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ねむうさぎ
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小虎勇者アームスと呪いの指輪・プロローグ

<プロローグ>

──ロケーション『緑光の森』。

──街からも近く、出てくるモンスターも大したことがない森。それなりに有用な薬草も採れ、太い街道が貫いてるとあれば人通りも少なくはない。旅人から商人、駆け出し冒険者の往来には事欠かないのだ。


 森の街道を進んでいたオレの耳に、甲高い悲鳴が聞こえてくる。

「きゃーっ!?」

 これは絶対、オレの出番。思い切り駆け出せば尻尾をなびかせてオレの身体はぐいぐい先へ進む。少し先の開けた所、横転した荷車とモンスターの群れが見えてくる。

 背中の愛剣──もちろん『聖剣』を引き抜きざまに植物モンスターの1匹を輪切りにする。貴重なマンドラゴラに擬態する種類、手足の生えた巨大人参みたいな奴らだ。ここらじゃ見ないけど、この手応えのなさならオレの敵じゃない。

「オレに任せな!」

 それが全部であと11匹、荷車を取り囲むように奇声を発しているんだ。庇うようにして荷車の持ち主っぽい人物の前に出るオレなんだけど。

「って、オッサンかよ〜!」

 見れば腰を抜かしたアナグマ種のオッサン商人が「ひ、ひええ」とかって顔でオレを見てる。こういう時って可愛い女の子が助けを求めてるもんだろと思うけど、仕方ねえ。


 飛びかかってきた巨大人参の1匹を乱切りにしつつ、オッサンは荷車の中に隠れてもらう。

「そっから顔出すんじゃねーぞ!!」

 そう言ってる間に、切った数と同じ2匹分の巨大人参が地面から這い出てくるんだ。

「おらおら!このオレが相手になってやるよ!」

 挑発しながらも、さっき飛びかかってきたお陰でオレは分かっちまったんだ。巨大人参の足元には細い根っこみたいなのが伸びていて、それが一方向に伸びてるってことに。ネクロマンサーとか人形使いとか、そういう相手なんだろうなと理解したオレ、根っこの進む方向へ一気に駆け抜ける。

「コッチの方向……!いた!」

 巨大人参のやや小さな奴、足から例の根っこをたくさん伸ばしている。間違いない、こいつが本体だ。オレの姿に慌てたような素振りを見せるけど、もう遅い。

 駆け足のスピードも乗せて切ろうとするけど、巨大人参の全身が魔法的な光に包まれる。刃先が当たるけど、弾かれちまうんだ。

「かってえ……浅いかッ!」

 後ろから12匹の巨大人参が迫るのが分かるけど、そんなのは無視だ。

「まだまだもういっちょ!」

 目を閉じて集中、聖剣を水平に掲げて右手のひらに灯した炎を宿らせていく。ゆっくりと右手を振り抜いたと同時に目をカッと開いて、走り抜けるように両手で燃え上がる聖剣を横なぎにするんだ。

「おっらぁーッ!!」

 上下に真っ二つになる巨大人参の本体。オレの後ろではバタバタと倒れる、操られていた分体たち。

 頭の後ろの方が熱くなったのを実感、これは。


▲レベルアップ!


 また一歩、強くなったのを確かめるオレ。初めて見るモンスターだったけど、きっと経験値が美味かったんだろうな。ってそんなことより、急いで荷車の所までダッシュ。そしたらおっかなびっくりと掛けられる声があるんだ。

「い、いやぁ助かりました。もう駄目かと思いましたよ!」

「おう、いいってことよ!」

 商人のおっちゃんは無事だったみたいで、ひっくり返った荷車からそうっと出てきては周りをキョロキョロ。んで、オレの剣を見て目を輝かせるんだ。

「それ、もしかして聖剣……ですか?間違いない、貴方は勇者様だったんですね!?」

 そうそう、聖剣ってのはなんでか誰しも一目見れば分かっちまうもんだからな。商人なんてしてるなら尚更だよな。

「ふふん、やっぱり隠しきれなかったか」

 だからオレはつい嬉しくって名乗るんだ。

「そう、オレこそ後世で語り継がれることになるであろう勇者アームス様よう!」

 オレはまだ10代の若僧だけど毎日鍛えてるし、これから背だって伸びるし、必ずでっかいトラ獣人の雄になってやるんだからな。装備だってこうして聖剣以外にも、真っ赤なマントに皮のベスト、腰にはしっかり冒険者ツールをぶら下げてんだ。そのうち聖なる鎧だとか、もっと勇者っぽい装備を見つけてやる。

「ああそれはそれは、本当にありがとうございました!」

 腰に両手を当てて格好つけて見せるオレに、オッサンは何度も頷いては感謝してくれた。2人でなんとか横倒しの荷車を起こして、近くの街に。それ以降は何事もなく、無事に到着したんだ。


 別れ際、お礼ということで貰ったのが一枚の古地図。自分のような商人よりも勇者様のお役に立てるのではないか的なことを言ってたので、ありがたく頂戴した。

 お互いに旅の無事を祈りつつ、お別れ。その時に鑑定屋までの道を教えてもらったので、今から楽しみなんだよな。新しくも古くもないレンガ造りの街並みを、ウキウキで進むオレ。街は夜が近いので慌ただしく、こっちまで足早になってしまったんだ。


 もう夕暮れどき、鑑定屋がやってるか微妙だったけど滑り込みセーフ。カビ臭い店にはネズミ種のじーさんが1人。早速と古地図を見せて鑑定してもらうことに。

「らっしゃい……」

「これの鑑定頼む!」

「っ!?こ、これは────」

 やけに芝居かかった反応を見せる鑑定屋のじーさん。なんか客の全員に同じことやってんじゃないだろうなとも思ったけど、とにかく話を聞いてやった。地味に長話になって困ったんだけど、簡単に言えばこれは隠されたダンジョンへの秘密の地図だったらしい。

 さっきまで単なるボロい古地図だったものが、今ではなんか光輝いてるんじゃないかって思えてくるよな。

「へへ、良いもん貰っちまったな〜」

 オレは地図を大事に腰のポーチに仕舞い込む。もう真っ暗になっちまったけど、そんなことも気にならない。宿屋街の方の明かりへと歩いている、そんな時だった。


「ッ……!?」

 本当に微かだったけど、確かに悲鳴のようなのが聞こえた。昼間は商人のオッサンだったけど、今度はもっと可愛いような、多分そういう声だったはず。

「またかよ、待ってな!」

 途切れ途切れの声はどうやら路地裏の方。慌てて駆けつけたオレの目に飛び込んできた光景。

「って、ええっ……!?」

 それは酔っ払った戦士風のトカゲ種の男が、素ッ裸の細い竜族の兄ちゃんとエロいことしてる場面だったんだ。木箱の上で大股開きをしてる白と青のツートンカラーが綺麗な若い竜族、メチャクチャ蕩けた声でトカゲ男のチンポを尻で受け止めてる。

「あんっ、んっ♡もっとぉ♡」

「はっ、とんだビッチだな、オラッ!オラ!」

「ンン〜〜♡ソコォすきぃっ♡」

 トカゲ男の背中越しに、その真っ白な腹の鱗とかその下のピンク色のスリットからスルンってしてる竜族らしいチンポとかが見えちゃって、オレはなんでか目を離せなくなってた。腹になんだろう、淫紋っていうの、そういうのさえ見えた気がしたし。

「……た、助けはいらなそうだな」

 そしたらバッチリ目が合っちゃってさ、その女みたいに綺麗な顔してるのにさ、エッロい調子で声をかけられちまうんだ。

「んっ、そこの君♡ね、ボクとエッチなことしていかない?」

 きっと黙ってれば神官みたいにキリッとした顔なんだろうけど、今は娼婦みたいな流し目と火照った表情をしてるからさ、オレはドキドキさせられちまうんだ。

「だははっ、ガキンチョお誘いされてんぞ〜?童貞捨ててーか〜?」

 けど、そんな気持ちもトカゲ種の男が大笑いしながら振り向いたせいでどっかへ行くことに。同じく水色の竜の兄ちゃんもからかうみたいに腰を振って、聞いてるだけで耳まで赤くなってくるようなエロい水音立ててくるんだ。

「ふ、ふざけんな!」

 オレは何だか分からない怒りに包まれたまま、その場を後にしたんだ。逃げるみたいだったけど、あのままあの細い竜の兄ちゃんを見続けていたらオレはきっと……。


 なんとか安宿を見つけ、硬いけどやっとゆっくりできるベッドに全身を預けるオレ。

「…………は、初めて見ちった……あ、あんな…」

 今日の疲れよりも、あの路地裏でのエロシーンが頭から離れないのが辛い。正直、思い出し勃起のせいでうつ伏せがキツいんだ。だ、だってあんな街中で、普通にエロいことしてるなんて、普通は思わないだろ。

 つい右手が勃っちまったそこに伸びそうになるけど、ギリギリで我慢。

「あ、あんな変態なの、駄目に決まってんだろ……!」


 * * *


──ロケーション『ダンジョン・百指の迷宮』。

──とある山奥、ヒトを拒むかのような深い緑の先にそれはあった。幾重にもかけられた欺瞞と幻惑の魔法は、案内となる地図を持たない者を寄せ付けない。その誰そ知らないダンジョンの奥には、一体どんな宝が眠っているのだろうか。



 オレはその入り口にようやく辿り着いた。道中、地図が勝手に浮かび上がって飛んで行こうとするもんだから、両手で掴んで押さえるの大変だったんだからな。すり減ってるけど石造りの重厚な扉がオレを期待でワクワクさせる。

「ふふん、ここが地図のダンジョンか!」

 でもその扉には取手とかノブはなくて、数字の刻まれた大きなリング状のパーツがどんと嵌め込まれてるだけ。

「な、なるほどな!」

 分からないけど、何とかなるだろ。ようやく落ち着いた地図の端に書いてある、多分暗号みたいなのを扉のリングに試してみる。

「……えと、右に3、左に6、また右に9と」

 ぐるぐる、ぐるぐると回していけば一瞬だけ間。直ぐにゴゴンと地響き。ひとりでに開いていく扉、奥から吹きつけてくる淀んだ空気だって今は嬉しく思えるんだ。

「おお!」

 さあ、ダンジョン攻略だ。


 そう意気込んだのも束の間、ダンジョンの中は碌でもない仕掛けでいっぱいだった。

「くっそーーッ、デカ過ぎだろーがーッ!」

 転がってくる大岩のトラップから逃げながらオレは目一杯に叫んだり。

「あっちいな、何匹いんだよーッ!?」

 ファイアリザードたちの吐き出す火炎に追いかけ回されたり。

「わ、分かんねぇ……!もう目がチカチカして、ダメだぁ〜〜」

 複雑な水晶パズルに1時間かかってしまったり。

「き、気持ち悪ぃ………う、ええぇ……!」

 ヌルヌルした水路に腰まで浸かって進ませられたり。

「……ぜ、絶対に踏まねえように……踏まねえ、ぞ……!?」

 爆発性キノコの群生地をおっかなびっくり進んだり。


 そうしてボス部屋っぽいとこに辿り着けば。風車小屋くらいはあるデッカいゴーレムのお出ましだ。材質が土っぽいから大したことなさそうだって思いはハズレで、よく見ればその全身には。

「コアがパーツごとにある……のか」

 普通はゴーレムは胸か頭にコアが一個。それを壊すなりで倒せるけど、こいつの場合は魔力模様で区切られた部位部位にコアがハマってる。もしかしたらダミーって可能性もあるけど、考えるのはオレの性分じゃねえ。

「ってことは、全部ぶっ壊せば良いだけってことだよな!!」

 地響きみたいな雄叫びを上げる巨大ゴーレムへと、オレは聖剣を構えて突撃するんだ。さあ、これからバラバラにしてやるからな。


 そうして激闘の末、オレはゴーレムの残骸を踏み越えて最深部へと辿り着いた。明らかに今までの古びた石壁とは全然違う、魔法素材の少し発光する壁や床に天井。

「な、なんだこの部屋……」

 ぼんやりとした明かりだけど、これはもう部屋というより広間かも。高い天井、ひんやりと奥まで続く空間を進めば、明らかにお宝の予感がしてくるんだ。だって明らかに壁が光ってるんだ、オレはもう走るのを止められない。

「これって!」

 近づいて分かったのは、壁の金属プレートの一面に色とりどりの指輪が嵌め込まれているってこと。それぞれに赤青黄色に緑に紫に白だ黒、一つだって同じ色の宝石はない。指輪だって透き通るようなクリスタル製から邪悪な黒鉄だのと、造りの意匠も様々。

「これがこのダンジョンのお宝って訳か!えと、なになに〜?」

 オレは今すぐ指輪を片っ端から取りたい気持ちを抑え、金属プレートの目立つところにある注意書きみたいのを見つめる。もちろん古代語なんて読めはしないけど、伝達の魔法がかかっていたらしく、その意味は伝わってくる。


 このダンジョン踏破への褒美として一つだけ指輪を授けるってこと。指輪を取ったら自動的に地上へと転送されるということ。あと注意書きの最後の部分は掠れているせいか、オレには理解できなかったけど、多分大したことじゃないだろ。

「ってと、貰えんのは1個だけか」

 はやる気持ちが抑えられない。100個くらいはある指輪の中から、一個だけを選ぶだなんてオレに出来るかな。

「どれにしよっかなぁ〜」

 両手をワキワキと、心をウキウキとオレは指輪をじっくりと眺めていく。このエメラルドの指輪なんかはきっと風のように早く走れたり、この神聖銀の指輪なんかは光魔法が使えるようになったり、この骨っぽい小さな骸骨の指輪はスケルトンを召喚したり出来るようになるに違いない。

 どれを取ろうか、オレはきっとずっと迷っていたんだ。でもついにその時がやってくる。散々に時間をかけて、心に決めた一つの指輪に手を伸ばす。

「よし、決めた!オレが選んだのは──」

 ソレを金属プレートから取り外し、指に嵌めるとオレは光に包まれて──。


 * * *


◾️ここから先は勇者アームスが装備した指輪ごとの物語。

 様々な指輪にはそれぞれ違った『呪い』が掛けられていて、卑猥なイベントへと勇者アームスを導きます。邪悪な指輪のせいで恥ずかしい運命へと転がり落ちていき、翻弄される勇者アームスのお話をお楽しみください。


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