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タップ①〜④

『シソンヌを探して』前編

(コチラのお話の後IFストーリーです。

 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16701551)


Chapter ①『てんしょく』


──ロケーション『王都スティヒロ』。

 巨大な王城を中心に、広がる大都市。高い城壁がそびえ、広大な畑と牧草地が取り囲んでいる。この歴史ある王都こそ、夢見る子供たちにとっては憧れの存在なのだ。


 だからそんな田舎から出てきた少年冒険者パーティは現実と向き合うことになっていた。本当に初心者向けのレッドダンジョン、ブルーダンジョンとをクリアし、彼らが次に向かったのはイ“エロ”ーダンジョン──ではなく“エロ”トラップダンジョンだったから。

 散々な目にあった4人。魔法使いスクー、僧侶ロロ、盗賊のジン。

 そしてリーダーを務める戦士タップが空に向かって叫ぶ。

「オ、オレたちってもしかして才能ないッ!?」

 エロトラップの数々に敗北し、その日は宿で身体と心を休めることに。


 翌日、本当に偶然のタイミングで手紙が届く。それも3通。

 スクーには宮廷魔術師候補生の推薦状、ロロは兼ねてからの願いの神学校の教員に空きができた通知、ジンは実家の道具屋で親父が腰を痛めたという知らせ。

 儚くも4人の冒険は幕を閉じ、各々の道を進むために解散となってしまうパーティ。


「……夢見てた冒険譚みたいには、行かないってかあ」

 宿の外、1人で石階段に腰掛けてぼやくタップ。少年冒険者パーティのリーダーをしていたのはついさっきまで。

 まだ10代中頃の獅子獣人、レオネル族。わんぱくそうな顔立ちに元気の溢れる笑顔が普段。そこそこ鍛えられつつある身体付きに、ようやく僅かに立髪が生えてきた。戦士としても入門的な装備しか持っておらず、この先どうやっていくべきか途方に暮れているのだ。

「でも!オレは1人になったって諦めないぞ!」


 となればもう少しマシな装備を整えようと、武器防具屋へと足を進めるタップ。以前は皆で初心者用の店に行ったのだが、今回は奮発して良い店に来たのだ。握り締めているのは、皆から貰った選別の金貨。

 となれば無駄遣いは出来ないタップだ、気合いの入り様だって違う。入店するなり、大柄な熊獣人の店主に一声。

「おっちゃん!今日はオレを一人前の戦士にしてくれ!」

「おう元気のいいお兄ちゃんじゃねえか、気に入った!」

 持ち前の人懐こさを発揮。他に客も居ないこともあって品定めを手伝って貰えることに。

 店にある戦士用の装備を一通り試していくが、やはり大人用の品が多くどれもピンと来ないのが現状。

「……オレってもしかして戦士の才能もない!?」

 他にも重装──は使いこなせるほどの体格はない。弓やボウガンはどうにも卑怯だと忌避してしまうし、魔法の杖や僧侶のメイスは別れた友人たちを思い出してしまうと散々な結果。

「はぁ〜」

 ガックリと腰を落とし、ふと陳列されていた踊り子用の武器を見つけるタップ。やや長めの短剣で、飾り細工が施されていて実用品とは言い難い雰囲気だ。

「まーったく、こんなチャラチャラした武器で──」

 ぼやきつつもなんとなく握ってみる。

「お……?おお!?」

 すると、意外な程に手に馴染む感覚。タップは表情を一変させて短剣を一閃、ニ閃と試し振りを続けていく。

「はは、たまにあるんだよそういうこと。もしかすると戦士よりも踊り子の才能があるのかもなあ」

 熊店主が言うには、別職の装備を試して“一目惚れ”をして職変更をすることも、ごくたまにあることらしい。


「どれ、物は試しだ」

 店主のどこか楽しそうな声。店の奥から踊り子用の装備一式が入っている木箱を持ってきてくれる。

「おお!」

 目を輝かせるタップだったが、すぐにその顔は若干の引き攣りを見せることに。

 なんといっても『踊り子』という職は基本的には女性がなることが多い。でなくとも中性的な男性向け、だからその装備は女性側に寄せられたデザインになるのが当然というわけで。

「お、おお…………?」

 明らかにテンションが下がるのも仕方ない。特にエロトラップダンジョンでの恥ずかしい記憶──ストリップや卑猥な踊り子衣装を強制されたことを思い出してしまったから。

「い、いや!あんなのとは違ってこれはそういう装備だし!」

 そう自分に言い聞かせ、ここまでしてくれる熊店主の気持ちにも応えようと着替えていくタップ。確かにエロトラップダンジョンで着用したあれら、よりはマシ。とはいえ戦士の装備と比べれば露出の多さは段違いだし、女性味を感じさせるデザインだ。

「う…わ………」

 二の腕と胸元を包むような布地、下半身は辛うじて巻いた腰布で隠れている。あとは防御系魔石の取り付けられた腕輪や装飾品、薄いヴェールがあるのみ。

 何よりタップを赤面させたのは、まるで自分の為にあつらえた様にピッタリと馴染んだ感覚。

「…………マ、マジか」


 これ以上は恥をかきようがないと開き直る。

 故郷の村祭りに来た踊り子の動きを思い出すようにして、真似てみる。

「せ!」

 飾り短剣とヴェールを閃かせ、キレの良い動き。

「はっ!」

 決してエロトラップダンジョンで強制的に踊り子させられた動きの方ではないと意識しながら、優雅さと鋭さを幼い肢体で表現してみせるのだ。

「とうっ!」

 それは初めて踊り子をしたとは思えないほどの舞。

 熊店主は大きな両手をバシバシと叩き合わせ、頷く。

「おお!様になってるじゃないか」

「ほんとか?ほんとにほんとか!?」

「本当だとも!この道三十年のおれが言うんだから間違いない!いいもの見せて貰ったし、安くしとくぜお兄ちゃん」

 貫禄のある熊店主の言葉には、一切の嘘など感じられないもの。皆と別れて少し落ち込んでいたタップの心には染み渡る想いだ。

「男は勢いと根性だ!せっかくの才能、無駄にする手はないぜ」

 そう力説され、タップは考え込む。『男は──』と言われても、自分のこの格好ではまるで説得力はないのではないか。しかし熊店主の言うことは一理あるのも確か。

「うぅ〜…………だ、だよな!よっし!!」

 悩みつつも、こうまで褒められて悪い気はしないタップ。なけなしの大事な金貨で支払いをし、戦士から踊り子への劇的な転職を果たすことになったのだ。


 * * *


Chapter ②『パーティ』


──ロケーション『空骨のダンジョン』。

 初心者向けではあるが、モンスターの少なさからソロ向け。名前の通りスケルトン系が出現し、転職後の肩慣らしや復帰者のリハビリなどにはもってこいとのこと。冗談のようだが、そこかしこに案内看板さえ充実しているほどの手厚さなのだから。


「さってと、オレの実力見せて貰っちゃうぜ」

 一夜漬けのような形になってしまったが、踊り子用の入門書を片手に宿屋で舞の基本形を学んだタップ。

「……その前に下の階から苦情は貰いまくったけどな!」

 ここでその成果を試そうというのだった。

 内部は標準的なダンジョンといった形式の石造り。まばらに散見される積まれた骨の塊。きっと近づくとあれが起き上がって襲いかかってくるというのは、冒険者でなくとも予想がつくというものだ。

 一応と警戒しながらも距離を取り、離れている一体のスケルトンらしきを標的とする。

「まずは自己強化の『白の舞』ッ」

 踊り子の基礎の基礎、独自のステップで自身の肉体を活性化。するりと骨の塊に近づけば、やはりスケルトンが組み上がるように飛び起きて襲いかかってくるのだ。

「からの流れるように、こうやって、こう!」

 手に馴染む飾り短剣はその小ささに見合わず、足腰のリズムを乗せてスケルトンを両断。

「え……わお!」

 内心、支援職だと馬鹿にしていた部分のあったタップ、思わずガッツポーズ。今までよりずっと楽に戦えることに驚き、そして喜んだのだ。

 もしかすれば戦士の時に使っていた剣も仲間たちの手前、見栄を張って大きいのを選んだのがいけなかったとも気付く。身の丈にあった武器の大切さにしみじみと頷き、タップはダンジョンを奥へ奥へと進んでいく。


 装備や属性、何かしらの特性もないスケルトンが弱いのもあってソロでもダンジョン攻略は順調そのもの。調子に乗ってしまうのも、性格と年齢からくるもの。

「も、もしかしてオレ──才能の塊なのでは!?」

 だからスケルトンの群れに囲まれようとも、リズミカルな足捌きはむしろ勢いを増す。

「おお!大部屋といえばこうでなくっちゃな!」

 動きの遅いスケルトンが繰り出す掴みかかりや、自身の大腿骨を振り下ろす攻撃など、今の身軽なタップに当たるはずもない。どこか高揚感を胸に、タップは風のよう。

「いち!にい!のっ……さん!」

 回転の勢いを使っての三連撃にてスケルトンをその数倒す。

「まだまだあ!」

 獲物は幾らでもいる。身体を思い切り動かす気持ち良さに、どうにも酔いしれてしまうタップ。気付けば今度こそただの骨に戻ったスケルトンの残骸が大部屋を埋め尽くしているのだった。


「はっはー!さっすがオレ!」

 悠々と突破し、大部屋の先の何の変哲もない通路を進んでいる、そんな時だ。

 身軽なスキップが石床をおかしな沈ませ方をしてしまう、足元でカチンと何かのスイッチが入るのが聞こえた瞬間だ。

「……へ?」

 次の瞬間には、床が崩落して腰から下が埋まってしまったタップ。石材と重い砂がミックスされているせいか、容易に抜け出せそうにないことは明白。

「や、やばいかも……!」

 くだらない罠にかかり身動きの取れないタップの耳が、微かなスケルトンの足音を捉える。もしかしたら先ほどの大部屋の生き残りが居たのかもしれない。

「こんにゃろーっ!」

 両手を突っ張って這いあがろうとするが、どうにも上手く行きそうにない。

 そんな時だ、背後に大きな気配を感じで無理矢理に振り向くタップ。いつの間にと。

「う、うお!?」

 だが予想に反し、相手もどうやら冒険者らしい。

「きみ、大丈夫か?」

 落ち着いた低音。

「あっ、なんだモンスターかと思ったぜ、助かった〜」

「ならまずは──」

「わ!」

 何をするのかと思ったタップだったが、地面に強い衝撃を感じて驚いてしまう。背後の冒険者が拳で隣接する石床部分を叩き割ったからだ。そちらへ砂が流れていくおかげで何とか脱出に成功するタップ。

 下半身をパタパタとはたきながら振り向くと、そこには。


 冒険者は見事な体躯の黒虎獣人の雄だった。

 20代中頃の精悍な強面、身動きを重視してかやけに軽装。武闘着のようだが黒の金属当てが身体の要所は守り、露出している素肌部分には幾多の傷跡。格闘家か何からしく、拳にはナックルダスターを嵌めており、その太腕を見れば武器など必要ないのではないかという説得力は確かに。

 静かにタップの無事を確認した後、その両手をそっと差し出し──。

「よし。……失礼する」

「うえっ!?」

 タップが変な声をあげてしまうのも仕方ない、何せ不意打ちのようにお姫様抱っこでかかえられてしまったからだ。手のひらの大きさ、腕の太さ、胸板の分厚さ、そして大人の男らしい険しい顔付きにドキリとしてしまうタップ。自分が欲しながらも手に入れられていないそれを羨んでいると思われたくなくて、つい照れ隠しのように怒ってしまうのだ。

「ちょ、降ろせってば!?」

「子供1人では危ないだろう」

 そんな子供1人など軽々と抱え、駆け出す。

「それに──」

 黒虎冒険者は語る。彼の仕事内容というのが、この初心者向けダンジョンの案内看板の補修。場合によっては救助もするというもので、タップを助けたのも当然のことなのだと。

 大事そうに持ち運ばれ、タップはあっという間に王都まで連れ帰らされてしまうのだった。



──ロケーション『冒険者ギルド』。

 後日。

「あーっ!居た!探したんだぞー!?」

 依頼掲示板前にて、その大きな背中を発見して叫んだタップ。不本意とはいえ黒虎冒険者に助けて貰ったお礼をする為。この間は街に放られてすぐに居なくなってしまったから、お礼をし損ねていたのだ。

 それに対し黒虎冒険者は申し訳なさそうに言う。

「……また救助対象が出たら困るだろう、きみみたいな」

「う……それは、その」

「いや、元気そうで何よりだ」

 黒虎冒険者は小さく頷いた。

「おう!って、そうじゃなくて!こないだはありがとな!」

 直ぐに打ち解け、屈託のない笑顔を向けるタップ。

「ああ、どういたしまして」

「で!」

 静かに返事をされるも、タップは二ヘラと年相応の笑みを浮かべて提案をする。人懐こそうに黒虎冒険者の大きな身体の周りを歩き回りながら。

「あんた見たとこソロだろ?腕も……まあオレの次くらいには立ちそうだし、どうだいパーティ組むってのは?」

 指を一本、ピンと立てて何度も頷くタップ。まるで決定事項だと言わんばかりの笑みだ。


 だが黒虎冒険者の方はどこか表情を暗くし、遠くを見るような目で語る。

「確かにソロだが、俺の職はパーティ向けではな──」

 タップとしては「オレみたいな凄腕と組めるチャンスなんて滅多にないぞ」と言わんばかりの得意げな顔。返事など半分も聞かないうちに薄い胸をドンと叩いて何かを納得。全く何も問題ないと押し切るようにはしゃぐのだ。

「お!やっぱりソロだよな!?よし、任せろって!」

 言うが早いか、隣にあった依頼用紙を見もせずに一枚引ったくって走り出す。ギルド受付に「これ!2人で受けるから!」と大声で申し込んでしまうのだ。

「……た、台風みたいな子だな」

 あまりの早業に迷う暇も断る機会も与えられず、黒虎冒険者はその大きな身体から小さなため息を吐くしかないのだった。


 そして2人はまずは仮パーティとして出発することに。城壁の門のところでようやく、タップが思い出したかのように──実際にいま思い出してようやくの自己紹介となったのだ。

「オレは戦士……じゃなくて踊り子のタップ!よろしくな!」

 まだ立髪も生えそろっていないとなれば、どこか猫獣人のような見た目の少年タップ。露出の多い踊り子衣装で手を差し伸べる。

「俺はダンクス。職は狂戦士なんだが──」

 どうにもまだ事態を飲み込みきれていない黒虎冒険者は手を伸ばせずに言い淀んでいる。

「……か、かっこいいな!?」

 そんなことなどお構いなし、タップは勝手にダンクスの右手を掴むと両手でブンブンと振って握手を成立させてしまうのだ。

 太陽のような笑顔に絆されつつも、少し影のあるなんともいえない顔になるダンクス。

「そんなものじゃない」


 とはいえせっかくの空気を悪くするのもと、表情と話題を切り替えてタップを褒める。

「それにしても度胸がある」

「だろ!……って、何が?」

 頷き喜ぶが、タップはただ反射で答えただけ。直ぐに首を傾げてダンクスへと聞いたのだ。

「女の子1人で冒険者なんて、なかなか出来るものじゃないと俺は思う」

「はあ!?オ、オレのどこが女なんだよ!?」

「……え?」

 何せ踊り子という職業柄、装備だってそちらに寄せたもの。タップだって立髪が僅かに生えかけただけの状態だ、雄獅子などとは誇れる姿では決してない。

 とは言えやんちゃな顔付きやわんぱくそうな身体付きは決して女性らしさとは無縁。勝手に勘違いしていたのは、ダンクスが他人の容姿を気にしない朴念仁な所があるからとも。

 心底おどろいた顔で見つめてくるダンクスへ、タップはその怒りを即座に沸騰させて騒ぐのだ。

「〜〜ッ!目え悪いんじゃねえの!?あと頭も!つ、次そんなこと言ったら解散!パーティなんざ解散するからな!分かったか!?」

「…………あ、いや、ああ、本当にすまない」

 そのあまりの剣幕に笑いを堪えつつ、ダンクスはしっかりと大人の態度で謝罪をするのだ。こうして早くも解散の危機が訪れた凸凹パーティだったが、これからどんな冒険を繰り広げることになるのだろうか。それはまだ2人だって知らない。


 * * *


Chapter ③『狂戦士』


 仮としてのパーティながら、2人の相性は抜群。強力な前衛である火力特化のダンクスを、タップが様々な『舞』で支援するというのが基本形。ダンクスの思慮深さや落ち着きを、タップの無鉄砲さと勢いがリードするという、性格上の噛み合わせも良かったのだろう。

 気付けば2人は次々にダンジョンを踏破するという快進撃を見せるまでに。



──ロケーション「真珠のダンジョン」。

 膝下まで水没した洞穴のダンジョンの深部、巨大な二枚貝のボスモンスターと交戦中の2人。その殻の硬さに長期戦を強いられていたが、それも終わりを迎えることとなる。

「そら『火の舞』ッ!ダンクスさん、やっちまえ!」

 舞の効果によって温度のない火の粉が舞い散り、ダンクスの身体を包む。

「ああ任せろ!……ふん!せい!」

 力が漲るのを感じた黒虎の剛腕、左から右へと繋ぐ連撃が巨大貝の真芯を捉えるのだ。左でヒビが入り、右の一撃にて粉砕。ようやく撃破へと漕ぎ着けたのだった。


「いよっしゃー!」

 いそいそとボス貝モンスターから巨大真珠を取り出し、マジックバッグに詰めていくタップ。これがお目当ての品、急いで取り出さないとボスの身体ごとダンジョンへと飲み込まれてしまうから。

「って、悪い悪い」

 そして振り向けば、タップよりもやはりダメージを多く受けているダンクスに気づく。傷の状態にしてはやけに息遣いが荒く、何かを耐えているような様子だ。

 無理させちゃったかなと少し反省し、タップは務めて明るい声をかけるのだ。

「お疲れさんのダンクスさん。ほら座ってろって」

 足場の悪い中、少しはマシなところにダンクスを座らせる。もう慣れたものと『水の舞』を披露。濡れた踊り子衣装が身体に密着してどこか妖しい見た目になりつつも、ダンクスを回復させていくタップなのだ。

「…………。」

 傷が癒えるのを確かめながら、ダンスクはその舞に見惚れていた。元より強面だが、無言でジッと見つめている様子は中々の迫力。

「な、なに見てんだよ!?」

「いや……俺は…その……ありがとう」

 自分でも気付いていなかったダンクスも、少し気まずそうに感謝。

「ど、どういたしまして!!」

 タップはその視線に悪い気はしないながらも、マジマジと見られてしまっては気恥ずかしさを感じずにはいられなかったのだ。


 * * *


──ロケーション『王都スティヒロ』。

 そんな中、どうにも他者からの目が気になり始めてしまうタップ。あのエロトラップダンジョンでの淫らな視線が忘れられず、どうにも踊りの最中にそんな邪な考えが頭をよぎってしまうのだ。一度意識し始めたが最後、せっかく上達してきた舞の中でも下半身が落ち着かなくなってしまうという悪循環に陥っていたのだ。

 冒険者ながらも生真面目な所があるダンクスはまだしも、他の冒険者たちの視線などは明らかに色を含んでタップを見ているもの。時折ほかのパーティと協力したり、ダンジョンなどで通りすがりで見られたりすると、意識せずにいられなくなっているタップなのだ。

 口では「ははは、どうだオレの踊りに見惚れてんな〜?」と茶化してはみるものの、内心ではドキドキと、ゾクゾクしているのはタップの方。


 1人になれるように宿に駆け込んでは、自分の恥ずかしい衝動を抑え込もうと明らかに生地の足りない腰布を両手で押さえるのだ。

「……あ、あっぶねー!さ、流石に勃っちゃうのはマズイってオレ!」

 だからだ。

 路地裏の半地下にある怪しい店で買い物をしてしまうのも。

「毎度あり……」

「か、買っちまった……!こ、これどうやって付けるんだ?」

 またしても宿に駆け込み、それを装備しようと苦戦するタップ。金属製の貞操帯、初めて見る、初めて触るそれはなんだかいけない気持ちを獅子少年に抱かせる。とはいえこうでもしなければ舞の度、それを見られる度に下が反応してしまうからだ。妙な気持ちで勃ってしまうからどうにも上手く装備出来ず、ようやく着けられたのは一度抜いてからというなんとも言えない行為の後だった。


 * * *


──ロケーション『石棺のダンジョン』。

 墓地のような寂れた雰囲気ではあるが、ダンジョン由来で生成されるという石棺はほぼ宝箱の役割を担っており、なかなか美味しいと評判。ただし中級者向けである点と、肝心のダンジョンの生成速度が遅いので入場制限が厳しいという側面も持つ。


 タップはともかくダンクスの名前で入場を許可され、2人は陽光の元から地下へと降りていこうとしている場面。

「ここガイドブックに載ってたダンジョンだぜ?あぁ、オレがここに立ってるなんて信じられない」

 まだまだ夢見るお年頃といった雰囲気、浮かれ気味の様子でタップはそう言った。

「タップ、少しは落ち着かないか」

「わーってるって!今日もサクッと進んでガッツリ稼ごうな、相棒ちゃんっ」

 薄いヴェールをたなびかせ、そんな成りでも悪ガキじみた動きで肘でダンクスをつつくタップ。

「やめろ」

「嬉しいくせに〜」

 次は無言で拳を構えるダンクスに、タップはすかさずステップで距離を取る。

「ダ、ダンクスさんのそれは洒落にならねーから!?」


 そうしてダンジョンの攻略が開始。

 途中までは順調の一言。並み居るアンデット系のモンスターを薙ぎ倒しながら進んでいた。タップは事前に神聖系の舞を覚え、ダンクスは聖水持参と準備も抜かりなかったからだ。次々とゾンビからゴーストなどなどを倒し、進む進む。

 だがどうにも実入がなく、タップの不満が募っていた。

 だから静かな墓所らしき大広間に、ズラリと石棺が並んでいるのを見ればタップのテンションは一気に上がってしまうもの。

「へへへ、待たせたなオレのお宝ちゃん〜」

 周囲にモンスターの気配もないと駆け出し、石棺の蓋を勢いよく開けてしまうのだ。

「ッ、不用心だぞ!?」

「あ!?」

 ダンクスの言葉通りとなってしまう。石棺の中から武装したゾンビウォーリアの一体が錆び付いた剣を突き出してきたから。

「危ない!」

 ダンクスは迷うことなくタップをかばい、その刃を身に受けてしまう。

 タップは突き飛ばされた衝撃で尻もちをつき、見上げるダンクスが負傷してしまった現実に深い後悔を。

「そ、んな……ダンクスさん、ごめん……オレ…!」


 しかも周囲の石棺は次々と内部から開き、ゾンビウォーリアの群れが大部屋を満たしていく。

 そんな中でもタップの視線はダンクスから離すことができない。

「ウ…ガァ…………ガッ……グゥウ……」

 致命傷でないにしろ深傷を負ったダンクスの様子が、苦しそうというよりはどこか危険な匂いを放っていたからだ。

「ダンクスさん……?」

 か細い呟き、タップは周囲のモンスターにも、ダンクスにも対処できない。

 そしてダンクスは両腕を戦慄かせ、普段の生真面目そうな顔からは想像もできない真っ赤な瞳で天井へと吠えるのだ。

「──ウォグゥオオオオオォォオッ!!」

 慌てるタップをよそに、ダンクスは負傷から完全に理性を失ってしまう。これこそが彼が常に気にしていた『パーティに向かない』という意味。狂戦士と呼ばれる者の抱える闇の部分、『狂暴化』してしまった姿なのだ。

 タップが尻もち状態で呆然とし、身動き一つ取れないのも幸運だった。常に的確な打撃で敵を倒すダンクスの見たこともない凶暴な姿。圧倒的な暴力、ただひたすらに腕力にものをいわせた力でゾンビウォーリアなどたちどころに殲滅してしまったのだ。

 こうまで暴れ狂うのも、特に今までずっとタップの為に細心の注意を払って我慢をし続けており、積み重ねが限界を超えてしまったのも原因なのかもしれない。


「フーッ……!ガッ……グルゥウ…フーッ!フーゥッ!」

 ボタボタと血を垂らし、荒れ狂う吐息と血走った目で次の敵を求めるダンクス。

 タップはそれでもと駆け寄り、落ち着かせようと声をかける。

「ダンクスさん!もう終わったから!もう大丈夫だから!傷を治さないと!」

「ガウゥッ!」

「あっ……!?」

 動く者は2人しか居なくなった石造りの墓所。手当てをしようとしたタップをダンクスは力付くで押し倒したのだ。ただ充血しただけでなく危険な赤い光を灯した瞳がタップの小さな身体を射抜き、身動き一つ取らせない。

 直ぐに荒々しいキスが降りてくる。

「ンッ…ンムッウ……ンーッ!?」

 組み敷かれ、別人のようになってしまった噛み付くような口付けで乱されていくタップ。

「ンゥウ…ッ………ンクゥウ……!」

 普段のダンクスの落ち着いた様子を知っているからこそ、驚いてしまう。

「ンンッ…ンーッ……ンムッ!」

 この怪我も、この凶暴な様も全ては自分の軽率さが招いたと分かっているからこそタップは抵抗もできないのだ。

「……ッ……ゥ……ゥウッ…………ん、う♡」

 後ろ暗さを感じていたタップだったが、いつしかダンクスの執拗な熱意のキスに体温を上げさせられてしまっていた。腰から下が熱くなり、溶けてしまいそうな感覚。


「ガアッッ!」

 ダンクスの爪が乱暴に踊り子衣装を千切るように剥いていく。初めて晒す胸はまだ薄く、少年とも少女とも取れない未熟さ。

「あ、ダンクスさん、おいってば……んっ、あっ♡」

 だがそこへダンクスの舌が這いずる、マズルがきゅうと甘く吸ってくる。いつも見せていたヘソを舐め上げられ、脇腹や胸を揉まれるだけでタップは声が抑えられなくなってしまうのだ。

「な、んでこんなぁ…んっ……あ……あ♡」

 今になって以前ダンクスが説明しかけていたことを思い出す。

「これ、が、狂暴化ってやつ、なのか……んっ♡」

 どうにか治めてやらないとと思いつつも、自分の身体の熱さえ落ち着かせられないタップ。

「ヤバい、んだってオレ……♡」

 ドクンドクンと心臓がうるさい。貞操帯に押さえつけられている若雄がミチミチと膨張し、恥ずかしい高まりが込み上げてどうしようもないのだ。

 僅かな抵抗さえ溶けて消えたと見たのか、ダンクスはタップをうつ伏せにして背後から襲い掛かる。爪に引っ掛けられ、踊り子衣装である腰布は何の防御力も発揮できずにズリ下ろされてしまうのだ。

「グウウゥゥウ…………!」

「あっ!そ、んなとこぉ…ふ、あっ……ぅ…くぅ…………あ、んんっ♡」

 ダンクスの大きな舌が向かったのはタップの若穴。あのエロトラップダンジョンで様々な経験を経たからこそ、少しは受け入れる準備ができている。恥ずかしい穴を舐め解されながら、タップはこんな状況にさえ興奮を隠しきれなくなっている。


 それでも想うのはダンクスのこと。

「お、お前も辛い、んだよなダンクスさん……ぅ♡」

 きっとこの昂ぶりは暴力か性欲でしか消化できないのだろうと理解する。

「オレのせいで、そんなになっちまったんだから……あっ、ひっ♡」

 荒ぶる相棒にどこか母性的な笑みを浮かべ、身体を委ねるタップ。

「……ふ…あ♡………くぅ、でかい舌ぁ…気持ち、よ過ぎだってぇ……♡」

 自分ばかり気持ち良くなって悪いと思いながらも、ダンクスの舌遣いに腰砕けになっていくのだ。

 しかしその時は来る。ダンクスが唸りながら下半身を脱ぎ払い、あぐらの体勢でタップを正面から抱き抱えて挿入の体位を作ったからだ。密着し過ぎて見えずとも、尻に押し当てられている熱さと太さにタップはドキリとしてしまう程。

「うぁ……♡すげ、ダンクスさんのでっかぁ……♡オレに、興奮してそんなん、なってんのかよぉ……♡」

 辛うじて目を見つめ、理性はないと分かっていてもタップは「お前になら」と視線を送るのだ。

 ドップリと我慢汁を滴らせた亀頭がヌチ、とタップの秘部に食い込んでいく。

「んうっ♡」

「グルルゥウゥゥウウ……!!」

「んあああぁああーーッ♡」

 唸りながらの雄挿入。タップはダンクスに全身を抱え込まれるようにして男根を受け入れ、天井に向かって悲鳴を上げずにはいられない。視界がチカチカと瞬き、衝撃に前後不覚に陥るほど。


「待っ、ヤバいっ♡で、かっ♡あぁあ、ダンクスさんっ♡」

 背中に腕を回して抱き付き、獰猛な息を吐く相棒の名前を呼ぶタップ。返事は暴れるような腰遣いで、ガツガツと貪るように犯されていくだけ。体格からある程度は予想していたとはいえ、その男根の太さは規格外。

「すげ、ちからぁああッ♡無理矢理ぃ、奥ッ♡までぇええーッ♡」

 生理的な涙が溢れるが、必死になって両腕は離さない。

「あっ♡がぁっ♡んくぅっ♡」

 打ち上げられるごとに悲鳴が止まらない。

「ひ、あああぁっ♡ダンクスさん、待ぁっ♡」

 突き上げられるごとに喘ぎが止められない。

「んひゃ♡ああぁっ♡ヤバ、いいぃ♡尻だけで、オレーッ♡」

 ゾクゾクといけない感覚、漏らしてしまうような恥ずかしい衝動が下半身から込み上げてきてしまう。こんなにも男らしい腰の動き、雄の太ましさにやられてしまっているとの証明。貞操帯の中でギチギチに固くなった若雄がヒク付く。

「待て、待てったらああぁ♡オレ、オレェ………んくぅぅう〜〜ッ❤︎」

 きっとダンクスの野生に、その力強さに身体だけでなく心まで組み敷かれてしまったから。タップは呆気なく尻だけで果ててしまい、その度にダンクスの男根を離すまいとギュウとしてしまうのだ。

「イッてる❤︎イッてるからぁああっ❤︎ああ、これ、締め付けちゃうと、デカいのケツで感じちまうってぇぇえ❤︎」

 金属貞操帯の隙間から白い涙を溢しながら、タップは尻だけでは足りないと両腕でもダンクスを離さない。自身が果てるいち脈動ごと、ダンクスの太さを味わってしまい、どうしても声が抑えられないのだ。本当ならば相棒を正気に戻さねばならない立場なのに、乱れ果てるだけでどうすることもできないタップ。


 それでも今のダンクスはお構いなし。

「…グウゥ……!」

 タップを抱き潰さんとする黒い意志は変わらず、小さな相棒の身体に何度だって欲望をぶつけていく。挿入されているのが不思議なほどの太さの熱い肉塊が、ぐっちゃぐっちゃと何度も出入りを繰り返すのだ。

「ガルゥッッ!」

 狂戦士として迸る劣情、燃えたぎる欲望が性欲の吐露となってタップに襲い掛かる。

「ガァ、アアァーッ!」

 爪を立てようが柔らかなタップの腰を掴み、いきり勃つ肉棒を小さな少年の秘部に打ち込む、打ち込んでいく。

「あっ♡あっ♡ダンクスさん、ごめっんんっ♡」

 その謝罪は許しを乞うものではなく、心からダンクスを案じてのもの。

「オレのせいで、こんなぁあッ♡」

 こうも乱暴に抱かれても、どこか気持ち良くなってしまうのは才能か相性か。

「あぁあ♡ダンクスさ、んんっ♡……ヤバいぃ、すげっ……尻、変になっちまうぅ……♡」

 泣きながら名前を呼び、強引だろうともその昂りに付き合おうとするタップなのだ。まだ幼い未成熟な肢体で、この巨漢たるダンクスの肉欲にどこまで追い縋れるだろうか。


「こんなの、知らなぁああ♡あっ、ああっ♡」

 体格も雄の誇らしさも、完全に男として自分の上位存在だと認めるしかない身体の使い方。理性を失おうとも雄の本能がそうさせる腰の打ち付けに、タップは完全に参ってしまうのだ。張り詰めた亀頭に最奥をゴリゴリと抉られ、しなやかな裸体は悩ましげに悶え、雄の力強さを分らせられてしまうのだ。

「グゥ……グウウウ……!」

 ケダモノじみた暴走の交尾が、タップの若い肉体に“犯される側”であることを叩き込んでいくのだから。

「や、あぁああ♡こわい、ってぇ♡」

「ウグゥゥ………!」

「んっんんぅーっ♡…あっ……ダン、クスさんん……ひっ、ああッ♡」

「グガッ……ガッ……!」

 下半身はタップの愛液でしどどに濡れ、ダンクスがひと突きする毎に淫らな水音。タップだって何とか腕を回すも、それ以上にダンクスの獲物を捕まえる爪の力が絶対に離そうとはしないのだ。

「あっ、すげっ…♡あっ……激しッ…腰、奥までぇえ……♡」

 あまりに力強く犯されるせいで、タップは意識を保つのだってやっと。

「ん、くぅううう……こ、のっ…馬鹿野郎ぉおッ❤︎」

 気付けば悪態を吐きながらまたしても吐精。どうやっても理性を取り戻さない相棒と、こんなにも簡単に快楽に耽ってしまう自分自身への叫びなのだ。

「なあぁ…な、んでこんな、すげっ…んだよぉ❤︎あっ、出てるぅ、止めらんな、あぁああっ❤︎」

 ビュクビュクと漏れ出る精。貞操帯の先端の隙間から、涙のように漏れるだけ。まともな勃起も出来ない辛さよりも、射精がもたらす解放感で腰を蕩けさせてしまうタップ。


 それでも、タップは意識よりも両腕をしっかりとダンクスに沿わせる。

「あ、ぐ……ぅう…………♡あっ…あぁ……オレ、ここにいるからっぁああ♡」

 ぎゅううと抱きしめ、額を分厚い胸板にぶつけて声をかけ続ける。

「オレ、使っていいから正気に戻れ、ってぇ♡」

 乱暴に犯されている中でも、精一杯の弱々しい声でも、相棒の名を呼び続けるのだ。

「っ……だいじょぶ、だからぁ……ダンクスさん、平気だっ……ダンクスさぁ、んっ……大丈夫だからぁ♡」

 酷使された秘部がジンジンと痛み、あまりの体格差だからか突き上げごとに内臓がひっくり返ってしまいそう。それでも、慰めるのではなく労わるように。

「ダンクス、オレで気持ち良くなって、いいからぁ♡」

 心を込めて名前を呼ぶ、初めて敬語を投げ捨てて裸の気持ちで最後までダンクスを心配しながら意識を手放してしまうタップなのだった。


 * * *


「おわーっ!?」

 飛び起きたタップ。周りを見回し、ここが自分たちの定宿だと理解。ベッドのすぐ脇にはダンクスが椅子に座って顔を覗き込んでおり、直ぐに頭を深々と下げてくるのだ。

「本当にすまなかった!!」

 何度も謝罪の言葉を繰り返しながら、ダンクスは語っていく。

 以前にもこういった『狂暴化』の衝動に負けてしまったこと。それなりに上手くいっていたパーティから離れざるを得なくなったこと。そして今回は特にタップを気に入ったからこそ、より我慢を重ねたのが酷い暴走へと繋がってしまったこと。

 何より居心地の良さから問題を先送りにしていた自分を恥じ、ダンクスは心の底から申し訳なさそうにタップに謝るのだった。

「やはり俺は周りにいるヒトを傷付けてしまう……」

 言いたくはないのだろうが、言わなくてはいけない言葉をダンクスは絞り出す。

「──パーティを解散しよう」


 目を白黒させ、まだ寝起きの頭のタップでもそれだけはと慌てふためく。

「そ、そんなこと言うなよ!オレが調子に乗ったのに助けてくれたから、だし!」

 自分が上半身裸なのも構わず、両手でダンクスの手を握って力説。

「それにさ!2人でなら何だってできただろオレたち!」

 言葉も理屈も拙い、子供いっぱいの言葉。

「だからさ!オレたちが言うべきなのは『ありがとう』なんじゃないかな!?」

 賢くはないけれど、一生懸命で真っ直ぐな瞳。

 ダンクスはそれを眩しいと思いながらも、決して目を離すことが出来ないでいた。自分の持っていない輝きをそこに見て、温かいと感じたからだ。しばらく考え込んではいたが、心に従ってそのコトバを口にする。

「そうだな……。ありがとう」

「おう、オレこそありがとな!」


 そして次、タップの方もしばらく考え込んでこんなことを言い出す。尻を気にしながら、どうにかこうにか珍しく言葉を選んでいるようだ。

「…………で、ほら。お前ってさ、こう、我慢?してるのが良くなかったんだろ?真面目なとこあるからさ、もう少しこう、オレを頼るべきなんじゃないか?」

 しどろもどろのタップだからこそ、鈍感なダンクスでさえ分かってしまう。

「そ、それって、つまり──」

 気付けば前のめりのダンクス、鼻息も荒いしいつになく目付きに雄を宿している。珍しく年相応の欲望を醸し出すものだから、タップは何もかもを遮るように両手を顔の前で振り回して騒いでしまうのだ。

「あーっ!言うな言うな!近づくな近づくな!恥ずかしいからやめろって、色々思い出しちゃうだろ!?」


 これはつまる所、タップなりに『お互いにそれぞれの事情で“興奮”してしまったのならば鎮め合おう』というような意味。

「か、勘違いするなよ!?支え合うのがパーティだからな!?」

 あくまでそういう体でないと気恥ずかしいのか、そう念を押すタップ。伊達に少年冒険者のリーダーをやってはいなかったので、足並みを揃えさせることはこう見えて得意なのだということだ。

 互いのわだかまりも解消されたと、満面の笑みでタップは右手を差し出す。

「改めてよろしくなダンクス!」

 年上だろうとも、絆を感じ合えば敬語なんて必要ないのだ。呼び捨てでありながらも、さん付けで呼んでいた時よりもより親密。

 だがダンクスは少しだけ変な顔で何かを思い出すような素振り。

「どした?」

「いや、あの時……あまり記憶はないんだが、してる最中、そう呼ばれた時、凄く興奮した……ような覚えがあって……」

「へ、変態!恥ずかしいこと言うなよな!?」


 ガバッとおき上がったせいで掛け布団がずり落ちる。上半身だけかと思いきや、タップの下まで衣服がなかったのだ。でありながらも貞操帯はそのまま。

「って、なんで裸!?」

「わ、悪い」

 介抱してくれたダンクスにそれ以上は言えず、固まるタップ。だがダンクスはようやく聞けると、指をさして尋ねる。

「というか、ソレは一体どういう……?」

 小さく気まずそうに「外し方が分からないからそのままにしたが」と呟きながらだ。

「こ、これは……その、だな…………」

 同じく小さく気まずそうに「お互い様、だよなパーティだし……うん」と呟くタップ。

 バレてしまった貞操帯について語る。

「い、いやオレ……エロトラップダンジョンとかで色々あって……割とその、見られるとあれになっちゃう体質、というか……その、だから……ほら、男なら分かるだろ、踊り子の装備ってあんなんだし……そ、そう!戦いに集中する為だし!」

 あんまりにも必死になって言ったせいか、どう考えても『見られて感じてしまう、気持ち良くなってしまう』としかダンクスには思えない。恥ずかしそうに俯くタップへと、ついダンクスは気の抜けた笑い声で言ってしまう。

「タップも大概では……?」

 もちろん、枕を投げ付けられて怒られたけれど。


 * * *


Chapter ④『旅立ち』


──ロケーション『王都スティヒロ』。

 石棺のダンジョンの一件の後、2人は念のため身体の休養中。

 タップもこのまま我流ではと、冒険者向けの教練場で踊り子の短期指導に励んでいる。

 その間、ダンクスは正式にパーティを組むための申請や、旅立ちの支度をするという流れなのだ。

 今日も定宿を出発する際には一言ずつ。

「夕飯前には帰れると思う。帰ったら飯にでも行こう」

「おう、まったなー」


 そうしてタップは教練所での最終日。最後の教練を受けたのだが、それは予想外なもの。

「ま、まさか踊り子の最終奥義があんなんだったなんてーっ!?」

 数々の初歩的な各種『舞』をしっかり教わったので、どんな技を伝授されるかとワクワクしていただけにその衝撃は大きい。何せ、それは『男を骨抜きにするエロい腰遣い』だとかそういった類のテクニックなのだから。

 考えてみればタップの他の踊り子たちは女性ばかりだったし、そういった意味合いをも持つ職なのだからおかしなことではないのだが、それでも獅子少年には少し過激だったのだ。


 三角形の耳をピンと立たせ、鼻息も荒く、尻尾を振り回しながらタップは定宿に帰ってきた。興奮し過ぎて記憶がかなり曖昧だが、貞操帯を買った店にまた寄ったこと、買い物をしたことだけはしっかり覚えている。逃げ帰るようにしてここまで小走りだったことも。

「……どうすんだよ、コレ!」

 例の怪しい半地下の店で買ったのは太ディルド。緑スライム由来の独特の柔らかさ、硬さ。机に放り、何故か正座して見つめてしまうタップ。

「で、でもダンクスのよりは小さいし……」

 ソワソワと腰が期待してしまう。どうせダンクスも夕方くらいまでは帰ってこない、正午過ぎの今なら時間があると頭で考えてしまっているのだ。

「練習、ってか……ほら、パーティの仲間を受け入れてやる準備って、必要じゃん?」

 誰に言うでもない。間違いなく自分に言い訳するようにタップ。

 踊り子衣装は脱ぎやすくて楽だと、こんな時ばかりはその生地の少なさに感謝。汚れては困ると部屋で1人、素っ裸。久しぶりに貞操帯も外した。

 いつもはダンクスと談笑しているこの場所で、こんな姿を晒していることに早くも興奮。しっとりと筋肉が乗りつつはあるが、しなやから獅子獣人の裸体がソファーにうつ伏せに倒れ込む。


 用意していた潤滑ポーションで指を濡らし、塗り付けるように若穴へと何往復か。

「……んっ…ゆっくり、すればぁ♡」

 ドア方向へ尻を向けた間抜けな体勢だが、既にタップの頭は快楽への期待だけ。

「あ…はは……なんか、楽しいかも……♡」

 エロトラップダンジョンやダンクスとの騒動もあれど、基本的にはスケベな事への興味が尽きない年頃だ。尻で気持ち良くなることが嬉しいことだと身体で理解してしまえば忌避感などある訳もない。

 くぷりと中指を出入りさせ、腰が揺れる、尻尾が揺れる。

「踊り子の柔軟性って、ここにも効いてるの、かもなぁ♡」

 くぷくぷ、尻が嬉しそうに指を受け入れていく。もうそんな細さでは満足できないと、肉穴からの締め付けが要求。小さな声、笑うように呟くのだ。

「あっ…ぅう…………もう、入れちまおっかあ♡」

 胸がドクンとひと鳴りし、若い好奇心が緑色の太ディルドを握りしめる。そっと股下から当てがい、ヒクッと反応してしまう若穴にそうっと。

「ンッ♡ゆ、ゆっくり、ゆっくりならぁあ……♡」

 初めて行う尻穴を用いた自慰。それもこんな大人の玩具まで使うだなんて、1人でいけない階段を急に登っている気がして、タップの声は上擦ってしまっている。

「オレ……恥ずかし、けど…あっ……入ってくるの、これ……好き、かも……ぅう…♡」

 異物が入るというよりも、エッチな行為をしているという興奮が少年の裸体を火照らせていく。誰にも聞かせられないような甲高い声が出てしまうが、構うもんかと口は大きく。

「あ、んんぅ〜ッ♡入ってぇえ──」


 そんな時だ。静かにドアが開き、もう1人のこの部屋の借主であるダンクスが入ってくる。

「早く手続きが終わって助かったよ、古い知り合いが……ッ!知り合いが、その…尻……」

 途中まで朗らかに報告をしていたのだが、ソファーから突き出されたタップの尻を目撃してしまえばそれも途切れてしまうもの。

「な、な、なんでこういう時に帰ってくんだよーッ!?」

 何もかもを見られてしまい、タップの大声は宿を少しだけ揺らした。

「わ、悪い、タップもそういう年頃だったものな……」

「ち、違っ……!?だ、誰の為にやってると思ってんだよ!?」

 言い訳のようなそうでもないような、口から出てしまったタップのその言葉。ダンクスはハッとなって全てを理解する。本人なりに理解してしまうのだ。

「俺の為にここまで……!」

 律儀な性格だからか、タップの善意には応えなければ男ではないとダンクスは胸を張る。

「そうか、自分ばかりが気を使わせるのは悪い」

「へ?」

「任せてくれ、ここは俺が責任を取る」

「え?ええ!?」

 タップはもう何が何だか分からないまま、丸出しの尻、半端に挿入された太ディルドを握り締めたままクエスチョンマークを頭に浮かべてしまうのだった。


 覚悟を決めたダンクスは素早かった。そっとタップを持ち上げ、ソファーに深く腰を下ろすとその小さな身体を抱き抱えたのだ。変わるようにディルドを掴んだのだが、小さな獅子はキャンと鳴いてしまう。

「ンッ♡こ、らぁあ……もっと、優しく、しろってぇ…♡」

「わ、分かった」

 どうにも加減が分からないなりに、ダンクスはそっとタップの身体を抱き留めながら手を動かしていく。柔らかな緑スライムのディルドが抜き差しをする度、タップの身体はぐんにゃりと柔らかさのみを増していく。

 ダンクスの手に翻弄されていくタップは顔を隠してしまっている始末。

「……ん♡…ああ♡……な、なんでこんなことにぃい……♡」

「こうか?」

「……ッ♡あっ、うあ……んっ♡」

「こうしたら気持ちいいか?」

 甘え声しか出ないのだから、今だけは問いかけなどやめて欲しいタップ。たったそれさえ言えず、大きな腕の中で尻をヒク付かせて善がるのが精一杯。言葉など欲しくはない、ただ淫らに昇らせて欲しいだけだ。

「あ、それっ♡……あ…………あっ♡」

「どうしたら良いか教えてくれ」

「…っ♡う、ああぁ……ぁ、んん♡」

「タップ、答えてくれないか?」

 変に真面目なせいで自分がやっているのが言葉責めになっているなど、考えつきもしないのだろう。だからこそタップは三角耳の先端までを真っ赤にして。

「き、聞かなくて、いいからぁ……恥ずい、ってぇ♡」


 ダンクス、分かったと頷くも。

「こんな太いので平気なのか?」

「ッ……あ、うるさいぃっ♡」

 どうしても聞かずにはいられない。

「動かすと身体が震えているが、続けてもいいのか?」

「だ、だいじょぶ、だからぁ…あっ……♡」

 黒虎だってタップの痴態に雄を固くさせているのだが、それなりの理性で労わっている。つもりなのだが逆効果だというのには気付けないのが性格というものだろうか。

「タップの尻、こんなに広がっているぞ?」

「う…くぅ………あっ…あっ♡」

 小さな尻をツンと突き出し、クプクプとディルドを抜き差しされて悶え続けるタップ。だが控え目で心配性な動きでは、届くところにだって届けはしない。ついにはこんな状態であっても声を荒げるタップ。

「も、もう!なんも言うなぁ♡お、お前のせいだろぉ……♡」

「う……それは悪いことをした。だからこそ、こうやって責任を──」

「だったら!」

「……?」

 まだ分からないダンクスへと、タップは少しだけ泣きそうな声。狂暴化の際はそれこそ涙を溢すにまでダンクスに追い詰められたのを味わっているからこそ、今の生殺しのようなプレイでは満足できないのだ。それを言わされてしまうなんてと怒るのだ。


「だったらぁ、黙って気持ちよくしろよ……は、半端にされると、オレ辛いんだってぇ♡」

 ようやく腕の隙間からダンクスの顔を、それはとびきり濡れた上目遣い。

 言葉はいらないと分かり、ダンクスは頷く。黙ったままの2人は戦闘で行うときのように、ただ息を合わせるように心を通じ合わせていく。

「こうか?」

「ん……あ…………んんっ♡」

 子猫のようにタップは大きな太ももに顔を擦り付ける。喉をゴロゴロと鳴らしながら快楽をとっぷりと味わっていく。

「こうだな」

「………っ♡それ、好きぃ♡」

 堪らずジワリと若雄から甘い汁を垂らし、尻の快感に善がるのだ。ダンクスのディルドの抜き差しに腰を追従させ、タップは浅ましく身体をくねらせて。

「あっ……あっ♡ン〜ッ♡」

 ダンクスが力強く手を動かせば、スライムディルドの先端に善がりところを抉られて鳴くタップ。尻尾が滅茶苦茶に暴れ回るが、それは快楽信号に肢体が悶えているからなだけ。

「はーっ……う、あっ♡」

 くたりと脱力していくのは全てをダンクスに委ねているから。


 次第にタップの声、腰が忙しなくなってくる。

「や、ばいぃ♡」

 尻だけでだが、特にダンクスの手に感じ入ってしまっているからだろうか。

「……オレェ……あっ…それ、嬉しっ………♡」

 甲高い声は我慢の二文字を忘れてしまったそれで、ダンクスの太ももにヒクンと若雄を擦り付けるようにして幾多の快楽を味わうのだ。

「あっ……ああっ…あっ、んっ、あああっ♡」

 ダンクスが太ディルドを動かすのに合わせ、淫らな腰振りを披露してしまうタップ。全裸でこんなにも浅ましい姿を晒していても、今はただだた天辺に昇り詰めたいだけ。

「オレ…オレッ…………く、ぅう……ダンクスゥ…ダンクスーッ♡」

 頼れる相棒の片手をギュッと握り、必死にその名前を呼ぶ。気持ち良くて、何もかも委ねて、小さな獅子は子猫の様相で。

「いいぞタップ」

「あっ❤︎あーっ❤︎でるッ❤︎でるぅう〜〜ッ❤︎」

 どこまでも可愛らしく、とっぷりと若汁を迸らせてしまうのだ。ダンクスの服やソファーが汚れるのも構わず、尻穴をズクズクと犯される感覚に酔い痴れながらの恥ずかし射精。いまさら遠慮など考えもせず、タップは年相応のスケベさをダンクスに見せびらかしてしまうのだった。


 翌朝。

 あんなことがあってもタップの元気さは変わらない。今日から王都を出発し、2人だけの冒険譚を紡いでいくことになるのだから。

「さあ!今日からオレたちのパーティが世界に名を轟かすぜ!」

 定宿の少し生臭くなったソファーとも決別し、タップとダンクスの旅路の始まりというわけだ。心機一転、どこまでも行くぞというタップの前向きな表情。

 対して、ダンクスは少しだけ何とも言えない顔。

「な、なんだよ」

「旅立つのにコレは必要ないよな?」

 その手に握られていたのは昨日の緑スライムのディルド。

「え!高かったのに……」

「必要ないよな?」

 若干、嫉妬を匂わせるような作り笑いのダンクス。これにはそんな顔を見たことのないタップもたじろいでしまう。降参だと両手を広げ、諦める。

「わ、わーかったって!」

 せっかくの旅立ちだというのに少しむくれるタップ。

「では今日から頼むぞ、リーダー!」

 そう褒め称えるように呼んだダンクスの反対の手には、タップの名前がリーダーとされているパーティの登録用紙。

「おお!わかってるじゃんか!さあ行くぞダンクスーッ!」

 早速、若きリーダーの扱い方を覚えたダンクスだった。


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