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擽怨─オリジン─その1

6月 24日 T市 くるま公園で驚くほど綺麗な女子高生の遺体が発見された。 後日26日、30日、31日、7月2日、4日…相次いで場所は別だが同じように綺麗な女子高生の遺体が発見されている。 しっかりと制服を身に纏い体には外傷1つ見当たらないと言うのだ。 死因は今の所は窒息死とされているが首に締め痕も何もないため疑問である。 そして奇妙なことにどの遺体も口角を上げてまるで笑っているかのような表情をしていたという。 おそらく全員を殺害したのは同一犯と見て違いない。 だがしかし警察の捜査は難航し未だ進展はないとのことだ。 事実上のお手上げ状態でこのままの状態が何年も続けば当然、捜査打ち切りにもなるだろう。 そんなことでいいのか。いや、いいわけがない。 私は私立探偵 時仲ユリカ。 雑居ビルの二階に小さな事務所を構えている。 私があの事件に手を出し始めたのはつい三日前だ。 三日前…とある少女がこの事務所にやってきた。 彼女の名は 島 雅 (しま みやび)と言って空手をしている高校二年生。 首元まで伸びた黒髪に鼻筋の通った可愛らしい顔立ちの少女だった。 聞くところによると7月の30日にT市の蔦神社で遺体で見つかった女子高生と仲が良く、警察に任せていても死因も何もわからずじっとしていられなくてここにやってきたのだと言う。 どうしてこんな小っぽけな探偵事務所に依頼して来てくれたのか不思議だったが…。 ユリカ「えっと…雅ちゃん…だっけ?」 雅「はい。」 ユリカ「何か知ってることあったら教えてもらえないかな?」 雅「………。」 彼女は一度俯くと悲しげな表情を浮かべた…きっと亡くなった女子高生のことを思ってだろう。 そしてまた顔を上げて話し始めた。 雅「白木 貴音…。亡くなったのはその子です。」 ユリカ(たかねちゃん…か…。) 雅「貴音とは中学から同じでずっと仲良くして来ました。」 「おっとりしてマイペースで天然なところがあって…。」 ユリカ「そう…。」 雅「私は学校外で空手をやっていて、貴音は部活してないので毎日学校も一緒に帰っていました。」 「…あの日も…。」 ユリカ「……。」 雅「いつもの道で別れて…それが最後でした。」 ユリカ「……。」 なんと声をかけたら良いのかさえわからずただ黙るしかなかった。 それから私は本格的に例の事件について調べることになったのだ。雅ちゃんも空手のない日はいつもこの事務所に来てくれている。 雅ちゃんによれば、あの日貴音ちゃんは17時からバイトがあったはずとのことだ。 もし何かあったとすればその前後である可能性が高い。 捜査から1週間が経った頃、訃報が私たちの耳に入った。 またT市で女子高生の遺体が発見されたのだ…。 同じ…傷の見当たらない綺麗な状態で…。 いち早く事件を解決しなければ被害者はさらに増える可能性がある。 もっと調査を進めなければ…そこで貴音ちゃんの遺体が見つかったという蔦神社へ足を運んだ。 今は警察も一時的に立ち入り禁止を解いているので入ることができる。 事件の現場にならもしかすると何か手がかりがあるかもしれない。 1人で向かうつもりだったが雅ちゃんがどうしてもと言うので2人で行くことにした。 私の事務所から蔦神社までは車で30分くらい。 時刻は18時を回って辺りは夕焼けに染められ始めていた…。 ユリカ「ここ。知ってたけど初めてきたわ…。」 神社は長年手入れがされていないのか鳥居や社なんかは苔が蒸していてこの時間でも薄気味悪さを醸し出していた。 雅「…こんなところに…貴音が1人でいたなんておかしいです。」 ユリカ「そうよね…。」 「ここって所謂、廃神社ってやつだし1人で来るなんて考えられない…。」 彼女の遺体が見つかったという言う社の側を見てみたが、そこには雑草やらが生い茂っているだけで特に何も見つからない。 ユリカ「これと言って…何もないね。」 肩を落としたその時、何かがあたりの草を踏みしめる音が聞こえ2人は咄嗟に背後を振り返った。 一瞬、2人の脳裏によぎったのは当然あの事件の関係者か犯人か何かと言うことだった。 しかし……。 「そこでなにしてるんですか?」 そこにいたのは黒髪のショートボブでクリッとした大きい瞳の少女…。 制服を着ていることから女子高生であることが伺える。 首にはカメラを掛けてジロジロとこちらを興味深そうに見ていた。 ユリカ「質問を返すようで悪いけど…あなたこそここで何を…?」 嫌な緊張感から落ち着きを取り戻して目の前にいる妙な女子高生に質問をした。 女子高生はなぜかにっこり笑った。 「私、影切 萌絵って言います。」 萌絵「超常現象の調査しに来てました!」 ユリカ「ちょ、超常現象…??」 萌絵「はい!」 「近頃T市内で起こってる連続不審死…きっと超常的な何かの仕業だと思って現場を回ってるんですよー。」 ユリカ「な、なんでそんな考えに…。」 萌絵「だって…どの遺体も傷1つなくてしかもみんな笑ったような顔をしてるって…そんなこと…人間にできますか?」 ユリカ「いや…。」 「きっと何か特別な方法を使ったとか…。」 萌絵「警察も特定できないような…ですか?」 ユリカ「…だからってどうしていきなりそんな超常現象なんて考えに…。」 萌絵「傷のない遺体ってだけなら私だって他の方法を考えます!」 「例えば、毒殺とか口を塞いだ窒息死とか。」 「…でも問題はどれも口角を上げて笑っているってところです…。」 「人は死んだら死後硬直して固まってしまいますよね…笑ったまま固まるなんてあるわけないし…。」 ユリカ「……!」 それは最もだ…全員が笑ったような顔のまま死ぬなんて奇跡中の奇跡が起きない限り…いや、奇跡が起きてもあるわけない…。 しかし…。 ユリカ「あのね…超常現象なんてあるわけないし…。」 「萌絵ちゃんはそういう現象が好きだったりするの?」 萌絵「…はい!」 「超常現象とかミステリーとかホラー大好きです。」 ユリカ(なるほど…それで今回の事件も超常現象という結果に結びつけてるのか。) ユリカ「…やっぱり実際に亡くなった人がいるんだからそういう好奇心みたいなので……。」 萌絵「私は真剣ですよ。」 私が諭そうとした時、萌絵が割って入ってきた。 萌絵「私の1つ下の学年の子がこの事件の犠牲になっています…。」 ユリカ・雅「!?」 萌絵は深刻そうな顔でそう言った。 萌絵「私は超常現象大好きだしそういう雑誌も読みまくってます…。」 「でも。」 「何も遊び半分でふざけて今回の調査をしているわけじゃないんです。」 そう言う萌絵の顔は真剣でとてもふざけているようには見えなかった。 ユリカ「…そ、そう…なんか、ごめん。」 萌絵「いえ!いいんです!」 「ところでお姉さんたち誰ですか?」 私が探偵であること、雅ちゃんの親友が事件の被害者であり調査をしていたことを伝えると彼女は申し訳なさそうにしてから私が探偵であることにやたらと食いついてきた。 気がつけば辺りは日が沈みすでに夜は始まっていた。 こんなところにいる女子高生1人を置いておけないので一度彼女も事務所まで来てもらった。 萌絵は事務所に着くなり興味津々のようで狭い部屋の中をあちらこちら見回していた。 ユリカ「そんなに見ても…何にもないよ?」 萌絵「こういう情報の記されてるファイルが山積みになってるのとかすっごい好きです!」 ただの山積みファイルを指して萌絵は興奮したようにそう言った。 雅ちゃんはいつものようにソファに座ってスマートフォンを触っていた。 落ち着いたところでユリカは萌絵から事件に遭ったという1つ下の学年の女の子のことを尋ねた。 萌絵「その子の名前は、雪下 沙耶。」 「私も見たことあるんですけど結構ヤンチャな子でした。」 「調査によると…。」 彼女はおもむろにバッグから手帳を取り出すとパラパラとページをめくり始める。 萌絵「事件に遭ったのは31日。」 「その日、雪下 沙耶は友達とマックで19時過ぎまで遊んでいたみたいです。」 「それから家に帰らないで心配した親が学校なんかに電話したんですけど。」 「結局、雪下 沙耶は蒼山麓のベンチの側で遺体で発見された…。」 彼女の調査結果は遊びで調べるレベルを遥かに逸していた。 これは探偵も脱帽せざるを得ない。 ユリカ「…31日ってことは。」 「…貴音ちゃんが被害に遭った日の翌日…。」 雅「……一度、今までの被害者の現場を確認してみませんか?」 ユリカ「うん…そうしてみよう。」 今までの調査から得た情報を元に全ての現場を日付順に並べてみた。 まずは、 6月 24日 くるま公園 6月 26日 元北見商店街 6月 30日 蔦神社 6月 31日 蒼山麓 7月 2日 大手神社 7月 4日 黒河池 7月 21日 元T小学校前 こうして並べてみたところでこれといった共通点は浮び上がらなかった。 ユリカ「それにしても…どこも普通1人で行きそうなところではないね…。」 萌絵「そうなんですよねー。」 「廃墟マニアなんかならわかるんですけど。」 雅「貴音はそんな趣味無かったはずだし…。」 ユリカ「ところで萌絵ちゃんはさっき現場巡りをしてるって言ってたけど全部回ったわけ?」 萌絵「私が回ったのは元北見商店街と黒河池に今回の神社です。」 ユリカ「思ったより回ってるね…。」 「何か手がかりとか、わかったこととかあった?」 萌絵「元北見商店街も黒河池もやっぱりひと気がないし、商店街は全部シャッター降りてたし。」 「黒河池には確か辺りに建物が一軒…。」 「人が住んでるのか廃屋なのかわかりませんけど…。」 ユリカ「そう…。」 萌絵「ただ…。」 ユリカ「?」 萌絵「商店街にも池にもある物が落ちていました。」 萌絵がバッグから取り出したのはビニールケースだった。 そこから出てきたのは一切れの紙片。 それが二枚だ。 一枚には「足裏」 もう一枚には「脇腹」 と整った綺麗な字で書かれていた。 ユリカ「なに…これ?」 萌絵「現場に落ちてたんです。」 「今回の神社にもあるかと思ったんですけど調べてる時にユリカさんたちに会ったので…。」 ユリカ「なるほど…体の部位の名前が書かれた紙片が落ちてるなんて偶然ではないよね…。」 雅「…これが手がかりなんですかね?」 「は、犯人の…。」 ユリカ「その可能性…高いわ。」 その紙片に興味が湧いたがもう時間も遅い…この日は切り上げて責任を持って2人を自宅付近まで送り届けた。 事務所に残ったユリカは先ほどの紙片のことを考えていた。 ユリカ(足裏に…脇腹…か。) 体の部位の名前だが…それがどう関係するのか…もしかするとその場で見つかった遺体の紙片に記された部位に何か手がかりがあるのだろうか…。 だとしても遺体を調べることはできない。 萌絵は蔦神社の紙片は見つけていなかった…最も、私たちと鉢合わせたせいだが…。 明日、改めてあの神社に行ってみることにした。 翌日、事務所で他の件を整理し終えてそろそろ神社へ向かおうかとした時。 ドアがガチャリと開いて萌絵が当たり前のように入ってきた。 萌絵「こんにちわー。」 ユリカ「ちょっと萌絵ちゃん!?」 萌絵「どうしたんですか?」 ユリカ「調査に同行する気?」 萌絵「もちろんです!」 ユリカ「いや、これは危険だから…それに萌絵ちゃんに何かあったら責任とれないよ。」 萌絵「わかってますよ。」 「でもこのままじっとしてられなくて!」 ユリカ(説得しても無駄そう…仕方ない…。) 結局、萌絵を乗せて蔦神社へと向かった。 昨日とほぼ同じくらいの時刻に神社に到着した。 現場の社付近を2人はくまなく探した。 すると…。 社の真下に生い茂っている雑草の間に何か綺麗な紙片が落ちているのを見つけた。 ユリカ「これは…!」 萌絵「ありました??」 千切られた紙片には他二枚と同じように綺麗な字で…。 「首」 と書かれていた。 ユリカ・萌絵「!!」 ユリカ「く、首…。」 萌絵「なんか…急に生々しい…。」 その時、急に神社を生暖かい嫌な風が吹き抜けた。 そして何かいるわけでもないのにじっと誰かに見られているような気がして気持ち悪くなりすぐに2人は引き返して車に乗り込んだ。 ユリカ「なんか…気持ち悪くなかった…?」 萌絵「はい…!嫌な予感が…しました。」 萌絵の表情は怖いような楽しいようなそんな不思議な表情をしていた。 ユリカ「……まだ回ってない現場に行くよ…!」 萌絵「…はい!!」 2人がやってきたのは最初に遺体が発見された現場…くるま公園だ。 住宅街から外れた人気のない場所にあり、どの遊具も錆びついていてここに遊びにきている人間がかなり少ないか、いないことはすぐにわかった。 萌絵「うわー。すっごい雰囲気…!」 ユリカ「とても公園には思えないね…。」 「話によれば、この公園のブランコのそばのフェンスにもたれるように倒れていたって。」 萌絵「このあたりですかね…?」 彼女が指したのは話通りの場所…もしかしたらその辺りに紙片があるかもしれない…。 ユリカ「ちょっと暗くなって来たけど…早めに探しましょう。」 萌絵「はい!」 ライトを照らして現場付近の詮索を始めた。 放置された公園だけあって色んなゴミが散在していて一々退けるのも面倒だった。 しばらく探して萌絵がフェンスのそばにあるブロックと地面の間に挟まっている紙片を発見した。 萌絵「ありました!多分これです!」 ライトで紙片を照らす… 挟まれていたはずなのにそれほど汚れはついておらず、また綺麗な字でこう記されていた。 「脇の下」 ユリカ「…わ、わきのした…か。」 萌絵「…どういうことでしょうか…。」 「脇の下って言うとコチョコチョされたらくすぐったいところですけど…。」 ユリカ「ま、まぁそうだけど…。」 そしてまた嫌な風が小さな公園に吹き渡る…あの嫌な感じも。 他にめぼしいものはなく、急いで2人は公園を後にした。 ユリカ「さっきから…紙片を見つけるとあの嫌な感じがする…。」 「まるで誰かに見られてるかのように…。」 萌絵「そう、ですよね…偶然じゃない…。」 しばらく車を走らせていた時…ユリカの頭にある予感が過った。 どの紙片も異様に状態が良い…そしてそれを見つけた途端に何者かの視線を感じる…もしかすると…。 ユリカ「萌絵ちゃん…。」 萌絵「どうしたんですか?」 ユリカ「やっぱりこれ以上の紙片の調査は危険よ…。」 萌絵「え?急にどうしたんですか?」 ユリカ「…私達は既に何者かに目をつけられてる…!」 萌絵「??」 ユリカ「あの紙片は…誰かが取りにくる直前に置かれてる…!」 「そして、それを見つけるのをどこかからか見ている…!」 萌絵「えぇ!?」 ユリカ「そうに違いない…。」 「紙片の状態が綺麗すぎるし…見つけた途端に感じるあの視線…。」 「まるで見つかるのがわかってるかのよう…!」 「それだけじゃない。」 「共通してあんな紙片があるならきっと警察も見つけているはず。」 「見つかっていないと言うことは調査が中断されてから置かれたということ…。」 萌絵「……じゃ、じゃあ私が紙片を見つけた時も…!!」 青ざめながらそう口にする萌絵…そして私は無言で頷く。 ユリカ「……襲われなかったのは運が良かったから…!」 萌絵「……うぅっ。」 ユリカ「とにかく、萌絵ちゃん。」 「あなたの協力には感謝してるけど、これ以上は本当に危険。」 「だから、もう後のことは私に任せて。」 萌絵「………。」 萌絵は残念そうにコクリと頷いた。 それから萌絵は自転車で事務所から家に帰っていった。 ユリカ「………。」 「足裏」「脇腹」「脇の下」 3つの紙片にはそれしか書かれていない。 他の場所にも紙片が置かれることは明らかなのだが…当然危険を伴う。 だがそんなことは言っていられない…! だが問題は…紙片を置いている者がどのようにしてタイミングを見計らっているのか…だ。 常に監視していないとそんなことはわからないはず…外部にもそんなことは漏れていないし…神社のモノと公園のモノ…両方同じ気配だったが同一人物なんてことはあるのか…? 私たちが次に公園に向かうのはわからないはずだし、第一つけてくるなら車かバイクしか無理だ…だがそんな怪しい車両は見つからなかった。 まさか本当に萌絵の言うように超常現象的な何かの仕業なのだろうか。 もしくは紙片を置いている者と事件の犯人は別人で単なるイタズラと言う可能性もある。 だがあの異様な視線…あれは明らかに異常だった。 明日…行くしかない…他の場所に…。 翌日、真昼間に蒼山の麓へ向かった。 昼間なのに人気がなくずっと管理のされていなそうな自販機とベンチがあるだけだった。 車から降りて遺体の見つかったと言われている例のベンチのあたりを散策すると、簡単に紙片は見つかった…手に取ろうと考えた時、とっさにあの視線のことを思い出す。 そして紙片を拾いすぐに走って車に戻りエンジンをかけた。 その時だった…あの嫌な視線を感じ、全身を指か何かで撫でられたかのようなゾクゾクッとした感覚が走り思わず仰け反った。 まずい…と思いすぐに車を発進させ麓を離れると徐々にあの嫌な視線も感じなくなっていた…。 パーキングエリアに車を停めてさっき手に入れた紙片に目をやる。 「お腹」 紙片にはそう書かれていた。 ユリカ(お腹…。) あと回れる場所で回ってないのは大手神社だけ…小学校はまだ警察が調査してるから紙片は置かれてないはず。 恐ろしい気持ちでいっぱいだったがここまで来たのだ…行くしかない。 深く考えるのはよして車を飛ばして大手神社へ向かった。 大手神社という神社は有名でなくこの事件で初めて耳にした。 着いてみれば蔦神社同様、誰も手入れしていない所謂、廃神社だった。 ユリカ(ここで最後…ここで最後…!) そう言い聞かせて恐怖を取り除き、遺体発見現場の鳥居付近を調査した。 すると、やはり…あった。 紙片だ。 ふと、辺りを見渡した…視線の主は…あのゾクゾクとさせる気配の主は…。 どこから私を見ているのか? さっきと同じように…紙片を手にしてすぐに車へと向かう。 しかし…。 ユリカ「え!?」 車のドアが開かない…!! 突然の出来事に頭がパニックになる…! すぐに戻れるように鍵は閉めていないはず…それなのにそれなのになぜかいくら取っ手を引いてもドアは開かない…! ユリカ(なんで…!!!) するとまたあの嫌な視線を感じる…。 さらに……。 ユリカ「ぐひゃっ!?」 何者かに脇の下付近をツンっと突かれるのを感じた。 それを皮切りに脇腹を一度揉まれたり、首筋を指先で撫でられるような嫌な感覚が襲う…! ユリカ「ちょっ!なにっ!?」 「やっ!やめへ…!!」 必死に体を仰け反りながら取っ手を引くとようやくドアが開き運転席に転がり込んだ。 上半身を弄られるような嫌な感覚はその間も続く…。 その嫌な感覚に耐えながらもアクセルを踏んで必死にその神社を離れた。 神社を抜けると徐々に視線も感覚もなくなって来た。 ユリカ「…はぁ…はぁ…。」 頭がパニックになり、まだ現実が飲み込めていない…。 自分の身に何が起こったのか…? なぜドアは開かなかったのか…? とにかく、一度事務所に戻ってみた。 事務所のソファにどかっと腰を下ろす。 あの神社で見つけた紙片には…。 「脇腹」 と書かれていた。 ユリカ「また…脇腹…?」 その時、何か嫌な汗が頬を伝った。 「足裏」「脇腹」「脇の下」「お腹」「脇腹」……。 口角を上げて笑っているような表情で死んでいる遺体…。 そしてさっき自分が襲われたあの感覚…。 間違いない…。 死因は窒息死…だが、その原因は…!! くすぐり だ!! 萌絵がおふざけ半分に脇の下はくすぐったい箇所と言っていたがまさか本当にそうだとは…! 紙片に書かれている部位はどこもくすぐられるとくすぐったい箇所…。 原因の可能性が一番高い…! ユリカ「……!!」 だが、そうだとしても自分を襲ったあのまさしく超常的な現象は説明がつかない。 あの見えない何かは完全に私をくすぐっていた…軽くだが…。 被害者たちは皆それで窒息死したのか…? 萌絵は正しかったのか…。 だが、くすぐりで窒息死だなんて聞いたことがない。 それに…くすぐるなら指紋なりなんなり遺体に付着しているはず…。 証拠を残さずになんて…、 いや…怪異的な何かならそれも可能…。 決断を下すにはまだ早いだろう。 もう少し何か確信的なことがわかってから決めることにしよう。 とはいえまたあの現場に足を運ぶ勇気が出なかった。 車の件といい、あのゾクゾク感といい普通ではありえないことを一度に体験したせいで体は現場へ向かうことを拒否していた。 この事を警察に報告したって取り合ってもらえるわけがない。 その間にも犠牲者は出続ける。自分は探偵だ。だから、犠牲を払ってでも正義のために立ち向かわないといけない。 ユリカは決心し、再びあの大手神社へと向かった。


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