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天空戦姫セラフィーヌ 16話 転生への誘い 前編

 ジェイドたちがグラガンを打倒するその少し前――ルージュとベスタはピラーの中枢部にたどり着いていた。

 野球のグラウンドほどもありそうな円形の広大な空間があって、見上げれば天井は見えないほど高い。

 天気が良ければ都内西部から東京湾に刺さったピラーの上部が見えるのだから、たしかにここはその内部、中心部のようだった。

 そしてその真ん中に、赤く輝くエネルギータンクがいくつも設置されていた。その中でひときわ大きなタンクがらんらんと光を放っている。

「ルーっち、本当にここなん?」

 そう聞いてきたベスタに、ルージュは頷いた。しまい込んだセラフクリスタルは、”ここがそうだ”と教えてきている。

「じゃあそうなんだろうけど……不用心じゃね?」

 ベスタの言う通りだった。ここに至るまで敵の散発的な抵抗はあれど、二人の障害になるようなことはなかった。

 ここが敵の中枢で、心臓部だと言うなら、もっと激しい攻撃があっても良さそうなものだ。

 それはルージュも気になっていた。首尾よく行くことに問題などないはずなのに、胸騒ぎがする。

(……でも、やらないわけにはいかない)

 そのためにここまで来たのだ。

「やりましょう、ベスタさん!」

「あいよっと」

「たぁああああああああっ!」

 二人のセラフが光剣を携え、そしてエネルギータンクに突き立てる。

「うっ!」

 そして光が広がった。

「あああああああっ!!」


 二人は床に倒れ伏していた。突然の光に包まれ、意識を失ってしまったのだ。

「ん……」

 どれほどの時間が経ったか、ルージュは目を覚ます。上半身を起こすと、傍らにはベスタも倒れていた。

「ベスタさん!  大丈夫ですか!」

 ルージュが呼びかけると、やがてベスタも目を開けた。彼女は自分の体をペタペタと触ってから、

「うん、大丈夫……って言いたいけど」

 そう言って彼女は引きつった笑顔をルージュの後ろに向ける。

「……?」

 ルージュは振り向いて、そして凍りついた。

「なに、これ……」

 彼女は呆然としてそれを見上げることしかできない。

 それは不定形な、肉の塊だった。割れたエネルギータンクの中でうじゅうじゅと粘液を滴らせながら、ピンク色の肌を蠕動させている。

 あまりに醜悪なその姿に、ルージュは吐き気を催し、思わず口を抑える。

「とりあえず、下がりなっ!」

 ベスタが顔を引きつらせたまま、ルージュを引っ張り上げて後ろに飛び退く。こんなやつの近くにいるのは危険だ。

「味方って感じじゃないよねー……こいつ」

「たしかに……すごくヤバい感じがしますっ……!」

 肉塊のそこかしこに、倒した怪人のパーツに似た部位がある。

 それだけではない、節足動物のような腕が突き出ていたり、魚のエラのような部位も見える。

 地球上のあらゆる生物の特徴を混沌的に内包したかのような、そんな怪物だ。

 ルージュはなにかに気づいて、近くのコンソールパネルに視線を向ける。

 そのモニタには一言、日本語でこう書いてあった。

「完了――?」

 なぜ日本語なのか。その言葉の意味するところは何なのか――。

 それを解するまもなく、彼女らに、怪物は牙を剥いた。

 どずん。重厚な一撃が、二人が一瞬前に立っていた床を砕く。

「わぁああっ!」

「正体はわかんないですけどっ……敵ですよねっ!?」

「それでいいっしょ、別にっ!」

 ベスタは巨大なキャノン砲を形成し、肩に担ぐ。

「ぶっ飛ばす!」

「わっ!」

 砲口から強烈なエネルギーが迸り、怪物を焼く。

「グキエェェェッ!!」

 耳をふさぎたくなるような奇声をあげ、怪物は身悶える。

 しかし、それは長くは続かなかった。

 バチ、バヂッ!!

「!?」

 直撃部からスパーク。と同時にエネルギーは細く収束し、やがて掻き消えた。

「あちゃー……参ったなこりゃ」

 ベスタが頭を掻く。掻き消えたエネルギーとは対象的に、怪物は蠕動をいっそう激しくした。

「まさか……エネルギーを吸収してるっていうの……!?」

「んごぉぉぉっ!!」

 怪物が咆哮を上げると、その肉体は爆発したかのように四方に弾け飛んだ。

「な、なにっ!?」

 周囲に肉片が飛び散る。あまりのことに、二人は動きを止めた。

 そしてその肉片は一片一片が意思を持つかのように、二人を包むように集合していく。

「あ、ああっ!?」

「ちっ!」

 二人は同時に飛び退ったが、怪物に一歩近かったルージュの足に、一片が取り付いた。

「きゃあああっ!?」

「ルーっち!!」

 足首を肉塊に取り込まれ、あっという間に集合した本体の方へと引きずり込まれる。

「やっべ、こなろっ!」

 ベスタは肉塊を切り刻むが、全く効いている気配がない。むしろ光剣の先が飲み込まれて吸収されているようだ。

「ちくしょ、ルーっちぃぃっ!!」

 そしてルージュの体は、肉塊に完全に埋まってしまう。

「はふっ、あぐっ……あ、あぁ……」

 肺を絞られ、酸欠に喘ぎながら、ルージュは怪物の中へと飲み込まれていく……。


(後編へ続く)

天空戦姫セラフィーヌ 16話 転生への誘い 前編

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