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雪④

Chapter④『2日目 温泉街』

「今日はこの辺りを回ろう」

 旅館のある東部は古くからの温泉街といった景色が続き、レトロな町歩きを楽しめるだろう。昨日は駅から真っ直ぐに来たため、2人とも散策が待ちきれないのだ。通りに立つ三春は指を空に指して高らかに宣言する。

「はーい!今日は食べ歩きデー!」

「……毎日そうじゃないか?」

「ほら行くよ〜!」

 いつものように秋高はやれやれとその大きな背中を追いかけるのだった。


 そんな2人は温泉街を歩くにはピッタリの仕立ての良い浴衣姿。

 観光案内所の隣にあったレンタル浴衣屋にて、秋高のたっての願いで着替えたのだった。事前に下調べしてあったとのことで、衣装に合うように秋高が褌まで持参していた。着替え室で少し騒いだりもしたが、秋高は白褌、三春は赤褌とおめでたい色取り。

 もちろん外からはそこまで気合を入れているとは分からないが、この町で唯一それを知っていると秋高は優しく語りかける。

「それにしても似合っているよ三春」

「……あ、歩くと食い込んで落ち着かないんデスケド」

「直そうか?」

 いつもの癖で面倒を見ようと思った秋高の指が三春の浴衣裾を摘む。

「ちょっ、捲らない?!」


 などとやはり大通りでだって騒ぎつつ、気を取り直して観光開始。

「今日は僕が散策ルート考えておいたからね!」

 秋高が頷きつつも少しだけ不安な顔をしているのは、「きっと食べたいものいっぱいあるんだろうなあ」という思いから。


 歩けば老舗感を醸し出す土産物店から、美味しそうな食べ物屋などが目に入る。通りの向こうの郵便局やコンビニでさえ景観を壊さないように温泉街風の落ち着いた色合いで仕上げられているのだ。

 どこを見ても風情ある街並みだが、秋高はソレを見つけてしまう。昨日のトラウマが蘇る。観光客が喜ぶのだろうと設置されている顔出しパネルに他ならない。まずいと急遽、三春の気を逸らそうと努力。

「ほ、ほらあっちの方で何か美味しそうなのあるぞ?」

「あーっ!?」

 その声は、指先は間違いなく顔出しパネルを発見したもの。

「駄目だったか……」

「記念に一枚撮ってかなきゃね!」

 ドタドタと駆ける三春に連れられ、秋高は13階段に向かう気持ち。何せその顔出しパネルは浮世絵のような古めかしいタッチで舞妓さんと力士が仰々しいポーズで並んでいるものだったから。

「……なんでこの組み合わせなんだ」

 なんとも嫌な顔をする秋高。だがその程度では三春の眩しさには対抗できない。

「ねえねえ秋高さんどっちにする〜?」

「普通にどっちも嫌なんだけどな」

「もう照れ屋さんなんだから、じゃあ僕がお相撲さんねえ」

 撮るのが確定している三春はそそくさと柔らかほっぺを顔出しパネルへと押し込んでいく。

「この押しが強いのを誰か止めてくれ……」

 泣く泣く舞妓さんの穴部分から顔を出し、会社では好青年で通している顔をくしゃくしゃにしてしまう秋高。

「ほら行くよ〜、さん、にい、いち──どすこい!」

 カシャ。三春の元気の良い声だけが湯けむりの街に響くのだった。


 ようやくと歩き始めれば足元ではカランコロンと下駄の軽快な音。浴衣だけでなくこちらも借りて正解だったと、耳でも町歩きを楽しむ秋高。

 だったのだが、三春はもうそれどころではない。通りには甘い、しょっぱい、香ばしいと様々な『美味しい匂い』が流れているから。町並みのあちこちから小さく拭き出す湯けむりが勝てるはずもない。

「ああ……もう幸せ」

 うっとりと両手を組んで感極まる顔をしている三春、まるで祈りの仕草だ。

「こら三春、立ち止まらない」

「はいもちろん!どんどん食べてきましょ秋高さん!」

「い、いやそういう意味じゃ……」



 まずは最短距離にある温泉まんじゅう屋さんへと。

 腹を空かせた観光客を見逃さないと、羊獣人のおばちゃんが近づく前から声をかけてくる。

「ほいお兄ちゃん、蒸したてだよ!」

「そしたら温泉まんじゅうをよん──」

「…………。」

 三春が注文しようとした時だ、隣から視線を感じたのは。以前の商店街デートとは逆の現象。今度は多く注文しようとする三春を、秋高が咎める構図。

「さ、さん──」

 三春は少しだけ身を縮ませつつも果敢に声を上げた。

「…………。」

 だが隣からは怒らずとも無言の圧力、年上としての貫禄。きっとこれからまだまだ食べるのだから少しにしなさいという、至極真っ当な睨みつけなのだ。

「に、二個お願いしまぁす……」

「あはは、色々食べて思い出作ってね」

 しょんぼりとした様子で1人1個に決定。おばちゃんに大笑いされつつもお店のロゴ入り紙に包まれた温泉まんじゅうを頬張る三春。

「あん……おいし………」

 熱々の生地、ほっこりとした粒餡が口の中を幸せいっぱいにしてくれるのだ。

 それを満足そうに見つめたおばちゃん、大きな浴衣姿の三春を繁々と見つめてからこんなことを聞いてくる。

「それでお兄ちゃんはどこ部屋の子なんだい?試合はまだかい?」

「……ほあ?」

 思考と口の中が温泉まんじゅうでいっぱいの三春の返事は疑問文。ハッと全てを理解した秋高が温泉まんじゅうを持っていない手を焦ったように振って否定。

「あ、ああ!違います違います、お相撲さんではないです」

「なんだいそうかい、あたしゃてっきり」

「……まあ分からないでもないですけど」

 こんな大柄、浴衣姿がどうに入っているとなれば若手の相撲取りに見られても仕方ないからと。現に顔出しパネルでは力士になりきってみせたのもある。

「えへ、えへへ」

 多分、三春は最後までよく分かっていなかったかも。


 歩いていけば数メートルごとに食べ物の誘惑誘惑、また誘惑。

 温泉せんべいだって焼きたてだと呼ばれれば即購入。

「猫舌なんだから焦るなって」

「あっつー!」

「だから言ったろう」

 だとか笑い合い、また少し歩いて唐揚げ棒だとかたこ焼きだののホットスナックにも財布を開けてしまう三春。

「もうこれ温泉関係なくないか?」

「この匂い嗅いじゃったら回避不可能でしょーが〜!?」



 特に湯気の濃い所に近づくと、温泉卵を自作できる設備が見えてくる。

「うお〜!温泉と言えば温泉卵!温泉卵と言えば温泉!」

「お、おう?」

 急にテンションの上がった三春、秋高は一応の生返事。

「卵おなしゃす!!」

 近くの売店で生卵を買い、2人で吹き上がる蒸気に立ち向かうのだ。

「……お店のヒトも引いてたぞ?」

 何せ三春は持ってきていた宿のタオルをねじり鉢巻のように頭に巻いて気合十分な格好だったから。

「秋高さん!僕らの愛の結晶、大事に育てましょうね!?」

「お、おう?」

 だからといって卵1パック分も買うのはどうなんだろうと秋高は言い淀む。勢いに負けて爆買いを止められなかった自分を責める。いや、責めるほどではないかと開き直る秋高だった。

 そうして「ふんふん」と嬉しそうに大量の温泉卵を仕上げていく三春。別に仕上がりは変わらないんじゃないかと放置する秋高を他所に、三春は「これだから素人は」と得意顔で温泉卵をつついて微調整している。


 と、そこへ見知らぬ観光客のカップルがやってくる。三春へとごく自然に注文。

「二つくださーい」

 三春の細い目がより閉じられ、頭の上でクエスチョンマークを出現させる。変な空気が流れているのを察知し、やはりここは秋高が訂正の一声。

「あ、いえ、お店の人じゃないです!?」

「え、ごめんなさいっ」

 慌てて謝ってくるのに、社会人スマイルで対応して秋高は自分たちも使った売店を指さす。

「そっちの売店で買えますよ」

「は、はい」

 そそくさと離れていく観光客カップル。恥ずかしそうに話し合っているのが秋高まで聞こえ、同じく湯気のせいだけでなく頬を赤くしてしまうのだ。

 大きな茶トラ猫だけはポカンとしたまま。

「三春が気合い入れ過ぎてるからだぞ……ああ、恥ずかしかった」

「え、てことは僕らの温泉卵がもうブームに!?」

「違う違う」

 塩をひとつまみ、味は普通に美味しかった。



 そのまたお次は遠くからでも目立つソフトクリーム看板へと、三春が自動的に歩いて行ってのこと。

「しょっぱい物、熱々の物の後にはやっぱり冷たい物!」

「食べたいんだな」

 もうあれこれ言わない秋高、諦めの境地。

 フードトラック風の窓口には黒看板。2人並んでメニューを眺めれば、バニラやチョコ以外にもご当地味として『名物わさびソフト』なんてものが。

「秋高さん!チャレンジャーになろ!?」

「……え?バニラ頼むけど」

「も〜、人生は挑戦の連続よ!?」

「俺は三春の味見するからいいの」

「あ、ずっこい!」

 そうして三春は緑がかったわさびソフト、秋高は無難なバニラソフトを受けとって側のウッドデッキで食べ食べ。なんでも美味しく頂く三春であっても、未知の味には苦戦中。その分厚い舌で辛さと奮闘し、尖った三角耳がピクピクと跳ねてしまっているのだ。

「あ……ほんと……ツーンって、くる……」

「ほら、バニラ少し食べな?」

「あん秋高さん好き……」

 少し涙目になりながら結構な大口で秋高のバニラソフトをガブリ。

 もう慣れっこだと苦笑しながらも、三春のあまり減っていないわさび味に顔を近づける。

「どれ」

 そっと舐め、味わって一言。

「………あー、結構攻めてるな」

 だなんて間接キスだってごく自然。三春はどうせならと大胆に席を秋高へと寄せていく。

「良いこと考えちゃった」

「駄目」

「い、良いこと──」

「駄目だ」

「まだ何も言ってないのに〜」

 その後、態度と密着でキスをねだる三春。流石に往来のある道端でそんなことはしないと大人の対応の秋高。

「人前だろ」

「そんなぁ秋高さんがツーンてしたあ」

 そう、こんなことを言うから余計に断られる三春。

「……ワサビだけに!」



 もはや間食の概念が崩壊しかけた辺りで、追い討ちの昼食タイム。秋高が苦笑いする中、三春はスマホの画面を見せびらかして自慢気に。

「じゃーん!食べ物ログで星4.7の隠れた有名店!」

「隠れてるのか有名なのかどっちなんだ?」

 騒いでおきながら秋高の質問など聞いておらず、老舗な蕎麦屋へと駆けていく三春。大きな水車、よく手入れされたひと抱えもある鉢植えの数々、そして入り口脇にある巨大な狸の信楽焼きが特徴的。悪ガキな顔でニヤッと笑い、狸の置き物と並んで尋ねる。

「ほら秋高さ〜ん、僕とどっちが好きい?」

 デブ──もとい豊満な体型好きをからかう三春。こういうことは鋭いのだ。

 少しだけムッとした秋高と共に入店、三春は甘えた声で忖度する。

「ほらこれ、名物なんだって」

「ああ、わかさぎの天ぷらそばか」

 などと話していれば割烹着姿の店主、壮年のカワウソ獣人が気さくに声をかけてくれる

「すぐそこの湖で獲れたてだよ」

 から始まり「うちの息子夫婦がやってる釣り船で取ったのを持ち込めば揚げてやることもできるよ」と宣伝チックに教えてくれた。

「ああ、昨日アヒルのボート乗りましたよ」

「そうかいありがとねえ、天ぷらサービスしとくよ〜。食うだろにいちゃん?」

「もちろん!」

 三春の体格を見て嬉しそうな店主だった。

 注文を待ちつつも、まだ昨日の脚の疲れが残っているような気がして秋高はぼやく。

「……ボートはもう懲り懲りだ」

「あはは」

 楽しく話していれば待ち時間もあっという間。わかさぎ以外にも季節の山菜天ぷらなどもあり、2人は値段以上に満腹へと誘われた。


 そんな食べ歩きの散歩旅。会社へのお土産を買ったりしつつ、三春の止まらない食欲に秋高は引っ張り回されてばかり。

 なんとか明るいうちに浴衣を返却しに戻り、今日の散策は終了。三春は気にしてなどいないだろうが、秋高は腹の膨れを見てゆったりした浴衣着で助かったと強く思うのだった。


 * * *


 まだ明るい時間のうちに宿、その離れへと帰った2人。

「秋高さんどうしよっか?早めにお風呂入る?」

「少し部屋でゆっくりしようか」

 夕飯までは足とお腹を休めなければと部屋に転がりこむなりのんびりモード。

 まったりし過ぎたせいかもはや寝転がっている三春のだらけ様。秋高はスマホで何か大事なメールが来ていないかと確認してしまう、これはもう癖のようなもの。

「あ!仕事のメールなんてチェックしないー!ほら可愛い僕のことだけ見て見て!」

 どこからともなく三春が取り出したるは、まだ借りっぱなしのジェンガ。

「今日も勝つぞー!」

 だが秋高だって男、こぼれたジェンガの棒を一本拾うと意味深に三春の顎の下をそれで上向かせる。

「三春、思い出したけど貸しがあったよね」

「う……」

「自分から言ったの、まさか忘れていないよな」

 職場の時の真面目な笑みのようだが、目だけは笑っていない。三春が言葉に詰まっているのをいいことに、上からそっとキス。ぺしゃんこな猫科マズルへと優しく優しく。

「キスして欲しかったんだろ?」

 唇を離してそう言った秋高。律儀な性格だから昼間のソフトクリームの件を忘れてはいないということ。こうやって旅行二日目の“上”を獲得したのだった。



 お互いに支度をするのにバタバタしつつも、ただ性欲だけではないもの、恋人との情事に耽るワクワク感だって込み上げてくるのだ。

 昨晩は三春にあれこれと苦言を呈しておきながら、秋高だってアダルトグッズ会社の品を荷物から取り出してみせる。

「あーっ、秋高さんだってこんなに持ち出して〜」

 秋高としてはこれは試作品だから良いのだという理屈。

「昨日はお互い早足だったけど──」

「あ、秋高さんだって喜んでたでしょ〜?」

「ゴホン……今日はじっくり遊ぼうか」

 それら大人のオモチャを両手に握りしめ、三春を静かに見つめて不敵に笑う秋高。

「営業さんにもしっかり自社製品の良さを分かって欲しいなって?」

「ええ〜、そういう言い方ってずるいなあ」

 秋高は「狡くなってからが大人の始まりだよ」だなんて夢のないことを言いつつも、三春の私服を脱がしていく。年上彼氏にとっては浪漫の詰まった三春の下半身の膨らみにばかり視線が注がれる。

「やっぱり褌可愛いね」

 用意しておいて良かったと1人頷きつつ、布越しに匂いをスンスンと嗅いでみせるのだ。

 あぐらをかくように座り込むも、股間は秋高に占領されてしまい困り顔の三春。

「は、恥ずかしいんだけど……」

「わざとだよ」

 今日は自分のターンとばかりに優勢な笑み、秋高は犬科の優秀な嗅覚を存分に使って三春の赤褌から好きな匂いだけを嗅ぎ分けていく。町歩きでしっとりと汗を吸い、むっちりとした股に擦れた赤布。

「……ふぅ…ん……汗と男の子のにおいがする」

「へ、変態……!」


 既に三春が後ろの支度を終えているからか、秋高は遠慮なく赤褌の尻部分をずらして露出させる。とんと押し倒し、もっちりとした臀部の中心、若ピンク色の秘部がキュンと窄まるのが秋高の息遣いを乱すのだ。

 まずは真新しいローションボトルの中身で指を濡らし、そっと労るように指で鳴らし始めてやる秋高。

「ほら三春、力抜いててな?」

「あ……うん…ん………ぁ……指、ぃ……」

 そうして気付く三春、僅かに黄色いローションの独特の香り。

「ッ…この匂いってぇ……」

「新製品のまたたびローション。昨日の仕返し──じゃなくてお返しな?」

 くすくすと笑いつつ、猫科特効のローションでしっとりと尻を仕上げていく秋高。仕事も出来る男は前戯も愛撫も抜かりない。三春の腰も声も蕩けるまで、丹念に指を増やしては可愛がっていくのだから。

「あ……もぉ〜!…う…あ……ぁっ……秋高さんめぇ……」

 グネグネと蠢く指に絆され、気持ち良さに三春の視界がぐらつくほど。

「ほらもっと脚開いて?」

「ん…ふあぁ……ァ………」

 言われるがまま、仰向けの両脚がそっと左右へ。恥ずかしい部分を覗かれ、暴かれて三春の興奮だって上り一辺倒。

「どう?」

 赤褌の前部分は盛り上がり、先端には淫らな染みが広がりつつある。クチュ、と雄穴を鳴らされれば両耳がへたり込む。またたびの匂いに蕩け、尻尾の先端だけがたまにピクと跳ねるだけ。

「にゃ、あぁ……」

 なんとかひと鳴き。厚い胸、まあるい腹を上下させては期待の視線をそっと投げかけるだけの三春なのだ。


「そっか、なら続けるな?」

 そのまま姿勢をうつ伏せ、膝を立てた四つん這いへと変えられる三春。

「おっきなお尻が可愛いよ?」

 肉尻の地平線へと秋高の手が撫で下ろし、優しい中指がヌチヌチと愛撫を施していく。

「腰も声も蕩けちゃってるな?」

 気付けば三春は自分から尻を突き出し、秋高の指を求めていた。尻尾の付け根だってトントンと叩かれれば、太長い虎模様の尻尾がくねくねとしてしまうのだ。

 秋高による甘やかしつつも尻いじめ。三春の細かく吐き出される喘ぎはもう仔猫のようにふにゃふにゃしたもの。

 そんな中、秋高は低い声で話し出す。

「試作品のテストもしないとね?」

 優しそうで朗らかな顔付きのくせ、秋高の手に握られているのはどっしりとした電動エネマグラ。黒い艶々のシリコンボディがなんとも卑猥。三春は秋高の濡れた指と、そのオモチャとを見比べてブルルと震える。

「うぁ……ええ〜…」

「営業の時にちゃんと説明できるようにね?」

 子供をあやすような口調。秋高は続ける。

「それとも、嫌?」

「ちょ、ちょっと楽しそう……」

「なら良かった。ゆっくり入れるから」


 もう一度、目の前の太尻尾の根本をポンポンと叩く秋高。またたびローションをたっぷりと塗った電動エネマグラを三春へとそうっと挿入させていく。

「ん、あぁあんっ……ンッ…」

 ゆっくり、ゆっくり。男性器を模倣してはいない為、フラットな挿入感なのだがそれなりの太さ。三春は布団に爪を立てながらもなんとか咥えこまされた。

「どうかな?」

「ぅ……えと…か、角度がなんか、イイトコ当たって、る感じ、でぇ……」

 ディルドや生とは違い、また独特の圧迫感。飛び出したパーツによって会陰をぐっぐっと押される度、三春の胸には何とも言えない切なさが込み上げているのだ。

 恋人の感じ顔が堪らないと、秋高はその尻を撫でながら尋ねる。

「そうか、もういいかい?」

「ま、まだあぁ、秋高さんまだ、ちょっと待っ──」

「はい、スイッチオン」

 聞いただけ。もうっと可愛いところを見せて欲しいのだから。

「んああ、ああぁ〜……あっ、これぇえ、お腹に響くぅう……!」

「急に可愛い声出ちゃってるな?」

 試作品の中から、わざと1番振動が強いのを持ってきた甲斐があると秋高は小さく笑う。

「う、ああ……お尻、ナカでぇぇええ〜……!?」

 自分で腹を押さえつつ布団に突っ伏して悶える三春。大きな尻が揺れる揺れる。

「ああぁ、秋高さん、これぇえ……これぇ……」

 それでも秋高はエネマグラ底部の電源を止めることなく、三春を妖しく撫で付けるだけ。

「あ、にゃ……う、あ……んにゃあぁああぁ……!」


 だというのに秋高の手にはもう次のオモチャが。

「はい次っ」

「ま、ちょっとぉお!?」

 またしてもひっくり返され、布団に仰向けに寝そべらされる三春。既に息も絶え絶えだっていうのに、自慢気な顔でオモチャを見せびらかす秋高を見上げることしかできないのだ。

 それは乳首を挟むクリップの付いたローター。電動エネマグラと同じシリーズなのか艶のある黒色、小さな電源ユニットがぶら下がっている。

「はい三春、楽しもうな?」

 普段は隠しているむっつりな笑み、秋高は嬉しそうに三春の乳房を揉み解す。やや陥没しかけているその乳首をムチリと摘み上げ、ローターのクリップを取り付けるのだ。

「ふ、あぁあ、待ってったらぁああ〜」

 秋高は待つどころか進むだけ。

「おっきな胸も可愛い」

「んああぁ……その手つき、恥ずかしってぇ……!」

 ローターに片胸を任せつつ、片手で胸を愛撫したり舐めしゃぶったりと刺激を強めるばかり。

「こんな柔らかいんだって知ってるの、俺だけだ」

「ん…あ、バカァ……」

「ここもこんなにツンってさせて、舐めて欲しがってるんだろ?」

「そ、そういう声ぇ、ズルいってぇ〜…!」

 会社の誰も知らないアダルトな低音が三春の耳朶を打つ。ゾクゾクと年上彼氏の魅力にやられながら、舌でねっぷりと、オモチャでじくじくと両胸を感じさせられてしまうのだった。


 となれば三春の声はもうくしゃくしゃ。電動エネマグラだって鈍い音で下半身を虐めているのだから、その雄は触られもしなくたって限界へと突き進んでしまうのだ。

「んなぁあ、もぉおぉ……ワケわかんないってぇえぇ、僕っ…僕ぅ……あ、ダメダメダメェエ〜〜!!」

 尻と乳首だけでイかされてしまうなんて。三春ははしたないメスイキっぷりを秋高に見られているのを恥入りながらも、見守られている安心感も味わっている。ドクンドクン、赤褌をパツパツに押し上げる太ましい雄から溢れていく子種。直ぐに真っ赤な布地から滲むようにして白濁は垂れていってしまうのだ。

 そうなってようやく秋高はオモチャたちのスイッチを止める。

「……は、ぁ…はーぁ……もぉ〜!」

「三春は元気だな」

 肩で息をする三春、柔らかな腹肉がたぷたぷと連動。その真下の膨らみ、赤褌のツンとした天辺の男子汁を秋高は指で絡めて舐め取って微笑む。

「触ってないのに出ちゃったね?」

「だ、誰のせいだと思ってるのさ……!」

「俺がイチから教えてるのもあるけど、若いから覚えが早いんだ」


 元々、初夜の時だって秋高が三春を抱いたのだから。昨日のように押し倒されたのなんて、それこそ最近のこと。今言ったように『覚えが早い』のも考えよう。

「ふーん、会社でも若い子に教える時そう言ってるの知ってるんだからね〜」

「バレた?」

「うん……!」

「妬いてる?」

「ううん!」

 怒った顔、拗ねた顔、コロコロと表情を変えつつも三春は最後には笑って見せるのだ。

 だから秋高だってそれに応えなくてはと張り切るまで。

「じゃあ三春くんは特別もうっと可愛がってあげないとね?」

「え、あ、またぁあぁああ!?」

 したり顔でオモチャたちのスイッチをオンにして、年下彼氏を鳴かせる心の攻めスイッチもオンにした秋高なのだった。三春がにゃあにゃあと騒ぎながらもう一度果てさせられてしまうのにそう時間はかからなかった。


 だらしない裸体をだらしなくおっぴろげ、三春はぐったりと天井を見上げて顔を手で隠している状態。

「もー、ほんとにぃ………」

 オモチャの電源を切りはしたものの、未だに秋高は三春の胸を舐め続けている。しかも悪い大人の顔でにんまりと言い出すこと。

「貸し出しの浴衣で歩いてる時、ずっと上から乳首がチラ見えしてたんだ」

「えぇ?!」

 まったくそんな素振りを見せないのはやはりむっつりな所以か。

「……正直かなり興奮した」

「い、言ってよ秋高さん〜!?」

「まっ昼間からさ、部屋に戻ったら絶対俺のモノにするって考えてた」

 そっと秋高の手が三春の腕を退かし、瞳の奥と奥で見つめ合う。

 きっと誰にも見せない秋高の情熱顔、ふざけた振る舞いの多い三春だって1発でドキンとさせられてしまうのだ。

 更なる追撃。

「こんな俺は嫌?」

「……う、嬉しいけど!」

「な、ならさあ、なら──」

 三春は恥ずかしそうに顔を逸らしながらも大胆に両脚を広げて見せる。仕事道具のオモチャよりも、生の恋人の体温を欲していると。

「う〜……………あ、秋高さんのを……感じたいんだけど…」

「ああ、こちらこそ」


 そうもなれば電動エネマグラもローターもお役御免。

 秋高は三春の身体に無理をさせないよう横向きに寝ころばせ、その片足を胸に抱くようにして座る。室内着の浴衣なんてとっくに脱ぎ捨て、生まれたままの姿で松葉崩しの体位。

「身体どこも柔らかいんだ?」

「こ、これでも可愛い猫ちゃんなので!」

「なら、可愛い可愛いネコちゃんになって貰おうか」

 手早くコンドームを片手で取り付ける、この時ばかりは大きくなくて助かるなと秋高。三春の太ももを抱きながら、秋高はそっと自身を後孔へと押し込んでいく。自分だって待ちきれないのを隠し切れない秋高なのだ。

「う……あ、んんんっ……!」」

 三春の太ももの上に跨る体勢上、その柔らかさだって堪能しながら秋高は腰を動かしていく。サイズは僅かに控え目とはいえ、三春をここまで開発したのは秋高に他ならない。気持ちのいいところは全部知っている。

「あ、ああぁっ……あ、秋高さ、んっ……」

 この先も三春が感じるところをもっと増やしてやりたいのだ。

「これ、あっ……嬉しっ……あっ、あっ…!」

 交わっている時に見せる幼さと、求めるような声と表情が可愛くて仕方ない。

「にゃ、あ、ははっ……あっ、好き、好きっ」

 三春の手が秋高の両太ももをギュッと掴み、いちストロークごとにしがみ付くようになっていく。甘え声が溢れて止まらない。


 秋高の眼下では嬉しそうに喘ぎ泣く年下彼氏の大きな裸体。特にその太々しい雄竿は羨ましいほどだが、それでいてこんなに大きければ感じさせるのだって容易。

「ほらもっと気持ちよくなっていいよ」

 むっくりと扱き上げたり、甘皮の隙間から指を入れてかき混ぜたり。

「全部俺に任せちゃって」

 大きな双球を揉み上げたり、裏筋をこりこりとくすぐってみたり。

「何もかも、ただ俺を感じて」

 仔猫のように高い体温を、雄の突起でじんわりと感じながら秋高は腰を弾ませ続けるのだ。これ以上ないほど身体を密着させ、獣毛の一本の距離も離れてはいたくない。

「……あ、あっぁああ秋高さんっ、秋高さんんっ」

「く……う、三春っ……!お前の中、あったかくて堪らない……!」

 身体の下敷きにされた三春の尻尾が暴れ、フリーな秋高の犬尻尾は景気良く左右に振り散らかされている。必死も必死、互いに手でぎゅうと相手を抱きしめ合いながら頂点へと向かっていくのだ。

「秋高さんに入れられるの、僕も嬉し…からっ……ああ、あぁぅ!」

「俺、身体の全部で三春を感じてるぞ……!」

 2人して閉じた瞼の裏さえチカチカとしてしまう。またたびローションの独特な匂いよりも、今では2人分の汗臭さが寝室を満たしているだろう。

「う、ぁああぁあ、僕っ……僕ぅ……!」

「三春ッ……俺も……!」

 ぱちゅぱちゅと肉と愛液とが弾ける音が続き、訳の分からない叫びと共に気持ちいいものをたっぷりと2人で迸らせるのだ。

「「〜〜〜〜ッ!!」」

 三春はゴムを着けていないままブルンと跳ねては白濁をどっぷりと噴き上げる。竿に負けない双球の中身は若いだけあって勢いも良く自身の首元にまで飛び散ってしまうほど。

 秋高はコンドーム越しであるとはいえ中出し感を味わうように根本まで雄挿入。深々と三春の熱を感じながらマーキングするように精を送り出していく。まだまだ若い子には負けないと、その量は愛情によって加算されたもの。


 まだ日も高いうちから行う情事を終え、2人は締め切った寝室で素っ裸のまま息を切らしあって寝転んでいた。体力を振り絞るような行為になりがちなのは、それだけ互いが好きでたまらないからこそ。

 ただしこういう劣勢では三春の声量は控えめ。

「………………は、恥ずかしかったああ〜」

 自分だってそうだとは言わず、秋高は赤い顔になるのを我慢した、なんともいえない緩い口元ではにかむように告げるのだ。

「お、俺は可愛い三春の顔見れて嬉しかったけどな」

「も、もぉおー、すーぐそうやって僕を惚れさせるんだからぁ」

 このままでは夕飯後にも一戦交えてしまうのではないか、そんな愛々しい雰囲気に包まれる2人なのだった。


 * * *


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