【無料記事】色井真夜とじーちゃんの話
Added 2020-11-08 12:01:12 +0000 UTCじーちゃん、つまり色井裂土には夢がありました。
経営している映画館を貸し切り、家族そろって大きなスクリーンを眺めること。
孫である真夜が生まれた時は誰より喜んでいました。
しかし、真夜の両親は育児と仕事の両立に疲弊し、真夜の物心がつく前の時点で育児放棄をします。
そんな無責任な振る舞いを見ていられなくなった裂土は両親から真夜を引き取り、二人暮らしをすることを決めました。両親は何のためらいもなく真夜を我が手から離しました。
実際はここで裂土と真夜の両親はほぼ絶縁状態となり、両親は仕事のため海外へ発ちます。
裂土の夢は儚くも散ることとなりました。
しかし裂土は、真夜に「両親は真夜を捨てて海外に発った」という残酷な真実を伝えることができませんでした。それゆえ、真夜を捨てたという部分は隠し、「お前の両親は仕事で海外にいる」とだけ伝えて育てました。
「夢は見るな、堅実に生きろ」という裂土の口癖は、
・真夜に自分と同じ轍を踏ませたくない
・老い先短い自分に何かあったときに頼れる肉親はいないため、大きな夢は見ないようにしてほしい
という想いから口にしていたものです。
裂土自身も不器用なため、
また両親が帰ってくる微かな希望を捨てきれなかったため、
これ以上に語る言葉がありませんでした。
そして真夜はある時から……獅子流芽城に出会いその志に触れた時から、教師になることを夢見るようになります。
教師になること自体は無謀といえるようなことではありませんし、裂土は自分の存在が真夜の夢の実現のために邪魔になったときは裂土のことを切り捨てるように真夜に言おうと考えていました。
それゆえ裂土は口癖を放つのみで、強く止めることはありませんでした。
上記の内容を、真夜は裂土が倒れた時に病院にいた裂土の友人から初めて聞くことになります。
真夜はそれを聞き、「じーちゃんはリアリストぶって自分に向かって堅実に生きろなどと言っていたのだ」という自分の思い込みと、今まで裂土に対して反発していたことをひどく後悔します。
裂土は病室に来た真夜に向かって、予定通り「俺のことはお前の両親がなんとかする、お前は映画館売っ払って蓄え使ってとっとと自立でもなんでもしろ」と言いますが真実を知った真夜はそれを拒否し、自分の夢ではなく裂土の夢を……家族の結束を叶えるために、裂土の夢が詰まった場所である映画館を残す決断をしました。
なお、両親は裂土が倒れた連絡を受けたにもかかわらず特に何かをするということはありませんでした。
そして時は過ぎ、573へと続くのです。