その日の正午ごろ――事態は急変していた。
「出てこい、セラフどもっ」
都市中に響き渡るような怒声が響き渡る。
なんだなんだと道行く人があたりを見渡すと、やがて誰かが上空を指さした。
そこには、仁王立ちになってこちらを見渡す異形の怪人の姿があった。
「あれは……!」
ミサキたちセラフィーヌメンバーも、作戦の打ち合わせのために司令室に集っていたが、そこでモニター越しにそれを確認していた。
実体ではない、あくまで上空に投影されたビジョンに過ぎない。しかしその衝撃は大きい。不可侵だった都市部に敵の手が伸びてきている――その実感がある。
「俺様の名はグラガン! お前たちがエリミネーターだとか呼ぶものの、最強の戦士だ!」
「こ、こいつ……!」
ミサキとキョウが視線を交わし、頷きあった。合体しているが、病院を襲ってきたあの二人の怪人だ。
竜と獣の頭部は胴体から分かれて生え、腕は四本。足は二本だが、その分太い。その異形ぶりに、ミサキたちは圧倒された。
「お前たちはいずれ倒される……こいつと同じようにな!」
「きゃっ……!」
誰かが、グラガンの下腹部にあるものに気づき、悲鳴を上げる。
「うぐ、ううう……」
それはグラガンの胴体にくくりつけられ、膣と肛門にそれぞれペニスを突き立てられているジェイドだった。
「むぐ、ううっ……うーっ!♥」
ずしん、ずしんとグラガンが歩くたび、吊り下げられているジェイドの中をペニスが前後する。
ワイヤーによって広げられた肉穴からジュプジュプと卑猥な水音がして、体液とも精液とも知れぬ雫が滴り落ちる。
合体手術によって誕生したグラガンは、その副作用か有り余る精気を持て余していた。そして常時いきり立っているペニスを鎮める”鞘”として、ジェイドは用いられていたのだ。
「気持ちいいか? おらっ」
ぐい、とグラガンが首輪に繋がっている手綱を乱暴に引っ張った。
「むぐううっ!」
苦しげにあえぐジェイド。
「いいかって聞いてんだよぉ」
「むふううっ♥ う、うっ!」
ジェイドはかくかくと首を振って応答する。延々と続く苛烈な責めにすっかり屈服してしまっている。
「だろぉ♥ そらっ!」
ぐちゅ、ぐちゅっ!
グラガンが粗雑なピストンでジェイドの中をかき回す。
「んふーっ、ふーっ!♥ んんっ、んふっ♥」
目隠しされ、四肢を拘束されたジェイドは、股間から通達される悦楽信号でのみ外界とのつながりがある状態となっている。
人としての尊厳などない――オスの性欲発散のためだけに生かされている肉鞘だ。
「ん、ムウウッ!」
びゅくっ!!
不意に、グラガンが射精した。
「んぐうううっ!♥!! んーーーっ!♥」
胎内に熱いものが満ちる感覚に、ジェイドの意識は飛んだ。あらゆる体液を垂れ流しながら絶頂に打ち震える。
その無様な姿は、ジェイドの普段の気高さ、凛々しさを知っているものにはあまりの衝撃であった。
「なんてことを……!」
ミサキが怒りを露わにする。
「う、うううっ……♥」
グラガンが射精してもなお、ジェイドが開放されることはない。グラガンが動くたび、収まることのないペニスで中をかき回され、苦悶と悦楽の喘ぎを漏らす。
「ぐむぅぅっ……んんっ!♥」
自由を奪われ、犯されるだけの物体となってしまった彼女にとっては、それが世界の全てに等しかった。
「場所は?」
エンマがオペレーターAIに問うと、すぐさま返答がある。
「Fエリアの南方3キロ地点に強いエネルギー反応あり。98%の確率で当該怪人と推測」
「人間どもよ、貴様たちが頼りにしているセラフィーヌ全員、俺様の肉奴隷にして連れ回してやる。絶望して待つがいい。ふはははははっ!」
そして、そのビジョンは虚空に消えた。数秒、もっと長く感じるような沈黙があった。
「う、わあああああっ!!」
モニタにかぶりついていたミサキたちの後ろで呆然としていたケイが、弾けるように部屋を飛び出した。
「ケイっ! 待ちなさいっ! ケイ―っ!」
エンマが慌てて彼女を追おうとする。
「わ、私も行きますっ!」
「だめよっ!」
続いて駆け出そうとしたミサキを、エンマが体を張って止める。
「だって、このままじゃ、カイさんが……ケイちゃんだって!」
「駄目!」
「でも……!」
「絶対に駄目……!」
ミサキはハッとした。怒りや悔しさ、様々な感情を押し込めたエンマの表情に圧倒された。
「あいつは私たちを挑発しているだけ! 今は耐えて……!」
「エンマ……さん……」
「私たちにはやるべきことがある。そうでしょう?」
ミサキがうなだれ、コクンとうなずいた。
「ケイは私が連れ戻すわ、司令!」
「うむ……途中から聞いていたよ。今の彼女は危険だ。君に任せる」
モニタが切り替わり、司令のシルエットが映し出される。
「行け、施設内のロックは間に合わなかったようだ。彼女は外に出た」
「了解っ」
エンマが部屋を出ていって、ミサキはキョウと二人、室内に取り残されてしまった。
「くっ……」
ミサキは歯噛みしてエンマの出ていったドアをじっと睨み据えている。
「私たちにも、やることはある」
「キョウちゃん……」
「その通りだ。二人にもやってもらいたいことがある」
(後編に続く)