た大量の通知。
何事かと優香が手元のスマホに視点を戻すとそこには “保存しました” の文字がはっきりを表示されていた。
「…うそでしょ」
ピロンっ!《優香ちゃんって言うんだ。かわいいね♡》
ピロンっ!《こいつの人生終わったな、いや始まりか 笑》
ピロンっ!《本物か?》
ピロンっ!《この住所うちの近くなんだけど、行ってくるわ》
ピロンっ!《これサラちゃんと同じ格好じゃね? 本当に真似する痴女いるんだ 笑》
ピロンっ!《同じ学校、同じ学年…ってか同じクラスなんだけど……こんなやつ居たっけ?》
ピロンっ!《おじさん、優香たんの彼氏に立候補しちゃおうかなぁ(ニチャア)》
ピロンっ!、ピロンっ!ピロンっ!ピロンっ!
通知が止む様子はなく、遂にはクラスのグループにも動画のリンクが貼られ、電話も鳴り始めた。
「あはは、これは夢? 悪い夢? …ううん、いい夢ね。だって本当は “望んでた” んだから……さっきだって自分の心に嘘ついてた。100%になった時、公開されてないのを知ってショックを受けていたし、“今回はここまで” なんて言って動画を公開するのは止める感じ出してたけど、実際は削除せずに非公開で残しておくつもりだったし、私の本心は全く諦め切れてはいなかった。人生の終わるその瞬間は私のタイミングで決めたかったけど、私の手が当たってことが引き金になって動画がネットに出たのだし、叶わないと諦めた夢が叶ったんだからこれ以上は望みすぎね」
『優香ぁ? お客さんが来てるわよー?』
「(…もう誰か来たんだ……)今行くよー」
『こんな時間にお知り合い?』
「そんなところかなー ママはご飯食べてて良いからねー」
リビングに居るお母さんに会わないように廊下から声だけをかけて、最後になるかも知れないのに顔をすら合わさずに家を出た。
なぜなら優香は “その身そのまま” 、配信を開始したスマホだけを持って部屋から出ていたからである。
「(ごめんね、ママ・パパ。たぶん、もう家には帰ってこないから)行ってきまーす♪♪」
しばらくした後、サラの隣に並ぶ優香の姿があった。
優香は “サラと同じ” いや、サラに次ぐ立派なインフルエンサーになったのだった。