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シカク
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悪の組織が誕生する瞬間

悪が生まれるのはいつだってふとした些細な事からだ。 誰も気づかず、気づいた時にはその芽はすでに大きくなっていたりする。これは今では世界を脅かすテロ組織とまで言われるようになった俺の話だ。 「好きですっ!付き合ってください!」 「はっ?キモっ」 勇気を出して告白した結果、見事フラれた。 ゲイの自分が優しいと人気が高い倉田先輩に一目惚れして、先輩が卒業する前に気持ちを伝えた結果がコレだ。優しい先輩の事だから同じ男からの告白でも優しく振るか、もしくは奇跡的にOKしてくれるかだと思ったのだが、噂はやっぱり信用するもんじゃない。必死に今まで隠してきたのが水の泡だ。それから俺がゲイと言うことは当然のように広まりいじめられた。友達もいなくなり、残りの学校生活が一気に地獄へと変わった。人生初めての告白。たった一度の失敗で俺は絶望しか感じられなくなった。そんな日々が続いて今日もいじめられた帰り、再び俺に絶望が襲った。ホームレスの男性が誘拐されるのを目撃してしまった。隠れたつもりだったが、犯人は複数人のグループで俺が見ていたことはバレていて一緒に俺も連れ去られてしまった。 意識を落とされ、目覚めると俺は病院によくある医療用のリクライニングチェアに座っていた。もちろん口は塞がれて、首腰手足は固定され動けない状態だ。目を懸命に動かし周りを見渡すとここは手術室のような部屋だった。そして横ではあのホームレスも椅子に固定されていた。だがその姿は血まみれで生きているのか分からない状態だった。それを見た瞬間、一気に恐怖が湧き出してこれが現実だと言うことをひどく理解した。いくら叫ぼうと声は出ず、いくら動こうにも椅子がわずかに動くだけで体力だけが減っていく。涙は溢れ、人生最大だと思っていた絶望感は更に増えていった。疲れて天井をぼーっと眺めていると、扉が開く音が聞こえた。手術着を着た3人が周りを囲む。 「次は若い肉体ですね」 「今までホームレスばかりであきあきしていた」 「まあいなくなっても大した騒ぎにはならないからな」 「不可抗力でこんないい素体が手に入ったそうだ」 「そのおかげで向こうはこの素体の誘拐をバレないようにするのでバタバタしてるよ」 「私たちにとっては歓迎すべきことだがね」 「さてと、君は今から人類進化の糧となってもらうよ。運がよければ君は最高の存在に生まれ変われる。まあその時は組織の駒として働いてもらいたい所だけどね。でも隣の失敗作のように耐えきれず死んでしまうのがほとんどだがね。さあ君はどっちかな?」 どっちかなって…。俺もここまてまか…。もうどうでもいい。好きにすればいい。俺はされるがまま、麻酔を打たれて意識を簡単に手放した。 「…いこうだ!」 「奇跡だ!」 なにやら周りで騒がしい声が聞こえる。目を開けると変わらない天井にまだ終わってなかったと絶望する。 「おおっ!目を覚ましたか!君は新たな存在へと生まれ変わったのだ!」 「君は奇跡だ!私たちが産んだ奇跡だ!」 周りの奴らがワーワーと騒ぐ。そしてベラベラと俺の体がどうなったか勝手に説明していく。 ある程度予想はしていたが俺は改造されたらしい。脳は高度な思考が出来るように弄られ、体は様々な薬と遺伝子の投与。チップやナノマシンも埋め込まれ、これといった拒否反応もなく奇跡の存在が誕生したらしい。1週間もご苦労に改造手術してくれたらしい。ほかにも聞いてる限り俺は人間を辞めた能力が身についている。こんなのいつ死んでもおかしくないだろう。倫理観もすでにおかしくなっているせいか、とりあえずこいつらを始末して脱出しようという考えが浮かぶ。体の関節を外し、拘束具から抜け出そうとしたその時、部屋の扉が乱暴に開けられる。 「動くな!公安警察だ!」 「公安!?どうして!?」 「表の奴らはなにをやってる!」 銃を持った公安の男に3人は慄く。男の指示に武器を持たない3人は素直に従い膝をついて手を上げる。 「サイエンステロ組織ヤーダン、ここまでだな」 「っく、折角の奇跡をここで終わらすなど…」 1人がそう呟くと、そいつは立ち上がり俺の拘束具を外し始める。 「何をしている!」 「ぐあっ…!」 男の行動に公安の男はすぐに射撃して両足を撃ち抜く。それを見た2人も続いて俺に駆け寄り拘束具を外しにかかる。 「ぐっ…!」 「がぁっ…!」 そして両足を撃たれながらも3人の努力実り、俺の拘束は解かれた。 「ハハハっ!やれぇっ!あの男を殺せっ!」 「私たちの奇跡っ!それを今見せてくれっ!」 男たちが喚くが俺は天井を見たまま動かない。何故こいつらの為に俺が人殺しをしなくちゃいけないのだろうか。黙ってれば公安が助けてくれると言うのに。 「おいっ!何故言うことを聞かない!」 「俺たちはお前の生みの親だぞ!」 「殺せっ!さっさと言うことを聞かないか!」 地べたに這いつくばりながら俺を見上げ叫ぶ。なんて惨めなんだろうか。こんなやつらに俺は。自分はただ普通に生きたかった。だがこんな体じゃもう無理だろう。ここで保護された所で体や精神の異変がバレた瞬間に殺されはしないだろうが、危険な存在として監禁や監視されるかも知れない。なら、そう、自分が思うがまま振る舞える環境を作ればいい。そのためなら国や世界なんてどうでもいい。 その前にこの場をどうにかしないと。ちょうどいい人材がいる。改造されて運気まで上がってきたらしい。 俺が立ち上がると命令通り動くと思ったのか男たちから歓喜の笑い声が聞こえる。おめでたいヤツらだ。 「悪いが君もそれ以上動かないでくれ。彼らの話を聞く限り、君は何かしら体を弄られたんだろ?何をするか分からない以上大人しくしていてくれ。被害者である君まで打ちたくはない」 公安の男は俺を見つめ銃を構える。そのまま保護してくれるかと思ったが冷静な正しい判断だ。気に入った。 「そんな、俺はただ助けてほしくて。何日もここに捕まって、やっと助けが来たと思ったのに…」 俺はわざとらしく涙を出して悲しそうな演技をする。 「それはわかっている。すぐに助けるからもう少しだけ我慢してくれ」 「もう我慢出来ないですよ…」 俺は呟くと足に力を入れて公安の男へと急接近する。それに男は驚き反応が遅れ、あらぬ方へ発泡する。俺に当たることはなく銃を弾き落として男の頭を掴んでそのまま床へと叩きつけた。頭を掴んだまま馬乗りになるが流石は公安。意識が飛んでもおかしくないほど叩きつけたのにまだ暴れている。改造されて初めて体を動かしたがきちんと機能しているようで安心した。今度は手に力を入れて電流を流す。男は声を上げて苦しそうに唸る。脳や体を変えてるのだから仕方がない。脳を刺激して神経細胞を犯してその精神を俺の都合のいいように導く。体もいっしょに男の能力が最大限に発揮できるように。さらにダメ押しで俺は男の耳に指を入れる。皮膚と爪の間から糸のような神経を伸ばして男の脳を弄っていく。その間だいだい30秒ぐらいだろうか。男の奴隷化が完了した。俺の下僕第1号だ。俺が男から降りると白目を剥いていた目に黒が戻り起き上がる。そして俺の足元に跪いた。 「気分はどうですか」 「はい、とても清々しい気分です。私を変えてくださりありがとうございます。私、日比谷元樹は貴方に全てを捧げ忠誠を誓います」 先ほどまで険しい顔をして銃を構えていた男は恍惚とした表情で俺に忠誠を誓う。最高の気分だ。 「元樹さんね、これからお願いします」 「はい、もちろんです。それと配下である私に敬称など不要です」 「それもそうで、だな。もう立っていいよ」 「はい。あと貴方の事はなんと呼べば…」 「あぁ…そうだな…じゃあかっこよくマスターとか?」 「かしこまりました。ではマスターと」 ひと段落した所で俺たちがやりとりしている間も後ろで歓喜の声がうるさく聞こえていた方へと意識を向ける。 「素晴らしい!奇跡だ!」 「人間の洗脳をあんなに簡単に!」 「これで世界は私たちのものだ!」 「さあ早くここから脱出しようじゃないか」 俺に何を期待しているのかまったくうんざりする。 「ここに応援はもうくるか?」 「いえ、まだかと。他での制圧が手こずってるようで」 「応援とか大丈夫?」 「大丈夫です。自分も応戦中と報告してますので」 「そうか、とりあえずこの3人始末を…いや、あの2人だけでいいや」 3人の研究者、だがほとんど喋るのは上司らしき2人だ。一際若い男は雑用やらでビクビクしながら2人のサポートをしていて、下っ端も大変だと思っていた。俺の体に何かあった時の為に1人は残しておいた方がいいだろう。上司2人はいらない。ある意味俺を殺そうとした人間だ。下っ端でもここのサポートをしていたんだ。それなりに役には立つだろう。俺の指示を聞いた元樹は銃を構え、2人は急に青ざめて叫び出した。 「どっ、どういう事だっ!」 「俺達はお前の生みの親だぞ!親を殺すのかっ!」 その言葉に思わず鼻で笑ってしまう。 「いや、俺の親はちゃんといるよ。お前らは逆に俺を殺そうとした。それに今まで沢山殺して来てるだろう?殺れ」 俺の合図で元樹は躊躇いなく玉を放つ。それぞれ頭に1発ずつ。無表情で命令通りに。思わずゾクゾクしてしまった。俺の命令で人を殺せるほどの忠誠心が元樹にはある。正真正銘俺の奴隷。改めてその事実に心が踊る。そしてもう1人。そんな奴隷が今から増える。怯えた表情でこちらを見る残る男の元へ行く。撃ち抜かれた足を引きずって、上半身だけで必死に俺から逃げようとするがそれで逃げれるはずもない。 「おっ、俺も殺すのか…??」 「いや、お前はこれから俺の為に働いてもらう。一生かけて償え」 そう言って俺は男の頭を掴んだ。目元は見えないが電流を流す瞬間、殺されない安心感からか男は口元を緩めた。 「あがぁッ!!」 「改造して頂きありがとうございます。そしてマスターに手を掛けた事、誠に申し訳ございませんでした。この償いはこれから一生仕える事でお返しさせて頂きます。マスター命令を」 「まあこれからはここで培った知識を発揮してもらうよ」 「はっ!」 「そういえば名前は?」 「森山唯人と言います」 「唯人ね。よろしく。じゃあ元樹」 「はっ」 「ここにいたのは実験体にされた死体と研究者2人。若い研究者も実験体にされていて死亡した。研究者2人を捕らえようとしたが激しく抵抗した為、仕方なく発砲した。これで誤魔化せそうか?」 「十分かと」 「多分身元不明の死体奥に積み上がってるよね?」 「はい。定期的に処理しますが数体の失敗作がまだあります」 「なら仏さんには申し訳ないけが死体2つを身元が分からないようにして俺たちの変わりにしよう」 『はっ!』 「それが終わったら元樹、俺と唯人を逃がすの手伝ってくれよな」 「もちろんです」 「元樹は公安と俺の下僕との二重生活になるが頑張ってくれよな」 「問題ありません。お任せ下さい」 「じゃあ人が来る前にさっさと済まそうか」 驚くほどスラスラと論理感を無くした作戦が思いつく。冷静にそして迅速に俺は配下2人と共に作戦を実行して、この場から姿を消した。


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