昼下がりの街を、奈緒はひとり歩いていた。お気に入りのパーカーを羽織り、軽やかな足取りのはずだった。けれど、その平穏は唐突に崩れる。
「……っ、な、なんだよこれ……! お腹が……キリキリ……っ!」
下腹部に鋭い痛みが走り、奈緒は思わず壁に手をついた。額に汗がにじみ、呼吸が乱れる。
ギュルルルル……と腹の奥から響く低い音。嫌な感触が腸を駆け抜ける。
「くっそ……っ、よりによって、い、今……? 勘弁してくれよ……!」
彼女は足をもじもじと擦り合わせ、必死に便意を堪える。だが、波は途切れない。押し寄せる痛みが腰を折らせ、歩みを鈍らせる。
「べ、別に大したこと……っ、な、ない……っ。ちょっと……トイレ行けば……す、済むし……!」
強がりの言葉を口にしながら、視線は必死に周囲を探していた。だが、コンビニも公園も見えない。見えるのは灰色の壁と人通りの少ない通りばかり。
再び腹の奥が蠢き、強烈な圧迫感が襲いかかる。
「っ……! だ、駄目だ……もう……ほんとに……!」

額から滴る汗が顎を伝い、頬を濡らす。肩を震わせながら、奈緒は必死に前屈みの姿勢で歩を進めるが、トイレの看板は一向に見えない。焦りが全身を包み、鼓動が速まる。
「は、早く……! どこだよ……トイレ……っ!」
周囲に人の姿がないことを確認して、奈緒は唇を噛みしめた。羞恥と恐怖が胸を締めつける。いつもなら堂々とした強がりで隠せるはずの彼女の素顔が、今はただ切羽詰まった少女のまま露わになっていた。
奈緒は歩道をよろめきながら駆け抜けた。腹の奥から突き上げる痛みに、もう足が勝手に動いてしまう。コンビニも公園も見つからない。視界の端に飛び込んできたのは、人気のない路地裏だった。
「っ……ここしか……もう……無理だ……!」
頬を真っ赤に染め、奈緒は周囲を必死に確認すると、震える手でホットパンツと下着、それにタイツを一気に掴んで膝まで下ろした。羞恥も理性も追いつかない。ただ、腹の奥から押し寄せる奔流に逆らえなかった。
「だ、誰も……見てないよな……? く、くそっ……出る……!」
その瞬間、抑え込んでいたものが一気に解き放たれる。
ビチャアアアッ! ドロロロロロ……ッ!

水っぽい下痢が音を立てて噴き出し、路地裏の地面を濡らしていく。飛沫が壁や足元に散り、奈緒の太腿や下ろしたタイツにもかかってしまう。
「ひっ……や、やだっ……と、止まれって……うぅ……っ!」
声は震え、涙が目尻に浮かぶ。必死に腰を引きながらも、止めようのない勢いが次々と噴き出した。
ブシュウウウッ! ビチビチビチャアッ!
背筋を走る羞恥と恐怖。奈緒は顔を壁に押しつけ、両手を握りしめて震える。人目のない路地裏であるはずなのに、誰かに見られている気がしてならない。
「っく……もう……止まんない……っ……! は、恥ずかしいのに……!」
泥水のような下痢が途切れず流れ落ち、地面には茶色い水溜まりが広がっていく。奈緒の声は強がりと嗚咽が入り混じり、いつものツンとした口調はもうどこにもなかった。