「そうは、いくかよっ!」
二人同時に頭部を狙った一撃は、しかしアンバーの一撃のみが獣のものを貫いていた。
(なんて判断をするの……っ!)
グラガンは同時に避けるすべがないと知るや、竜の首をかばうかのように獣の首をアンバーの剣先に突き出していたのだ。
「くっ!」
二人は反撃を恐れ瞬時に飛び退いた。
頭部を二つ持つグラガン。その無限とも思える再生力は、その頭部に依存しているようだった。
頭部にダメージを与えると、明確に再生力が鈍る。
しかし、その頭部を破壊したとしても、もう一方の頭部に瞬時に再生されてしまう。
この難儀な怪人と退治している二人のセラフィーヌ……セラフライラックとアンバーは、抜群のコンビネーションでグラガンを攻め立てていた。
彼女らの攻撃は一撃ごとにグラガンの肉体を傷つけ、破壊した。
しかし――
(このままじゃ、こいつは倒せない……ッ)
「クソがっ! 反則だろこいつっ!」
傍から見れば、二人が優勢に見えるだろう。
だが、それはあえてグラガンが頭部以外に隙を晒しているからだ。しかし、同時に頭部に攻撃が迫ると、的確に弾き返してくる。
(要は……)
ライラックが唇を噛む。
(こっちを舐めてるってことだろうがッ!!)
アンバーは怒りをむき出しにしてグラガンに迫る。
「グハハハッ! お前らの考えることなぞお見通しなんだよっ!」
飽きた、と言わんばかりにグラガンは二人の首を掴むと、地面に叩きつける。
「が、はっ……!」
背中から地面にめり込み、二人は苦悶の声を上げる。
「ハッハ……よえぇなあ! このペニスケースの方がまだ手応えあったぜ?」
グラガンの股間でペニスに串刺しにされているジェイドは、未だ沈黙したままだ。
「き、さ、まぁあああああっ!」
アンバーが飛び上がり、グラガンの竜の顔に連打を加える。
「おぐ、おっ!?」
グラガンの肉体がぐらりと揺らいだ。
「今よっ!!」
セラフライラックが地面に手を着くと、グラガンの足元が爆発を起こし、その巨体を吹き飛ばす。
「う……おお……っ?」
宙空に弾かれたグラガンを、二人のセラフが追う。
「調子に乗るんじゃ……!」
「グラビティ・フリッカー!」
ライラックの能力は、重力操作。二人を迎撃しようとしたグラガンの腕が、一瞬、ぐいと外側へ引っ張られる。
そして、グラガンの二つの頭部ががら空きになる。
「お、まえらぁぁっ!!」
「くらええええええっ!」
二人の拳が、竜と獣の頭部に迫る。
しかし――
「こ、いつ……!」
ライラックが狙った獣の頭部は爆散していた。一方、アンバーが狙った竜の方は、無傷であった。
「卑怯者めっ!」
「残念だったなぁ♥」
グラガンはあの一瞬で、腰を持ち上げてジェイドの体をアンバーとの間に滑り込ませていた。
これでは、ジェイドを慕っているアンバーならなおさら、攻撃することはできない。
「甘い奴らだぜ……けッ! そろそろお前らの相手も飽きたなぁ……そらぁっ!!」
呆気にとられていたライラック、アンバーに対して、グラガンは拳を振り下ろし、二人を強烈に撃ち落とした。
「あ、ぐっ、かはッ!」
ずぅん、と土煙を上げて、二人は墜落した。
「は、くぅうぅ……」
土煙が収まったあと、小さなクレーターの中ではライラックとアンバーが二人並んで地面に這いつくばっていた。
「終わりだな。 ま、少しはヒヤッとしたぜ」
グラガンが二つの頭で笑う。
「ちく、しょう……」
セラフスーツの発光部が点滅している。エネルギーが尽きかけているのだ。
「俺が可愛がってやってもいいんだがな……俺のチンポはこいつに埋まったままだ。なんで……」
周囲で様子をうかがっていた戦闘員たちがぞろぞろと寄ってくる。
「おいお前ら! こいつらを好きにしていいぞッ!」
「キィィイーーッ♥」
戦闘員たちは声にならない雄叫びを上げる。そして二人へと一斉に群がっていく。
「や、やめて……」
「ち、近寄るな……やめろぉっ!」
二人の悲鳴は、やがて戦闘員たちの奇声に紛れて消えていった……。
(後編へ続く)