遠くに青く霞む巨人。
その全容を見渡せる距離からであれば、それはどこかおぼろげな、霧の巨像のようにも見える。
しかしその体表は機械と肉の混成であり、見るもおぞましい化外の偶像であった。
そして、怪人たちにとっての神でもある。
巨人の体表の一部がぼこりと膨らんだかと思えば、そこから新たな怪人がボトボトと産み落とされていく。まさに巨人は怪人たちの創造神であった。
その神が、人間の世界へ己の領域を侵食させていく。一歩進むごとに大地は揺れ、産み出された怪人が四方八方へと版図を広げていく。
そんな中、抵抗する者たちもある。
「うおおおおおおおおおおおっ!!」
紫光が翻るたび、仰ぎ見た空に爆発の花が咲き乱れる。セラフジェイドの乾坤一擲の一撃が、敵の大群を薙ぎ払ったのだ。
建川市へと進路を取った巨人の前に立ちふさがるように、ジェイドを始めとしたセラフィーヌたちと自衛軍は懸命な抵抗を続けている。
「舞い散れ、ボンバーレイっ」
ライラックが放ったいくつもの光弾が、宙を舞う怪人を的確に捉え、撃ち落とす。
「これで、何体目かしら……?」
グラガンとの戦いから間を置かずの連戦で、セラフィーヌたちには疲労の色が濃い。
「逃がすかぁ……っ……!? くっ……エネルギーが……!」
ライラックと背中合わせに戦っていたアンバーが技を放とうとして、立ち眩みしたかのようにふらついた。
「グアアッ!!」
そこに、コウモリ型の怪人が飛びかかってくる。
「しまっ……」
「ってあああっ!!」
コウモリ怪人の爪がアンバーに突き立とうとしたその瞬間、横から紫の閃光が伸びて、怪人を吹き飛ばした。
「大丈夫か!」
「先輩っ!」
アンバーを救ったのはジェイドだった。それを悟ったアンバーの顔に喜色が浮かぶ。
「諦めるな……! 私たちの後ろには、牙持たぬ人々がいることを忘れるなよっ!」
「……はい!」
そう答えたアンバーの顔は、悲痛さを覚悟で押し込めたように険しい。この戦いの行く先が、極めて暗いものだというのを悟っているようだ。
だが、僅かな希望も残されている。
この巨人が現れたということは、ピラーに侵入したルージュたちが何らかの成果を上げたのだとジェイドは見ていた。
その結果、この巨人を目覚めさせたにしても、いずれこうなるのであれば、さほど関係のないことだ。
彼女たちがどうなったかはわからない。ただ、まだなにか成そうとしているのであれば――。
時間稼ぎでもいい。抗い続けるしかないのだ。
「さあ、行くぞっ!!」
ジェイドの鬨の声にセラフたちは呼応し、戦場へとその身を躍らせていった。