SIDE OF UPDATE〜最期の歌姫篇6〜「真のカウガール」4
Added 2022-02-18 13:07:15 +0000 UTC4 this is cow girl 「ここまでや。カウガールのばったもんが!」 手には鞭。むっちりした太ももを大胆に露出し、カウボーイハットを首にかけ、革製のノースリーブベストを下着の上に直に羽織った乳のでかい金髪ショートヘア女が、ブーツをコツコツ鳴らす。 「今日でケリつけようや。」 エス・エスにも臆することなく近づいていく彼女が腰に装着したホルスターにはピカピカのリボルバー銃がささっている。 エス「はぁ…いいところに来たね…ロビン。」 エス・エスはむくりと起き上がり、パンパンと砂を払ってギロッとロビンと呼ばれたカウガールを睨みつけた。 エス「どうせ今日も…私のロープに敵わず…逃げていくだけ。でしょ?」 「結果は見えてる。」 ロビン「そうかな?」 「この街は私らの街や。」 「カウガールの誇りもなんもないお前らにこれ以上は占領させへん。」 エス「そう言って何度私に敗れてきたのかな?」 「今回もそうなる。」 エス・エスがバッと指をのばし、またあのロープを操る仕草を見せると、咄嗟にロビンが口を挟んだ。 ロビン「待った。」 エス「?」 ロビン「それもいいけど、あんたこの街でカウガールを名乗るんやったら、それはつまりガンマンでもあるわけ。」 「そやのにそんな魔法使うんか。」 エス「これは魔法じゃない。」 ロビン「そう。じゃあ、何でもいいけど、カウガールになりたいんなら、私と早撃ちでケリつけよ?」 ロビンはそう言ってトントンとホルスターに仕舞われているピカピカの拳銃を指先で叩いた。 エス「…断る。」 「アップデート適応者のあんたを殺す事はできない。」 ロビン「あ、そっか。でもその心配はいらん。」 その時、ロビンが笑みを浮かべたのが先だったか、エス・エスの眉間が撃ち抜かれたのが先だったか、ドォンという大きな銃声が響いたのが先だったか、ららの目には捉えられなかったが、気づいた時にはエス・エスがガクンと大きく揺れ、彼女の額から弾が後頭部を突き抜けた。 ビシャッと真っ赤な血が飛び散り、ららの顔とシャツにかかる。 ららが呆然とする中、ロビンは自慢げに笑いながらまだシュウシュウと煙をあげている銃口にフッと息を吹きかけてホルスターに戻した。 それと同時に、エス・エスの体がばたんと仰向けに倒れた。 ロビン「ここのガンマンはな…ちょっと卑怯なんよ。」 ロビンは自慢げに言うが、それは、とっくにくたばっているであろうエス・エスに言っているのか、ららに言ってるのかわからない。ららは無意識のうちに両手を上げて、ロビンに向けて首をフルフルと横に振っていた。 ロビン「…捕まってた子かな?」 らら「そ、そう…です。」 あの目にも止まらぬ早撃ちをされるのではないかという不安から、ららは体を震わせてゆっくりロビンに近づく。 ロビン「あ、そっか。」 らら「…?」 ららはふと、倒れているエス・エスを見た。 見事に眉間を撃ち抜かれ、白眼を剥いて絶命しているが、なぜか彼女の亡骸がビクビクと震えているのに気づいた。 らら「これは…?」 ロビン「ん?」 ららに言われ、ロビンが死んだはずのエス・エスに近づく。すると、死んでいたはずのエス・エスの手が、ロビンの足を掴んだ。 ロビン「うわっ!?」 「よくも騙したなっっ!!!このっ外道めっ!!」 口も動いていない、目も白眼のまま、なのに、どこからかエス・エスのものらしき恐ろしい声が響いた。 ロビン「さっさとくたばれ…!!」 ロビンが再び拳銃に手を添える。だが、エス・エスの体がフルフルと凄い勢いで震え始め、彼女の目と鼻と口、そして耳からニュルニュルと細長い何かが垂れてきた。それと同時に街中の建物という建物から大量の茶色い何が溢れ出てきた。建物を破壊し、うねりながら押し寄せてくる茶色の波は、ロープだった。 何本、何十本、何千本ものロープが束になって波となり、エス・エスのもとへ集まってくる。 ロビン「なんじゃこりゃぁっ!?」 ロビンは急いでエス・エスの手を蹴っ飛ばし、咄嗟にららを肩に担ぎ上げてエス・エスから離れた。 ものの数秒でエス・エスの体はロープの波に飲み込まれ、それからぐちゃぐちゃとロープ同士が絡み合い、見上げるほど大きな一本の束となった。 「っはっはっはっはっ!!!なんか可笑しくてたまらなぁぁぁぁい!!!」 図太く変わったエス・エスの声がロープの塊の中からウェスタンなこの街に響く。 らら「な、なに…これ…」 ロビン「わからへん…けど…逃げた方が絶対いい!!」 ロビンが左手の親指と人差し指を咥えてピューッと笛を吹くと、どこからともなく馬が走ってきて、ロビンはピョンと馬に飛び乗った。 ロビン「ほら!乗り!」 らら「あ、はい!!」 馬になんか乗った事がなかったららが手こずっていると、ロビンが力づくでららを馬に乗せ、すぐに走り出した。馬が走り出したのとほぼ同時にロープの化け物と化したエス・エスがまるでタコの足のようにロープの束を地面に叩きつけた。 ビタンと叩きつけられた地面には深い痕が残り、あれを生身で受けたら間違いなく命はない。 「細胞がっ!!細胞が暴走してるっ!!暴走っっ!!うっひゃぁぁぁぁぁあ!!」 もはや肉体すら見えないが、エス・エスは心底楽しそうに、狂ったようにケラケラ笑いながらロープの束を叩きつけ、ロビンとららを叩きつぶしにかかる。 ロビンはチラチラと後方を確認しつつも、馬を操りながら街を駆ける。暴走状態のエス・エスはロープの束でできた触手を振りまわし、建物を破壊、さらには味方までも叩き潰し回っている。 どう考えても危機的状況なのに、ロビンは焦る様子を見せず、なんなら楽しそうにニコニコ笑いながら馬を平家の木造建築の中を走らせた。 倉庫らしきその建物の中には沢山の樽が積まれており、ロビンとららが馬でそこを走り抜ける途中にロープ触手が天井をメキメキと破壊し、樽をぶち壊して中の液体をぶちまけた。 ロビンはさらにニコッと笑うと、倉庫を抜けたその瞬間、ホルスターから拳銃を抜き、くるりと振り返って倉庫目掛けて発砲した。 ドォンッ。 またも響く大きな銃声に、ららは反射的に耳を塞いでいた。塞いでいなかったら多分鼓膜が死んでいただろう。 ららが耳から手を離し、振り返った時には、倉庫全体がゴウゴウと燃え上がり、その炎はロープの化け物と化したエス・エスにまで燃え移っていた。 焼け死んでいくエス・エスの叫び声はとても悲痛なものだった。 パチパチとまるでモノが燃えるように音を立て、エス・エスという女が燃やされていく。 途中で呼吸ができなくなったのだろう(いや、元々死んでいたから呼吸なんてしていなかったのかもしれないが)叫びは消え、そこには大きな炎の塊だけが残された。 ロビン「行こか。"楽園"へ。」 燃え上がる巨大な炎を見つめながらロビンが言った。 らら「え。知ってるん…ですか?」 ロビン「噂だけ。この街を取り返せたら行こうと思ってたんよ。」 「あ、ていうか名前は?」 らら「あ!ららです。林檎らら。」 ロビン「へー!なんか聞いたことある名前!」 「ま、いいや。」 「私はロビン。ロビン・キティーズや。」 「よろしく!」 ロビンとららは馬の上で握手をした。ららのしっとり柔らかい手に対し、真のカウガールであるロビンの手は分厚く、とても頼もしかった。 …果たして、そこに楽園はあるのか? 一章 最期の歌姫篇 完結 次章、ラスト・マッチ篇へ続きます。 次回は休憩がてらに単発作をアップする予定です!