「い、や……」
ペニスを突きつけられ、ルージュが嫌悪感を表す。
それでやめてくれるわけもない。戦闘員はルージュの両膝を掴んで大股開きにさせ、体を沈めていく。
ルージュは目を固く瞑り、震えている。
「やだっ……こんなのが初めてなんて……いやっ」
肉の切っ先がルージュを貫こうとしたその時だった。
ばちゅんっ。
「っ!?」
風切り音。
さっと冷気が頬を撫で、ルージュが目を開けると、戦闘員の首が切り飛ばされていた。
「ギギっ!?」
戦闘員たちに、一瞬動揺が走る。
上空に人影がある。それは青いスーツのセラフィーヌだった。
「今っ……!」
それから発せられた声にルージュはハッとして、女生徒を拘束している戦闘員に一瞬で肉薄する。
「たあああーーっ!」
反応するまもなく戦闘員は殴り飛ばされ、瓦礫の山に突っ込んで沈黙した。
「ギ~っ」
残りの戦闘員は形勢逆転されたとみるや散り散りに逃げ出していった。
「ふう……」
危険が去ったのを確認すると、ルージュは青いスーツのセラフィーヌに駆け寄った。
「あなたは……?」
「セラフ……アズール」
アズールと名乗った彼女は、同じような年格好に見える。少し華奢で、クールな印象のある美少女だ。
ともあれ、仲間だとわかってルージュは安堵した。
「助けてくれてありがとう! でも……」
ちらりと女生徒を見やる。全身が戦闘員の血しぶきで汚れてしまっている。
「今のは危なかったよ……もしかしたら、この子も……」
失神して倒れている女生徒を介抱しながら、若干の疑問を呈す。ひとつ間違えば、女生徒の首も飛んでいただろう。
「あなた……甘い」
「えっ?」
「あなたが死んだら、あの子はそもそも助からない。迷っちゃ、だめ」
「う、うん……」
それはわかるし、ジェイドからも忠告されている。本人も、以前それで後悔することになったと言っていた。
「でもね……ん?」
ルージュはなにかに気づいて、アズールのスーツをジロジロと見回す。
「なに? ジロジロ見て……」
アズールのそれはルージュのスーツとよく似ている。基調の色味が青いのと、若干細部が違うくらいでそっくりだ。
ジェイドの説明では、変身後の姿は自分の深層心理に左右されるのだという。ルージュのコスチュームは幼少時見ていた変身ヒロインものに起因しているのだが、どうやら彼女も同じようだ。
ぽんと思い立って、ルージュは彼女を指さして叫ぶ。
「ブルーハート!」
「は?」
彼女は突然なにかしら叫んだルージュに困惑気味だ。
「推し! そうだったでしょ?」
「なにこいつ」
ブルーハートはその変身ヒロインものの登場人物である。彼女と同じように青いコスチュームで、物静かな性格だった。
おそらくは当たっているのだろうが、アズールはそういうルージュに気味の悪さを感じたらしい。
数歩後ずさって、冷たい視線を向けてくる。
「ともかくっ……あなたはちゃんとしたほうがいい」
「あう」
「負ければ、死ぬ……だけならいいけど、あんな目に遭うんだから」
「う……」
ミサキは濡れそぼった股間を意識し、内股を強くする。
「ここに来る前……もっと、もっと酷いものを見たんだから」
アズールの脳裏に、数ヶ月前の記憶が蘇る。
敗北したセラフィーヌが、敵の怪人たちに蹂躙されている姿……。
「いやぁああっ! もう許してっ! 何でも言うこと聞くからあっ」
「あああっ! お願い、もう、中には……妊娠しちゃっ……あーっ!」
「助けて……誰か助けてぇぇっ ああああっ!!」
泣き叫ぶ彼女らを、容赦なく連中は凌辱し、そして――。
「いやあああああっ!!」
アズールは瓦礫に隠れ、ただ耳をふさいで耐え凌いだ。その後のことはよく覚えていない。ただ、胸の奥に、エリミネーターへの深い憎悪だけが残っている。
「……どうしたの?」
沈黙したアズールを、ルージュは怪訝そうに覗き込んだ。
「なんでもない……この子はあなたが連れて帰って。じゃ」
女生徒は切り裂かれた戦闘員の血液まみれで倒れ伏している。
気を失っていたのはせめてもの救いだろう。
「アズール……かあ」
あ、と気づいてルージュは口に手を当てる。
「本名聞くの忘れてた……」
(次あったら聞こう……)
年格好の似た仲間なのだから、仲良くしたいな、とルージュはのんきに思うのだった。
続く
小鬼上人
2023-09-25 16:02:54 +0000 UTC