灰色の曇り空の下、冷えた風が頬をかすめる。
あきらは片手で腹を押さえ、もう片方の手でジャケットの裾をぎゅっと握りしめた。
「っ…マジでヤバ…」
低く漏らした声は震えている。足を踏み出すたび、内臓の奥から重く鈍い痛みが波のように押し寄せた。
「グギュキュルルル…ッ」
不快な音が腹の奥で渦を巻く。
歩道の先には階段。視界の端が揺れるほどの冷や汗が背筋を伝い、膝がわずかに笑う。
「歩くたび…響くんデスけど…っ」
額に浮かんだ汗が一筋、頬を伝い落ちる。
彼女は前を見据えたまま、必死に速度を落とさず歩く。
「…はやく…トイレ…っ」
吐息混じりの呟きは、足音と一緒に冷たい空気の中に消えていった。
冷えた外気の中、あきらの足取りは完全に乱れていた。
腹の奥を締めつけるような痛みは、もう歩くことすら困難にする。必死に歯を食いしばって耐えてきたが、トイレはどこにも見当たらない。
「…っ…あぁ…ムリ…」
声にならない息とともに、彼女は狭い路地の奥へと身を滑り込ませた。背中を壁に預け、震える指先でスカートの裾を掴む。
「はぁ…っ…トイレ…ない…っ…」
耐えきれず、足を開きしゃがみ込む。瞬間、腹の中の圧力が一気に解放され、熱い液状のものが勢いよく地面へ叩きつけられた。

「ビシャッ…ジュブジュブッ…」
耳に届く生々しい音が、羞恥をさらに煽る。
「うぅ…っ…止まんない…」
額から顎へと流れ落ちる汗。呼吸は荒く、胸が上下に波打つ。
足元のアスファルトを濁った液体が広がり、白い蒸気が微かに立ち上る。
その匂いと感触に、あきらは目をぎゅっと閉じた。
誰かに見られていないか、耳だけが周囲の音を必死に拾っている。だが、腹の奥から次の波が容赦なく押し寄せ――再び、地面を汚していった。