この蟻が高橋で、こっちの蟻が斎藤で、あいつが照沼で、その蟻が白根。
全員こんがり焼かれながら悶えて死ね。
みたいなこと、放課後よくやってる子供でした。
今は蚊も殺せない、ゴキブリの命すら慈しむ人間になりました。
それまで毎日ヒャッハーって感じで嬉々として焼き殺しまくってたのに、ふと冷静に「虫たちもそれぞれ生きてるんだよな。自分と同じ生命なんだよな。この蟻はわたしを虐めた斎藤でも鈴木でも菅原でもなくて、ただの無関係な蟻で・・・」って考えた途端にピタリと殺せなくなるようなドステレオタイプな人間です。
「パレスチナのテロに家族を殺されたのでパレスチナ人には全員死んでほしいです」
「レイプされたので世の男性全員去勢してほしいです」
「学生時代クラスの女どもにキモがられたせいで女性恐怖症になったし、自分の事しか考えない、平気で人を見下す女共なんて一生男にひれ伏す奴隷扱いでいい。自業自得だざまあみろ」
そんな風に戦争が起こる。
自分に加害したそれと同じ属性を持つ全く別の個体をまるごと同一視して敵と扱って攻撃して、自分以外の誰かを狙った流れ弾で自分も撃ち抜かれて身内もやられて、そうやって戦争は拡大してく。
悲しいね。
戦争は支配者達のマネーゲームでもなければ、軍需産業の巧妙な工作でもなく、人々の心の弱さが起こすんだ。
許せない、許しがたいけど、でも、今目の前で銃を向け合うこいつと、自分を過去に虐げたあいつは違う。
そういう視点すごく大事。
国籍とか所属組織とか性別とか関係なく、人間は全て別の個体だし、属性でくくるなら全ての人が「人類」っていうひとつのくくりなんだから。
属性で攻撃したいなら「人類」である自分や仲間ごと攻撃対象にならなきゃおかしいし、それが嫌なら属性を破棄するしかない。
昔池袋かどっかを歩いてた時、知らない黒人に声をかけられてナチュラルに怖かった。
怖くて何言ってるかよくわかんなかったけど、多分よくない商売に手を貸してくれないかみたいな事だったと思う。
悪い黒人。
いるよやっぱ、当然。
でもハワイに旅行行った時、やっぱり黒人の旅行客が「ほらこれ、あんたの旅行かばん、アンタにはちょっと重いだろ」みたいな感じで笑顔であの荷物レーンから降ろしてくれた。
その時のちょっと演技っぽくかばんをヒョイって軽々持ち上げる仕草とか、そのわりに床に降ろす時は妙に丁寧で、動作と表情の一つ一つに人柄が滲んでた。超紳士。
属性じゃないんだ。
個人。
良い人も悪い人もいる。優しい人もいれば嫌味なやつもいる。
それに、あの時声をかけてきた如何にも悪い顔をした黒人だって、何か事情があって悪いことをしなきゃ生きてけないくらい追い詰められてたのかも。
人の背負う裏の事情なんて分からないからさ。
ただの可能性の話。
蟻を焼くのはもうやめようよ。
そんな事をいくら繰り返したって、黒焦げの死体の山が増えるばかりで、本当の意味で過去の恨みが晴れる日は永遠に来ないし、誰も幸せにならないよ。