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シカク
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反転-前編-

ここはとある森の奥。村の外れ。そこに建つ小さな小屋。そこには青年と少年、2人の姿があった。小屋の持ち主で青年の名前はマイト。少年の名前はラウル。 マイトは元勇者の仲間で剣士をしていた。しかし魔王との決戦の際に片腕を落とし引退した。引退する際に指導者として王宮へと仕えるように斡旋も来たがそれらを全て断り、こんな山奥でひっそりと静かに暮らしている。 魔王との決戦は熾烈なものだった。結果、勇者が命を掛けて魔王を封印という何とも苦い結果となった。だが世界中の人々は魔王の封印に喜んだ、勇者の仲間達は勇者の命を掛けて魔王を封印した事に泣いた。決めたのは勇者だがそれでも仲間達は悲しみに明け暮れた。勇者の命を救えなかったにもかからわず王都へ帰ると祝福に褒美と賛美の声しか聞こえず、それがいたたまれなくなりマイトはこうして名前を変えて静かな場所へと引っ込むことになった。 ラウルという少年は近所の村の子供だ。この世界では15歳で成人となり、その際に教会から鑑定をして貰って職業を知る習わしとなっていた。だが大体が商人の子供は商人だし、剣士の子供は剣士と遺伝や環境の影響がやはりあった。でも稀に勇者などといった世界に1人だけや珍しい職業に当たる人もいた。 ラウルの父の職業は剣士で村で狩りや街に出かけて冒険者をやっている。ラウルもそんな父を見て将来立派な剣士になる為にマイトに剣を習っている。 だが、マイトは知っていた。その少年の職業が“勇者の卵”だと。マイトは他人のステータスを覗くスキルを持っている。このスキル自体珍しいもので簡単に取得出来るものでもない。たがそこは勇者の仲間、そのスキルを持っていても不思議ではなかった。引退してからは他人のステータスを見るなんてことはしていなかったのだが。5年前、マイトが引退して村の外れに住んで間もない頃、たまたま村に行っていた時に子供が暴れているという騒動が起きていた。何でも1人の子供が大人も止めるのに苦労する程暴れていたと。その子供がラウルだった。そこに居合わせたマイトは片腕ながら軽々とラウルを止めてみせた。そしてその時にこの力の正体を探ろうとステータスを見ると職業に勇者の卵と書いてあったのだ。マイトは村の人には自分の正体を隠しているため、怪しまれないように理由を付けてこのラウルという少年を鍛えようと思った。将来、もし魔王の封印が切れてしまった時の事を考えて。 あれから5年。マイトは25歳。ラウルももうすぐ成人の15歳を迎えようとしていた。そしてラウルは今日も元気に木刀を振り回す。 「やあっー!ていっ!」 「今日はここまでにしよう。本当にラウルは強くなったな。本気でやったら俺ももう負けちゃうだろうな」 「そんな事ないって!まだまだだよ俺なんか!何時も思うよ、片腕でもそんなに強いのにもし両腕あったら師匠は勇者になれるんじゃないかって。師匠が勇者だったら俺は喜んで付いて行くけどね!!」 ラウルは純粋な眼差しをマイトへと真っ直ぐ向ける。実際ラウルはステータスの上ではマイトより強くなっていた。だがそこは経験の差だろうか、マイトは片腕ながらも歴戦の戦いの中で学んだ戦法でラウルを退けていた。だが、ラウルもマイト相手にこの5年間、何万回と模擬戦闘を行い、実戦に近い形で経験値を積んでいた。成人をきっかけにマイトはそろそろ本当に負けるだろうことを悟っていた。だが、マイトは嬉しかった。弟子の成長、勇者の誕生、片腕を失った自分が未来に何かを残せたことが。 「成人の義は明日だよな?」 「うん!そうだよ!俺ももう成人かぁ...」 「そのセリフは俺のセリフだ。あの生意気なガキがもう成人でここまで立派になるとはな...」 「まぁ成人って言っても職業は多分剣士だろうし、父さんと同じで冒険者家業か傭兵するだろうから師匠の所には頻繁にはもう無理だろうけど顔ぐらいはちょくちょく出すよ!それと今までありがとう...こんな俺を鍛えてくれて、こんなどうしようもなかった俺の面倒を見てくれて本当にありがとうございました!!」 その言葉にマイトの目から涙が零れそうになった。不安で育ててきた弟子は立派になり、感謝された事に。もう大丈夫だろう。自分の弟子は立派に明日には勇者になる。そうマイトは確信したのだった。 その日の夜、マイトは1人明日誕生する勇者を祝い、先走って晩酌を行っていた。普段酒は弱いので余り飲まないが今日は特別にと。ロウソクの火がユラユラ揺れるその灯がコップに入ったエールを微かに輝かせ、それを口に少し含む。自分が勇者の仲間として冒険し、友の事と片腕を無くした事を思い返しながら。そして弟子と出会い立派な勇者になった事を。まるで映画を見るように目を瞑り、脳内で再生させているとふと怪しい気配に気付く。 「誰だ...」 椅子に座るマイトの背後に小屋の入口である扉からその問いに答えるように返事がする。 「失礼します」 振り向くとそこにはいつの間にか家の中へと侵入していた人物がいた。マイトはスっと立ち上がり鞘に手を置く。 「お初にお目にかかります。私の名前はグラードと言います」 頭に山羊のような角を2本生やし褐色肌に宝石のような赤い眼を持つその特徴的な姿は正しく魔族だった。礼儀正しく礼をするその様子にマイトは警戒心を弱めること無くグラードと言う魔族をじっと見る。 「そんなに警戒心を剥き出しにしないで頂きたい。私は争いに来た訳ではありません。貴方をスカウトに来たんです」 「スカウトだと...!?」 「そうです!貴方を次期魔王に...」 マイトはその言葉に驚き、目を見開く。そして直ぐに目を細めて拒絶する。 「冗談じゃない。魔王は俺達が、いや、勇者が封印したはずだろ?次期魔王と言うのは色々問題が起きるんじゃないか?」 グラードはその問いに溜息をついた。 「それがですね、魔王様は先日封印の中、力が弱まり続けそのまま亡くなられました...」 「ハハ...それはいい気味だ...これは朗報だ。これで魔王の封印がいつか解かれる等と言うことに怯える平和は終わった訳だからな。勇者もこれで報われたよ。でもそれで何故俺が次期魔王になる?それに俺は元勇者の仲間だ。それぐらいは調べてる筈だろ?」 「貴方の仰る通りです。魔王様の事は誠に残念な事でした。次期魔王候補にしても貴方達勇者一派に幹部様達も倒されてしまい、今では参謀だった私が魔王様の代わりを務める始末。我ら魔族はこのままでは未来がない。次期魔王を早急に見立てる必要があるのです。そこで私はマイト様が相応しいと思いました。私は忘れません。実は貴方達と魔王様の戦いを影からこっそり見ていました。その時のマイト様の気迫、実力、そしてその闇の深さ、私は貴方に心惹かれたのです。マイト様こそが次期魔王だと!!なので貴方が元勇者の仲間等関係ありません」 「闇の深さだと...?」 「ええ...そうです...貴方の心の闇は深い...貴方は無意識の内にその心に闇を宿しています...」 グラードは水晶玉を取り出し、それをマイトに見せ付ける。その水晶玉は何とも怪しい雰囲気をしており、紫色のオーラが纏っていた。 「この水晶玉をよくご覧ください...これは貴方の中に眠る闇を写し出すものです...」 そして水晶玉には黒いオーラを纏う、目の輝きを失ったマイトが写っていた。 『俺は勇者が羨ましかった...皆に好かれ、俺よりも強くて、頼りにされて、カッコイイ...何故俺じゃなかったんだ!!勇者は最初俺の筈だった!!後から職業が勇者だからと言う理由で俺は...!!俺の職業は勇者じゃない!!でもアイツより最初は強い自信があった!!』 マイトは魅了されたようにその水晶玉を見つめ、その中に写るもがき苦しむ自分を注視してしまう。 『だけどアイツは死んだ...これからは英雄として俺の時代が始まると思ったんだ...でも片腕がない!!俺の腕が...それさえあれば、また俺は...ラウルなんてガキには負けない勇者になれるんだっ...!!』 「違う...こんなの俺じゃない...これは幻だ!!」 「これは幻ではありません!!貴方の本心、心の闇なのです!!しっかり目を向けて下さい!」 『ラウルを育てればまた俺は勇者を育てた英雄としてスポットライトを浴びる...今度は王宮に仕えるなど陳腐な報酬じゃなく今度はもっと名誉ある褒美が...!!』 「こんなの...俺じゃ...」 マイトは頭を抱えて蹲っていた。酒など飲んでいなければ正気を保ち、周りを漂う怪しい匂いと水晶玉の幻影に惑わされる事などなかっただろう。そんなマイトにグラードはそっと近づく。 「マイト様...大丈夫です...貴方が魔王になれば勇者を超えれるだけではなくこの世界は貴方の物になります」 そして優しい言葉と共に禍々しく紫色に輝く玉を取り出す。 「これは魔王様が残して下さった種。これを飲めば貴方は立派な魔王になります」 「ダメだっ...!こんなの...アイツを裏切れない...」 「これは裏切りではありません。貴方が心のままに魔王となって勇者の代わりに世界を平和に導くのですよ。世界を貴方の自由に操るのです」 「世界を...」 「そうです」 グラードは手に持つ種をマイトへと改めて差し出す。 「もう悩むことは無いです...解放されましょう...下らない有象無象たちから...」 「これで...俺は...」 マイトはその種を受け取り、震える手でそれを口に運びゴクンと飲み込んだ。 「ぐあっ...がぁッ...あ、ア、ア"、ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!」 全身に激しい痛みが走る。身体はバキバキと音を派手に鳴らしながら骨格を変えていく。無いはずの片腕はまるで爬虫類の様に生え変わり、頭からは山羊の様な真っ黒い角が2本生え、背中からは漆黒の翼が姿を見せる。海のように綺麗な青い瞳と金に輝く髪は魔の者に相応しい真っ赤な瞳と銀髪に変わってしまった。人相も前の柔らかい印象とは違い目は釣り上がりキツい印象へと変わっていった。 「はぁ...ふぅ...」 時間が経ち、痛みが引くと立ち上がり手を動かして新たな自分の姿や力を確認して、その感触に思わず口角が段々吊りあがっていく。 「ククク...ハハハハハハハ!!!何だよこの力は!!ステータスが軒並み上がってやがるぜ」 「おめでとうございますマイト様。新たな魔王の誕生、嬉しく思います。そのお力、間違いなく貴方が最強の魔人です」 グラードは新たな魔王の前に跪き頭を垂れる。 「いい気分だ。これも全てグラード、お前のお陰だ」 「勿体なきお言葉です」 「お前には感謝してるよ。これでオレが新たな魔王だ!さてと、お前は前魔王の代わりを務めオレが新たな魔王になった事で自動的にNo.2になる立ち位置な訳だが、悪いがオレの右腕はもう決めてるんだ」 その言葉にグラードは悔しそうな表情を浮かべるでも無く淡々と言葉を返す。 「マイト様、問題ありません。私は貴方の決定に従います。そもそも私は参謀、どちらかと言えば頭を使う方が得意で余り強くはないのですよ」 「なるほどな。だが、心配するな。お前は俺の恩人、お前の忠義には応えるつもりだし、No.3はグラードにするつもりだ。そしてその為の力を今度はオレが与えてやるよ」 そう言ってマイトは人間の頃とは比べ物にならない巨大になったその肉棒を取り出す。 グラードもそれで何をすれば良いかを即座に理解し、嬉しそうに咥えた。 「くっ...なかなか上手いじゃねぇか。流石は参謀様だな」 「ふぁりがとぅございましゅ」 グラードは唾液をたっぷり含んだ口で何度も咥え、長い舌で裏スジまで丁寧に舐める。力を与えらる立場だが自分の主が少しでも気持ちヨクなってもらおうとその一心で。そしてその主もそろそろ限界が来る。 「ほらっ...そろそろイクぜ。オレの力が篭った種子たっぷり飲み干せよ!!イグっ!!」 グラードは魔人化によって増大されたマイトの精力をその身に受ける。ゴクゴクと喉を鳴らして零さないように顔を赤くして必死にザーメンを飲んでいった。長い射精が終わるとグラードは飲み残しのないようにチュウチュウと吸い、吸い終えると一物から口を離す。 「どうだ?美味かったか?」 「はい...大変美味でございました...ありがとうございます...」 未だに顔を惚けさせるグラードがマイトを見上げお礼を言い終えるとその変化が起こり始める。 「ア"ッ...!ガッ...!ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!」 今度はグラードの全身に激しい痛みが全身を走る。だがマイトと違うのはその外見の変化が全くない事だった。だが内なる力、魔力が膨れ上がっている為、空気を激しく震わせ、地面を揺らしていた。暫くすると徐々に振動は小さくなり、グラードの苦しげな声も無くなっていった。そしてグラードは自分の変化に歓喜の表情を見せる。 「私が...!これが私!!あぁ...ありがとうございます...!!マイト様!!私は貴方に永遠の忠誠を誓います!」 グラードは改めて跪いて重々しくその頭を垂れる。 「これからは永遠に俺の参謀として仕えろ。お前は先に魔王城へと帰還し魔族共をまとめておけ。新たな魔王を歓迎する準備でもしてな。お前のその力があれば問題ないはずだ」 「畏まりました」 グラードは直ぐに姿を消し、部屋の中には新たな世界の恐怖たる魔王だけが残った。 「さあ、明日が楽しみだ...」


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