魔竜の巣窟調査レポート04
Added 2020-06-18 06:45:35 +0000 UTC体が小さくなってから3日が経った。
ようやく訓練長と話す機会が出来たので、その訓練所へと足を運んでいるところだ。
この小さな体にも多少は慣れてきたが、色々と不便なのは変わりない。
体力のみならず魔力ですら衰弱している。
「訓練所にはまだ着かないのでしょうか?」
さすがに歩き疲れてしまった・・・。
「そうですね・・・あと30分程度だと思います。」
彼は3日前の洞穴の調査に同行してくれた雄竜人のレッジさん。
とても紳士な方で、普段は村の大工をしているらしい。
「もう少し頑張らないと・・・ですね!」
「もしよろしければ、抱きましょうか?」
「え、えぇっ?」
「いえ・・・、仔竜のお姿で訓練所まで向かわれるのはなかなか大変そうなので・・・。お節介でしょうか?」
「そんな事はありません!ぜ、是非お願いします!」
「わかりました。では、失礼致します。」
ひょい、と僕の体を抱えたレッジさんは僕に笑顔を向けると訓練所まで連れて行ってくれた。
恥ずかしい勘違いをしてしまった・・・。
でもレッジさん・・・。いいな・・・。
訓練所は村よりも広く、どうやら他の村からも集まっているらしい。
驚いたことに、中には仔竜もいる。
ゆっくり訓練所を見学してみたかったが、早く話がしたかったので近くにいた竜人さんに訓練長を呼び出してもらった。
「お待たせした。あれから体の調子はどうだい?」
姿は赤い仔竜だが、やはり貫禄は大人そのものだ。
「えぇ、多少は慣れましたが・・・まだ不便な事が多いです。今日はあなたにあの洞穴・・・魔竜の巣窟についてお訊きしたくて。」
ふと訓練長の顔を見ると眉間にシワを寄せて難しい顔をしていた。
「あっ・・・いえ・・・。この前関わるなと言われたのは分かってます。しかし、このまま洞穴を放っておくのは、危険ですし、それに僕はこの一件を解決しなければなりません。仕事ですから。」
ふぅ。とため息をついた訓練長は一度頷いた。
「止めたって無駄ってやつだな。わかった、話そう。皆すまないが外してくれ。」
彼は周りにいた訓練生、レッジを外に待機させ僕と2人きりにした。
「あの魔窟が呪われているのはプロのあんたでも分かってるはずだ。俺は魔窟と満月の共鳴をフルムーンテンプテーションと呼んでいる。」
「満月の誘惑・・・。」
「直訳だとそうだな。それにしてもその程度でよく生きて帰れたな。幼化した竜は魔窟に呑み込まれるはずだが。」
「おそらく僕が黄金竜の系譜だからでしょう。呪いにはめっぽう強いですし。」
「なるほど。実は俺はお前と同じ幼化をくらっている。あんたみたいな恵まれた血筋ではないが、自力で脱出する術を持っているからな。この通り生きている。」
・・・なるほど、どうりで仔竜の見た目をしているのか。
「なぁ・・・あんたさ、本当に魔窟の浄化に行くのか?こいつは普通の呪いとはワケが違うんだろ?今までも何人も犠牲になってる。隔壁も完備できて村には危害は無くなった。触らぬ神に祟りなし・・・だぞ?」
「えぇ、確かに。今は放置しておいてもなんの問題もないでしょう。しかし、あの洞穴のような、媒体の無い呪いというものは時間とともに際限なく拡大していくのです。」
「魔窟には呪いの媒体が無いのか・・・。そもそもあの規模は浄化できるのか?」
規模・・・?あの狭いドーム状の空間の事ではないのか?一応訊いてみよう。
「あの魔窟・・・かなり狭いのですが。もしかしたらあなたの僕の見た洞穴は異なっているかもしれません。あなたが見た洞穴の中を教えて頂けませんか?」
「あぁ、あんたその姿になってから魔窟に行ってないんだな?中は不思議な空間になっている。まるで肉壁の迷路だ。しかも・・・。」
「しかも・・・?」
「侵入者の精力を吸い尽くす。あの手この手でな。」
「なるほど、それは厄介ですね・・・。」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
訓練長と長い対談をして日が暮れようとしていた。
彼の名前はドロジーア。ドロジーア・ノア・トロキー。頭文字からダンテと呼ばれる事もあるらしい。
「今日は色々とありがとうございました。今後の調査に役立てていこうと思います。」
「あぁ、浄化の手助けになるのならこちらも有意義だ。調査、頑張ってくれよ。」
ここで僕はあの時のお礼をするのを思い出した。
「あの!この前はジュースありがとうございました!」
「なんの事だ?俺はジュースなんて渡した覚えはないが・・・。」
「・・・えっ?」
「まて、俺と会うのはこれで2回目だな?」
「いえ・・・3回目・・・です。初めてお会いしたのは満月の前日ですかね?」
「やはり狙われているな・・・アウルム。気をつけろよ・・・。」
その言葉を耳にした時、何故か嫌な予感がした。
この先永遠に救われないような・・・神の加護がプツリと切れたような・・・。
そうか・・・あの時から・・・そうだったのか。