SamSuka
Kara
Kara

fanbox


シニンノカゲ:6章part4(F/F)

4. 姫咲ダークネス (F/F) 誰もが息を殺し、誰もが固まり、物音が消えた。 私は、ヒヨコを見た。 無闇に物音を立てまいと 息を止めている。 眼鏡の奥の瞳は、震えていた。 ヒヨコが私の視線に気がついて、私の目を見た時。 ヒヨコの背後に溜まっていた闇の中から、生白い手がぬうっと伸びて── ──ヒヨコの鼻と口を静かに覆った。 んむぅっ。 ヒヨコの小さな声が漏れたかと思った次の瞬間。 ヒヨコの身体が、深い深い闇の中に溶けるように消えた。 私はその光景をただ見ていた。 ただ見ていたくせに──何が起こったのかを理解するのに時間を要した。 「ヒヨコ!?」 目の前からヒヨコが完全に消えてなくなった時、私はようやくそう声を上げた。 皆の視線が私に向く。 「ちょっと!なに!?」 春香が慌てて私の方へ駆け寄る。 ヒヨコはいない。 ヒヨコは、あの手によって闇に引き摺り込まれた。 「ヒヨコ…」 伽耶が呆然と、さっきまでヒヨコのいたところを見つめていた。 梨緒と和馬は固まっている。 「ヒヨコっ!どこにっ…」 伽耶が言いかけた時。 その疑問に答えるかのように、それは響き渡った。 「いあぁぁぁぁぁああああああああっ!!?」 それは断末魔の如き悲鳴であった。 悲鳴が、私の無理に何度もぎゅうぎゅうと心臓を握りつぶし、全身に血を巡らせる。 どくどくと痛みの伴う動悸がする。 どあっと汗が吹き出す。 「ああああああああああああああっ!!?あへは!?はははははははははははは!!?死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬっ!!!死んじゃうぅぅぅぅっっ!!」 私は、その声が誰のものか分からなかった。 否。拒絶していた。 この断末魔がヒヨコのものであると理解するのを。 頭を貫くような痛みが走って、脳裏にくっきりと異様な光景が浮かび上がる。 目の前の光景では無い。真っ黒い闇に包まれたどこか知らない場所。それでも、その光景はすぐ目の前のものであるかのように生々しいものだった。 真っ黒い闇の中にぼぅっと浮かぶのは生白い色をした無数の手である。それらは互いの指を絡み合わせ、一つの塊を成している。 その塊の中に。 ヒヨコが、編み込まれていた。 制服を脱がされ、素肌をひん剥かれたヒヨコが、無数の手の、無数の指の塊の中に埋め込むようにして囚われている。 「ぎぃぁぁああああああああああああっ!!?あはははははははは!?やめてっっ!!やめっってっ!!?やぁぁぁあああははははは!?」 ヒヨコはブンブンと激しく細い首を振り、叫んでいる。 いつものヒヨコからは想像も出来ないような絶叫だった。 ヒヨコはくすぐられているわけではない。 まだ。 闇に浮かぶ女──"藤島小百合"に身体をまさぐられているだけに過ぎない。 ヒヨコは大のくすぐったがりだ。 遊びでくすぐっても飛び上がって叫ぶほどの。 だからヒヨコだけは、ヒヨコだけは怪異に囚われてはならないというのが怪異退治の際の私たちの鉄則だった。 「ヒヨコっ!くそっ!くそっ!」 伽耶が悔しげに叫び、ヒヨコが消えたあたりの闇を殴ったり蹴ったりする。 しかし、意味はない。 「出て来いっ!!藤島小百合ぃっ!」 伽耶が声を裏返した。 ──うふふ。私、この娘を気に入っちゃった。 頭の中に、藤島小百合の凍てつく声が響く。 「助けてっ…!!」 ヒヨコは唇を歪め、目の前でこちょこちょとうねっている細くて長ぁい指を見つめながら怯えている。 くすぐり恐怖症のヒヨコにとって、目の前で指をこちょこちょ動かされるのは拳銃で脅されているのと同義だ。 「こうなったらっ…!!」 伽耶は残り少ない御札を握り締め、ヒヨコを飲み込んだ闇を殴りつけた。 拳と闇の間で、紫色の火花が散る。 だが。 何も起きない。 「くそっ!!梨緒っ!なんとか出来ない!?」 伽耶は手のひらから塵となった御札を払いながら言った。 梨緒は、ただ包丁を握り締めるだけだった。 「物理的な攻撃は…今は効かない…です。やるなら…やはり精神的な攻撃を…」 梨緒は震える声で言った。 ──うふふ。うふふふふ。 藤島小百合の奇妙な笑い声が響く。 「ふ、藤島小百合っっさんっ!こんなことはやめてっ!ねぇ!」 私は、闇に向かって叫んだ。 「貴女…辛い思いをしたんでしょ!?寂しい思いをしたんでしょ!?こんなことを続けても…辛い思いは晴れないよ…!」 気が動転して、言いたいことが言葉に出来ない。 ──うふふふ。素敵。素敵。お友達想いって素敵。 藤島小百合が微かに微笑んだ。 ──そしてそれを…打ち砕くのってもっと素敵。 藤島小百合がにぃっと歯を見せて嗤った。 直後。藤島小百合はヒヨコに覆い被さるようにすると、両手でガッと胸を掴むようにする。 「ひぃっ!」 ヒヨコは肩をビクンと震わせ、目をギョッとさせる。 恐怖で完全に、表情筋が死んでいた。 「良い顔…でも笑って?祝福の時なんだから」 藤島小百合は耳元まで口を裂けさせ、ケタケタと嗤うと、その異様に細長い指をワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシッと動かし、胸をくすぐり回した。 「ひゃっっ!!?ひゃぁああああああああああああああああああっ!!?やだやだやだやだやだぁぁぁぁぁああああああっ!!?あははは!?あはははははははははは!!?」 大嫌いなこちょこちょを執行され、ヒヨコはパニックに陥り甲高い悲鳴をぶちまけた。 ヒヨコの、細くて意外にもスタイルの良いボディがくねくねうねうねと暴れている。 「ヒヨコっ!」 私は闇を掴んだ。が…闇は手からするりと抜け落ちた。 「うふふ。私、貴女の笑顔…だぁいすき。ねぇもっと見せて。もっともっと…死ぬほど笑って見せて?」 藤島小百合はニマニマと嗤いながら、その指を腋の下に近づけている。 「やだっ!!やだっ!!やぁぁぁぁぁあははははははははは!!?あはははははははははははは!?いやぁぁぁあああああああっ!?」 他者の指の感触への嫌悪感に顔を歪めながらも、その指先によるこそばゆさに無理やり笑顔を浮かべさせられているヒヨコは…くすぐりへの嫌悪感だけで、今にも死んでしまいそうだった。 手の届かないところで友人が嬲られている。 それをただ見せつけられている。 気がおかしくなりそうだった。 藤島小百合の生白くて細長い指が、ついにヒヨコの腋の下にズクリと差し込まれる。 「あははっ。弱いところ…捕まえたぁ」 「ああ"っ!!?」 ヒヨコは口を開け、飛び出すほど目を剥いて、首をふるふると横に振っている。 それは彼女が出来る、唯一の意思表示だった。 「やめてっ!!!」 誰かが叫んだ。私だったかも知れない。 「だからさぁ…そそられるだけなんだって…そういうの」 藤島小百合は、私たちの方を見てそう言うと…細長い指の関節を折り曲げ、指先に力を込めた。 生白い指に、ドス黒い光が宿る。 「い"ぁ"っ!!?」 ヒヨコが腰をびくんと浮かせた。 「た、助けっっ──」 ヒヨコが声を絞り出し、目から涙をこぼしたその時だった。 「笑い死ね」 藤島小百合はすぅと息を吸い込みそして… 「こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょぉー!!!」 嘲笑うようなこちょこちょボイスと共に、ヒヨコの腋の下をめたくそにくすぐり犯した。 「あっ!!!あっ!!?ああああああああああああああああああああっ!!?あはは!?あははははははははははははははは!!?だめだめだめだめだめっっ!!?死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅっっ!!?」 ヒヨコの細い身体が、千切れるほど激しく波打った。 つぶらな目から、どろどろと涙が溢れ出している。 藤島小百合は細くて長い指を腋の下にうずめたまま、器用にもこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょとうねらせて指先で神経を蹂躙する。 「にょぁぁぁああああああああああああああああああっ!?たすげでっっ!!!伽耶っ!!!はるかぁぁぁっっ!!!美愛ぁぁぁああああっ!!!」 ヒヨコの悲痛な叫びが、私の胸を突き刺す。 ヒヨコはもがいている。藤島小百合の邪悪でとてつもなくくすぐったい指から逃げようと、もがいている。 でも、溺れている。くすぐりに、あの指に。 「ふ、藤島小百合さん……話を…」 私は震える声を絞り出した。 声を張り上げたつもりだったが、ほとんどその声は掠れていた。 「藤島ぁっ!」 伽耶の怒声が響いた。 「美愛。こいつにはもう…何も届かない」 伽耶は私を見てそう言った。 「藤島お前っ…!こんなことしても誰の記憶にも残らないよっ!私たちを殺しても…誰も…お前のことなんか思い出さない!」 伽耶が闇に向かって叫ぶと、ピタリとヒヨコの悲鳴が止んだ。 伽耶の言葉が効いたのか。 藤島小百合はその三白眼でぼうっと私たちを見つめていた。 「誰も…思い出さないって?」 藤島小百合は静かに呟いた。 感情がまるで読み取れない声色だった。 「そ、そうだよ…。今この学校であんたのこと知ってんのはせいぜい私らくらい。誰もあんたを知らない!お前が学校で死んだとか…全部!」 伽耶は両手を大きく広げる。 藤島小百合の三白眼が大きく開き、閉じた。 ふるふると細い身体が小刻みに震えていた。 「忘れさせない」 藤島小百合は、唇を震わせてぼそりと言った。 その瞬間、私は何かとてつもなく嫌な予感がした。 「とびきりの惨劇を起こして…一生…刻んでやる…私の名前を」 藤島小百合が目を開けた。 血走ったその目は、憤怒に染まっていた。 ただならぬ緊張感が、私たちに走った。 ヒヨコを埋め尽くしている無数の手がモゾモゾと蟲のように動き出し、ヒヨコの素肌に群がっていく。 「ちょっ!?なにするつもり!?」 春香が恐ろしげに顔を歪める。 「うふふふ。私に刃向かった者が安らかに眠れるとでも?棺桶の準備は整ったようだよ」 無数の手指によって編まれた手指の棺桶が、ヒヨコを完全に埋め尽くし、指先をヒヨコに向ける。 「やだっ!?やっっ!!?あはは!やめてよぉぉっ!」 まだくすぐられてもいないのに、ヒヨコは何故か笑っていた。 まるで、この状況が可笑しいかのように。 恐怖で、おかしくなっているのだ。 私も、全員が放心状態だった。 何も出来なかった。 「良い生贄になってねぇ」 藤島小百合は、ぱちんと指を鳴らした。 無数の手指が、ぞわぞわと音を立ててヒヨコを飲み込んでいく。 「いひっ!いひっ!いひひひひひひひひっ!?」 ヒヨコは壊れたように笑っていた。この状況を受け入れることをヒヨコの脳が拒絶しているのだ。 ヒヨコの身体が完全に棺桶の中におさめられた。 そして。 こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょっ!!! 無数の指や爪が、ヒヨコの肉体をくすぐり嬲る音が響き渡った。 そしてそれを掻き消すように── 「うわぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああっ!!?あはは!!?っっ!!?あっっっ!!?んぁぁぁぁあああああああああああああああああー!!?」 ヒヨコの、しかしヒヨコのものとは思えない文字通りの断末魔が…轟いた。 私は身体から力が抜けていくのを感じていた。 たった一人からくすぐられるのも耐えられないヒヨコが、あの数の指に一斉にくすぐられて生きているわけがない。 ヒヨコの様子はもう見えない。 でも、分かる。脳裏にくっきりと浮かんでいる。 無数の指どもがヒヨコの身体をこちょこちょと蹂躙している様が。 こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!! 「あ"ーっ!!?あ"ーっ!!?あ"ぁぁぁっ!!!あああああああああああ!!?あはははははは!?あははははははははははははは!!?死ぬぅぅ!!?いやっっ!!やだっ!!助けでぇぇぇぇぇっっ!!!」 脇腹をグリグリ揉まれ、首や耳を長い爪でこしょこしょくすぐり回され、腋の下を数え切れないほどの指でくすぐり貪られ、足の裏の土踏まずを爪の先で削られ──ヒヨコはありとあらゆる箇所をこちょこちょと殺されていく。 こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!! グリグリグリグリグリグリッ!!! ガリガリガリガリガリガリッ!! 「うぎぁぁぁぁぁぁあああああああははははははははははははははは!!?あぁはは!?あ"へはははははははははははは!!?たすげっっっ!!!っっぇぇへへへへへへはははははははははははーっ!!?」 逃げ場など一切存在しない無限のくすぐり地獄に飲まれ、筋肉が捩じ切れるほどその身を捩らせるヒヨコ。 もはや笑い声でさえないヒヨコの壮絶な声が私の頭に響き続ける。 私の目から、ぼろぼろと涙が溢れ出てきた。 気づけば私はうずくまっていた。 どっと何か重たいものが落ちる音がした。それはまるでゴミを捨てるみたいな、そんな音だった。 決して人間を、人間だったものを落とすような音ではない。 私は、涙で滲む視界に映るそれを見た。 そこに横たわっているヒヨコは、もはや別人のようだった。髪は乱れ、眼鏡はなくなり、不気味な笑顔を顔に貼り付けたまま──ぴくりとも動かない。 その土気色の顔は、柔らかさを失った粘土のようであった。 全部、作り物みたいだ。 「はっ…ヒヨコ…ちょっと…」 春香が、ヒヨコに近づいて、力なく膝をついた。 伽耶は呆然と立ち尽くし、ヒヨコを見つめていた。 「わたしの…私のせいだっ…」 伽耶はぼうっとヒヨコを見つめたままぶつぶつと呟いていた。 「先輩…!」 梨緒が叫んだ。 「ここは一旦…退きましょう…そうでないと…」 梨緒がただならぬ形相で伽耶を見つめ、伽耶の肩を掴んだ。 伽耶は動揺を隠し切れない目で梨緒を見て、小さく頷いた。 そうだ。引き返さないといけない。 そうヒヨコにも言おうと思って…けどそこでヒヨコが死んでいることに気づいた。 馬鹿みたいな話だ。 「ヒヨコを…連れて行かないと」 伽耶はフラフラとヒヨコに駆け寄って、ヒヨコを起こそうとする。 「駄目です先輩!今そんなことをしていたら…」 「で、でも…」 伽耶はなんとかヒヨコの腕を掴んで起こそうとする。 私も春香も手伝わなかった。いや、手伝えなかった。 「私、行きますから…いくよ和真」 梨緒は和真の手を引いて走り出す。 ──逃がさないよ。 恐ろしく冷徹な声が響いた。 梨緒の頭上の闇から、ぬぅっと藤島小百合が這い出てきた。 梨緒は咄嗟に包丁を抜いて、藤島小百合に向けた。 ──だーめ。 藤島小百合は素早く梨緒の両腋に手を差し込んだ。 「あぅっ!?」 梨緒は腋を閉じ、ぴんと背筋を伸ばした。 般若の包丁が手から落ちる。 「梨緒っ!」 和真が梨緒の手を掴もうとした時だった。 藤島小百合は、捕えた腋の下をこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょっ!!っとくすぐり回した。 「はっ!?うわぁあははははははははは!?うひひひひひははははははははは!!?」 梨緒の身体が激しく揺れ、ずるずるずるっと生々しい音がした。 梨緒の姿は消えていた。 「梨緒っ!?梨緒っ!!」 和真が叫ぶ。何度も何度も。 「そんなっ…梨緒がっ!」 和真はよろめいた。 私たちはまた、足を止めた。 このまま逃げるべきなのか。 しかしそんなことをすれば梨緒は置き去りだ。見殺しにすることになる。 でも…ここにいても… また、頭痛がした。 ──うふふ。お前は…悪い子だねぇ。 真っ黒い世界で、藤島小百合が、裸にひん剥いた梨緒の身体を愛でている。 全裸に剥かれた梨緒は、両腕をバンザイに、そして両脚を揃えた格好で鉄の棒に括り付けられていた。 その白い裸体には油のようなものをたっぷりと塗りたくられている。 足元から、何かが這い上がってくる。 わさわさと音を立てて這い上がってくるそれは、ヒヨコを屠ったのと同じ…無数の藤島小百合の手である。 手のひらは薄く、指は細長い…生白く不気味な手。爪は少し伸びている。 「はぁはぁっ!!くっ…!こんなところでっ…」 梨緒は眉間に皺を寄せ、必死の形相で身を捩る。 「教えてあげる。苦しみとは何かを」 ぞわぞわと無数の手指爪が梨緒の足の裏にまとわりつく。 「うっ…!?うああああああああああっ…!?」 梨緒は足指をくねらせ、歯を食いしばり、顎を上げた。 ぞわぞわぞわ…と無数の手指爪たちは足の甲を飲み込み、足首へと這い上がってくる。 指たちが歩くだけで、指先や爪の先がこちょこちょと神経をじっとりくすぐる。 見ているだけで、足のあたりがこそばゆくなる光景だった。 「うぐぐぐぅっ!!?くぅぅぅっっ!!?」 梨緒は顔を伏せたり、上げたり、首を振ったりを繰り返していた。 ヒヨコの時のように大笑いして苦しむような様子はない。 でも。 でもとても…苦しげだった。 「苦しみとは…なにも必ず最初から悲鳴が伴うものでもない。じっくりじわじわと染み込んでいく苦しみもある。お前の漏らす悶え声、涙、唾液… それを味わわせてもらうよ」 藤島小百合は梨緒に身体を密着させ、梨緒の頭を撫でながら囁いた。 藤島小百合が細長い指をくねらせるたび、足元の無数の手指爪がゾワゾワと這い上がってくる。 「ううううううっっ!!?くっっ!!期待にはっ応えられないっっかもねっ…」 梨緒はガタガタと長い足を震わせながらも、隣にいる恐怖の権化に向かって啖呵を切った。 「ふふふ。そういうの…興奮する」 藤島小百合は黒ずんだ長い舌でべろりと梨緒の顔を舐めた。 「頑張って見せてよ…」 藤島小百合は、さらに指を早くこちょこちょこちょこちょとうねらせ、無数の手指爪に命令を与えた。 ゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワ… 無数の手指爪が、梨緒の上半身まで一気に這い上がってくる。 「はぁはぁっ!!はぁっ!!はあっ!!」 梨緒の目が大きく開いて、呼吸が乱れ始める。 「ちょっといたずら…しちゃおっか」 藤島小百合は指の関節を折り曲げた。 すると、梨緒を埋め尽くす指たちも爪をふわりと突き立て、コショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショと蠢き始めた。 糸が切れたように、梨緒の顔が弛み、そして── 「うわぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああっ!!?」 梨緒は甲高い悲鳴を上げた。 足の裏に、足の甲に、ふくらはぎに、太ももに、裏モモに…腰に、腹部に、脇腹に…身体に染み込んでいくくすぐったさについに梨緒は耐えられなくなったのだ。 「梨緒っ!!梨緒っ!!待って!!ねぇ!!助けるからっ!!」 和真があたふたと辺りを見渡しそして、膝をついた。 「うわぁぁぁぁははははははははははははは!?いひひひひっ!?ひひひひひひひひっ!!?ぐひひひひひひひっ!!?」 梨緒は切長の目を変形させ、涙を垂らし、顎をガチガチと鳴らしている。 その白い肌にはふつふつと鳥肌が浮き立っていた。 「酸欠にはならない程度の絶妙なくすぐったさ…それをじーっくりと神経に染み込まされていくと…気が狂いそうでしょ?」 藤島小百合はべろべろと梨緒の首筋を舐めながら恍惚とした表情を浮かべた。 「ぎひひひひひひっ!!?いひひひひひひひひひひひひっ!!?うあああああははははははははははは!?」 梨緒は唾液をだらだらと垂らしながら首を横に振る。 「ねぇ…なんとか言ったら?」 藤島小百合は手を梨緒の首に回し、細長い指で耳や首周りを滑らかにこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょとくすぐった。 「ふぎぃぃぃぃっ!!?いひひひひひひ!!?んぃぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひっっ!!?」 首をすぼめたり、肩をすくめたりしながら魔の指から逃げようとするが、全て無駄だった。 見ているだけでゾクゾクするような爪によるくすぐったさを絶え間なく執拗に、刻まれている。 「何も言えないなら…何か言えるようにしてあげようか」 藤島小百合が指を素早く動かした。 無数の手指爪が闇の底から這い上がってきて、とうとう梨緒の首までを完全に埋め尽くした。 「うああああああああああああああああああっ!!?あああああああああああああああああっ!!?」 梨緒はパニックに陥ったように目を丸くして首を振った。 長くて黒い髪が乱れる。 「じっっっくり…たっっっっぷり…狂って壊れて死ぬまで…可愛がってあげる」 藤島小百合はニタリと口が裂けるほど嗤った。 無数の…夥しい数のその手指爪が埋め尽くしたおっぱいを、乳首を…腋の下を…全身を…爪の先や指の先でコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショコショこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょと処刑した。 「ぎょえええええええええええええええええっ!!?ああああああああああっ!?あっ!!?きついっっ!!!きついきついきついきついぃぃぃっ!!!うふふふははははははははーっ!!?」 藤島小百合の従順な分身…手指爪たちに埋め尽くされ、唯一露出している梨緒の顔にはこの世の あらゆる苦しみが刻まれていた。 くすぐりに特化したと言っても良い藤島小百合の指。その無数の指に埋め尽くされた状態で敏感な乳首や腋の下のみならずあらゆる弱点をこちょこちょこちょこちょとじっくり蹂躙され、梨緒の顔面は崩壊していく。 「おほほほほっ!!?んぉほほほほほほほほほっ!?にょほほほほほははははははははははは!!?やめでっっ!?もうやめっっ…!?いひひひひひはははははははははははは!!?」 無数の指たちは、決して気絶もさせない…殺すこともない…まさに生殺し状態でじっくりと梨緒をくすぐり処していく。 一体、梨緒が何をしたというのか。 どれほどの罪を犯せばこんな目に遭うのか。 「くすぐったいねぇ。死にそうだねぇ。でも簡単には…殺さないよ」 藤島小百合は自身の細長い指で梨緒の頭皮や顔までもをゾワゾワとくすぐった。 「うへへへへへへへへへっ!!?許して許してっっ!!ゆるひへぇぇぇぇぇっ!!!えへへへっ!!えへへへへへへっ!!!へへへへへへへへへへ!!?うへへへへへへへへぇぇっ!!」 それはもはや梨緒ではなかった。 泣きながら情けない声をあげ、口角を吊り上げ、舌を垂らしているその様子は…私の見知った梨緒の顔ではなかった。 彼女は完全に、染み込むくすぐったさに精神を破壊されたのだ。 「もうだめだ…くそっ!いくしかない!」 伽耶が苦しげに言った。 額には脂汗が浮いていた。 「いくもんか!いくもんか!行くなら行けば良い!!」 和真は泣きそうになりながら叫んだ。 「藤島小百合っ!!かかって来い!!この悪霊めっ!」 和真は闇に向かって吠えた。 もはや、正気ではない。 「馬鹿っ…!」 伽耶は再度、和真の手を掴もうとした。 そこに、天井から吐き出されるように何かが転がった。 じっくりとくすぐり煮込まれ、精神を崩壊され殺された──梨緒だったもの。 「よくも…よくも…」 震える和真の顔からは、血の気が完全に失せていた。 その時。 和真の足元の影から、にゅうっと生白い手が生えてきて、和真の両足を掴んだ。 「はっ…!?」 「やばっ!」 春香が咄嗟に手を伸ばし、和真の手首を掴んだ。 和真の身体が闇の溜まりに引き摺り込まれ、春香も持って行かれそうになる。 「ちょっと!!」 春香の腰を伽耶が掴んだ。 私は急いで伽耶の腰にしがみついた。 和真は、ずるずると凄まじい力で闇に引き摺り込まれていく。 「うわぁぁぁっ!!」 和真は無力にもがいている。 ──うふふ。おいで。おいで…。 闇の底から藤島小百合の声がする。 「ひっ!?」 和真の顔の筋肉がひくんと痙攣したかと思うと──。 「いひひ!?うわぁぁぁはははははははははははは!?ちょっ!?だめだめだめだめぇぇぇっ!!!」 和真は突然、甲高い悲鳴をあげて笑い出し、ジタバタと暴れた。 「あっ!だめっ!暴れたらっ…」 春香の手から、和真の手首がするりと抜けた。 あっけなく。 本当にあっけなく…和真は闇の渦に飲み込まれた。 掴むものを失った私たちはその場で尻餅をついた。 痛みを感じる前に、その悲鳴が響き渡った。 「ぎぃぁぁああああああああああああああああああああああああっ!!?うあは!?やっ!?嫌ぁぁぁあああはははははははははははははは!!?」 耳を突き刺すような和真の悲鳴が虚空から響く。 「ああああああああっ!?あっ!!?ああはははははははははははは!!?だめっっ!!だめだめぇぇぇっ!!!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅぅっっ!!?」 私たちはただそれを聞いていることしか出来なかった。 また、何も出来なかった。 床を覆う闇がボコボコと泡立ち、血の気が完全に失せ、灰色となった和真 硬い身体が浮き上がった。 その足の裏には、無数の引っ掻き痕が刻まれていた。 死体がまた、増えた。 泣きたくなった。 叫びたくなった。 いや、気づいていないだけでもう既に何度もそうしていたかもしれない。 「行くよ…」 伽耶がぼつりと言った。 聞こえてはいた。 けれど、私も春香も動けなかった。 「早く!!」 伽耶の声が私の身体を縛り付けていた恐怖心を吹き飛ばし、私たちは走り出した。 ここから出られるのかさえわからない。 いや。 そんなことを考えていてはいけないのだ。 とにかく、ただひたすら走って── どんっと、何かが私の背を強く押した。 私は前によろけ、転ばぬようにだんっだんっと二、三歩、強く床を踏んだ。 後ろを見た。 後ろを。 春香が。 春香が手を伸ばしていた。 ──行って。 春香は言った。彼女は少し、笑っていた。 何故か、照れくさそうに。 春香の後ろの闇の渦から、わらわらと這い出た無数の手が春香の手首を、首を、脚を、掴んで絡め取り、一瞬にして春香を飲み込み、消えた。 「春香っ…?」 私は春香がいたはずの何もない宙を見つめていた。 「伽耶…春香が…」 口が震えて、まともに言葉さえ発せない。 伽耶も私と同じように春香のいたところを見つめていた。 ここにいればまた間違いなく犠牲者は増える。 ここにいたところで春香を助けることも出来ないのは分かっている。 分かっているけれど──。 「いくよ」 伽耶は小さな声で言った。 「伽耶…」 「いかないと…いかないと…!」 伽耶は顔を伏せてただそう言って私の手首を掴み、走り出す。 頭痛がした。私と伽耶はよろけて壁にぶつかった。 また、見たくもない光景が脳裏に映し出される。 裸体に剥かれ、闇の地に転がされている春香がいた。 それを、何人もの藤島小百合が取り囲んでいる。 藤島小百合たちは春香の両腕を掴み、腋が見えるように固定している。両足もそれぞれ一人ずつが押さえつけ、股を開かせていた。 「うふふ。貴女、可愛いからちょっとご褒美あげる」 無数の藤島小百合の一人が、自身の細長い指をじゃぶじゃぶとしゃぶり、唾液でコーティングした。 藤島小百合の目は、じぃっと春香の開かれた股を捉えている。 春香の喉がごくりと動く。 「ううっ…」 春香の女性器に、ヌルヌルとした指がぬぷぅっと入り込み…しなやかで細長い指がくちゅっくちゅっと動く。 「うあっっ!?あっ!?」 春香は嫌悪感と恐怖に顔を歪めながらも、女性器に感じる刺激によってメスの声を漏らす。 身を捩る春香の元に、別の藤島小百合の手がにゅうと伸びてきて、乳首をサワサワと撫でた。 「んぅぅっ!?やめっっ…」 春香は片目をぎゅっと瞑ったまま、唇を変形させた。 その身体からは力がほとんど抜けている。 「やめて欲しくないくせに」 乳首をさする藤島小百合は囁き、乳首に爪を立て、カリカリカリカリとくすぐった。 「んぁあああああっ!?おおおおおおお"っ!?」 春香は腰を抜かし、乳首に注がれるくすぐったさと快楽の混じった異様な刺激に身を悶えさせる。 「弱いところ…みぃつけた」 女性器を弄っている藤島小百合がニヤァっと笑うと、女性器に挿入している人差し指と中指でとんっとんっと女性器内部のウィークポイントを指で叩いた。 「ほああああああっ!?」 春香から、濁った呻き声が漏れた。 藤島小百合は、膣内のウィークポイントを指先で捉えたまま…クチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュっ!!っとねばっこい音を立てて弱点を犯した。 「んぉぉぉぁぁぁあああああああああああっ!?おおおおおおお"っ!?」 春香は目をぎょろっと剥いて、口を尖らせ、地獄のような悶え声を漏らした。 腰を思い切り浮かせ、息をするのも忘れ、寄り目でおっおっおっと喘いだあと…力なくぐったりと伸びた。 そこへ… こちょっ! 「はぅっ!!?」 乳首を爪でこちょりっと引っ掻かれ、春香は震え上がって目を開けた。 「知ってる?ここでは…ご褒美の後には…お仕置きが待ってる。うふふふ…」 春香を取り囲むのは、何人もの藤島小百合たちの手指…。 その全てがワキワキこちょこちょと蠢いている。 「や、やだっ。やだやだやだっ」 春香はまるで駄々をこねる子のように泣きそうな顔で首を横に振った。 「やだじゃないの…」 「うふふふ」 「うふふふ」 「うふふふ」 藤島小百合たちは、嗤う。嗤う。嗤う。 そして。 二人の藤島小百合がこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょぉーっ!!!っと両方の乳首をくすぐった。 「ほあははははははははは!?あひょひょひょっ!?ひょはは!?ははははははははははは!?いやぁぁああははははははは!?」 ぷっくりと膨れた乳首をツルツルとした艶やかな爪がこちょこちょこちょこちょと容赦なく蹂躙する。 春香は拘束されながらも腰を引いたり、身体を丸めたりして、力いっぱいその手指から逃れようともがいている。 こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょっ!!! 横っ腹やお腹にも新たに手が食らいつき、爪を立ててワシワシこちょこちょと神経を貪る。 「ぎゃははは!?はははははははははははは!!?くるしっっ!!?だめっ!?無理っ!!うわぁぁぁぁああ!!!」 絶頂直後で敏感になっている身体を容赦なくくすぐり回され、春香は大暴れしたのちに糸が切れたようにぐったりと伸びた。 しかし。 「うわぁぁぁぁああああっ!!?」 春香は悲鳴を上げ、覚醒した。いや、覚醒させられた。 別の藤島小百合がクリトリスを指先でこちょりっと引っ掻いたのだ。 「誰が眠って良いと言った?お仕置きだよ」 藤島小百合はサディスティックに微笑んで、春香の絶頂直後のクリトリスをまたこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょと引っ掻いた。 「はっ!?うわっ!?だめだめだめっっ!!!いやぁぁぁぁあああああああああ!!?ごめんなさいごめんなさぃぃごめんなさぃぃぃぃっ!!」 春香は顔面を崩壊させたまま、涙を流しながら何度も何度も謝った。 「反省しているなら…もう気絶…しないよね」 藤島小百合はさらに滑らかな指遣いでクリトリスを細かくくすぐり犯す。 カリカリカリカリ!! こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!! 「ゃはははははははははははははははははっ!!?あーっ!!?あははははははははは!?無理っ!!無理それはっっ!!それはぁぁぁぁぁあああっ!!」 脇腹やお腹へのくすぐりも続行している中、クリトリスもさらにくすぐり続けられた春香の腰がガクガクと震え、股から液体が溢れ出した。 「おやおや…お漏らしするなんて悪い子…お仕置きしなきゃ」 藤島小百合たちはケタケタと嗤う。 数名の藤島小百合の手が、春香の腋の下に伸び、数十の指でこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょと腋の下を引っ掻き回した。 「ぎゃぁぁぁああああああああああはははははははははははははははは!!?ああああああ!!?あああああはははははははは!!?ごめんなさいごめんなさぃぃぃっ!!!」 泣いているのか。笑っているのか。もはや分からない苦悶に満ちた顔で春香は笑い声をぶちまける。 伸び切ったツルツルの腋の下にしなやかな指が群がり、爪を立て…こしょぐり回す。 「うへへへへへへへっ!?うへっ!?うへへへへへへへへへっ!!?くるじっ!?いひひっ!?いひひひひひひははははははははははははははははっ!!?」 涙。鼻水。唾液。あらゆる液体を垂らしながら春香は壊れていく。 「元気になって来た?」 藤島小百合はここにきてまた、クリトリスを細かな指遣いでカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ! こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!っと嬲る。 「うげぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへっ!!?無理無理無理無理無理無理無理っ!!無理ぃぃぃひひひひはははははははははははは!!?」 春香はぐんっと腰を浮かせたまま、見えない天に向かって絶望の笑い声を放出する。 こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょぉー!!! 恐らく触れられるだけで飛び上がるほどくすぐったいであろうクリトリスを藤島小百合はなんの躊躇もなく、いじくり、くすぐり回し続けている。 「うへへへへへへっ!!?だめっ!?だめっ!!!死ぬっ!!死ぬぅぅっっ!!うふふふふははははははははははははははははははははははは!?」 春香の目の色が濁る。 また意識の糸が切れかけると、腋の下や脇腹に手が伸びこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょと掻き回される。 「ここも…こしょぐったいよね」 また別の藤島小百合が春香の開かれた脚…その付け根のあたりにある鼠蹊部を捕まえて揉み込んだ。 グニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュグニュ!!! 「いぎぃぁぁぁぁあああああああああああ!!?あああああはっ!?あははははははははははははははははは!?」 襲い掛かる強烈なくすぐったさの暴力に、春香はそのスタイルの良いボディをくねらせ、満面の笑みを浮かべた。 目だけは、泣いていた。 「もう二度と寝かせないよ。死ぬまでね」 藤島小百合たちは、覚醒効果のあるワキと脇腹責めを続行したまま、クリトリスを両手の爪の先で 細かく執拗に執拗にこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!!っとくすぐり尽くした。 「はっ!?ひっ!?ひぃぃぃぃぁぁぁああああああああああはははははははははははははははははははははは!!?ちょっ!?おっ!?おおおお!!?っっははははははははは!?やめでっ!?やっ!?いやぁぁぁぁぁぁ!!?」 春香は壊れたようにぶんっぶんっと取れるほど首を振り回した。 ほんの少しの気絶も許されない。 春香は常に覚醒したまま、気を失うほどのくすぐり刺激を浴びせられ続けている。 腋の下も、乳首も、お腹も、横っ腹も、鼠蹊部も、クリトリスも…あらゆる弱点が指と爪によって捕食されていく。 カリカリカリカリカリカリカリカリ!! こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!! 「やだっ!!やだぁぁぁぁあああはははははははははははははははは!?もういやっっ!!ころしでっっ!!もうころしでぇぇぇぇぇぇえええ!!!」 くすぐったい紅蓮の地獄の中、春香は死を求めた。 唯一の救済である死を。 激しい耳鳴りが私の耳を貫いた。 「あはははは!いいよ…おいで」 藤島小百合たちが嗤いながら春香を埋め尽くした。 瞬間。 「ああああああああああああああああああああああああああああああ"っ!!!?あははははははははは!!?あは!?あはははははははははは!!?ぎぃぁぁああああああっ!!!」 それは響き渡った。 耳鳴りが、それを少しでもかき消してくれることをただ願った。 でもその断末魔は、簡単に耳鳴りをかき消してしまった。 私が目を開けると、さっきまで春香のいたところに──春香がいた。 春香はそこに立っていた。 「春香ぁ…」 私は春香がそこにいるのが嬉しくて、嬉しくて、倒れ込むように駆け寄った。 でも。春香は返事をせず、いつものような笑顔も、憎らしい顔も見せずに、ゆらりと力なく揺れ──倒れた。 その顔は、苦悶に歪んだまま硬直していた。 私は叫んだ。 自分の叫びで頭が破裂しそうだった。 ぐいと襟を掴まれ、私の身体が揺れた。 「美愛!」 ぱちんと頬を叩かれる。 視界がはっきりとして、目の前に伽耶がいるのが分かった。 「行って」 伽耶は真っ直ぐに私を見つめて言った。 「えっ…」 「行って!美愛っ!あんた一人でもここから出て…」 伽耶は私の肩を掴む。指先がぎゅっと肩に食い込む。 「そんな…」 「私は大丈夫だから」 伽耶ははっきりとそう言った。 「大丈夫って…」 そんなわけない。 「大丈夫。いつも通り…私たちは負けない」 「負けない?」 「そう。誰の死も無駄にしない。絶対…。だから行って」 伽耶は一瞬、俯いて、顔を上げた。下唇から血が出ていた。 「早く!」 伽耶は私を突き放すように廊下の奥へと押しやった。 私はよろけて、転びそうになりながらも走り出す。 立ち止まりたかった。伽耶と一緒にいたかった。でもそんなことをしても意味がないのは分かっていた。 じゃあこれは。私の行動は意味があるの? それも分からない。 頭痛がして、すでに遠く離れた伽耶の姿が頭の中に映し出された。 「来なよ。救いようのない屑。あんた…名前…なんだっけ?」 伽耶は唇を舐め、首を捻る。 伽耶の前に、すぅっと霧のように藤島小百合が姿を現した。 「私の名前を覚えられないなら…その魂に刻んでやる」 藤島小百合は両手を広げて邪悪な笑顔を浮かべた。 「お断りだよ。それに…刻むのはこっち。あんたが殺したヒヨコと春香と…梨緒と和真の無念をね」 伽耶は勢いよく地を蹴って、最後の御札を握り締めた拳で藤島小百合の顔面を殴り飛ばした。 ぎらぎらと燃える拳が藤島小百合の頬にめり込み、藤島小百合の顔がぐちゃぐちゃと変形する。 歪んだ口から、げろげろと黒い液体が吐き出されていく。 藤島小百合の細い身体が吹き飛んで、昇降口の下駄箱にぶつかる。 「最初からこうしておくべきだったんだ。拳でしか分からないことって…あるもんね」 伽耶はふふっと笑って、一瞬、屈んですぐに立ち上がった。 床に伸びる藤島小百合の身体がびくびくと震える。 闇から、藤島小百合のものとそっくりな巨大な手がもごもごと生え、伽耶の四肢を掴んで引き伸ばした。 「くっ!?」 伽耶は力づくで拘束を解こうとするが、巨大な手には敵わない。 「お前も…逃げた女も殺すよ」 藤島小百合がゆらりと起き上がり、崩壊した顔面で笑って見せた。 「お前は…かなり栄養価が高そうだ。将来は有望だったろうにね。うふふ。そういうやつを嬲って殺すのが最高なんだ。 その栄養は…私が吸わせてもらうよ」 藤島小百合が、伽耶の伸び切った腋の下に手を伸ばす。 「馬鹿が」 伽耶がほくそ笑んだ。 不気味な音と呻き声と共に悲鳴が上がった。 悲鳴を上げたのは、藤島小百合だった。 彼女の首に、般若の包丁が突き立てられている。 「迂闊に近づいてんじゃないよ…」 伽耶は息を切らしながら笑った。 その顔色はひどく悪い。 包丁を握っていた伽耶の腕は、拘束されている状態で無理やりに動かしたせいで捩じ切れていた。 腕のほとんどが内出血で真っ黒く変色している。 「ふざけんなお前っ」 藤島小百合は声を裏返し、両手を大きく広げた。 その動きに合わせるように、伽耶の四肢を掴む巨大な手が、外側へ大きく伽耶の四肢を引き延ばした。 伽耶の肉体を引き千切らんばかりに。 びきびきと筋繊維が引き伸ばされる音がした。 ぶちぶちと肉が千切れる音がした。 粉々に骨が砕ける音がした。 伽耶は大きく吠え、そしてがくんと頭を垂らし、動かなくなった。 伽耶は、四肢を異様に引き伸ばされた状態で死んでいた。 口から、唾液や胃液がたらたらと流れ落ちている。 私は息が出来なくなった。 伽耶が死んだ。 伽耶が死んだ。 ありえない殺され方で。 「くそっ!まさかここまで…」 黒い血にまみれた藤島小百合が、よろめく。 どろどろと彼女の身体が溶けてゆく。 「もう時間がない…次はお前だ」 頭の中に浮かぶ藤島小百合が、ギロリと私を睨んだ。 私はよろけながらも出口を探し続けた。 鏡の中なら、姿見が出口なのか。 でも、姿見が見当たらない。 自分たちがどこから来たのか、もう分からない。 奴が来る。 藤島小百合が来る。 あの邪悪が近付いてくるのを、感じる。 こんなのが。 こんなのが。 自分の、自分たちの人生の終わりだなんて思いたくない。 せめて何か。何か遺したい。みんなのために。自分を信じてくれた伽耶のために。 廊下の先に電話があった。 外部に繋がるわけがない。 そんなことは分かっていたけれど。 私は受話器を取っていた。 来る。 来る。 来る。 "あの女"が来る。 誰か、助けて。ここは── どこの誰に繋がることもないその受話器に向かって私は助けを求める。 どちゃっと泥のえぐれるような音と感触が後頭部に走った。 後頭部が冷たい。 冷たい。 冷たい。 誰か教えて。 私たちは───何を間違えたの。 ◯ 羅那は天井を見上げていた。 ひどい量の汗が制服を濡らしている。 「大丈夫!?」 乃恵の焦った顔が視界に入り込んでくる。 羅那は自分の頭が乃恵の膝の上にあることに今、気づいた。 すぐ近くで、真冬が机に手をついたまま呆然としていた。 彼女の白い肌にもびっしりと汗が浮いている。 今のは──。 今、頭に映し出された光景は───。 羅那はスマートフォンを見た。 着信は既に、切れていた。 あの番号は、かつて旧校舎からかかってきたものと同じだったように思う。 「見たのね…貴女も」 真冬が言って、乱れていた前髪をかき上げ直した。 羅那は無言のまま頷いた。 ※次回(最終話)へ続きますー!

Comments

七人目の影の演出…怖すぎますね! 本当に「人数合っていて!」と思ってしまいます。 しかし案の定あるはずのない影が…怖すぎますね! 弘道梨緒 まぁいい感じでしたね!笑 こんなところで終わるにはもったいないくらいまだ色々な可能性を感じる人でしたが、死というものはそれを奪っていく…悲しいですね。 美雲春香 リクエスト作品や単発作品ではなく、ホラーシリーズ本編でああいう責めがあるとは驚きでした。 純度100%の擽感と、そこには痛みも快感もないというのが定番で、今回も当然そうだと思い込んでいました。 しかし、こういう擽感と快感を同時に受けてグチャグチャになるのも新鮮で良いですね。 最近ちょうど、くすぐりメインではない映像作品の中に、前戯的なくすぐりでめちゃくちゃ効いているシーンが紹介されていて、ここまで弱いのなら本番でくすぐりながらやったらどうなるんだろうと疑問に思っていたところです。 春香に対する責めはまさに「こうなるのか!」と思いましたね笑 新しい可能性と、藤島小百合という存在の異質さ、アブノーマルさを強く感じる魅力的な責めでした。 藤島小百合はなんだか“生き生きと”していますね…! 来栖美愛 「私」はみんなから大事にされていそうな感じがしました。 美愛が最後に残ったのも、春香や伽耶が守りたい存在だったから、その想いで未来に繋ごうとしたのかもしれません。 美愛が春香や伽耶から託され、命を賭けて繋いだバトンを羅那たちはどう受け取るのか。 まさか同じ轍を踏んで、無駄になんてしないですよね。 御札で殴っても、強力そうな般若の包丁で斬っても消滅させられなかった藤島小百合をどうやって討ち破るのか。 まだ弱点に迫る情報が足りていなさそうなので、そちらの方法も諦めてはいけない気はしますね。 あの校庭にいつも通りの光景が戻ることは二度とない…。 本当に厭ですね。 つらい明日が来るのも、誰かの明日が来ないのも。 何も考えずに毎回「次回も楽しみです!」とか言っている訳ではありません。 いよいよ本当に人が死ぬかもしれない時を前にして「楽しみ」とは思えないので、今回ばかりは次回に目を背けたい気持ちもあります。 こうなったら羅那たちを信じるしかありません。 最終回、お祈りしながらお待ちしています。

(´・ω・`)

須崎伽耶は藤島小百合との戦いの末に壮絶に死に、くね子へと成り果てたみたいですね。 彼女たちはさぞ無念でしょうが、伽耶たちの思いは二十年近くの時を経て羅那たちに届きました。 藤島小百合を倒すためにも、伽耶たちとの戦いは避けられません。 藤島小百合を救済しようとした優し過ぎた姫咲学園の女子高生たちの救済を羅那たちも目指すと思います。 今の羅那たちになら伽耶たちも救えるはず…です! 最終回で藤島小百合に勝てるかどうかは分かりませんが…泣いても笑っても次回で決着!です! 旧校舎の曰くは完全に消え去るのか、それともまた増えることになるのか…! そうですね… 死体が出るのは確定なので… 何らかの不幸が起こるのは避けられないようです。 それが藤島小百合によるものなのか、また別のものなのかはまだ定かではありません。 死体が出る原因となる存在は、既に動き出している可能性も…? 彩華のことも、彼女が今回の件に関わっているのかも全部ぜんぶ次回で明らかになるのでご期待下さいー!

Kara

前回ラストで登場したセーラー服の少女"須崎 伽耶"が、怪異くね子さんの生前の姿だったのには驚きました。 今回小百合に殺された6人の女子高生が、小百合のしもべになっているのは悲しいです。 怪異"赤電話のレニー"になった美愛が、乃恵が赤電話を破壊した事で小百合から解放されたように、羅那たちには残りの5人も小百合から解放してあげて欲しいです。 次回はいよいよ小百合との最終決戦になりそうですが、3章part1で、12月24日に4人の女子高生が死亡と描写されているのが気になります。まさか羅那たちが小百合に敗北して、物語はバッドエンドを迎えるのでしょうか。 今は不安でいっぱいですが、羅那たちが小百合に勝利するハッピーエンドになる事を祈ります。 あと、今回は描写がありませんでしたが、彩華と失踪事件との関わりが明らかになるのも期待してます。

reo


More Creators