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天空戦姫セラフィーヌ 第13話 希望の行方 前編(後編はifシナリオとなります)

「たぁあああっ!」

 ルージュの炎の拳が虫型の怪人、マズリムの胸部を捉える。しかし、その外殻は分厚かった。鈍い痛みを拳に感じ、ルージュは顔を歪めた。

「はっ……」

 マズリムの顔が不敵に笑ったように見えて、ルージュはとっさに飛び退いた。

 その一瞬後、ルージュが立っていたところに鋏尾が突き立っていた。

「おしい」

 マズリムがくぐもった笑いを漏らすと、その関節部の外殻がこすれ合い、キチキチと不快な音を立てる。

「こんな、ところで……!」

 足止めを食っているわけにはいかないのに。

 ルージュを焦燥感が襲う。

「どうした正義のヒロインちゃん♥ 来なよ、頭にきてるんだろぉ?」

 ルージュの胸の奥で怒りの炎が渦巻いている。自分を行かせるために、仲間たちがいま窮地に陥っている。モタモタしている暇はない。

「あなたたち、元は人間なんでしょ! なんでこんなことするのよ!」

 その邪魔をするのが、人間を改造した怪人なのだから、ルージュの怒りももっともだった。

「あぁん?」

 マズリムは一瞬視線を泳がせる。

「人間か……どうやらそうだったらしいがねェ。もう俺には関係ねえことだ。この体になった以上、楽しくヤッて殺ってやりまくるしかねぇだろ」

「そんなの、ひどいよ!」

「だいたいよぉ、こんな体になった俺らをお前らは受け入れんのかァ? 無理だろ?」

「! そんな、ことは……」

 想像がつかない。怪人が人間に恭順したとして、どう社会に溶け込んでいくのだろうか。

 外見が違うだけならまだしも、容易に人を殺しうる能力を持つ彼らに、人が対等に接しうるはずはない。

「へっ、それ見たことか。そろそろ話は終わりだ。そんなぴっちりスーツ着やがって。お陰でもうこっちがギンギンなんだよォ」

 マズリムの股間の外殻の隙間から、体液が染み出してきている。

「このぉお……ッ」

 ルージュは光剣ルージュセイバーを伸ばすと、嫌悪感を振り払うように飛び出し、マズリムに打ち掛かる。

 ギン、ギンッ!!

 流石に光剣にはマズリムも警戒している。おそらく関節部に刃が入れば、十分なダメージが与えられるだろう。

 しかし――

「くっ!」

 ここぞ、というタイミングで鋏尾が飛んでくる。

 嫌な武器だ。守備の堅さに焦って攻め込んでいると、意識の外から致命的な一撃を喰らいかねない。

「ふっ!」

 それでもルージュは果敢に攻め立てる。しかし、鋏尾の存在がちらつき、決定的な一打を与えるところまで踏み込めない。

「はっ、はぁっ……」

「へへっ」

 ルージュの息が上がり始めたのを見て、マズリムが笑う。

「そろそろだな」

「なにをっ!」

「こうするんだよッ!!」

 マズリムの腹部が大きく開き、そこから管状の器官が飛び出した。

「なッ!?」

 その先端から、勢いよく黄金色のガスが飛び出す。

「わ、わっ!」

 慌ててルージュは飛び退いて、直撃を免れる。

「ちっ!」

 マズリムの反応を見るに、食らってはまずい攻撃だったのだろう。

「やれると思ったのによォ~! ちょこまかすんじゃねえっ!」

 その悔しそうな口ぶりに、ルージュはピンときた。

(あれは麻痺ガスか何かだった……? なら!)

 こんなゲス野郎だ。こっちを動けなくして、楽しもうとするに違いない。戦いが優勢である今なら尚更だ。

「はっ!」

 とん、とんっ!

 ルージュは左右に身体を振りながら、マズリムに接近する。

「チィッ!」

 俊敏性ではこちらが上だ。マズリムはルージュの動きを追いきれない。だが、この装甲の厚さの前ではまともには抜けない。

(なら――)

 ルージュはわざと、動きを緩めた。

「ハハッ! 遅いぜ!」

 マズリムの腹が、再び開く。

「かかった!」

 ルージュは光剣を伸ばすと、剥き出しになった腹部を思い切り貫いた。

「ぐ、あああっ!?」

「てゃああああああ!!」

 ルージュはそのまま光剣を振り上げ、マズリムを縦に切り裂いた。

「ぎゃぁあああッ!!」

 水路にマズリムの絶叫が響き渡る。

 その体が真っ二つに裂けると同時に、断末魔のようにガスが噴き出した。そして炎がガスに引火し、マズリムの身体は木っ端微塵に爆散した。

「ふぅっ、やった……」

 勝利に安堵し、ルージュは額の汗を拭う。しかしまだ道は半ばだ。

「急がないと」

 アズールや他の仲間のことを思い出しながら、ルージュは水路を急いだ。

天空戦姫セラフィーヌ 第13話 希望の行方 前編(後編はifシナリオとなります)

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