校舎の中庭を抜けたところで、リーリヤは足を止めた。
「……っ、い、いた……い……っ」
制服の下で鳴り響くお腹は、鋭く絞られるようにうねり、ギュルルルル……ッ!と音を立てる。彼女は両手で必死にお腹を押さえ、肩で荒い息をついた。
広い校内を必死に見渡すが、すぐ近くにはトイレの表示が見えない。人影の少ない放課後、静まり返った校庭に、彼女の呼吸と汗が滴る音だけが響いた。
「トイレ……っ、どこ……ですか……っ。はやく……、でないと……」

額から汗が流れ落ち、制服の襟に染み込む。ポタ…ポタ…と雫が落ちるたびに、焦りが増していく。
「……だめ、もう……我慢できないかも……っ」
視線の先にあったのは、校舎の影と、植え込みの奥にひっそりと伸びる木陰。人目から隠れられそうな場所に見える。リーリヤはそこを凝視し、唇を噛みしめた。
「……こんな……ところで……」
胸の奥で羞恥と理性がせめぎ合う。スウェーデンから来て、やっと掴みかけた日常。それを壊すような真似はしたくない。けれど、お腹は待ってくれない。グゥゥゥ……ギュルルルルルルッ!と、さらに大きな音が鳴り響き、膝が震えた。
思わず木陰へと一歩踏み出す。だが、その足取りは小刻みに震えている。
「……いや、です……こんなの……。でも……」
必死に周囲を見回す。誰か来る気配はない。風が葉を揺らし、サァ……と囁く音が耳をくすぐるだけだった。
「……清夏ちゃん……センパイ……見ないでください……」
声はかすれ、頬は真っ赤に染まっている。羞恥の涙が滲むのか、視界が揺れる。
「わたし……どうしたら……」
腹痛の波に足を折られそうになりながら、リーリヤは木陰の暗がりと、遠くにあるかもしれないトイレの方向とを、必死に見比べていた。
校舎の外れ、誰もいない木陰に辿り着いた瞬間、リーリヤはついに膝から崩れ落ちるようにしゃがみ込んだ。
「……っ、も、もう……だめ……っ!」
お腹を抱えたままスカートを必死に押さえる。けれど、羞恥よりも激しい腹痛が勝ってしまう。喉から漏れる声は涙に濡れ、顔は真っ赤に染まっていた。
次の瞬間——。
ビチャッ!ビチチチチチ――ッ!!
堰を切ったように泥のような下痢が噴き出し、草地を濡らした。
「いや……っ、こんな、ところで……っ……でも……とまらない……っ」
目をぎゅっと閉じても、耳に響くのは自分の排泄音。
ドロロロロロロ……ッ!!
ジュブブブブブッ!!

水気を多く含んだ便が泡立ち、土に叩きつけられて広がっていく。跳ね返った雫が靴や足に散り、パシャッ……パシャパシャ……と嫌な音を立てた。
「ごめんなさい……っ……誰にも……見られたくないのに……っ」
頬を伝うのは汗か涙かわからない。羞恥に震える心と、止められない身体の裏切りが混ざり合い、ただ地面を汚し続ける。
お腹の奥はまだ暴れ、グゥゥゥ……ギュルルルルルルッ!と響くたびに、再び激しく噴き出す。
ドババババッ!ビチャアアアア――ッ!!
地面の泥水はさらに広がり、鼻を刺すような匂いが漂い始める。
「……恥ずかしい……でも……もう……お腹が……」
声はかすれ、身体は震えている。両手でお腹を必死に押さえても、力は抜けていく一方だった。
やがて、力なく肩を落とし、しゃがんだまま震える息を吐く。ハァッ、ハァッ……ッと掠れた呼吸だけが、静かな校庭に響いた。
木陰の草地には、彼女の苦しみの証が広がっていた。羞恥と無力感に包まれながらも、リーリヤはただ俯き、涙をこぼすしかなかった。