アンバー、ライラックの二人は、激しい凌辱を受けグラガンの前に倒れ伏していた。
血と泥に塗れたその体には痛々しいアザが幾つも浮かび、行為の激しさを物語っている。
グラガンはジェイドの髪を引っ掴むと、その顔に火傷しそうなほど熱い吐息を吹き付けながら哄笑する。
「フハハハハッ! どうだ、こいつらの無様な姿は。ま、見えねえんじゃ想像するしかねえか」
「ふーっ、ふーっ……!」
グラガンのペニス鞘にされているジェイドは、ただ荒く呼吸しているだけだったが、その呼気にはたしかに怒りが混じっているようだった。
「あ、う……」
ボロボロの体で、しかし二人は立ち上がった。
「こんなもんで、参るか、よぉ……」
ガクガクと膝を揺らしながら悪態をつくアンバー。
「そう、よ……まだ、終わってない……!」
ライラックも、その闘志を失ってはいない。
「ほう? そんなザマでまだやるってか?」
「当たり前だっ……!」
不幸中の幸いか、戦闘員たちになぶられている間に、わずかながらエネルギーが回復してきていた。
「うぉおおおおおおおっ!!」
アンバーが叫び、二人は同時に駆け出す。
しかし二人の動きは精彩を欠いていた。ベストコンディションでも歯が立たなかった相手なのだから、それも当然だ。
「フハハ、そうだ! もっと足搔けっ!」
グラガンの哄笑が響き渡り、そして――。
伸びた腕が、二人の首を引っ掴む。
「ウっ……く……」
「きゃぁっ!」
そのまま二人はうつ伏せに組み伏せられてしまう。
「ククッ……いい格好だなぁ?」
そんな二人を見下し、グラガンが嘲笑う。その股間からは、相変わらず天を突くペニスがジェイドを貫いたままだ。
「うっ、ふぐ……」
「カイ……!」
カイ――ジェイドの顔が二人の間近に迫る。涎と涙を垂れ流し、苦悶の表情を浮かべる彼女の姿を見て、アンバーはますますいきり立つ。
「きさ、まぁぁああ……!」
しかし、組み伏せられた腕を振りほどくことはできない。 悔しさに二人が歯噛みした、その時だった。
「うぐっ……!?」
突如グラガンが苦しみ始めた。腕を離し、自分の両胸を押さえつける。
「……?」
二人は呆気にとられ、その様をただ呆然と見つめている。
「体の、リンクが……っ! グオ、オオオッ!?」
なにかグラガンの体に異常が生じたらしい。見れば、体の中心を赤い光が縦に走っている。
もとより、二体の怪人を合体させた異形の化け物だ。特殊な技術によってその体は成り立っていて、しかしなにか無理が生じた可能性がある。
「っつああああっ!!」
「でぇりゃあああああっ!!」
この隙を逃す二人ではない。一斉に光剣を携え、その首に迫る。
しかし、その刃はグラガンに届かない。寸前で二人の手首をガッシと捕まえている。
「くッ……鬱陶しいんだよ、てめぇらっ!!」
その時、ジェイドの首が不意にもたげた。そのズレた目隠しから、ギラリと瞳が覗く。
グラガンはギクリとしたようだった。目を落とし、ジェイドの瞳と視線を合わせた、その瞬間。
「うぐうっ!?」
緑光のエネルギーの刃が、グラガンの両胸を貫いていた。
ジェイドホーン。頭部のエネルギー発振体から放たれる、ジェイドの隠し武器だ。
屈服させたはずの相手に不覚を取るとは――グラガンはその事実に一瞬激昂しかけ、しかしその認識が間違いであったことを知った。ジェイドの瞳は怒りと闘志にらんらんと光り輝いている。この女は決して敗北したわけではなかった。
両の心臓を貫かれたグラガンは、流石に力を失い――
「う、おおおおおおおおおおおおっ!!」
ズンッ……!
その両首を二人の光剣によって切り落とされていた。
「……!」
主を失った体は、そのまま仰向けに倒れ、動かなくなった。
「見たかっ……! この、野郎……っ……!」
アンバーはグラガンの躯に悪態をつくが、そのまま膝をついて動けなくなってしまった。そして頭を失った戦闘員たちは、我先にと散り散りに逃げ出していく。
「カイ……っ!」
ライラックが痛む体に鞭打って、なんとかグラガンの体からジェイドを引き剥がす。
「う……む……」
意識を失い、体はボロボロではあるが、息はある。しかし、あの状況でグラガンに牙を剥くとは。望みを捨てず、ずっと反撃のチャンスを伺い続けていたに違いない。その闘争心にライラックは感心するばかりだった。
(それにしても……)
突然、グラガンに起こった異常。あれは何だったのだろうか。
(もしかしたら、ミサキちゃんたちが――)
ピラーへの潜入任務に進展があったのかもしれない。それは朗報なのかもしれないが、彼女らがさらなる危険に近づいているということでもある。
(二人とも――死なないで)
もはや自分たちに出来ることはなにもないが、おそらく自分たちを救った彼女たちに向けて、ライラックは無事を祈るのだった。