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天空戦姫セラフィーヌ 第6話 折れた翼 後編

 晴れ晴れとした昼空のもと、無彩色の無骨な建物が、ぽつんとそびえ立っていた。

 建川市総合病院。

 戦傷者を広く受け入れているところで、セラフフレアもここへ収容された。

 病院の建物の前には広場があって、車椅子に乗った患者が看護師に押されながら、散歩を楽しんでいる。

 その片隅に、しゃがみこんで野良猫を撫でている少女がいた。

「……」

 キョウだ。普段から寡黙なたちだが、伏せた顔が陰っていることもあるのか、ひどく憂鬱そうに見える。

 猫はしばらく気持ちよさそうに撫でられていたが、ぴくっと耳を立てると、さっと近くの茂みへと去っていった。

 キョウはなにかに気がついて、顔をあげる。

 向こうからこっちへ近づいてくる人影がある。制服姿で黒髪をたなびかせている。

「……カイさん」

 それはカイだった。彼女の表情は固く、こわばっている。猫が逃げ出したのは、その剣呑さに気づいたからだろうか。

「ミ……花井さんは?」

「命には別状はない……幸い身ごもった形跡もないようだ」

「そう」

 キョウはほっと息をついた。

 二人がルージュの元へ駆けつけたとき、ミサキは酷い有様だった。



 ボロボロの体は白濁で穢れ、意識を失ったまま倒れ伏していた。

 何度呼びかけても、薄っすらとのぞく瞳はふらふらと宙をさまよい、返事も返ってこない。息はしていても、殆ど廃人のように見えた。

「もう少し早く、駆けつけていれば……くそっ」

 ばし、とカイが拳を手のひらに打ち付ける。

 それを見て、キョウは視線を落とした。

 相手は戦闘員のようだった。真っ当に戦って、負けるとは考えにくい。であれば、彼女の戦意を失わせたなにかがあったのだろう。

(惑わせたのは、わたしだ)

 自分もカイも、感情に囚われてひどい目にあったことがある。

 しかし、今回のミサキはそれと比べても抜けていたのだろうと思う。

 そう追いやってしまったのは、自分が突き放してしまったからかもしれないのだ。

 その時、ピリリ……と二人の通信デバイスが同時に鳴った。

 二人の間に緊張が走る。

「大河原です」

 カイが応答する。

「エリミネーターの一団が北西に出現、あなたたちのいる病院に進行中とのこと」

「なっ……」

 二人の顔がこわばる。

「彼らの襲来までに対応できるのはあなたたちだけです」

「く……了解した」

 ここには一般の傷病者も収容されている。

 中には用意に移動できない重患者もいるであろうし、何より今後を考えればこの病院を失う訳にはいかない。

「ここにはミサキも収容されている……なんとしても撃退せねば。行こう、キョウ」

 キョウはコクリとうなずくと、駆け出したカイの背中を追った。



 ピ……ピ……。

 一般病棟のとある一室。

 ミサキはぼうっと白い天井を見つめていた。

 外では、看護師や患者が何やらドタバタと騒がしい。

 そんな喧騒にも、ミサキの体はピクリとも反応しない。

 しかし――

「きゃあっ!」

 誰かの悲鳴が聞こえてくる。襲撃のためではなく、慌ただしい避難準備で起きたトラブルなのだろうが、そのとき一瞬だけミサキのまぶたはピクリとしたようだった。

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