午後の授業、窓から射し込むやわらかな光の中で、教室は静まり返っていた。ノートにペンを走らせる音と教師の声だけが響く空間。その中で――すみれの腹の奥から、不意に「ギュルルル……」と低い音が鳴った。
「……えっ?」
一瞬、彼女の表情が凍る。笑顔を繕おうとするも、次の瞬間、*「キリキリッ……ズキンッ」*と腹部をえぐるような痛みが走り、背筋がぴしりと震えた。
額にじわりと汗が浮かび、指先まで冷たくなる。すみれは机に突っ伏しそうになるのを必死に堪え、片手で腹を押さえた。
「なによったらなによ……っ、これ……ギャラクシーどころじゃ……っ」
心の中で強がりを呟くが、吐息は浅く震え、虚勢は次の痛みにすぐ打ち砕かれる。
「……くっ……」
椅子に座る姿勢が耐え難い。腸の奥で圧が高まり、波のように便意が押し寄せてくる。耳の奥で自分の鼓動が響き、視界がかすかに揺れる。
――トイレに行かなきゃ。
でも、授業中に席を立つなんて。皆の視線を浴びる。カリスマであるはずの自分が、腹を抱えて駆け出す姿を見られたら――。
「私は……ギャラクシーカリスマなのに……退場するなんて……っ」
羞恥心が鋭い針となって胸を刺す。だが、その上からさらに腹痛が容赦なく襲いかかる。
「グググ……ギュルルルル……!」
腸が悲鳴をあげ、冷や汗が首筋を伝う。もう誤魔化せない。羞恥よりも、便意が勝った。
決断と立ち上がり
「……す、すみません! ちょっと……」
かすれた声で教師に告げ、椅子を引いた瞬間、教室の空気がわずかに動いた。周囲の視線が突き刺さる。すみれの顔は羞恥で赤く染まりながらも、汗に濡れ蒼ざめていた。
椅子の脚が床を擦る「ガタッ」という音が、彼女の心臓をさらに速く打たせる。
「ドクン、ドクン……」
視線を前だけに向け、鞄も持たず、腹を押さえながら歩き出す。
ドアを閉めた瞬間、教室のざわめきが背後に遠ざかる。廊下の静けさの中、響くのは自分の靴音と、内側からの「グルルルル……」という切迫した音。

「大丈夫、大丈夫ったら大丈夫……って言い聞かせても……っ、全然大丈夫じゃないのよ……っ」
虚勢混じりの独り言が空しく響く。
廊下を駆け抜けるたびに、腹の奥で波がうねり、汗が制服を濡らす。羞恥で震える足を、便意が無理やり突き動かしていた。
曲がり角の先、トイレの扉が見える。
「……っ、あと少し……! 私、絶対間に合わせるんだから……ギャラクシー……っ」
声にならない呻きとともに、彼女は腹を押さえ、最後の力を振り絞って扉へと手を伸ばした。
廊下を駆け抜ける足音が、やけに大きく響いていた。胸の奥で高鳴る鼓動と、腹の中で暴れ狂う「ギュルルルル……!」という音が重なり合う。
額からは汗が滴り、制服のシャツが背中に張り付く。すみれは片手でスカート越しに腹を押さえ、必死にトイレの扉を目指した。
「……だいじょ、ぶ……ったらだいじょ……ぶ……」
いつもの虚勢混じりの言葉は、震える吐息と一緒に掠れて消えていく。
トイレの扉が目に入った瞬間、張り詰めていた集中がふっと緩んだ。
その刹那、腸の奥から鋭い痛みと圧が同時に襲いかかる。
「っ……や、やだ……ギャラクシー……ここで……っ!」
次の瞬間、彼女の身体は限界を超えた。
「ブチュゥゥ……ッ! ビシャッ、ドロロロロロ……!」
抑えきれなかった下痢が一気に噴き出し、下着を濡らし、制服のスカートを汚しながら太ももを伝って滴り落ちる。
熱く、生温かい感触が広がり、白いニーソックスを茶色に染めていく。床に叩きつけられる「ビチャアッ、ボタタタ……!」という音が、静かな廊下に不気味に反響した。
「や……やだ……嘘でしょ……っ!? 私、すみれよ……銀河のカリスマなのに……っ!」
声は震え、目尻には涙が滲む。
それでも腹の痛みは収まらない。
再び押し寄せる波に、体が勝手に震える。
「グルルル……! ジュワアア……ッ!」

止まらぬ下痢が脚を伝い、靴の中まで汚していく。床には広がる水溜り。鼻をつく酸っぱい臭気が立ち込めた。
「はぁ……はぁ……まだ……止まってないったら止まってない……っ」
羞恥と絶望で顔を真っ赤に染めながらも青ざめたまま、すみれは扉にすがりつく。
あと一歩、あと数秒早ければ間に合ったはずの扉。その前で崩れ落ちる自分の惨めさに、彼女は歯を食いしばった。
「……誰にも……見られませんように…………お願い……」
涙混じりの声が、廊下にかすかに響き、まだ続く腹痛と下痢の音にかき消されていった。