SamSuka
シカク
シカク

fanbox


寄選手 -1-

「クソっ!!どうして勝てないんだっ!」 思わず声を荒らげ、下唇を噛んで拳を握った。みっともなく歪んだ表情を自覚しながらも、怒りを抑えられない。 27歳という若さで強豪校の監督を任せられたが、就任以来思うような結果が出せずにいる。部員たちも全国から集められた身体能力が高い選手ばかりだ。それなのに結果は2年連続地区予選止まり。今年は任期3年目、そして30歳にもなる。結果を出さないとマズイ。かつて常連と言われていた頃の野球部を取り戻してくれと言われていたが、これではむしろ酷くなっている。あと一歩どころか去年も地区予選2回戦敗退だ。どうにかしないといけない。ダメだ、少し頭を冷やそう。ベランダで外の空気を吸い込むと、冷たい風が火照った頬を撫でた。ぼうっと街を眺めていると、額を目掛けて蛭のような虫が飛んできた。 「ぐぎっ…」 急な事に間抜けな声を出してしまったと思った瞬間、俺の意識は暗転した。 クチュ…ゴリ…グチュ…チュ…ブチュ… (なんだっ?頭の中でなんか鳴ってる?) (なかなかイイな、ここは) (なっ!なんだっ!?声が!) (どうも、はじめまして。お邪魔させてもらってるよ) (お邪魔って…) (今オレはお前の脳に直接話しかけてる。つまり頭の中、脳内だ) (えっ!?なっ!?どういう事だっ!?) (さっき入っていっただろ?) (あっ!アレお前かっ!ってか早く出ていけよなんだよ一体!!) (落ち着け、交渉したいんだ。このまま一方的にお前を支配する事も出来るんだぞ) (なっ…、わ、分かった…) (率直に言うと、オレとひとつにならないか?) (ひとつ、に…?) (そう、オレとお前がひとつになる。自我を奪うわけでもなく、残したままオレと混じるんだ。見えてないかもしれないが、オレは外に出ればただの虫みたいな存在だ。だから共有させてくれないか?一方的に支配したんじゃ記憶も何も情報が分からないままお前の体を奪う事になる。オレも今は情報が欲しい。お前にも悪い話じゃないだろ?自我が残ったまま、オレの力が使えるんだ。この世界では考えられない力が手に入るぞ) (何を都合のいいこと…結局はお前と交わるか、体を奪われるか、その二択しかないんだろ??) (確かに、そうなるが、オレにとっても命懸けなんだよ) (なら、お前の力が何か分からないが、俺は勝ちたい…野球部を勝たせたい…俺の望みも叶えろ!) (分かった!安心しろ。さっきも言ったが、お前の自我が無くなるわけではない。オレと交わるんだ。お前の意思で叶えるといいさ。じゃあ…) グチュッ…ブチュッ…ブチュッ…クチュクチュ…グチュ… 統合の作業が終わり、目を開けると、そこには以前と変わらず、無機質に光る街の光景が広がっていた。だが、オレ自身は生まれ変わった。俺はオレと融合して、新たな脳が構築された。細胞と神経が順番に繋がり、肉体が再構築されていく。新しい脳の奥で、二つの記憶が渦を巻く。生まれ変わった。そう確信した。新たな生命体の誕生だ。 「あーなるほど、人間ってのはこういう仕組みか。これならやっていけそうだな」 オレは自分の肉体構造やこの世界の情報を得て、かつての自分がいた惑星と比較する。オレがいた惑星に比べれば、過ごしやすい気候に文明や生命体の力まで、オレにとってはパラダイスだな。命からがら漂流した星がここでホントに良かったぜ。運がいい。さてと、オレがハッピーに過ごしやすい環境を整えないと。それにオレの願いも実現しないとな。生まれ変わった藤宮燈真の人生はこれからだ。 ----------------- 昼休み。急に監督から呼び出しがあった。何の用だろう。今は新入部員も入ったばかりの時期だし、その事で何か話があるのだろうか。 部室のドアを開けると、どこか逞しくなった監督がいた。 「きたか、布施。昼休みに悪いな」 「いえ、昼休みにお話って何かあったんですか?」 機嫌が良いのか、最近にはないスッキリとした表情をして監督は俺に近づく。悪い話では無さそうで少し安心した。ここ数年は、強豪校とは言われても地区予選止まりで、春のセンバツもすっかり声がかからなくなっていた。なのでこの時期になると監督の機嫌は悪い傾向にあった。となると、なんの話だろうか?ニヤつく見慣れない監督の口が開く。 「監督として、お前らを勝たせてやれなかったのはオレの力不足だ。だが、これからは違う。オレに従い、そして勝て」 謝罪があったかと思うと次には端的で強気な言葉が出てきた。今日はどうしたんだと言葉に出そうとした時、監督の耳から得体の知れないケーブルのような触手がウネウネと出てきた。 「なっ、なんだっ!」 監督がバケモンになった!そんなもの、映画やアニメの世界でしか見たことない。びっくりしてヤバいと思った時にもう遅かった。1本の触手が俺の体に巻きついてそのまま体が宙に浮く。 「うわぁぁ!」 足をバタバタさせても抜け出そうと足掻いても全然歯が立たない。一体どうなってるんだ!監督を見るとまたあのニヤニヤ顔だ。クソっ! 「だれかっ!助けっうぶッ」 大声を出しても、すぐに追加の触手で口を塞がれてしまう。そして新たにまた2本の触手がウネウネと出てきて、俺の両耳に躊躇いなくそれが突き刺す。 「んグッ!」 その瞬間、視界がグルりと回る。意識がおかしくなる。耳の奥を通り過ぎてそのまま脳みそにいったのか?わかんねぇ。グチュグチュと頭の中で直接音が響く。脳に直接張り付いて何かされてるのは分かる。痛くは無い。むしろマッサージされてるみたいで、気持ちイイ…?ダメだ何も考えられなくなってきた…体も脳も思考も蕩けて、いく…あー、なんかボーッとしてきた?へへっ、わかんねぇ…気持ちィィ…まだぐちゅぐちゅいってる…でもきもちイイからいいや…あれぇ…?またなんか、しょくしゅが…おれのめのまえで… 「ひぐぅっ!」 今度は額にドスンと刺さった また視界がグルンと回る 何か付けられた感覚がする すぐにそれがブチュッと音をたてる 鳴り響いて染みていく オレの神経に直接溶け込んでるのが分かる 無理やりにでも分からされる この気持ちいいのは何か この幸福感を与えてくれるのは誰か この快感を与えてくれるのは誰か それは、 全て監督のおかげ! 主祖様のおかげ! 偉大なる指導者トウマ様! 偉大なる主祖トウマ様!! キモチいぃキモチいぃ♡ これも全部主祖様が与えてくれてる! 脳から神経脊髄全部通って体に染みていく! 全身お湯に浸かってリラックスしてるみたいで気持ちイイ♡ 全身マッサージ受けてるみたいで気持ちイイ♡ 全身犯されてるみたいで気持ちイイ♡ 力が満ちていく! これが人間を超える新たな力! キモチいい♡シアワセだァ♡脳からジュクジュク全部支配されていく♡たまんねぇ♡たまんねぇよっ♡オレは主祖様の下僕っ!コマッ!兵士っ!すっげぇイイ響き♡忠誠誓うのキモチィィ♡チュウセイチュウセイチュウセイ♡ オレの全部全部主祖様のモノだァ"ァ"ァ"ァ"ァ"♡偉大なる主祖様ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"♡


More Creators