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天空戦姫セラフィーヌ 第4話 キョウの追憶 前編

登場人物

水無瀬キョウ/セラフアズール

ミサキと同じく新東都統合学校の生徒。

クールで感情を表に出さない。読書好き。クラスでは他の人と絡まないが、妙な存在感があるタイプ。

猫が好きでコスの猫耳っぽいパーツもその意識が現れている。


本編

 とある日の昼休み。統学の校舎。

 ミサキは友達と購買で昼食を買って帰る途中だった。

 教室へ続く渡り廊下に差し掛かるとき、中庭にある木陰のベンチで本を読んでいる少女に気を取られた。

「あっ!」

 素っ頓狂な声を上げて立ち止まり、その少女を指さしてしまう。

 その少女は間違いなく、先日自分を助けてくれたセラフィーヌ……セラフアズールだった。

 少女は静かに顔を上げ、瞳だけでじろりとこちらをにらみつける。

 ミサキはタタタッとその少女のもとへ駆け寄る。

 制服を着ている姿を見て、ようやく誰か思い出した。隣のクラスの子だ。

「……」

「あなた、そうだ、みな、水無瀬……えーっと……」

「……なに?」

 少女は小さくつぶやいたが、ミサキは脳天で指をくるくるさせて唸っている。

「そう、キョウちゃんだ!」

「……うるさい」

 キョウは本を少し手荒く閉じると、すっと立ち上がり、どこかへいってしまった。

「あ……」

「ミサキ、水無瀬さんと友達だっけ?」

「あ、うーんと……」

 追いかけてきた友達への返答に詰まる。まさかセラフィーヌとして戦っていて、戦場で知り合ったのだとは言えない。

 セラフィーヌとして戦っていることは、秘匿せねばならないわけでもない。

 しかし、無用の心配をかけるし、色々と面倒そうということで黙っている。

「そういうわけじゃないんだけど」

「ふーん……水無瀬さんっていつも一人だから、ミサキと知り合いなの意外だね」

「そうなの?」

「うん、いつも休み時間はああやって中庭で本読んでるよ」

「へー……」

 どうも、人とはあまり関わらない性質らしい。

 しかしキョウがセラフィーヌなら、ぜひとも親交を深めたいところではある。

(同じ使命を持ってるんだから……仲良くしたいもんね)

 それから、ミサキはキョウを見つけてはちょいちょい声をかけるようになった。

 しかしキョウの反応はつれないもので、周囲はそんな二人の様子を不思議そうに見守っていた。

 ミサキは天性の明るさから誰とでも分け隔てなく仲良くなれるタイプなのだが、キョウとの間にはどこか壁があって、一向にそれを超えられる気配がない。

 その理由はなぜか――なんとなくわかることがあった。

 エリミネーター出現の法を受けて、現地に向かうと、ちょうどキョウ――セラフアズールとブッキングした。

 協力して敵を倒し、最後の一人になった。

 その怪人はすでに戦意をなくし、おろおろと尻をついて後ずさるだけだ。

 それを見て、ルージュは躊躇した。人間が怪人へと変貌した、あの光景がフラッシュバックする。光剣を構えたまま、突き出すことができない。

 しかし、そんなルージュを尻目に、アズールは自身の光剣を振り、躊躇なく怪人の首を飛ばしていた。

「あ……」

 呆気にとられたルージュをアズールは一瞥し、くいと顎で怪人を指し示す。

 その腹部がぱっくりと割れ、中から太い切っ先がのぞいていた。

 アズールが一瞬遅ければ、その切っ先がルージュを襲っていただろう。

「キョウちゃんは……この怪物たちが、人間だったらどうする?」

 アズールが振り向く。目を見張って、彼女には珍しく驚いた風だ。

「変わらない……なにも」

 冷淡な口ぶり。

「でもっ」

 それに反感を覚え、キョウの顔を見つめて言い返そうとして――

「……!」

 できなかった。

 こちらをじっと見返すキョウの瞳の奥に、決意の光がある。ほとんど揺るぎないそれは、ミサキにはないものだ。

「前も言った。そのままじゃ、痛い目に遭うって……わからないなら、もういい」

(ああ、そうか……)

 去っていくアズールの背中を、ルージュはただ見送っている。

 その実感を分かち合えるその時まで、キョウは心を開いてくれることはないだろう……。


 ――

 ―――

 これは、ミサキがセラフルージュとなる一月ほど前の話。

 キョウ――セラフアズールはとある崩れた廃屋で、危機に陥っていた。

 そこはかつて家族ぐるみで仲良くしていた一家の住居であった。

 この場所で怪人の襲撃にあったとの報告を受け、調査に来たのだが……。

(油断した……っ)

 懐かしさと寂しさで、上の空だった瞬間を狙われていた。

 アズールは天井裏に潜んでいたヘビ怪人に絡め取られ、ぎちぎちに体を締め上げられていた。



「ぐううっ……くる、し……」

 肺から空気が押し出され、酸欠に陥っていく。みしみしと四肢がきしむ音がする。

 酸欠で失神するのが先か、体を潰されて死ぬのが先か、どちらかといった状況だ。

 アズールは脱出策を考えようとするものの、パニックと酸欠で頭が回らない。

 ついでに、拘束と酸欠で、脳の変なところのスイッチが入ったようだ。締め上げられることに対して、性的な興奮さえ覚えてしまう。



 ぎちちっ……ぐぎぎぎっ……。

「あへ、あ……ああ……っ!」

 体中を襲う激痛と快感で、アズールは顔をグシャグシャにして悶える。

「ぐえ……あ、あっ!!」



 じょろ、じょろろろ……。

 ついにアズールはオーガズムに達し、みっともなく失禁してしまう。

「あぁ、ひ……あ……」

 そしていよいよ、拘束は極まってきた。

 骨のいくつかにはヒビが入って、アズールの顔色は紅潮を通り越して青ざめている。

(じぬ……じんじゃうっ……)

 眼の前に、この家の主人の幻影が見える。

 彼は本が好きで、自宅には和洋問わず様々なジャンルの本が所蔵されていた。

 幼い頃のキョウもたまにこの家を訪れては、興味を引かれた本を借りていったものだ。

「お、おじさん……たす、け……」

 そしてつい、そう口にしてしまう。ここにいない、生死さえ知れない者に助けを求めたところで、どうともならないというのに。

 しかし、そこで不意に拘束が緩み、アズールは開放された。

 どさりとその場に倒れ伏し、ようやくに顔をあげると、長い胴を引きずりながら部屋を去るヘビ怪人の背中が見えた。

 男性の面影が重なって、どきりとする。

「まさ、か……」

(おじ……さん……?)

 そこで、アズールの意識はふっと闇に落ちていった。


おまけ


透過画像差分です





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