Be still...be still....
アオイの回想
あと少しで艀だまりに帰り着く時分になって、内火艇のエンヂン音が近づいてきました。甲板上の兄者達の緊張が伝わってきます。舟縁を叩く符丁でなされる指示にしたがって、舟底の握り手を取り外し、竹筒や予備爆薬と共に海底へと投げ捨てます。海草の茂みに隠れる場所なので、容易に見つかりはしないでしょう。追手の内火艇はもう組舟と並んでしまっています。ナズナが私の手を取り、眼で語ってきました。少しの時間しか潜っていないのに、肺腑の奥からは苦しさが揚がりはじめます。水を蹴る足も重石のよう。私も妹も消耗しきっていますが、何とか切り抜けねば捕らわれた兄達に申し訳が立ちません。ここを離れ、艀だまりの隠れ家の方へと向かいます。