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ねむうさぎ
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『大虎冒険者タイガと淫虐の呪い』プロローグ

──プロローグ。


──ロケーション『タウンプティート・冒険者ギルド』。

「ヨスミ村の魔除け灯の補修、確かに完了したぞ」

 受付の机上へと依頼者からのサイン済み書類を滑らせる冒険者。

「ああ、タイガさん。お疲れ様でした」

 受付の華奢な青年猫獣人が労う。

「本当に助かります。貴方くらいですよ、あんな辺境の村の依頼受けてくれるのは」

 いや、猫青年とてこんな職業に携わる身、決して細くもなんともない。


 無愛想だが少し照れるように頷いた虎獣人の男が大き過ぎるのだ。

「まあ……あの付近は手強いモンスターもいる、修行ついでだ」

 タイガと呼ばれた男はこの街、タウンプティートでも一二を争う凄腕の冒険者。曲がったことが大嫌いな彼は間違った仕事などそれこそ“依頼人を殴ってでも”蹴ってしまうことも。それは目の前の受付猫青年のみならず街の皆の知るところ。加えて色街の規模も大きなこのタウンプティートでありながらも、色事にもかまけず依頼に邁進する姿は人々の憧れ。

 その巨大な全身は頭部と尻尾以外はフルプレートの金属鎧で覆われており、背中の斧と合わせていつからか“銀の斧”という二つ名で呼ばれている。その堀深の強面から、どうしても年上と誤解されやすいがまだ三十路に入りたて、男としても戦士としても絶頂の真っ盛りなのだ。


「それに奇妙な悪魔が出たりもしていたしな」

「悪魔ですか……?」

「いや、もう討伐したので問題はない。恐らくは契約失敗した低級悪魔か何かだろう」

「流石ですね!」

 曇りかけた受付猫青年の顔も、一瞬で明るくなった。

「それで、今日はどんな依頼があるんだ?」

「はいこちらになります──」

 一転、直ぐに日常。冒険者ギルドでは毎日のように行われている依頼の斡旋が始まった。手際良く猫青年が今ある依頼書をタイガへと見せていく。

 まずは『盗賊の捕縛』に始まり『ゴーストハンドの除霊』、『ゴブリン討伐』といった常設のものや『行方不明者の捜索』などなど。どれもこのタウンプティートの腕利冒険者であるタイガが率先するようなものではない、小粒の依頼だ。

「暗黒騎士団の相手やドラゴン退治でなくてすみませんねえ」

 楽しそうに無茶振りをする猫青年に、タイガは分かりやすくむすりと顔を顰めた。

「まあどれも貴方なら楽勝でしょう。ね、“銀の斧”さん」

「任せておけ」

 4枚の依頼書を受け取り、タイガはフルプレートの胸を小さく叩いた。



 そんな時だ、冒険者ギルドの入り口が何やら賑やか。

 見ればベテラン冒険者らしい数名と、若い獅子獣人の剣士が揉めているようだ。汚れた姿と手に持った大きな革袋で依頼帰りだというのは見て取れるが、その騒ぎを見ればことが上手く運ばなかったということも。

 獅子獣人の若者が特に大きな声。

「だーから、ああでもしなきゃ逃がしちまうとこだったろ!」

 このギルドでは名物の、少年剣士レオのわがままっぷり。今回も組んだ冒険者たちと揉め事を起こしており、そのクソガキっぷりを存分に発揮したようだ。

 そこへタイガがのそりと歩みでた。まだ立髪も生えていない頭を、無造作にはたく。これもこのギルドでは名物。

「レオ、また迷惑をかけたんじゃないだろうな」

「いだぁ!?……だってよお!オレの作戦でやってたらもっとうまくいったってのによお」

 一応とレオの話を聞きつつも、冒険者たちの話を総括すればやはり悪いのは前者。それでもタイガは上手くまとめ、レオを嗜めた。

「お前も先輩冒険者の言うことは聞くんだぞ」

「あーんタイガの兄貴大好き!」

 頭ひとつ分は身長差がありながらも飛び跳ね、思い切り抱きつくレオ。

「ッ…!?」

 金属鎧越しだろうと何かゾクリとした暗い感覚がタイガを襲い、どうしても声が低くなってしまう。

「レオ、離れろ」

「お、おう……?」

 奇妙な感情を抱いたのはレオも同じだったようで、自分の両手を不思議そうに見ながら「またなっ」と走って行った。

 嵐のように過ぎ去った後輩冒険者に、タイガは小さなため息ひとつ。



 ギルドから出ようとしたタイガだったが、その手元の依頼書4枚をひょいとひったくられてしまう。油断していたとはいえ、そんな芸当ができるのは相手もかなりの腕利だからということ。

「おうおう、しょっぱい依頼だなタイガ!」

「む……オルドか」

 元より愛想のないタイガだが、特に嫌そうな表情をひとつ。4枚をひったくり返す。

 オルドと呼ばれたのは熊獣人の雄。このタウンプティートでタイガと肩を並べる冒険者の格闘家。年齢も近く、同じく顔付きのせいで年増に見られがちな所は共通。だが諸々からタイガにライバル意識を燃やしているのがこの男。

「お前さんが居ない間に高額依頼はこのワシが頂いたからよ!」

 高らかに依頼書を見せつける。

「新しく見つかった遺跡の隠し通路!あの『神聖官フクシュクの遺産』を見つけられんのはこの街一番の冒険者オルド様しか居ないってな!?」

「そうか、頑張ってな」

「ああ?そんだけかよ、張り合いのない奴」


 せめて少しは悔しがってくれたらと、強者ならでは弛緩からの急変、殺気を飛ばす。

「っ……安い挑発だ、やめておけ」

「確かめたくはねえか?“銀の斧”と“剛腕”のどっちが最強か」

 自分の二つ名を誇らしげに呼び、オルドは周囲のが騒つくのも構わず鋭い視線をタイガへとひた飛ばしている。

「どうせなら獲物を抜いてくれりゃあ、ワシが上だと証明でき──」

 極低速で巨体同士がぶつかる、密着したところでオルドの緊張が一気に解けてしまう。その理由。

「タイガお前、香水でも付けてやがんのか?」

「そんな訳ないだろう」

「まさか誰か抱いてきたのか!」

「節操のないお前じゃないんだオルド」

 この雄熊は冒険者としての稼ぎを殆ど全て娼館で使い果たすことでも有名。だからこそ、清廉潔白なタイガに評判負けしている為、こんな風に突っかかっている面も。そんな彼がタイガから嗅ぎ取ったのは一体何の香りだったのだろうか。

「……良いから、離れてろ」

 少しだけ、タイガが見せたことのないような顔でオルドを跳ね除ける。その内心、先ほどのレオの時以上に何かドキドキとしたものが渦巻いてしまっていたから。



 そうして4つの依頼を引き受けたタイガ。

「『盗賊の捕縛』に『ゴーストハンドの除霊』、『ゴブリン討伐』と『行方不明者の捜索』だったな」

 今日まで無事に冒険者を続けて来れたのも準備の賜物。

「まいどありタイガさん!」

 そうして商店で必要な買い物を済ませた。

 自分の部屋へと戻り、その特徴的なフルプレートをようやく脱ぐ。これは自身を守る盾であると同時に、彼の小さな──ごく小さな秘密を守るものでもあるからだ。

 そして昨日、依頼とは関係なく倒したとある悪魔のことを思い出す。

「あいつは一体何だったんだ……?」

 黒い巨大な球体の姿をした、奇妙な悪魔だった。とびきり強かったわけではないが、倒した後におかしな事象に巻き込まれたのだ。そのせいで今のタイガの見事な腹筋には、妖しい紋様が浮かび上がっているのだ。

「この模様は何か意味があるのか」

 それなりに性的な関心が強ければ、それが『淫紋』に類するものだと分かっただろう。だが生憎、タイガはそちらには疎いせいで気付くことができなかった。

「考えても仕方ない、明日からの依頼に集中しなくては」


 そう、だからこの先──どんな運命が待ち受けているかなど知る由もないのだ。

Comments

コメントありがとうございますッ! 小虎勇者くんの方はまだまだ書き途中、今回はリクエストでえっちなおっきい虎さんのお話。どういたしまして、ゆっくりじっくり楽しんで読んでください〜。

ねむうさぎ

まっ…まさかの子虎冒険者じゃなくて大虎タイガさん! これは全部熟読させてもらいます!ウヒャァァマジで嬉しい!!ねむさんありがとうございます!!

バウ


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