しばらく車を走らせると、街明かりは星明かりに変わる。
俺はりうちゃんを誘って、郊外のナイトプールにやってきた。
さて、りうちゃんは...
いやめっちゃ泳いでんな。
りう「キミは泳がないの?」
俺「俺はいいよ。ちゃんと泳ぐようなプールじゃなさそうだし」
最近、りうちゃんに元気がない気がして、話を聞いてみようと思ったのだ。
一見、彼女は至って普通だが、普通を装っているようにも見える。
りう「あ、そっか。キミ泳げないんだっけ?じゃあ、私が手を引いてあげるからバタ足からやってみる?」
なっ!?バ、バカにしおって...!
でも水着のりうちゃんに手取りナニ取りふたりきり、とは贅沢...じゃなかった!
ちゃんと、目的を果たさないと。
俺「あ、あのさ」
りう「うん?」
俺「りうちゃん、その...最近、元気ない?」
りう「え?そんなことないよ?」
...嘘だ。
それに、優しい嘘だ。
俺「本当に?」
りう「うん」
俺を寂しがらせないように、彼女は嘘をついている。
だって彼女は。
俺「...写真」
りう「え?」
俺「覗き見するつもりじゃなかったんだ。でもこの前、りうちゃん、家族の写真を見てーーー」
りうちゃんは、単身、上京する前に家族4人で撮った写真をとても大切にしていて、写真立てに入れて飾っている。
りう「見られちゃったか」
写真を眺めて涙を流す彼女を、たまたま見かけてしまったのだ。
俺「ごめん!でも、それからずっとりうちゃんが心配で...。話、聞くことしかできないけど、ほんの少しでも元気になってくれたらって思って、その...」
りう「...ね、水着、脱いじゃって良いかな」
俺「うん、ええぇっ!?なな、なんで!?」
りう「誰もいないし?」
りう「それにもう、十分恥ずかしいところ見られちゃったみたいだし」
ヌードを見られる方が恥ずかしいと思うんですが...
りう「心を丸裸にしないと話せないことだから」
そういうことか。
一糸まとわないことに、覚悟の意味があるのだろう。
そして彼女は水着を脱いだ。
りう「やっぱりちょっと、恥ずかしい、ね」
生唾を飲まずにはいられない。
りう「じゃあ、話すね...って」
俺「うん?」
りう「ちゃんとこっち向いてよ」
目のやり場がないんだよっ!!!察してっ!!!
りう「わたしね、この季節、実はちょっと苦手」
俺「夏?」
りう「うーん。夏は好きなんだけど、思い出しちゃうから」
りうちゃんの故郷は、竹富島という南の島。
父、母、弟のみずきくんが住んでいる。
4月から半袖一枚で過ごせるような常夏の島だ。
夏の匂いは、彼女にとって故郷の匂いなのだろう。
りう「この間は、夏の感じと、写真とで、家族のことを思い出しちゃって」
俺「りうちゃん...」
東京と竹富島。
2,000キロメートルという距離は、幼さ残る彼女にとっては、遠過ぎる。
りう「キミに心配をかけたくなくて、黙っていたんだけどね」
俺「うん」
りう「わたしね、やっぱり寂しい。学校のみんなは毎日同じ家に家族がいて、一緒にご飯を食べて、当たり前のように」
俺「そうだね」
りう「家族に、みんなに会いたい」
俺「...」
りう「でも、わたし、帰らない」
俺「...良いの?」
りう「うん」
俺「...」
りう「だってここには、キミがいるから」
家族を想う彼女の寂しさは、完全に消えることはないだろう。
それでも彼女は毎日一歩ずつ踏み出していく。
俺は、そんな彼女を支えたいと思う。
取り柄も力もない俺だけど、それでも支えたいと願う。
だって。
りうちゃんが、大好きだから。
fin.
れぶん
2024-08-05 12:53:44 +0000 UTCRare
2024-08-05 12:51:39 +0000 UTCれぶん
2024-08-05 09:09:44 +0000 UTCれぶん
2024-08-05 09:09:03 +0000 UTCれぶん
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