than blood -前編-
Added 2021-12-16 14:52:58 +0000 UTC豪華な装飾で飾られたとある部屋。すわり心地が良さそうなソファの両端に盛り上がった筋肉が目立つ黒スーツ姿の男を侍らせて、同じく黒スーツ姿の青年が腰掛けていた。そして青年の前には、黒のケツワレに太ももまである黒ブーツを履いた男が跪いている。男も青年の両端にいる男たちに負けず劣らずの体を持っている。 「お前の友達がもうすぐお前を探しにここへ来るらしい」 青年の声が部屋に響く。男は黙って青年の言葉に耳を傾ける。 「写真を見たら中々イイ男だったよ。だから友達も俺の奴隷にする事にした。お前の手で俺の前に連れて来るんだ。分かったな?」 「はい、マスター。是非あいつもマスターの奴隷に」 男は破顔させて、青年を見上げる。マスターと呼ぶ青年の言葉に興奮させて股間も膨れ上がらせる。その様子に青年は満足げに笑い、パチンと指を鳴らす。すると青年の上手にいる男が赤色の液体が入った注射器を手に跪く男の元へと近づき、その腕に針を刺した。打ち終わると、男は立ち上がり空手の構えのポーズをして、自身の変化に耐えるように気合いを入れる。 「んぁ…ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"っ♡」 男の筋肉は更に盛り上がり血管が浮かばせて、チンポもケツワレの布を破ろうと更に勃ち上がる。 「んぁっ、ア”っ、ア”っ、ア”っ、イグっ!イクぅぅぅぅ!」 10秒ほどでドーピングによる肉体改造が終わり、完成の合図である射精を布を通り越し、盛大に吹かす。 「ふぅぅぅ…」 男は構えのポーズのまま、青年をまっすぐと見つめる。 「ありがとうございますマスター。マスターから頂いた力で、必ずやアイツをマスターへ献上します」 「期待してるよ」 「どういうことだ…何も言わずに引退なんて…」 俺の名前は藤森太陽。そこそこ名の知れた格闘家だ。俺は今、同じジムで切磋琢磨し合った戦友、黒田遼河の突然の引退ニュースに驚いている。まだ24で大きな怪我もしてないのに一体どういう事なんだ。しかも俺だけではなく、コーチやお世話になった先生方にもその件について連絡がなかった。何とか連絡を取ろうとしても音信不通。アイツに何が起こったんだ!? 俺は練習の傍ら、どうにかして遼河に会おうといろんな所で遼河についての情報がないか聞き込みをした。そして聞き込みを始めて1ヶ月、ひとつの情報を得た。たまたま同じジムの仲間の試合を見に来ていた時だ。 「太陽さんですよね?あのローキックがすごい藤森太陽さんですよね?」 「あぁ、はい」 「うわぁっ!すげぇ!あ、握手、写真もいいですか?」 「いいですよ」 大学生ぐらいの男か、俺はファンを大切にする性分なので普段の大人し目の性格と強張った顔のせいでふてこく見えるかも知れないが、快く対応する。 「あ、ありがとうございます!やっぱ太陽さんカッコイイ!男の俺でも惚れます!遼河さんは残念でしたけど、頑張ってください!」 「あぁ、ありがとう」 まさかここで遼河の名前が出るとは思わず、苦い表情になってしまう。まぁファンの間では俺と遼河が仲がいいのは有名な話だしな。そう思っていると、ふと大学生の青年はボソッと呟く。 「まぁ遼河さんも元気そうだったし…大丈夫か」 俺はその呟きを見逃さなかった。 「ど、どういう事だ!?遼河に会ったのか?」 青年の言葉に俺は思わず腕を強く掴んでしまう。 「えっ!?えっ!?急にどうしたんですか?」 爽やかに整った顔を持つ青年の意外と太い腕に一瞬驚きながらも俺はすぐに手を離す。 「悪い。それより遼河に会ったのか?」 「え、はい。先週…」 「どこでっ!?」 やっとの手がかりに声がでかくなってしまう。 「XX町で…、今日みたいに写真撮ってもらいました…」 「見せてもらっていいか?」 「はい…」 見せてもらった写真には笑顔で青年と肩を組む遼河が写っていた。 「今どこにいるとか聞いてないか?」 「それは聞いてないですけど、建物の中に入っていくのは見ましたよ。建物の名前までは覚えてないですけど。多分ここだと思います」 青年は親切にスマホの地図アプリで場所を教えてくれた。 「ありがとう!」 俺は青年にお礼を言うと、すぐにXX町へと向かった。 そして今、俺は青年に教えてもらった建物の前に来ている。住宅街から少し離れた孤立した位置にポツンとある建物。白くどこにでもありそうな外装なので、町には馴染んでいた。3階建ての建物はそれなりに敷地面積は広く、一周して様子を見るのに少し時間がかかったぐらいだ。 日が沈みかける時間、ここが会社ならまだ人がいるはずだ。俺は一息置いて、門扉にあるインタホーンを押した。 しばらく待つがインターホンからは応答がない。もう一度押そうとした時、門扉がスライドし始める。入って来いと言う事なのだろうか。俺は少しビビりながら敷地内へと足を踏み入れた。建物内に入ると、エントランスには黒スーツを着た男がいた。スーツの上からでも分かる筋肉量、格闘技をしている者なら分かる独特の殺気が伝わって来る。目がつり上がる強面の男は、警戒する俺を気にする事なく嫌らしい笑顔で口を開く。 「ようこそ、藤森太陽だな?」 「俺の名前をどうして?」 「お前は有名人だからな」 「それはどうも。なら、ここに俺が来た意味も分かってるよな?」 「あぁ、ついて来い」 俺は頷いて男の背中についていき、エレベーター乗る。 「ここはどういった場所なんだ?」 「それも含めてヤツが説明してくれるさ」 ヤツ?男の言葉に疑問を投げかけようとするも、すぐにエレベーターが到着した。そこは地下3階。殺風景な廊下しばらく歩いて辿り着いた先、一気に天井が高くなる。プロのスポーツ選手が試合するような大きな体育館がそこにはあった。驚きに周囲を見渡すとすぐに中央に置かれたリングに気づく。そしてそこには、俺が探していた人物が立っていた。 「遼河!!」 「おう!太陽!」 リングの上から手を上げて笑顔を見せるその表情は前と変わらなかったが、遼河の姿に俺は驚く。上半身はスポーツボレロだけを身につけ、下半身は紐パンのような布が少ないものでしか股間を覆っていない。そしてブーツも太ももまであるロングのものだ。まるで変態悪役プロレスラーのような格好だ。さらに1ヶ月前よりも見て分かるほど筋肉量も増えている。その筋肉がますますプロレスラーとしての見た目に箔をかけている。鮮やかな青で統一していた遼河の試合着とは掛け離れたものだった。 「お前…なんだよその格好は!」 「なんだよってこれが今の俺の戦闘スタイルさ」 何でもないように答える遼河に俺は更に声を上げる。 「お前っ、急に連絡もなく引退してっ、しかも急に姿も消すし…それにその格好!説明しろっ!」 「あぁもちろん説明してやるさ」 遼河はリングの上から俺を見下ろし、卑下な表情を浮かべ説明を始める。 「まぁ説明と言ってもすぐに終わるんだげけどな。引退したのも消えたのも俺がマスターの奴隷になったからだよ」 「…っは?」 突然の“奴隷”という単語に思わず声が溢れる。遼河は俺のキョトンとした反応に触れる事なく話を続ける。 「マスターの元で働くとなると試合や練習の時間なんて取れないし、奉仕もできないじゃん。だから消えた。俺の全部をマスターに捧げる為に。以上」 「い、いや待て、以上って、訳が分からない。そもそも何でお前は奴隷なんだよ」 「マスターに選んで頂いたからだ。マスターの奴隷に選ばれる事は名誉な事なんだぞ。まあ太陽も今から分かるさ」 「なんだよ…全然わかんねぇよ…」 「とりあえず太陽、お前は今から俺と試合をしてもらう。勝利条件は相手が気絶か降参するまで。武器はナシ。まあ勝利条件以外はいつもやってる総合格闘技といっしょだ」 「じゃあこっちに来い。着替えは用意している」 遼河の説明が終わると、すぐに俺をここまで案内した男が声をかけて来る。 「おい、俺はやるなんて一言も…」 俺が男を睨みつけて反論しようとすると、遼河の声ですぐに遮られた。 「太陽が勝てば俺は奴隷のお役御免で解放されるそうだ」 その言葉に遼河を睨むと、イヤらしく口端をつり上げ俺を見下げる遼河は続ける。 「だが、俺に負ければ太陽もマスターの奴隷となってもらう」 「なんだと…何で俺がお前の為に人生を賭けなきゃいけないんだよ!」 「まあそうだよな、俺の為にそこまでしてくれないか。この条件で通るとは思ってないよ」 「ここまで乗り込んだだけでも十分だろ」 「それもそうだな、太陽ありがとな。お前の親友でよかったよ」 「今さら…」 「でだ、お前が勝てば俺の解放プラス勝利マネー1億だ」 「なっ…!!」 「負ければ奴隷になれとまでは言わない、ただマスターに会ってもらう。そこで話して、太陽自身に奴隷になるか選択してもらう。どうだ?だいぶ譲歩しただろ?」 どうだと言わんばかりのドヤ顔を見せる遼河。俺はふと人の気配が増えたのを感じて後ろを振り向く。するといつの間にか俺が入って来た廊下の出入り口を、別のスーツを着た男二人が門番のように立っていた。 「拒否権はないってか?」 「だいぶ譲歩はしてるんだ。受けてもらわないと困る。それに折角来たんだし楽しもうぜ」 「くっ…」 「じゃあ、今度こそこっちで着替えてもらうぜ」 俺は黙って男が案内する更衣室へと向かった。 「全部きちんと揃ってやがる…」 更衣室には俺が普段試合で使用しているグローブに赤のスパッツと短パン、ファウルカップにアンクル型のサポーターが置いてあった。この準備のよさに俺は手のひらで転がされていたのだと悟る。 「あいつらの思い通りになってたまるか。太陽をぶっ飛ばしてマスターとか言う奴も1発殴ってやる」 俺は赤いグローブを装着して、気合いをいれ更衣室を出た。 「やっと来たか。ヨシッ!やろうぜ!」 リングに上がると遼河は拳を合わせて気合い十分な様子だった。俺もやる気はもう満々なのだが、リング上に足りないものがある。 「ああ。だが、レフリーはどこだ?」 「レフリーなんていないぜ。だって負けを認めるか相手を戦闘不能にするまで続けるんだから要らないだろ?」 「もう好きにしろ」 「へへっ、じゃあ試合開始だ!」 俺が半ば諦めて返事をすると、遼河はすぐに試合開始の合図をして勝手に始めだした。遼河はすぐに俺へと接近し、先制のジャブを繰り出す。俺がわずかに体を反らして避けるとすぐに右ストレートが飛んで来る。俺はガードをしてカウンターで遼河の空いた脇腹に攻撃しようと思ったが、 「…っぐ!」 その拳が重かった。以前遼河とスパーリングした時より何倍も強く、ガードをした腕の骨に強く響いた。思った以上に高い攻撃力に怯んでいると、すぐにミドルキックが飛んで来て俺の脇腹がへこむ。食べたものが這い上がって来そうなほど強烈な蹴り。またすぐに俺の目の前に拳が飛んで来るが俺は痛みに耐え、慌てて遼河と距離をとった。 「ハァ…ハァ…ハァ…」 「おい、もう終わりか?」 「お前、1ヶ月前と違いすぎるだろ…」 「当たり前だろ。俺はマスターの奴隷。もうお前に負けるよなヤワな奴じゃないんだ。太陽も早く諦めてマスターのモノになるんだ」 「くそっ…」 「ほら、どんどん行くぞ!」 再び遼河は俺との距離を詰める。間髪入れず拳は飛んで来る。俺はガードすることしか出来ず、体力も腕の耐久力もどんどんと消費されていく。体力が無くなり、遼河のパンチにしか集中出来なくなっていた俺は膝蹴りを腹でもろに食らう。 「がはっ!ぶぅっ!」 そして続けざまに右フックを受けて、俺はついに倒れる。ここまでわずか1分。 「はぁ…はぁ…クソ…クソ…」 遼河は倒れる俺の頭上に立ち唇の端をあげて見下ろす。脳が揺れる中、必死に立ち上がろうとする。だが遼河は俺の背後へと移動して腰を下ろし、首を掴む。そのまま腕を回されて、首を締められる。太い腕で締められる首は今の俺が耐えられる訳もなく、わずかに動く手で遼河の腕を叩いてギブアップするも緩む事はなく俺の意識はすぐに闇へと落ちた。