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春⑤

Chapter⑤『3日目 続テント生活』

 今日まわることになるのは『葉々野原』の区画。ここはレジャー観光がメインであり、天気も良好となれば2人は元気よくテントから飛び出していった。


「時間は50分間、こちらに練乳も用意してありますので好きに使ってくださいね〜」

 係員が扉を開ける。大きな長方形のビニールハウスが連結された中へと、雪崩れ込んでいく観光客の中に2人の姿も。手には練乳、ヘタを捨てるための二つの凹みのあるプラスチックカップ。

「あれだね、雪見だいふくの容器みたい」

 そして少しだけ考え込む三春。 

「もしくはそう、おっぱ──あだっ」

「よしなさい」

「叩く前に言って?!」

 今日は朝からいちご狩り、ビニールハウス内部は少し湿気があるがほんのりと甘い匂いでいっぱい。

「さあ秋高さん、元を取るよ!?」

「いや、普通に味わえばいいだろ」

「もう直ぐそうやって優等生ぶるんだから。しっかり食べてイチゴ農家さんを破産させるよ!?」

「え、ええ……」

 あまりの意気込みと鼻息に困惑する秋高。三春が握り締めているスマホの画面には『完全攻略!イチゴ食べ放題の罠!』とかいうものが映っていたのは気のせいだったら良かったのにと。なんでも練乳を付けて食べるのは後にしないと直ぐ満腹神経がなんとか、らしい。


 ともあれ近くにあった一粒を摘み、2人同時にガブリ。

「うわ、すっごいね、中まで真っ赤!」

「本当だ、都内で売ってるのと全然違うな」

 ここ花咲町だけで作っている『レッドルージュ』という品種らしく、その鮮やかな赤は特筆すべきもの。

 一粒食べればもう止まらない。完全に狩人の目になった三春、次から次へと熟したいちごを頬張っていく。

「三春、服に垂らさないようにな」

 既に口元はベタベタ。レッドルージュの名前の通り、三春の柔らかな唇は今や朱。

「まさか〜」

「口元、凄いことになってるぞ」

「そんなに?」

「いや、なんというかこう失敗した小学生の化粧みた──あいたっ」

「秋高さんでも叩くよ!」

「た、叩く前に言ってくれよ」


 2人はいつも通りの温度感だが、家族連れ以外はやはりカップルが多め。皆して「あーん」だとか真っ当な恋人らしい行動。それにいち早く気付いた三春、小声で騒ぐという器用なこと。

「って、違うじゃん!僕たちぜんぜん元取れてないじゃん!?」

「どうかしたか?」

 つられて何故か秋高まで小声。

「秋高さん、周り見てみなって」

「何を……?」

 カップル同士の食べさせ合い、いちごだって赤面してしまうような恋の営み。

「あ、あー、なるほど。そういう……」

 なので三春、ここぞとばかりに仕掛けていく。馬鹿みたいに育った大きな一粒を指で摘み、嬉しそうな笑顔で秋高へと。

「はい、あーん?」

「いや俺、もうお腹いっぱいなん──」

「なーに?年上なのに秋高さん恥ずかしいって〜?」

 秋高の整った顔、大人の余裕も頬がイチゴみたいに赤くなれば形無し。

「……あ、当たり前だろ」

 マズルを尖らせ、周りを気にしながらもぱくり。

「あん、これだけで元は取れちゃったね!」

「し、静かにしてなさい」


 皆のお腹が赤い宝石で満たされた頃、残り10分のタイミングでいちご園のヒトが大きな案内の声。

「これよりイチゴのトレジャーハントを開始します!小さな赤いプレートを見つけたらお土産をプレゼントしますので、頑張って見つけてみてくださいね〜!?」

「へえ、面白いこと考え──」

 こういうのって子供が喜ぶよなとふわっと思った秋高だったが、隣に視線をやると言葉も途切れてしまう。目がキラキラとさせた三春、うずうずと尻尾を揺らして飛び出す間際だったから。

「うわ、三春の目が本気だ……」

 その後、巨体でありながらもすばしこくすばしこく走り周り、しっかりちゃっかりプレートを確保した三春。秋高の拍手にも満面の笑み。

 受け取りは後にするとし、ほくほく顔でいちご園を後にする2人だった。


 * * *


「まーだお腹がちゃぽちゃぽしてる〜」

「かなり食べたもんな……」

 昨日の花畑が広がる根々本公園とは違い、この葉々野原公園は広々とした芝生が特徴的。

 縁取るように桜が咲いていたり、写真映えする小さな花畑などもあるが、遊びまわるための造りだろう。道は可愛らしい色合いのタイルになっていて、パンフレットには「ハートのタイルを見つけよう!」なんて書いてあったり。

 コツコツと足音、お腹をさすりながら2人はのんびり散歩を楽しんでいく。


 直ぐに目につくのは熱気球体験。係留ロープの届く高さまでだが、下から見れば相当に高く感じられる。

「うわ、見て秋高さん」

「お、乗りたいか三春?」

「僕乗ったら狭くなりそ〜」

「それは……まあ」

「というか怖くない!?」

「俺は怖くないけどな」

 ホラー映画以外に高所も弱点な三春に、秋高はふふんと。

「いいもん、秋高さんも道連れだもん」

 言うなり秋高の背中に飛び乗って抱き付いていく三春。

「うわっ!?」

 冗談抜きに三桁ぽちゃ猫彼氏の体重は半端ではない、秋高は一歩、また一歩と進むにしろ牛歩。

「さ、三春、本当に重いから……!」



 次に見かけるのは春の澄んだ青空に映える数々の凧。

「ああ、凧揚げか〜」

「秋高さん凧揚げってえ。今じゃもっとこう、これはそう『春風カイトフェスティバル』よ?」

 カタカナ部分をやけに格好良い発音で言ってくる三春。

「いやそこの看板を読み上げただけだろ……」

 そういった催しが開催中、本当に色々な種類の凧があるようだ。


 例えば有機的なフォルムと塗りの凧。

「うわ、ホントに蛸!」

「良く出来てるなあ、本当に泳いでいるみたいだ」


 例えば5機編隊の戦闘機を模した凧、飛行機雲みたいな白長い尾びれが特徴的。

「秋高さん、あれもすごくない!?」

「今の凧ってあんなのまであるんだな」


 例えば複数人で引っ張っている凧、先ほど見た気球のミニチュアのようだ。

「あ!さっきのじゃん」

「へえ、凝ってるな」

「面白いね〜」

「やってみたいか?」

「え〜、でも可愛い僕が飛んでっちゃったら困るでしょ?」

 えへへと愛らしさをアピールする三春。

「うーん……多分飛んでかないと思う」

 割と冷静に分析する秋高。

「そーゆーこと言う〜!?」



 そこから先、分かれ道に差し掛かり秋高が聞く。

「どっちに行こうか?」

 返事などなく三春の大きなお腹が物理的に秋高を片方へと押し進めていく。

「三春っ、分かった、分かったからっ!?」

 左の方でやっているらしい桜ピクニック・クイズラリーに──ではなく、カフェ付きのお土産やさんがある右の方へと。


 少し歩いたことでお腹もこなれてきたと、2人は春空の下でソフトクリームを買いに。

「……三春、本当〜にそれで良いんだな?」

「も、もちろんだよ!ご当地ソフトを楽しまないと!」

「俺は助けてやれないからな?」

「も、もう心配性なんだから秋高さんは〜」

 最終確認といった問答の後、秋高が神妙な顔で店員さんに注文をする。

「すみませーん、それじゃあ桜ソフト一つと──この山菜ソフトを一つお願いします」

 エプロン姿の山羊のお姉さんがなんとも言えない顔をしたのを、2人はやはりなんとも言えない顔で見返してしまった。

 お金を払って待つこと直ぐ。

「はーい、桜ソフトお先にどうぞ」

 秋高は「どうも」と受け取り「おっ、香りもするな」と感想。桜ソフトは可愛らしい薄桜色、小さな花びらのクッキーが刺さってたりと可愛らしい。


 次、やや申し訳なさそうな顔をした山羊お姉さん、そっとソレを差し出す。

「さ、山菜ソフト、出来上がりました」

「はい、はい僕です!」

 元気よく太ましい腕で山菜ソフトを握りしめる三春。

「ほ、ほらこの前のわさびソフトとそこまで変わらないじゃん」

 色合いこそ緑一色、確かにそう言えなくもない。しかし塩漬けの山菜が練り込まれており、特にくるくると巻いたゼンマイがぴょんっと飛び出ている見た目は夢に出そうだ。もちろん悪夢の方。

「クトゥルフ神話かな……?」

 と秋高が呟いてしまうのも仕方ないだろう。

 腰を下ろして食べることにした2人、直ぐに三春がもちもちとした顔をくしゃくしゃに。

「…………く、口の中が七草粥だよぉ〜」

「だから言ったろう」

 なんとか頑張る三春だったので桜ソフトを食べさせたり、山菜ソフトを手伝ったりする秋高。感想としては「よもぎ饅頭の味、に近い気がするな」だとか。



 他にも牧場で牛の乳搾り体験なんかも開催中。観光客に紛れて2人も都会では味わえない経験に一喜一憂した、のだが。

「秋高さん、ぼーっとしちゃって大丈夫?疲れちゃった?」

「あ!いや、全然!平気だって」

「ほんと〜?」

「本当だから」

 終わってから秋高は落ち着かない様子。

 器用な秋高が上手に乳搾りをする様子に、妙に欲情した三春がそっと「今夜は抱くから」だなんて言ったせいに違いない。

 だから牧場での記憶があまり定かではない秋高。せっかく絞った生乳の味も覚えてない。昨日は自分から言っておきながら「こ、これ言われるのってかなり……」と赤面してしまう秋高だった。


 * * *


 今日は三春が既に決めていた店で早めの夕飯。

 まだ客足もまばらだが、店内に一歩足を踏み入れるだけで歓迎するような良い香りが出迎えてくれる。

「ああもう、僕ここに住んじゃいたいかも……!」

「三春、ほーら立ち止まらない」

「ああもう、全身でお肉の匂いを感じてる……!」

「三春、良いから、早く」

 恥ずかしいからと、はしゃぐ三春の背中を押す秋高なのだった。


 内装は田舎の牧場をモチーフにした雰囲気。

 案内された席につき、冗談みたいな大きさの扉みたいな凝ったメニュー表を2人で顔を突き合わせて眺める。

「わお、食べ物ログで星4.8は伊達じゃないね!?」

「……ここってもしかして大盛りの店なのか?」

「またまたー!男の子ならこれくらい行けるでしょ、もぉ〜!」

「お、俺も高校生とかの頃だったらなぁ」

 何せそう、ここは『ミート&チーズパラダイス』という店名通り、脂ギッシュな肉料理ばかりがメニュー表を埋め尽くしていたから。ステーキは冗談のような大きさ、ハンバーグだってタワーみたいに重ねるのが普通らしい。もちろんサイズや積み重ね、ソースなどもカスタマイズ自由。


「ああもうワクワクしてきた!」

「いいよ、ゆっくり選んでくれ」

 秋高は店内の脂とソースの香り、メニュー表だけでお腹が膨れたような感覚さえしている。

 反対に目がキラッキラの三春。

「どうしよ、バーグタワーの3L──」

「ううん、せっかくだし4L──」

「でもどうせなら僕と同じ5Lにしちゃおうか……!?」

 独り言ながらもヒートアップ。

 服のサイズみたいだなと気付いた秋高、恐る恐る聞いてみる。

「もしかして張り合ってるのか?」

「ま、まさか〜!」

 誤魔化すように三春が手を天高く掲げ、「バーグタワー5Lお願いしま〜す!」と大声。距離があったので慌てた若い店員さんが注文とってくれて事なきを得た。秋高はおすすめミックスを注文、それでもチーズ入りハンバーグとエビフライとカットステーキ、フランクとかなりの量らしい。


 で、店員さんが大きなトレーに乗せられた肉の弩級戦艦のようなハンバーグを運んできてくれる。三春は既に紙ナプキンとフォークナイフで武装済み。

「デッカ!?」

「熱いのでお気をつけください」

 なんて言葉も聞いてはいない。

「あんもう最高すぎるって、結婚するぅ〜」

 微かに残った理性で三春が写真を撮りまくっているうちに秋高のも運ばれてくる。

「それじゃあ三春、いただきます」

「はい秋高さん、いただきます!」

 三春がハンバーグタワーにナイフを入れれば、すっと切れ込み。溢れ出る肉汁とチーズがまるで滝のよう。まさに夢見心地の表情で食べている三春を、秋高は保護者のような面持ちで見つめる。

「……食べてる時は本当に静かだ」

 しみじみと呟き、こんなに食べられるだろうかと一般的な胃袋の持ち主である年上犬彼氏はフォークを動かすのだった。

 一応、秋高がフランクを食べている時だけはじっと見ていたりする三春。食後には2人分の小さなミニパフェを勝手に頼み、なんだかんだ完食するまでたっぷりと食事を楽しんだ。


 * * *


 早めの夕食を終え、テントに戻ったところで秋高が口を開く。

「それで、実は面白い話があるんだけど──」

 キャンプ場で働いている地元の人から、とある秘湯の話を聞いていたとのこと。

「行ってみるか?」

「いく!」

 二つ返事ののち支度。手持ちのLEDランタン、タオルや着替えなどをカゴに放り込み、虫除けスプレーをひと吹きすれば冒険の開始。

「さあ、秘湯に出発ぅ〜!ほらほら置いてくよ秋高さん!?」

 ノリノリで先導する三春、早く早くと全身で秋高を急かす。

「あー……三春、道はこっちな?」

「だと思ってた!」

 踵を返して小走りで秋高へと並び、今度こそ冒険へ。

 まだ夕暮れ前だが、少し木々で薄暗い獣道を進む。怪しい看板やら草だらけの古い鉄塔、こちらは真新しい水資源管理棟の脇を抜けていく。


 いつしか文明の気配を感じなくなった山の奥、そこは突然現れた。

「あ!もしかしてこれ!?これじゃない!?」

「おお!風情あるじゃないか」

 満開の桜に囲まれた、程よくこぢんまりとした湯。白い湯気と桜の白のコントラストが堪らない。湯は本当に大きな平たい岩と繋がっていて、寄りかかったり寝転べたりする丁度良さそうだ。

 こんな山奥となれば気にすることもなく、2人は素早く脱いでタオル一枚ずつの姿に。

 三春が勢い良く飛び込もうとし、熱そうな湯に急ブレーキ。

「前人未到の秘湯にとうっ!──と、見せかけて秋高さんどうぞどうぞ〜」

「え、俺はどっちでもいいって」

「いや〜、僕あっついのダメだし」

 にゃははと笑う三春。そっと入ろうとする秋高だが。

「熱っ!?」

「……やっぱり〜」

 だとか騒ぎつつ、なんとか頑張って入ってみる2人。温度調整などされてる訳もなく、ただただ熱い。全身がピリピリしてくた辺りで三春が数字をカウントし始める。

「いーち!」

 口元を横一文字にした秋高も、数え始めるのだけれど。

「に!さん……三春、出るぞ!」

 ザバッと勢いよく脱出。

「あーっ、僕も!」


 あまりの温度に耐えられず、平たい大岩に並んで座る2人。足先だけ湯をぴちゃぴちゃとさせ、木々を抜ける心地よい風を感じる。

「いや〜、なんていうか熱湯だね、これ」

「それを温泉っていうんじゃないのか……?」

 なんて話をしているうちに段々と陽も落ちてくる。点けたランタンに照らされながら火照った身体を休ませていく。一応と股間にはタオルを乗せ、並んで熱すぎる湯を足でちゃぷちゃぷ。

「このままだと湯冷めしそうだ、熱いけどもう一回チャレンジするか?」

「なら、あったかくなっちゃう?」

 三春の方から秋高の太ももを撫で始める。

「……っ…」

 ビクッと秋高の尻尾が跳ね、落ち着かなさそうな声。

「三春〜」

「なーに?」

「……こら」

「だめ?」

「……んぅ…ん……」

 そっと触れる三春の指先が秋高の身体の中心に近付くように撫でていく。期待感を煽るだけで直接的な刺激なんてないけれど、それでも秋高の雄は正直に反応。濡れたタオル生地をヒクンと跳ね上げ、半剥けの亀頭が透けてしまう。

「濡れタオル越しだともっとえっちいよね?」

「よね、じゃない」

「めくってもいい?」

「す、好きにしたらいい」


 タオルを捲られていよいよ全裸、秋高は自分の恥ずかしさを誤魔化そうと三春に反撃。

「わっ」

 負けじとタオルの下に手を突っ込み、三春の熱を帯びた男子の膨らみを揉みつける。

「わひゃ、ダイレクトはズルでしょ!?」

「三春だって固くさせてるじゃないか」

「い、いやぁ、だって、ね?」

「だって、なんだよ」

「だって──ここって完全にお外でしょ?」

 その事実確認にゾクゾクとしてしまう2人。テントでするのだってあんなに盛り上がったのだから、こんな野外での青姦となればどれだけ──。

 2人して妙に静かになってしまいながらも、そっと股間や太ももを触り合う。

 しかし意味合いは少しだけ違って、今日はと男気を出した三春はニコニコ、秋高はドキドキとした面持ち。

「こんなとこでこれからエッチするなんて、そりゃあ興奮しちゃうよね?」

 なるべく格好良く言えるよう続ける。

「言ったでしょ『今夜は抱くから』ってさ」

 秋高の裸体がビクッと震えたのは、決して湯冷めのせいなんかではないだろう。


「さ、流石に不味い気がする……」

「こんなに固くしてるくせに?」

 ようやく直接的、三春が秋高の雄の根本をギュゥ。

「あっ……さ、三春っ…」

「僕のも、ほら?」

 そっと手を引いて自分の固くなったところを触らせ、熱を共有させる。

 太もも同士を密着させ、ゆるく開いた足の間でお互いの高ぶりを握り合う。まるで大きさを比べるように弄り合い、気持ち良さに腰と尻尾を僅かに揺らしあう。

「秋高さんを抱きたくって僕、こんなにおっきくなっちゃった?」

「……元から大きいだろ」

 三春は比べっこをするような笑み。

「えへへ、秋高さんのは握りやすくて可愛いっ」

「お、俺くらいが平均サイズなの!」

「なら、僕の5Lサイズを味わってもらわないとね?」

「…………。」

 こくんと頷いてしまう秋高。来る前に尻の支度だって済ませており、とっくに準備はできているということを本当に小さな声で告げた。

 肩だって寄せ合い、そっと気持ちよくさせ合う2人。

「ん……秋高さんも乗り気だね…」

「……そうさせたのは三春だろ…んっ………はぁ…」

「なんか、ほんとこんなとこでするなんてすごいドキドキしちゃうや」

「それは俺も、だから……っ…」


 部屋でするときは全然違う開放感。同時に自分の変態さが少し気恥ずかしいが、それは相手の喘ぎや吐息、ビクビクと跳ねる雄部分でお互い様だと気付く。

「う…あ………三春、かなり……恥ずかしいかも、だ…」

「僕も、それは思う……ぁ…」

「でも──」

「けど──」

 火照った手のひら、固くなった自分自身を触られるのが堪らない。相手を気持ちよくさせようとするほど、お返しの手淫はより熱を帯びていくのだから。

「…う……は…ぁ……さ、三春…ん……」

「も、もぉ……秋高さんの、えっち……」

「そ、れは……お、お互い様…ぁぅ…うぅ……」

「……あ、んっ……腰動いちゃうってぇ……」

 素敵な景色なんて今は目にも入らない。並んで手を動かし合い、ただ雄の快楽を味わい合う。濡れた手が興奮の雫で粘り気を帯び、その音だってより劣情を加速させていく。

「三春の手……は、気持ち…いな……」

「秋高さんの手も……僕、好き……ぃ…」

「は、あぁ……」

「んんっ…あ…にゃぁ〜……」


 どちらも盛りの付いた喘ぎを漏らし、腰が前後に揺れてしまう。大好きな相手の手だからと、自分でするのよりもなんて気持ちが良いのだろうか。露出じみた行為もスパイスとなって2人の裸体を欲に染め上げて。

「…く……ふーっ……はっ……」

「うぁ……ん……ァ……」

 声には余裕も理性もない。自然と瞼が閉じ、口が開いてしまう。手の動きだけが加速し、隣り合う彼の雄を導いて。

「俺ッ……」

「ぼ、僕ぅ……」

 2人して暗くなっていく空に吠える。

「「〜〜ッ!!」」

 互いの手の中に白濁が迸る。あまりにシンクロし過ぎたせいか、自分で出したのか相手に出されたのかも曖昧。ただ腰がくったりするほど気持ち良かったということ、ただそれだけあれば十分。


 やはり若いからか三春が先に呼吸を整えニヤリ。

「えへへ、出ちゃったね?」

 言いながら手のひらにたっぷりと付着した秋高の白を舐め取って見せる。

「……や、やめなさい」

「やーだ」

 それどころか。

「ほら僕のも舐めて?」

 秋高の手に付いた自分の体液を拭い、それを口元に差し出す三春。

「ッ……!」

「秋高さん、“あーん?”」

「…へ、変態……」

 指をチュパと舐めさせ、嬉しそうに眺めゆく三春。

「ンゥ……ンチュ………ンッ…ゥ……」

「かわいっ」


 そのまま平たい岩上を天然のベッドとし、秋高の身体を抱きしめる三春。

「ほんと、食べちゃいたい」

 そうっと押し倒し、四つん這いにさせる三春の声には嬉しさ。

「ほら秋高さん、力抜いててね?」

 持ってきていたローション、蓋を開けて垂らせばいちごの可愛らしい匂い。たっぷりと指に絡め、秋高の尻の割れ目にも垂らすこと。

「ンッ……あ……あ……ぅく…あ、はぁあ………」

 四つん這いで慣らされ、尻尾をばたつかせながらも耐える秋高。その太ましい指が前後するたび、喘がずにはいられない。甘ったるい匂いと柔らかく太い腕に抱かれれば、年上の威厳なんて保てない声が漏れ出てしまうもの。

「う…あ………さ、三春…待っ、あぁ!」

「ほーら逃げちゃダメ」

「ッア……!」

 秋高の後孔をいじる指とは反対の手、そのふるんと揺れる雄を掴んで離さない三春。

「僕、こっちを絞るのだったら得意なんだから」

 昼間の牧場での乳搾りのリベンジをするような、からかうような声。

「う、あぁ……こ、こらァ…ば、馬鹿言ってな、アアァ…アッ…ア……!」

「これからおっきいのが入るんだから、しっかり、ね〜?」

 前も後ろも弄られて、秋高の身体は甘くビクビクと跳ねずにはいられなかった。


 そうして岩に背をもたれて座る三春、包容力抜群の身体で誘う。

「秋高さん、おいで?」

 いつもは自分が「おいで」と言う側の秋高、どうしても近づき方はおずおずと。向かい合う形で跨ろうとするも、三春の小さな「だーめ」という声に止められてしまう。結局は背面座位のような形で抱き抱えられ、秋高の秘部は三春の男子部分にノックされる。

「ゆ、ゆっくりな……?」

「わーかってるって〜」

 可愛らしい果実のローションのおかげで滑りは十分。どちらも熱い肉、粘膜同士がヌルリと包容を果たしていく。

「あぁあ……あ…ッ……ああぁあ…う……くぅううぅ…あ……」

「うっわ、僕のちんこが秋高さんのお尻に食べられちゃってく」

「……い、言わな…くて、いい…………ぅ、っつうぅう〜〜ッ!」

 ほとんど入り切った所で動きを止める秋高。座り心地が良いにしろ、三春の雄の太さは身体に比例、ただ入っているだけでさえ秋高の下腹部を痺れさせるほど。

「えっちだなあ、もうっ」

 嬉しそうに笑いながら三春は岩に背中をしっかりともたれさせ、秋高の身体をホールドするように抱きしめて言う。

「僕──我慢できないや」

「ッ!?」


 そこからは山奥に響き渡る交わりの嬌声。

「あぁああ!あっ!三春、待っ、ああぁ!」

「秋高さん可愛いいからっ……!」

「う、あぁッ!こ、らあぁぁ!あ、あっ!」

「いつもより、なんか……秋高さんのナカ、すごいって…!」

 恥ずかしがりながらも、このシチュエーションに感じてしまっている秋高の体内は三春をより喜ばせてばかり。それなりに引き締まった身体付き、むっちりとした三春の肉の棒によってぐっちゃぐっちゃと掻き混ぜられる度にビクついて悶えてしまうから。

 キャンキャンと喘ぐ秋高を逃さないと抱きしめ続け、三春はその豊かな身体を弾ませて大好きな年上犬彼氏をガツガツと味わい続けて。

「もぉ、秋高さんたまんないってえ!?」

「あ、あぁ…あ!んく…ぅう…!」

「ほーら、もっと脚開いて?」

 強引ではないにしろ、微かな秋高の抵抗を跳ね除けて緩く開脚させる。完全な野外に結合部や恥部を晒すこととなり、秋高の締め付けはより激しく。

「馬鹿、本当に……これ…恥ずかしい、んだぞ………!」

「こんな固くさせてるのにね?」

「ッ……い、いま触ったらぁ──」

 右手でビク付く勃起を、左手で獣毛に隠れた乳首を弄っていく三春。


 そこからは完璧に年下猫男子のターン。

「ほら秋高さん、お外えっち気持ちいでしょ?」

 腰を突き上げながら、答えなんて知っている質問。

「こんなにビンビンにしてさ、お尻だって僕のをすっごい締め付けてくるんだから」

 自分だっていつも以上に固くさせ、鼻息も荒く腰を振るっていても言わずにはいられない三春。

「テントどころか、完全にお外でするの……クセになっちゃいそ?」

 その質問だって、半分は自分に聞いているようなもの。

「いつもの格好いい秋高さんも好きだけど、えっちの時のとろとろになってる秋高さんも大好きだから」

 身体だけでなく心まで繋がりたいと首筋を甘噛みし、三春は自身を刻みつけていく。

「こうやって抱っこして、いっぱい可愛がってあげるから」

 秘湯の熱さにも負けないような、蕩けるような求愛。

「──好きでしょ?秋高さん?」

「さ、さんしゅ、んんっ……こ、こら…もう、止め…………く、うぅうう〜ッ!!」

 気付けばあっという間に登り詰めさせられてしまった秋高、これまでになく簡単に果ててしまう。三春の右手の中で何度も跳ね、臀部の筋肉をきゅうきゅうと収縮させながら白濁を零していってしまうのだった。


「むふふ、興奮しまくりだったあ?」

「……三春…た、頼む…から……ぁ…」

 まだ腹を上下させてばかりの秋高をくすぐるように声掛けする三春。恥ずかしいのか辛いのか、まだ言葉も覚束ない秋高。

「ごめんごめん、ほら秋高さん」

 それでも三春の欲、まだまだ固くて上を向いた男子部分はヤり足りてなんて。秋高を抱えて真正面から抱き合うように向きを変えての再挿入。

「う…ああぁあ…ぁくぅぁああ……!」

「ほーらまた入ったぁ……」

 濡れた裸体がべちゃりと密着、額をごつんとぶつけ合って三春の小悪魔な囁き。

「今度は僕だけに集中して……?」

 そうやって返事も聞かずに糖度の高いキス。からの全身全霊で抱きしめながらの腰遣いが秋高の理性と体幹をぐらぐらとさせていく。

「ンッ……あぁ!あっあ!ん!ああ……!」

「声、えっちすぎだって」

「し、仕方ない、だろ……!あ……く…ふ……ぁああ!」

「……たまんないってば」


 裸の開放感、繋がっている嬉しさ、結合部の苦しいほどの快感が2人をどうかさせてしまいそう。

「秋高さんかーわいっ」

「……い、いいから」

「こんな感じてる」

 首筋を舐め上げる。三春よりもしっかりとした喉仏なのに、今漏れ出る声は掠れて頼りない。

「アッ……や、めっ…ンッ……」

「声高くなっちゃってるね?」

 乳首を三春の短いマズルが捉える。かと思えば猫舌のザリザリとした部分で舐めしゃぶる。

「ンッ…触っん……アァ…!?」

「濡れてるからおっぱいも勃ってるのバレバレだね?」

 身体を舐め、喰み、小さく啜る。三春の可愛らしい猛攻が秋高をまた追い詰めていく。

「さ、三春……す、少し…落ち着け、ってぇ……!」

「やーだ」

 甘噛みなんてされた暁には、下半身の応酬で三春を喜ばせてしまうことになる秋高。

「あ……おい…アッ……ん、噛むなぁあ…」

「嬉しいクセにぃ、こんなギュゥとしちゃってさ」


 そこから再び舌ったらずなキス。唾液と好意を2人の口の中で混ぜ合い、下半身の勢いを増す燃料としていく。

「ほーら、一緒に気持ちよくなろ?」

「ンムゥッ……!?」

「秋高さんの息遣い、えっちすぎ」

「待っ…こら、あぁあ…は、あッ………う、く…ぅう〜ッ……!」

 山奥とはいえ何一つ遮蔽物のない場所で行う交わりは、どちらにとってもスリリング。より腰のバネを強くさせ、雄への血流を確かなものにして仕方ない。

「もう僕……嬉しくって…!」

「アッ、三春んっ……!三春、んっ、アッ……んっ!」

「秋高さんっ、秋高さん……っ!!」

「う、ああっ…あ……これ、やばい、だろぉ……だ、あぁあ……!」

 弾む秋高の尻たぶ、どちゅどちゅと挿入と排出を繰り返す三春の太ましくも立派な雄棒。ついには切羽詰まった声を上げるのは三春の方が先。

「ごめ、んっ…!ナカァ…気持ち、良くってぇ…!僕、僕ぅ………出ちゃうっからぁ!!」

 手加減なんてできる訳もなく、秋高の1番奥にまで雄を押し込んでの堪らない必死射精。思い切り秋高の身体を抱きしめ、首筋に顔を埋めて腰下で精が弾けていくのを堪能する三春。

「秋高さんのナカに、出てる…!あーっ、やば、いってぇぇえ…気持ち、すぎッ…!」

「……〜ッ、あっ……三春の、熱いのが…中に……!!」

「う、にゃあ……気持ち、秋高さんっ…あ、にゃ……ぅう〜ッ!!」

「…ッ……ああ、思いっきり、出していい……あ…〜〜っ…………!」

 中に出されながらも腰を打ち付けられ、意識が飛びかける秋高だったが、それでもその好意の証をたっぷりと受け入れ続けるのだった。


「き、気持ちよかった〜」

 スッキリした声音の三春。まだ繋がっているし、引き抜くなんて勿体無いことをする気にもなれずに熱く淫らな抱擁を楽しんでいるだけ。しかし秋高の僅かだが甘い腰の弾みに気が付かないはずもない。

「……あ。」

「な、何も言うな……よな…!」

 真正面で抱き合っている以上、強く密着することで顔を見せないようにしている秋高。自分から緩く腰を揺らし、まだ固さを保っている年下猫彼氏の若雄で気持ちよくなってしまっているところ。

「あっ……くぅ…あっ」

 かなり恥ずかしいらしく、その声は少しだけ乱暴。

「ふーっ、ああっ……三春、三春んんっ……!」

 それでも快楽には勝てる訳なく、動物的な本能のまま腰を揺らして腰砕け。

「う、うるさい、から……何も、言わない……!」

「言ってないでしょ〜?」

 だなんて言われてしまえば、今のノリノリな三春が可愛らしく煽らずにはいられる訳もない。

「そんな、秋高さんが自分から腰振っちゃうの可愛いだなんて」

「あっ、ああっ!馬鹿三春んっ!」

 腰を弾ませてからかってみたり。

「そんな、秋高さんが年甲斐もなく盛っちゃうの可愛いだなんて」

「うる、さいって、言ってるだ…ろぉ……あっ、あっああっ…!」

 首筋を甘噛みし、身体に優しく爪を食い込ませてみたり。

「そんな、秋高さんが大好きな恋人のおっきいのでアンアン言ってるの可愛いだなんて」

「……あっ…も…だからぁ……そういうの、反則だろぉお…!」

 いつしか秋高は自分から三春のやわらかいお腹にピンと勃った雄を擦り付け、堪らない心地よさに沈んでいくばかり。

「く…あ………ぁああ…やばいって……これ、あっ…本当ッ、腰…止められ、な………あ……ああぁああーッ!」

 漏れ出すような悲鳴を上げ、秋高は身体を強張らせて何度も果ててしまう。

 三春はドクドクと溢れる白濁の勢いを腹に感じつつも、その背中をポンポンとあやすように叩いて声をかけていく。

「はーい、いっぱい出してね秋高さん、ほら、もっと、いいよ──」



 事が終わって湯にしっぽりと浸かる2人。

 探ってみたところ場所によって温度がかなり違っており、2人はなんとかゆっくりできるポイントで肩まで浸かっているところ。ようやく温度的にも性欲的にも落ち着けば、桜舞い散る秘湯を堪能できているといえよう。

 カゴに仕舞っておいたスポーツドリンクも今ではぬるくなっていたが、身体に染み渡る。

「い、生き返る〜」

「はー、なんだかいつもより疲れたもんな……」

「気持ち良かったってことでしょ?」

「……ノーコメント」

 顔を背けてむず痒そうな口元になってしまう秋高。

「でしょ!?」

 三春の質問は強く、それ以上に身体で押し込んでいくので秋高は湯の熱い方面に追いやられて答えずにはいられなくなる。

「……す、少し」

「少し〜?だって秋高さんあんな大声で喘いで──」

「わ、分かったから!気持ち良かったよ!これで……良いんだろ」

「にへへ〜」

 ちゃぷ。波打っていた湯も落ち着き、やっと山奥にも静けさが戻ってきた。


 ──のも束の間、秋高がカゴから取り出した物に三春の大声。

「あとそうだ」

「あ!デザートまで!?」

 いちごのバスケット。昼間のいちご園、三春がプレート探しで貰った景品だ。帰ってクーラーボックスで冷やしてはいたが、せっかくなのでと持ってきていたとのこと。

「流石に家まで持って帰れないし、ここで食べてしまおうと思ってさ」

 一つを摘んで口に放り込む秋高。

「あ、もうそんなに冷えてはないか」

「けっこうえっちしてたしね〜」

「……あのなあ」

 苦笑いしつつもいちごの甘さと瑞々しさに舌鼓。ひと頑張りした後の身体には嬉しい味だ。

 ゆったりとした時間が過ぎているのに、三春の声。転がるいちごローションを見て思い付いたらしく、言い出す。

「あ!もぉー、僕たちって考えること同じだね!?」

「……そうと言えるような言えないような」

 もちろん微妙な顔で反応に困る秋高だった。

 しかし一つ、秋高も思い付く、思い出す。

「ほら三春、あーん?」

 摘んだ特に美味しそうな一粒、ヘタを取ってから餌付けのように三春の口へと近づけた。

「あーっ!やった!」

 ぱく。やけに大きな雛鳥ではあったが、それはもう美味しそうに食べて見せる。けれど妙に照れ照れとした態度は何故なのか。

「なんで2人きりの時の方が照れるんだ?」

「……こ、これはのぼせたせいです〜!」


 * * *


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