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第32話:つーほー


暇を欲する割には、暇になると時間を持て余すのが人というのもだ。



そんな昼下がりには、ビートルズのレコードに耳を傾けながらフレンチ・トーストをこんがりと焼き、ポーチド・エッグを添える。

ああ、マルシェで手に入れた野菜を使ってエッグ・ベネディクトとしゃれ込むのも悪くない。

先日お隣にお住いのマドモワゼルからおすそ分けを頂いた、シチリア産のフレッシュオリーブを一つまみ手に取りーーー



そこまで妄想を膨らませたところで、優雅な思考は終わりを迎える。


今朝食べたのは目玉焼きだし、お隣に妙齢のマドモワゼルは住んでいない。

代わりに自宅の水回りにはカビが繁殖し、永住権を得ようとしている。


はぁ。

たまにはお風呂の掃除でもしようか。


妄想と現実のギャップに打ちのめされつつ、浴室へ向かう。


浴室の戸を開けると、中にはりうちゃんが立っていた。

今にも入浴しようと、下着に手をかけて。


彼女と目が合う。


シルクのような白い肌と、みるみる紅潮する彼女の頬を見下ろしながら、興奮より先に自分の思考が停止した。


どうしてこんな昼間にお風呂に入ろうとしているのか。

いや、いつ入ろうが個人の自由だろう。


まずはあれだ。

こういう時、どういう言葉を掛けるのが正解だっただろうか。

先生、ぼく、この問題まだ教わってません。


ああそうだ。

まずは呼吸を再開しよう。


脳への酸素供給が滞っている。

さあ、息を吸ってーーー



「あのさ」

「は、はいっ!!」




「...見過ぎ」


りうちゃんは顔を真っ赤に染め、こちらを睨んでいる。


「あ、いや、そのお風呂の掃除をーーー」

「さっきわたし、お風呂入るねって言ったよね?」

「え?」

「ちゃんと言ったよね?」

「あー、そういえば左様なことをおっしゃっていらっしゃいましたような....」


寝ぼけていたから完全に忘れておりましたよ、マドモワゼル。HAHAHA!


「つーほー」

「おやめくださいマドモワゼル!!」


しかしこれは、なにかお詫びをしないとりうちゃんの機嫌が収まらないやつだ。りうちゃんはたまに難しいのだ。

自分からえっちぃ感じのことをして俺をからかったりするくせに、彼女が予期していないことは許されなかったりする。

それにこの話をミーちゃんにされたら、この先一週間は二人に変態扱いされること間違いない。


「ハーゲン〇ッツ」

「はい!」

「ふたつ」

「はい!」

「マスカットのやつ」

「あ、いや、そちらは期間限定ですので現在のお取り扱いはーーー」

「つーほー」


理不尽すぎんだろ!!



「じゃあ代わりに」

「はい!」

「背中洗って」

「え?いいの?」

「つーほー」


こいつ...!!



何か、何かいいアイデアはないのか!?

この不祥事を揉み消せるような、穏便になかったことにできるような、画期的なアイデアはーーー



ガチャッ。


「ただいにゃぁ~!いやー今日は寒いにゃ~。お風呂お風呂~♪」


ミーちゃんの声、そしてこちらに駆け寄ってくる足音が聞こえた。

同時に、俺の平穏が崩れ去る破砕音も聞こえた。


「あ、お兄さんもお風呂にゃ?でもミーは体が冷えちゃったから先に入らせてもら-ーー」

「あ、ミーちゃん、これはちょっとなんというか、掃除のタイミング」

「お兄さん」

「はい!」

「ハーゲン〇ッツ」

「はい!」

「マスカットのやつ」

「あ、いや、そちらは期間限定ですので現在のお取り扱」



「「つーほーっ!!」」




Fin.


第32話:つーほー

Comments

ありがとうございますー!久々のイラストーリーでした!主人公くんの未来はいかに!笑

れぶん

つーほー!! ありがとうございます!久々に書きましたので、読んでいただけて嬉しいです。

れぶん

何たる理不尽!(⁠ ⁠≧⁠Д⁠≦⁠) せめて、あと30秒遅く入っていればその理不尽も受け入れられたのにぃ。。。ウソデスハイ、ゴメンナサイ浮かれただけです。ホントダヨーワタシシンシ。ゲフンゲフン。。。ぇ~それはさて置き。 イラストーリー待ってました~(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)

フェル

つーほー!(((o(*゚▽゚*)o))) ひさびさのイラストーリーですね!待ってました!最高です!

yoshinomura


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