SamSuka
ねむうさぎ
ねむうさぎ

fanbox


春⑥(完)

Chapter⑥『4日目 屋根の下』

「おはよ三春」

 朗らかな朝日の差し込む中、目が覚めた秋高の声。だが返事はない。

「って、これは三春じゃなくて三春のお尻だ」

 まだ眠っているのを確認してそっと頬擦りしつつ、秋高の疑問符。

「……なんでこうなった?」


 このキャンプ場では最後の食事。管理棟で受け取ったおにぎりセットをつまみ、例のマグカップにはインスタント味噌汁。

 三春の胸元にご飯粒がないかを見た後、秋高の予定チェックが始まった。

「今日の予定は『花井山』の方でコテージに泊まるぞ」

 花咲町の四区画のうち最後。

「夜更かしした甲斐があったね」

 コテージの宿泊券があるのは、例のブロック積みのゲームでのフォトコンテストで秋高が特賞を得たからこそ。

「……あんまり記憶はないんだけどな。職場のデスマーチな時と同じかもだ」

 秋高がやや危険な遠い目するので、慌てて褒めて宥める三春。

「いよっ、シゴデキ彼氏の秋高さん!」


 朝食後には名残惜しいもののテントを綺麗に撤去、レンタカーに詰め詰め。

「よし、忘れ物はないな」

「片付けちゃうとなんだか寂しいね」

「何を言っているんだか、またこれば良いだろ?」

「だねっ」

 2人して顔を突き合わせて「ふふふ」と。

「次はキャンピングカーなんかも面白そうじゃない!?」

「確かに」

 頷いた秋高だが、一つ懸念点。

「あ、でも」

「でも?」

「大きいから運転怖いかもなあ」

「それは大丈夫っ」

「なんでだ?」

 やけに意味深な溜めの後、三春が人差し指を立ててのドヤ顔。

「大きいのの相手は慣れてるでしょ!?」

「……確かに」

「確かに、じゃなーい!?」


 * * *


 1番低い所にある駐車場に車を停め、降りれば山間のそこが今日の宿一帯。

 なだらかな丘には桜並木、その道沿いには枝のように小道、それぞれ別れた先にコテージがポツポツと建っているのが見えた。キャンプ場とは違ってどこか落ち着いた雰囲気が2人を待っていた。

 受付では例の『コテージ宿泊券』を出し、鍵を受け取った。


 2人並んで歩いて行けば、程なくして到着。

「お……?」

 秋高が何か既視感をかんじていると、隣で声をあげる三春。

「あーっ、これ僕らこないだ作ったじゃん」

「それでか、覚えてるよ」

 ブロックを積み上げるゲームで2人が仮拠点として運用していた丸太小屋風のログハウスにそっくりだったから。

「……で、秋高さんがチェストだらけにしちゃったんだよね」

「い、いいだろ実用性あって」

「うう……僕が飾った花瓶と本棚を撤去したの忘れないからね」

「悪かったって」


 わいのわいのしつつ鍵をガチャリ。

 外装通りの山小屋風の内装ではあるが、木目カバーのエアコン完備など、現代風アレンジは効いていて快適そのもの。ベッドはロフトにあり、決して広くはないが『丁度いい』という印象だ。

「ふい〜」

 三春は少ない手荷物を皮張りのカウチに放り投げ、早速とくつろぎ始めていた。

「あと注文したのは届いてるのかな」

 冷蔵庫の中身を確認しようとした秋高だったが、気付けば何も言っていないのに三春が隣に。

「うへへ、楽しみだね」

 開ければ中には昼用の洋風弁当、夜用のBBQの材料が。もちろんビールなどもキンキンに冷えており、くつろぎの時間を堪能する準備は万端。

 閉じた途端、お次はと三春の急かす声。

「上も見てみよ〜?」

 ロフトに続く階段梯子、少し急だからと秋高の心配声。

「あー…………登れるか?」

「シ、シツレイな!?この僕はしなやかな猫ちゃんですよ!?」

「しなやか……?」

 怪訝な顔をする秋高の前で、もちもちのお尻を揺らして登っていく三春だった。


「一休みしたらピクニック、お弁当を持って向こうの『恋人桜』を見に行こうか」

 ベッドに腰掛け、地図を確認中の秋高。

 三春は“しなやかに”その膝枕を独占しながらベッドにゴロリン。

「にゃぁあ〜、今日で最終日とか信じたくない〜」

「こら暴れない」

「あぎだがざ〜ん」

 やだやだと騒ぐものだから。

「ほら静かにしてなさい」

 そっと押し倒して軽く跨ってみる秋高。

「まったくうちのお姫様は甘えん坊なんだから」

「お姫様じゃないし〜」

 くすくすと笑い合い、秋高の手が三春のシャツを捲り上げて柔らかなお腹をあらわにする。

「まあこのお腹じゃあガラスの靴は履けそうにはないか」

「ふんだ、どうせ毒リンゴを皿ごと食べちゃうもんね」

「ほら拗ねない」

「なら──」

「なら?」

 くすぐったい視線を絡ませ合い、その一言をいつまでだって待つ。

「最後の日だし、いっぱい甘やかして欲しいな?」

「了解、俺のお姫様」


 特に打ち合わせをしているでもないが、何となくの連れ合い感だけで攻守が決まり、2人はえっちの支度。

 三春はバタバタしながら「お姫様はお花詰んで来るから」と。

 「はいはい」と言いつつローションやゴムなどを用意しておく秋高なのだった。


 まだ昼前、締め切ったカーテンの隙間からは陽光がこんなにも眩しいのに。

「おいで」

「言われなくてもっ」

「うわっ!?お、重いって」

 ベッドどころかロフト自体を揺らし、三春の大きな身体が秋高をぺしゃんこにした。

「誰の愛が重いって〜?」

「こーら、本当に!」

「もぉ〜、分かったってば」

 三春は笑いながらついた膝に体重を逃がしていくが、秋高はその隙を見逃さない。

「ほら油断した」

「ンッ……ァ……」

 太い首に両腕を回し、下からそっとマズルを合わせるようにしてキス。最初こそ探るような口付けだったのも、次第に2人の両耳が垂れてしまうほどの濃厚さに変わっていく。息遣いと舌同士が絡み合う水音、密着しているせいで心臓の音だって伝わり合うもの。

 酸素ではなく相手をたっぷりと摂取したところでようやく一息。

「やっぱりベッドの上が落ち着くな」

「そう〜?」

「三春が乗ってるのは俺だろ」

「特等席なので」

 ニマっと笑い、思い出すように三春のからかい言葉。

「そうは言っても秋高さん、あんな興奮してたクセに〜」

「う……。ほらもう黙って」


 キスの再開。

「あ……もぉ、くすぐったいの好きぃ……」

「くすぐってないだろ〜?」

 額をコツンとぶつけ合い、至近距離から瞳を覗き合う。

「ん、ふふ……あ、はぁ………すーきっ」

「俺もだよ三春」

 だなんてドキドキし合えば、下半身は男子らしく反応してしまうのだって仕方ないこと。お互いの雄の熱いところが服越しに押し当たっている。

「んふ…あ……固いの当たってるんですけど」

「当ててるんだよ」

 今度は秋高がニマと笑い、からかう言葉。

「それに三春も、だろ?」

「僕だって当ててるんですー」

 ふざけ合いながらの脱がしっこ。くすくす笑いが止まらない。

 秋高の「こら」とか「あ、やったな」とか「ほら足曲げて」とかっていう声。

 三春の「もぉー」とか「伸びちゃうってば〜」とか「あはは」なんて声。


 あとはもう生まれたままの姿。柔らかな毛並みを擦り合わせつつ、秋高が三春の上に跨って愛おし気な愛撫を落としている。

「三春の身体はどこも柔らかいんだな……?」

「あ……も、ぁあ…くすぐったい、ってば…ァ……」

「こんなに可愛くって、俺をどうするつもりだ?」

「ぅ…あ……そ、そーゆーの反則でしょ……」

 今日はきちんと大人の色気を全面に押し出し、三春をとろとろに甘やかしていく秋高。触れ方だけでなく視線や仕草のどれをとっても、大事に大事にしているよと伝えていく。

「ほら、身体の力抜いて」

 両手でマッサージでもするように全身を撫で回していく。

「俺の三春、可愛いよ」

 柔らかな胸、たゆんだお腹、太ももだってやけに敏感。

「いつもより熱いのは、照れてるからかな」

 そうっと降りていく秋高の手、三春の股の間へと伸ばされる。

「コッチだって、こんなにトロトロになってる」

 そっと握った年下猫彼氏の若雄、ビクンと跳ねてなんとも嬉しそう。

「ふふ……先走りからめて触るだけですごい反応して」


 三春は熱に浮かされるような表情で秋高を見つめ、上擦った声しか出せなくなっている。

「……も、もぉ…ホント、クラクラさせられちゃうぅー」

 わああと小さな悲鳴を上げ、両手で顔を隠てしまうほど。

「可愛い顔見せて?」

「や、やだぁ……」

「なら、会社の新作で遊んじゃっても文句はないよな?」

 やけにガサゴソと何か袋を漁る音。三春が指の隙間から見たのは、秋高が2人の勤め先のアダルトグッズ社から持ってきたであろう見たことのないオナホール。

「ま、また勝手に持ち出して〜……!」

 それは完全透明で内部のヒダヒダが特徴的、秋高は楽しそうに内部にローションを垂らしながら頷く。

「それじゃ、入れてみよっか」

「僕はいいって言ってな──あ、んんぅう〜ッ!」

 仰向けでピンと勃った無防備な雄部分、腰横に座った秋高がからかうように即挿入したから。

「すご、三春のが大きいからシリコンが破けそうだ。開発部に報告しとこうか?」

「…もぉ、意地悪したら、やだって……!」

「ごめんごめん、きちんと可愛がるから」


 ホールをしっかりと握り締め、秋高は三春のたわわな胸に口付け。乳首を舌先で転がしながらのオナホール責め。楽しむように縦横無尽に動く舌、大人の玩具の動きとも合わせられてより官能的に這い回る。

「三春はこっちまで大粒なんだから」

「ふ、あぁ……もぉ、秋高さんのばかぁ……あッ…うーっ…」

 胸も男子部分も気持ち良くって仕方のない三春。こう来られるとは思ってもみなかったからか、やけに弱々しい反応で感じ入るだけ。

「気持ちい?」

「…あ……これ、やばいってぇ……あ、あ…」

 顔を隠す腕、指がギュッと握り締められる。

「どう?感じてる?」

「あ、甘噛み、それ……やだ…好きぃ……ッ…」

 乳首をやけにイヤらしく責められるものだから、三春の声だってやけに艶かしく。

「えっちな声、漏れてるぞ?」

「だ、だってぇ……あ、秋高さんが、あっ…あっ……」

 上も下も嬉しくて、大好きな相手にふにゃふにゃにされてしまう感覚に溺れていく三春。

「もう出ちゃうかな?足先がギュッてなってるぞ?」

「う、あぁ…あ、わかんないっ……あんんっ、あっ僕、あっ……」

「大丈夫、そのまま気持ち良くなっていいよ」

 宥めるように、しかし秋高の手の動き、舌の動きはそのまま。むしろより扇情的になって三春の快楽を引き出すようにねっぷりと。

「ほら、三春の可愛いところ見せて?」

「〜〜ッ!……もぉ、秋高さんはぁ……すーぐ、そういうことぉお……ンッ…あーっ、出ちゃうっからぁ……!!」

 透明なホールだからこそ、中にどっぷりと吐き出されていく三春の精が丸見え。太ましい雄が脈動して跳ねるたび、その絶頂の雫が溢れ出ていくのがありありと秋高の視線に晒されていった。


「後でレビューを──おっと……お疲れ様、三春」

 まだ上下している三春のお腹をぽんぽんと叩いて労う秋高だったが、こんなにも可愛らしい姿を見せられては股座の熱はおさまらない。三春の股の間に座り込み、足首を掴んで助平な御開帳。

「ちょっ……秋高さんこそ、こらあ…!?」

「ほら、三春の可愛いお尻も見せて?」

「うーっ……こ、今回だけだからぁ…」

 自分で足を持たせ、秋高はローションをたくたくに手と尻に。優しく慣らしてやりがらも嬉そうに尻尾を揺らして恋人の恥ずかしい部分を視線で舐めゆく。

「三春のここ、桜色だ」

「そーゆーのは、あぁ……んぅ…」

「ゆっくり……ほら、指入ってくからな?」

「……い、言わなくていいってば……あ…あぅぅ…あ……」

 三春の後孔はねっとりと秋高の指を咥え、その熱と肉厚感で出迎える。

「だって可愛いから」

「ンゥッ……あぅ、もぉ〜」

 つい下半身で喜んでしまい、ギュッと指先を締め付けて返事としてしまった三春。


 そうして交わりの支度が終われば、秋高からくすぐるような提案。

「せっかくだし乗ってくか?」

「む、無免許でいーならね……!」

 やられっぱなしではいられないと、三春だって乗り気。まずは秋高の下腹部のやや下に跨がり、そうっと柔穴を年上犬彼氏の雄へとあてがう。

「あ、あんまり見ないで、ってぇ……」

「ほら、三春の可愛いとこ見せて?」

 先端がくぷりと押し付けられ、三春は小さな文句。

「んんっ……あ、あ…う、動かない、でよ……?」

「大丈夫、見てるだけ」

「う……にゃ、あぁあぁ…入ったぁあ……!」

 自分でなんとか挿入を果たし騎乗位の体勢になるも、三春は下半身から込み上げる心地良さに動けなくなってしまう。

 息を整えている三春を待ちつつも、秋高はそっと両手を伸ばして誘う。

「はい」

 無意識的に三春もそれに繋ぎ、つい甘えた声。

「ん……あ、ギュッてして…?」

「もちろん」


 そこからはスローペース、愛情とか色んな欲だとかを確かめ合うような結合。視線を交わし、体温とか鼓動を交換しあうように腰を弾ませていくだけ。

「あっ……あ!あっ……秋高さんっ」

「三春、これ……かなり……好きかも……!」

「僕ばっか、恥ずかし…でしょー……!?」

「くぅ……その代わり、気持ち良くする、から!!」

 向かい合っての騎乗位、三春の緩く開いた両脚の間ではピンと固く勃った雄が跳ねて仕方ない。赤い頬になってしまうも、その蕩けるような心地良さに下半身の熱は上昇いくばかりなのだから。

「待っ、ああっ!?動き、すぎだってぇぇ……!?」

「……悪い、我慢できない」

「んんっ!あ!にゃ……うあぁっ、うにゃぁあ!」

 秋高が激しく腰を打ち上げる度、三春の嬉しい中肉が抉られて可愛らしい嬌声が止められなくなる。豊かな胸だって弾み、しっかりと勃起した若雄が揺れて先走りだって飛び散ってしまう。

「三春の中、凄く、なってる……!奥まで入って、俺……堪らない…!」

「も、もぉ〜!あっ、すぐそういうぅう……!」

 こんな早い時間から部屋を締め切っての交尾。好きな気持ちが溢れて、恥ずかしい体液が零れて。2人して肉欲に溺れきって、眉も耳もペタンと下げてしまう。


「仕方ないだろう、こんな……三春の可愛いところ全部、見ながら……してるんだから…!」

「う、あ…!ンッ……ホ、ホント秋高さんたら、僕のこと好きなんっ、だからぁ…!」

「そう、大好きだ三春」

「あっ、もーっ、ずるいってばあ!」

 結合部からはかき混ぜられたローションが泡立ち、2人して表情をくしゃくしゃにしながら快楽に溺れていく、相手の身体に夢中になっていく。両手をギュウと握りしめ合い、腰を打ち上げる、腰を弾ませる。

「ほら?三春は?聞かせて?」

「ッ……あ…待って、ったらぁあ、あっ!う、にゃぁ!あ……す、好きに、決まってる、でしょ……!」

 余計に盛り上がってしまえば、秋高の雄により力がグッとこもる。力強く突き上げながらも三春が喜ぶポイントばかりとしっかりと抉っていく。柔らかな尻肉にして、ナカは嬉しそうに秋高を締め付けては応えるのだから。

「あっ、にゃ!ああっ!んぅ〜っ、秋高さん、秋高さんっ!」

「三春ッ、気持ち良いよ……!俺ッ……!」

「う、あぁあ……僕も…や、あっ……これ、すご……感じちゃ、うからぁぁ……!!」

 もうどちらの息遣いも限界のそれ、どちらともなく痛いほど手を握り合って昇りつめて。

「三春、出る……!!思いっきり!中に出すから……!!」

「あ、ああぁ秋高さんっ、きてぇ!あ、僕も僕も出ちゃうから、う…あ、にゃぁあ〜ッ!!」

 下腹部が濡れる感覚だけ、大好きな相手と肌を重ねることはこんなにも幸せなのかと再認識するような吐精。ドクンドクンと漏れ出る嬉しさ、身体だけでなく心まで一緒くたになれたような喜び。

 しばらく2人、身動き一つしないでふわふわの多幸感に包まれていたのだった。



 シャワーを浴びながら三春に「またゴム忘れたでしょ〜?!」と怒られたりもしたが、秋高は笑って知らないふりをしたりしたりした。

 そうしてなんだかんだ半裸でベッドに戻ってきた2人。三春がゴロンとひっくり返って騒ぐ。

「もぉ〜動きたくない〜」

「え、ええ……」

 なので「ピクニックの予定だったのに」と、パンフレット片手に残念そうな振りで三春の罪悪感をくすぐる作戦の秋高。

「三春と『恋人桜』見たかったのにな」

 だが太い手がパンフを取ってぼんやりと流し読みし、恐る恐る訪ねる。

「ねえ秋高さん……これ『変人桜』じゃない?」

「え?……本当だ」

 良く見たことでもしかしたらピクニックの先に待ち受けるのが自分たちが望んでいるようなものではないと知り、秋高はこれみよがしの笑顔で誤魔化すことにした。

「お腹空いてないかな三春くん!?」

 外に一歩も出ることなく、洋風弁当を平らげる2人なのだった。

 食べ終えたことで程よい眠気。もそもそと2人でベッドに戻り、阿吽の呼吸でお昼寝タイムへと。三春がエアコンの温度をやたらと下げたものだから、2人してブランケットに包まって頭をごつんとさせながら一寝入り。


 それから小一時間後、先に起きた秋高の悪戯。

「市仁くん、お昼休み終わったよ」

「あ!はい!はい、いまやるとこです!」

 会社かと思って飛び起きた三春だったが、直ぐにここがまだ旅行先のコテージだと理解。秋高に全身でダイブして悔しそうな声。

「……あ、もぉー!?騙されたぁ〜」

「あっはは、油断したな」

 ひとしきり抱き付いたり抱きしめ合ってから、もみくちゃにされた秋高がベッドから脱出。

「さて、お土産買いに行こっか」

「行く〜!」


 車で少し行った所にあるお土産屋さん。

 特にキャンプ用品を貸してくれた猪之頭さんへのお返し。どうにも食べ物にしろ何にしろ可愛かったりオシャレな物が多め、独身成人男性に渡すのを探すのには苦労した。最終的には桜チップのスモークウィンナーの詰め合わせ。三春が狙っているので秋高がガードしつつ、花びらの浮いた日本酒も付ければお返しの完成。

「次の休みには2人で借り物を洗わないとな」

「消臭剤もいっぱい、ね?」

 それはもちろんテント内でえっちなことをしたから。

「……ほ、本当は良くなかったよなあ」

「でも!テントだなんてドキドキシチュエーション、逃す手はないでしょ〜」

 言い返せない秋高は少しだけ項垂れてしまった。

 それと会社の皆には当たり障りのないクッキーのセット。

「いや〜、職場で食べるの楽しみ〜」

「え?」

 秋高がじっと見るので、三春も聞き返す。

「えっ?」

 その後コンパクトサイズのお説教を喰らい、社会人としてまた一つ賢くなった三春くんなのだった。


 * * *


 帰ってこればそこそこの時間。いつになく張り切った声が秋高を圧倒する。

「さあ秋高さん!今日のメインイベントだよ!?」

 秋高としては先ほどのコテージエッチがメインだったのだが、三春のテンションに水を刺さないように抱きしめ、そして離れた。

「なに?今のなに!?」

「さ、ご飯にしようか」

「ちょっと秋高さん!?」


 2人で騒ぎながらならば支度だって楽しいもの。

 コテージ脇のウッドデッキに置いてある真っ赤なバーベキューコンロに大興奮の三春。

「あーっ、これこれ!アウトドア用品のお店にあったような奴〜」

「お、せっかくだからまた三春に火起こし頼もうかな」

 秋高は三春名人へとファイヤーピストンを投げる。

「はい、キャーッチ!」

 からの胸をドンと叩いてみせる。

「任せといて!」


 火起こしは三春。その間に秋高が冷蔵庫から食材やビール、皿などを用意。ウッドデッキテラスのテーブルはあっという間に満席だ。

「おまちどうさま、腹ペコ君」

 しっかりと分厚いステーキに始まり、殻付きホタテや串に刺してある海鮮類も見事。グランピングというほどではないが焼肉のグレードは明らかに良好。

「やっぱりこっちの方がキャンプ場より物が良いな」

「ね!ごちになりまーす!」

 まずは火の通りが遅いホタテを並べ、冷えたビールをそれ以上に冷たいジョッキに注ぐ。互いに割れない程度には豪快にジョッキをぶつけ合い、口を開く。

「それじゃあ今日も!」

「ああ」

「「乾杯ーッ!」」


 そうやって真っ赤なコンロ、真っ赤な炭火、ほろ酔いになりながら食材を並べていく。

 とりとめのない話だって、お肉や海鮮を前にすればまた一塩。

「ここに住めば毎日でもバーベキューできるのに」

「でも出勤が大変だろう」

 とか。 

「一階下を気にしないでドスドス歩けるし〜」

「あれで気にしてる歩き方なのか……?」

 とか。

「あ、でもコンビニが近くにないじゃん」

「コンビニ以外も近くにないぞ?」

 だとか馬鹿な話ばかり。を、しているうちにジュワジュワと良い音で耳まで楽しませてくれるホタテの焼き加減。

「さ、そろそろかな」

「わくわく」


 付属のバター片を乗せ、醤油をかければ香り立つことこの上ない。

「あんもうこれこれ!」

「殻には触らないようにな」

「ありがと〜」

 秋高は更にテキパキと焼けた肉から野菜を三春の皿へと乗せていく。

「もぉ〜、秋高さんたらいいお嫁さんになれるんだから」

「俺はお婿さんだ」

「またまた〜」

 2人以上に熱々、焼けた食材がお待ちかね。

「さ、飯にしよう」

「待ってました」

 皿を前に手を合わせ。

「「いただきます!」」


 * * *


 日も落ちた夜にはラストイベント。

 コテージ宿泊者のみのランタン夜間ハイキング。街灯も家々の灯りもないコテージエリア周辺の森はランタン片手に散歩するにはうってつけ。

 出発前に「虫除けスプレー終わっちゃった!」なんて悲鳴が上がったりしたが、出発。

「もう真っ暗だね〜」

「ほらランタンを振り回さない」

 貸し出されたもの、三春が持ってるのは本物の火を使用しているレトロな品物だから。

 ガイドさんを先頭に、宿泊者10名程度の列。2人は後ろの方でのんびりと進んでいる。

「夜のお散歩なんてサボってエッチでも良かったのに〜!」

「明日は仕事なんだから駄目だって言ったろ」

「順番的には僕が抱いてあげる番だったのに〜!」

「というか人前だぞ」

「小声じゃん!?」

 夜でも元気のいい三春に、秋高は信じられないという視線。

「嘘だろ……?」


 そうしてガイドさんが春の星座や森の動植物の話を冗談を織り交ぜて語ってくれる。ランタンで真っ暗な夜道を照らしつつ、夜空の星に想いを馳せる。森の方からはフクロウの鳴き声が響いたりもして、ちょっとした冒険気分だって味わえるもの。

 途中まではガイドさんの話を聞いていたものの、次第にやはりイチャイチャが止まらなくなっていく。手を繋いだり、肩をぶつけ合ったり。

 その後ガイドさんの言っていた星座を秋高が指差している、そんな時。

「あ!ほら、流れ星だ!」

「え、あれ隕石じゃない!?」

「いやいや、ガイドさん話ししてくれてたろ、流れ星だって──じゃなくてほら願い事願い事!」

「あー、あ!」

 とかで慌てて一行は立ち止まることに。歓声を上げる参加者の皆と同じく、2人も手を合わせて心の中で星に願いを。

 2人が目を開ければ既に静かな夜空に戻ってはいるが、まだ胸の高鳴りはおさまってはいないだろう。

「三春は何をお願いした?」

「秋高さんは?」

「多分同じコト」

「えへへ〜」

 手を強く握り合い、緩んだ笑みのままハイキングを楽しんだのだった。


 ゴール地点は大きなキャンプファイヤーを中心とした広場。

「皆さんお疲れ様でした!温かいハーブティーとマシュマロ焼きを用意してありますので、ゆっくりしていってくださいね」

 既に他のスタッフさんがテーブルの上に支度をしておいてくれたハーブティー、そして串に刺さった大きなマシュマロなどを受け取る2人。

 もちろん並んでハーブティーを飲んだり、マシュマロを焼いてみたり。温かな炎を見つめながら旅の終わりを語らっていく。

「今回もあっという間だったね」

「楽しいと時間が過ぎるの早いよな」

 パチパチと爆ぜる焚き火の音だって明日には恋しく思えてくるだろう。

「連れてきてくれてありがとね秋高さん」

「三春こそありがとな」

 せっかくだからと秋高から頬に小さなキス。

「わぁ……」

 赤面してしまう三春、嬉しそうにふわふわの毛玉になっていた。

 だが秋高が小さな声で「言えない、蚊がみんな三春の方に行くから楽だったなんて」と呟いたのは誰にも聞こえなくて良かっただろう。虫除けスプレー、終わってしまったから。

 誤魔化すようにハーブティーの感想を口にする秋高。

「あ、これ美味しいな」

「ホントだ、お土産屋さんで売ってたような気がするー。ちぇー、買い損ねた」

 そして掲げていたマシュマロを見て、秋高の忠告。

「そろそろ焼けたかな。これ絶対に中が──」

「あっつー!?」

「熱いって言おうとしたのに」


 そこでいつまでもゆっくりとしていたかった2人だったが、キャンプファイヤーの勢いが弱まれば解散の流れ。カップや串を返却し、コテージへと帰ることに。

 目が暗さにも慣れ、むしろ春の星々が眩しいほど。2人寄り添ってのんびりと歩く。

「さ、明日は早起きして帰らないと!仕事が待ってるぞ」

「やだ〜、帰りたくないよ〜」

 冬に続いて春の旅行も大成功。となれば秋高の返事だってこう。

「でも──また次の計画を立てられるだろ?」

「うんっ」

 三春はドンとぶつかって楽しみにしてるよと物理で伝えた。

 旅の終わりはまた次の旅の始まり、2人が行く先々では笑い声が絶えることはないだろう。星に願いをかけた『ずっと一緒にいられますように』の通り。

 2人の背中を、また一筋の流れ星が追いかけた。


 <おしまい>

Comments

前作に続き、楽しんで読んで貰えて嬉しいです! 実は依頼次第でまだもう少し続きます、その時はまたお楽しみに! 2人の緩くてぬくぬくのイチャイチャを堪能して貰えたようで良かったです、全然タイプの違う2人の色んな凹凸がハマってる感じ可愛くていいですよね、書いててもアホな掛け合いは楽しいものです。 今回も感想ありがとうございました、こちらこそご支援にコメントと感謝です👍

ねむうさぎ

前回の雪ノ町温泉旅館編の時に素晴らしくて思わずコメントさせていただいたものです…まさかの続編が読めると思ってなかったので、更新あると聞いてからずっと楽しみにしてました!今回も大変良かったです。イチャラブカップル好き…三春くんもですが秋高さんもなかなか可愛いですね!今回は屋外えっちまであって大変えっちでした!健全デートからえっちまでこの二人のやりとりは見てて癒されます…。素晴らしい作品をありがとうございました。いつも更新楽しみにしてます〜!!

やちく


More Creators